万能のアイテム屋さん あらゆる魔物・状況に対するチート級武器防具アイテムが揃う店

第２３話：螺旋槍

　コーラル王国とは緊張状態になっているエルディスト王国から姫が平和の使者としてやって来るという。
　そんな話を冒険者ライドは聞いたが、自分にはあまり関係ない話だな、と思った。
　確かに戦争が起きるのは嫌だという気持ちはあるが、戦争が起きなくても起きても自分は冒険者ギルドの依頼をこなし続けるだけだ。
　戦争が起きれば依頼が対エルディスト王国のものが多くなるだけに過ぎない。
　すなわち、今とやることは大差ない。まぁ、起きないに越したことはないが。
　それよりもライドは目下の問題と直面しなければならない。
　それはブロンズゴーレムの群れとの戦いで愛槍が破損し、武器がなくなってしまっていることだ。
　王都の武器屋に行けば代わりの槍はあるだろうが、もっと劇的な。強力な槍が欲しい所であった。
　そんな折、噂の万能のアイテム屋の話を聞いた。

　この話を聞くのは初めてではない。前々から聞いていたが、信じてなかったことだ。
　とはいえ、どうせ武器もないのなら噂のアイテム屋に行ってみようではないか。

　そう思ったライドは王都から少し外れた所、森に踏み入った所にある店を訪れた。
　噂通りの場所にある店。商品も噂通りであればいいのだが。

「いらっしゃい」

　ライドが店に入ると、赤髪を肩まで垂らした店主が出迎えてくれる。ライドは単刀直入に要件を話した。

「俺の槍が破損してしまってな。今は武器がない状態だ。代わりの槍はないか？」
「槍か。少し変わったものでもいいかい？　威力は保証する」
「ああ、構わない」

　普通の槍が欲しいのであればそもそも王都の武器屋で買っている。
　この店にわざわざ来たからには普通ではない槍を所望したい所であった。
　店主は奥に引っ込んでいき、出て来た時には確かに独特の槍を持っていた。

「螺旋槍だ」

　まず槍の刀身が大きい。柄の先端に付いた刃の部分は巨大化し、螺旋槍の名の通り螺旋を巻いている。
　これは、とライドは思わず口に出す。

「どういう槍なんだ？」
「先端が回転して敵の体を貫く。破壊力は保証するよ」
「なるほどな」

　この巨大な先端が回転して、その状態で突きを放てば大概の守りは突破できるだろう。
　独特だが、強力な槍だ。その思いを懐き、ライドはこの槍を購入することにした。

「この槍を貰おう。いくらだい？」
「金貨４枚だな」
「分かった」

　ライドは代金を取り出し、店主に渡す。それを受け取った店主は代わりに螺旋槍をライドに渡す。

「毎度あり」

　その言葉を聞き、ライドは店主に背を向けて、店から出た。螺旋槍か。
　一体どれほどのものか。期待感に満ちる胸中を自覚しながら、ライドは帰路を歩いた。

　翌日。冒険者ギルドの依頼を見る。やはりブロンズゴーレム関連の依頼が多かったが、その中でリクガメ型魔物が発生しているとの依頼があった。
　リクガメ型魔物か。この螺旋槍を試すには丁度いいかもしれない。
　そう思ったライドはその依頼を受けることにした。早速、依頼の場所まで行く。そこには多くのリクガメ型の魔物がいた。

「では武器を試してみることにしよう」

　ライドは螺旋槍を構える。先端が高速回転し、その勢いでリクガメ型の魔物の一体に刺突を放つ。
　回転する先端がリクガメ型魔物の体をエグり、大ダメージを与える。
　リクガメ型魔物は絶叫を上げた。これに他のリクガメ型魔物もライドに襲い掛かって来る。
　それらを螺旋槍で相手をする。高速回転する槍を叩きつければ与えるダメージは絶大であった。

「こいつは凄いな」

　螺旋槍の力にライドは感心しきりであった。
　たまらずリクガメ型魔物は甲羅に手足を引っ込めて防御態勢を取るが、その甲羅をも螺旋槍は貫き、ダメージを与える。
　リクガメ型魔物を纏めて蹴散らし、回転する槍が駆逐していく。
　申し分のない力だ。これならブロンズゴーレムにも通用するだろう。
　そう思い、残りのリクガメ型魔物に螺旋槍を叩き付けて撃破する。螺旋槍の威力は圧倒的であった。

「よし。依頼達成だ。新武器のおかげで楽ができたな」

　上機嫌にライドはそう呟く。実際、この螺旋槍のおかげで今までの普通の槍で挑むよりも遙かに楽に魔物を倒すことができた。
　あの赤髪の店主の店、噂通りの店であるようだ。そう思いつつ、ライドは帰路を歩く。
　順調に依頼を達成したことで上機嫌になりつつ、冒険者ギルドに戻り、報酬を受け取る。
　この勢いなら螺旋槍の代金もすぐに回収できそうだ。
　そう思う。さて、次はどのような依頼を受けるべきか。

　そう悩むライドであるが、どんな依頼でもこの螺旋槍があればこなせると信じて疑わなかった。