4 / 5
真相
しおりを挟むはっきりと突きつけられたとも言えるその言葉に、俺の身体からはすぐに、ぶわっと大量の冷や汗が噴き出した。
〝お前じゃない?〟とは、どういうことなのか。
止まらない冷や汗が下へ下へと伝っていく中、俺は貢との物理的な距離を縮める。
「どういう意味なのか、ちゃんと説明してくれよ」
貢のその無機質な目には、もしかして俺以外の何かが映っているとでもいうのか。
「なあ、貢?」
昨日までの貢なら、こんなことを言ったりはしなかったはずだ。なのに、どうしてそんな風になってしまったのか。
それから何度言葉で詰めても、さっきの言葉以外は返ってこない。まるで、もう俺に掛ける言葉はそれしか選択肢がないかのように。
「はあっ、はあっ、はあっ……わりぃ、出直してくる」
当然、俺は怖くなってしまった。だから、目の色に生気が感じられない貢に背を向け、とにかく一旦この場から離れることにした。あれ以上貢を問いただしても、今のあの状態ではきっと答えは変わらないと思ったからだ。
(変な動悸が止まんねぇ)
まるで内側から何かが這い出てくるような感覚に襲われ、そのうちまともに息すら出来なくなり、とうとう俺はその場でガクンッと膝をついてしまう。
「っ、かひゅっ、ひゅーっ、は、っ、?」
自然と自身の首に両手が伸び、呼吸を整えようとするもののそれはままならず、貢ではなく、もしかして俺のほうが変わってしまったのではないのか、という考えがふと自分の中に浮かんだ。
(いつ、からだよ)
言葉に出せない分、心の中でそう思ったが、それを思った瞬間に、その答えが出てしまった。
(昨日……からだ。貢と身体が繋がってから、だ)
バッとうしろを、俺は瞬間的に振り返った。
「!?」
すると、貢の家から五分ほど離れた場所まで走って来たはずだというのに、無表情な顔をした貢がそこに立ちすくんでいた。
ひっ、と声が喉の奥で止まる。もうまともに声の音を出せないからだ。
(もう、おかしいって……言うだけじゃ済まなくなってるじゃんかよ)
ここから逃げ出したいのに、どうしてもそれが出来ない。まるで、俺の身体の主導権が俺ではなく、別の何かに入れ替わってしまったかのようである。
(俺は、なん、なんだ?)
目の前の貢が変だと感じるばかりではなく、この短時間で、俺はずっと自分のことまで疑ってしまっている。
こちらをじっと眺めてきている貢から視線を逸らしたいのに、俺の中に居る“俺”がそれを許してくれない。
まるで、俺の中に居る何かが貢を欲しているかのようにすら感じる。
すると、足音を立てず、今度は貢が俺との距離を詰めてきて、こう口を開いた。
「あと、ほんの少しだね。器は必要ないね」
(それは、俺の中の奴に向けて言ってるのか? なあ、なあ! 貢!)
この時点で、“器”と呼ばれた俺には、言葉を発する決定権すらも失われてしまっていたのである。
「ほら、あともう少し、もう少し」
(やめろ! やめろ! やめろ! もう、やめてくれよ! 貢!!)
すると、その時だった……。
0
あなたにおすすめの小説
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
神父様に捧げるセレナーデ
石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」
「足を開くのですか?」
「股開かないと始められないだろうが」
「そ、そうですね、その通りです」
「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」
「…………」
■俺様最強旅人×健気美人♂神父■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる