20 / 22
20.夕暮れの屋敷
しおりを挟む
ザゴラが撤退し、私は焼け落ちた城の復旧と混乱した国内の統制に奔走することとなった。
兄上は一命は取り留めたが、切り付けられた刀の傷が深く、足を自由に動かせなくなってしまった。
療養の後、兄上が国王としての政治をとり行う予定だが、しばらくの間は私が代理で取り仕切っている。
リヴァディアを裏切っていた、プレストン大司教とサイラス宰相は姿を消した。
ザゴラに渡ったと噂されているが、その後の行方は知れない。
援軍に来てくれたセレは、ザゴラに睨みを効かせるため、しばらくリヴァディア国内に止まっている。
セレは、進軍と駐留の費用のみこちらに請求し、それ以上の要求はしてこなかった。
ここまで弱っているリヴァディアなら、この機に有利な条約を結ぶこともできるだろうに、かなりの温情措置だ。
ムスタングに聞くところによると、ザゴラとの衝突を避けるために、リヴァディアには緩衝材としてどうしても友好を深めておきたいとの意向があるらしい。
ムスタングはセレの王室に、リヴァディアを存続させた方が良いと、色々進言してくれていたようだ。
セレの産物の輸出先としても、リヴァディアの独自の文化との交流も魅力的だと感じていてくれているらしい。
慌ただしい職務を終え、夕暮れの屋敷に戻ると、秘書のオリヴァーが迎えに出てきた。
「ウィリアム殿のご両親が明日、お見舞いにいらっしゃるとのことです」
オリヴァーがそう伝えながら、私の上着を受け取る。
ウィリアムは、私の屋敷にて療養させている。
最近は顔色も良くなり、もう数日もしたら、ベッドから出られるだろうと医師が言っていた。
「ウィリアムの婚約者は来ないのか?」
「ウィリアム殿は、婚約を解消されています」
「……いつ解消したのだ?」
「ザゴラの侵攻がある前でしたが」
「そうか……」
思わず緩む表情を引き締め、オリヴァーに喜びを悟られないように無表情に徹する。
ウィリアムには申し訳ないが、正直嬉しい。
自分のウィリアムへの気持ちは認識しているが、婚約者がいるのはわかっていた。
ウィリアム……
ウィリアムが療養している西端の部屋に向かう。
足取りがふわふわして、雲の上を歩いているようだ。
部屋にノックして入ると、夕暮れのオレンジに染まる部屋にウィリアムが眠っていた。
少しやつれてしまったが、その凛々しい眉と男らしい鼻梁、すっきりとした頬に見惚れる
教会で初めてこいつを見た時、男から見ても格好のいい男だと思った。黒髪の間からこちらを見上げる目に、滴るような男の色気を感じた。
ベッドに腕を着き、緩く閉じられた唇を指でなぞる。
軽く唇を合わせ、唇の内側でウィリアムの唇を啄んでいく。
顔を少し離すと、ウィリアムがゆっくりと目を開けた。
「アシェル殿下……」
まだまどろみの中にいるウィリアムに、再び深く口付ける。
舌でウィリアムの熱い舌を擦り上げると、ウィリアムが舌を絡めてきた。
こいつは、私に口付けされると、嫌な素振りなど見せず応えてくれる。
私のことは間違いなく慕ってくれているし、体の接触も許してくれる。
婚約を解消したならば、四六時中私のそばに侍らせることも可能と言えば可能だ。
でも、私は欲張りになっていた。
私と同じ熱量で、私を見てほしい。
「ウィリアム、なぜ婚約を解消したことを私に報告しなかった」
ウィリアムの枕元に腕を立てて、じっと見つめる。
「……申し訳ありません。このような私事、殿下のお耳に入れるほどのことではないと判断しました」
私は知りたかった。
やはりこいつは、私のことをただの主人としてしか見ていないということか。
「なぜ婚約を解消したのだ?」
質問をしながら、寝ているウィリアムに跨り、シャツのボタンを外していく。
「あっ……殿下?」
ウィリアムは私の手にその大きな手を添えるが、本気で止めようとするほどの力は入っていない。
シャツを開け、ウィリアムの胸元から腹に指を添わす。
肩の傷は塞がっている。
触れるか触れないかの力で傷をなぞると、ウィリアムがピクリと震えた。
「なぜ婚約を解消した?」
再び質問をしながら、ウィリアムの鍛えられた胸筋の上にある突起を指の腹で弾く。
「はっ――」
ウィリアムは私の腕を掴むが、私に乳首を弄られるがままにされている。
「――私は……彼女に相応しい人間では……なかったので……」
答えながら、ウィリアムが何度も息を呑む。
「お前のどのようなところが、相応しくなかったのだ?」
そう問いかけて、ウィリアムの乳首を舌で舐め上げた。
「あっ」
ウィリアムが普段よりも高い声をあげた。
跨っている股に、ウィリアムの硬く熱いものが当たる。
「私は、彼女に……愛情を……あげられなかったので……」
荒く息をつきながら、ウィリアムが一生懸命に答える。
そうか、ウィリアムは婚約者を愛することができなかったのか。
私の卑屈な心が、喜びで満たされる。
私がこのような矮小な人間だと知ったら、ウィリアムは私を軽蔑してしまうだろうか……
苦しそうなウィリアムの下穿きをずらすと、解放されたペニスが弾け出た。
少し腰を浮かせ、下穿きと共に就寝用のズボンも脱ぎ取る。
ウィリアムの脚を開かせ、その間に座り込んだ。
亀頭の穴に透明な雫を溜めるウィリアムのペニスには触れず、足の付け根や、下腹の黒い陰毛を五本の指で優しくなぞる。
ウィリアムが触れて欲しそうに、腰を少し浮かせてそれを私に差し出す姿が愛おしい。
「お前の愛情は、今どこに向いているのだ?」
ウィリアムを見上げると、切羽詰まったような瞳がこちらを見ている。
「わ……私は……」
ウィリアムの瞳が困惑に揺れている。
私はウィリアムに、何を言わそうとしているのだろうか。
体は奪えても、心を奪うことはできない。
快楽と愛情は異なるのだ。
ふと、ザゴラへの道中、私の靴擦れを手当てしてくれた、ウィリアムの姿が思い浮かぶ。
十分だ……
こいつは私に十分、愛をくれている。
「答えなくてよい。お前は気持ちよくなっておけ」
ウィリアムのペニスの先に溢れる粘液を舌で舐めとる。
「あっ……殿下、いけません」
気持ちよさそうな声をあげつつも、ウィリアムは私を離そうと両手を私の頭に添える。
あまり力の入っていない手にまるで促されるような格好で、ウィリアムのペニスを飲み込む。
「あぁ……」
ウィリアムから恍惚とした声が漏れ、ペニスが悦びに震える。
ウィリアムの気持ち良さが、まるで自分の体に起こっていることのように伝わってくる。
滑らかで硬いそれが私の口内を滑っていく。
ウィリアムのペニスがトクトクと脈打ち、精を吐き出さんと切なげに震える。
私の体に入れてみたい……
いやいや、何を考えているんだ。それはないだろう。
ウィリアムだって嫌だろう。
「で……殿下。ダメです。出てしまいます」
荒い息をしたウィリアムが私の頭を退かそうと手に力を込める。
「だせ」
舐めながら手で竿を扱くと、ウィリアムが声にならないうめき声あげながら、精を吐き出した。
ドクドクと口の中いっぱいに吐き出されたウィリアムの精を自分の手のひらに吐き出す。
そばにあったボウルにウィリアムの白濁を退け、手をハンカチで拭く。
「申し訳ありません」
ウィリアムが所在なさげにこちらを伺う。
「謝らなくていい」
半身を起こし、はだけた衣服を直したウィリアムが、真っ直ぐこちらを見る。
「私の気持ちは、すべてアシェル殿下にあります」
「――そうか。わかった」
笑顔をとろうとしても、どうしても少し顔が硬くなる。
ウィリアムの騎士としての忠誠は全て私に注がれている。
どこまでも優しく、私を気遣ってくれる。
そうだ。十分だ。
今ウィリアムが生きていて、私の側にいてくれる。
触れることもできる。
ただ少し、私の愛と種類が異なるだけの話だ。
「アシェル殿下、お慕いしております」
ウィリアムの様子にどこか必死なところが見える。
「あぁ。わかっている」
ベッドの側に寄り、ウィリアムの頬に触れる。
じっと私を見つめたウィリアムが、私の手を取り、指に口付けた。
「いつまでも。ずっと。アシェル殿下だけをお慕いしております」
「あぁ。ありがとう」
ウィリアムの熱い視線に釘付けになる。
今、口付けるのは、おかしいだろうか?
おかしいだろう。
でも、いい。
そうしたいのだ。
ゆっくりとウィリアムの唇に私の唇を重ねると、ウィリアムが私の背を優しく抱きしめた。
兄上は一命は取り留めたが、切り付けられた刀の傷が深く、足を自由に動かせなくなってしまった。
療養の後、兄上が国王としての政治をとり行う予定だが、しばらくの間は私が代理で取り仕切っている。
リヴァディアを裏切っていた、プレストン大司教とサイラス宰相は姿を消した。
ザゴラに渡ったと噂されているが、その後の行方は知れない。
援軍に来てくれたセレは、ザゴラに睨みを効かせるため、しばらくリヴァディア国内に止まっている。
セレは、進軍と駐留の費用のみこちらに請求し、それ以上の要求はしてこなかった。
ここまで弱っているリヴァディアなら、この機に有利な条約を結ぶこともできるだろうに、かなりの温情措置だ。
ムスタングに聞くところによると、ザゴラとの衝突を避けるために、リヴァディアには緩衝材としてどうしても友好を深めておきたいとの意向があるらしい。
ムスタングはセレの王室に、リヴァディアを存続させた方が良いと、色々進言してくれていたようだ。
セレの産物の輸出先としても、リヴァディアの独自の文化との交流も魅力的だと感じていてくれているらしい。
慌ただしい職務を終え、夕暮れの屋敷に戻ると、秘書のオリヴァーが迎えに出てきた。
「ウィリアム殿のご両親が明日、お見舞いにいらっしゃるとのことです」
オリヴァーがそう伝えながら、私の上着を受け取る。
ウィリアムは、私の屋敷にて療養させている。
最近は顔色も良くなり、もう数日もしたら、ベッドから出られるだろうと医師が言っていた。
「ウィリアムの婚約者は来ないのか?」
「ウィリアム殿は、婚約を解消されています」
「……いつ解消したのだ?」
「ザゴラの侵攻がある前でしたが」
「そうか……」
思わず緩む表情を引き締め、オリヴァーに喜びを悟られないように無表情に徹する。
ウィリアムには申し訳ないが、正直嬉しい。
自分のウィリアムへの気持ちは認識しているが、婚約者がいるのはわかっていた。
ウィリアム……
ウィリアムが療養している西端の部屋に向かう。
足取りがふわふわして、雲の上を歩いているようだ。
部屋にノックして入ると、夕暮れのオレンジに染まる部屋にウィリアムが眠っていた。
少しやつれてしまったが、その凛々しい眉と男らしい鼻梁、すっきりとした頬に見惚れる
教会で初めてこいつを見た時、男から見ても格好のいい男だと思った。黒髪の間からこちらを見上げる目に、滴るような男の色気を感じた。
ベッドに腕を着き、緩く閉じられた唇を指でなぞる。
軽く唇を合わせ、唇の内側でウィリアムの唇を啄んでいく。
顔を少し離すと、ウィリアムがゆっくりと目を開けた。
「アシェル殿下……」
まだまどろみの中にいるウィリアムに、再び深く口付ける。
舌でウィリアムの熱い舌を擦り上げると、ウィリアムが舌を絡めてきた。
こいつは、私に口付けされると、嫌な素振りなど見せず応えてくれる。
私のことは間違いなく慕ってくれているし、体の接触も許してくれる。
婚約を解消したならば、四六時中私のそばに侍らせることも可能と言えば可能だ。
でも、私は欲張りになっていた。
私と同じ熱量で、私を見てほしい。
「ウィリアム、なぜ婚約を解消したことを私に報告しなかった」
ウィリアムの枕元に腕を立てて、じっと見つめる。
「……申し訳ありません。このような私事、殿下のお耳に入れるほどのことではないと判断しました」
私は知りたかった。
やはりこいつは、私のことをただの主人としてしか見ていないということか。
「なぜ婚約を解消したのだ?」
質問をしながら、寝ているウィリアムに跨り、シャツのボタンを外していく。
「あっ……殿下?」
ウィリアムは私の手にその大きな手を添えるが、本気で止めようとするほどの力は入っていない。
シャツを開け、ウィリアムの胸元から腹に指を添わす。
肩の傷は塞がっている。
触れるか触れないかの力で傷をなぞると、ウィリアムがピクリと震えた。
「なぜ婚約を解消した?」
再び質問をしながら、ウィリアムの鍛えられた胸筋の上にある突起を指の腹で弾く。
「はっ――」
ウィリアムは私の腕を掴むが、私に乳首を弄られるがままにされている。
「――私は……彼女に相応しい人間では……なかったので……」
答えながら、ウィリアムが何度も息を呑む。
「お前のどのようなところが、相応しくなかったのだ?」
そう問いかけて、ウィリアムの乳首を舌で舐め上げた。
「あっ」
ウィリアムが普段よりも高い声をあげた。
跨っている股に、ウィリアムの硬く熱いものが当たる。
「私は、彼女に……愛情を……あげられなかったので……」
荒く息をつきながら、ウィリアムが一生懸命に答える。
そうか、ウィリアムは婚約者を愛することができなかったのか。
私の卑屈な心が、喜びで満たされる。
私がこのような矮小な人間だと知ったら、ウィリアムは私を軽蔑してしまうだろうか……
苦しそうなウィリアムの下穿きをずらすと、解放されたペニスが弾け出た。
少し腰を浮かせ、下穿きと共に就寝用のズボンも脱ぎ取る。
ウィリアムの脚を開かせ、その間に座り込んだ。
亀頭の穴に透明な雫を溜めるウィリアムのペニスには触れず、足の付け根や、下腹の黒い陰毛を五本の指で優しくなぞる。
ウィリアムが触れて欲しそうに、腰を少し浮かせてそれを私に差し出す姿が愛おしい。
「お前の愛情は、今どこに向いているのだ?」
ウィリアムを見上げると、切羽詰まったような瞳がこちらを見ている。
「わ……私は……」
ウィリアムの瞳が困惑に揺れている。
私はウィリアムに、何を言わそうとしているのだろうか。
体は奪えても、心を奪うことはできない。
快楽と愛情は異なるのだ。
ふと、ザゴラへの道中、私の靴擦れを手当てしてくれた、ウィリアムの姿が思い浮かぶ。
十分だ……
こいつは私に十分、愛をくれている。
「答えなくてよい。お前は気持ちよくなっておけ」
ウィリアムのペニスの先に溢れる粘液を舌で舐めとる。
「あっ……殿下、いけません」
気持ちよさそうな声をあげつつも、ウィリアムは私を離そうと両手を私の頭に添える。
あまり力の入っていない手にまるで促されるような格好で、ウィリアムのペニスを飲み込む。
「あぁ……」
ウィリアムから恍惚とした声が漏れ、ペニスが悦びに震える。
ウィリアムの気持ち良さが、まるで自分の体に起こっていることのように伝わってくる。
滑らかで硬いそれが私の口内を滑っていく。
ウィリアムのペニスがトクトクと脈打ち、精を吐き出さんと切なげに震える。
私の体に入れてみたい……
いやいや、何を考えているんだ。それはないだろう。
ウィリアムだって嫌だろう。
「で……殿下。ダメです。出てしまいます」
荒い息をしたウィリアムが私の頭を退かそうと手に力を込める。
「だせ」
舐めながら手で竿を扱くと、ウィリアムが声にならないうめき声あげながら、精を吐き出した。
ドクドクと口の中いっぱいに吐き出されたウィリアムの精を自分の手のひらに吐き出す。
そばにあったボウルにウィリアムの白濁を退け、手をハンカチで拭く。
「申し訳ありません」
ウィリアムが所在なさげにこちらを伺う。
「謝らなくていい」
半身を起こし、はだけた衣服を直したウィリアムが、真っ直ぐこちらを見る。
「私の気持ちは、すべてアシェル殿下にあります」
「――そうか。わかった」
笑顔をとろうとしても、どうしても少し顔が硬くなる。
ウィリアムの騎士としての忠誠は全て私に注がれている。
どこまでも優しく、私を気遣ってくれる。
そうだ。十分だ。
今ウィリアムが生きていて、私の側にいてくれる。
触れることもできる。
ただ少し、私の愛と種類が異なるだけの話だ。
「アシェル殿下、お慕いしております」
ウィリアムの様子にどこか必死なところが見える。
「あぁ。わかっている」
ベッドの側に寄り、ウィリアムの頬に触れる。
じっと私を見つめたウィリアムが、私の手を取り、指に口付けた。
「いつまでも。ずっと。アシェル殿下だけをお慕いしております」
「あぁ。ありがとう」
ウィリアムの熱い視線に釘付けになる。
今、口付けるのは、おかしいだろうか?
おかしいだろう。
でも、いい。
そうしたいのだ。
ゆっくりとウィリアムの唇に私の唇を重ねると、ウィリアムが私の背を優しく抱きしめた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
184
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる