音楽を心に~music heart~

野良豚

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第1章

1-1「お前もやってみない?」

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「またランキング更新がきてますね」

 とある朝、スマホアプリの通知が来ていた。
最近、流行っている投稿系アプリだ。

世の中には色々な投稿サイトやアプリがある。

ゲームをプレイしている動画を撮って投稿したり
歌っている動画を投稿したりと用途は様々である。
最近では再生数に応じて収入が入ってくる
というものまであるから驚きだ。
その為か、人気職業ランキングも上位に位置している。

僕、神藤 優里しんどう ゆうりも投稿系アプリを
使っている一人だ。
動画ではなく歌投稿アプリで、しかも実際に投稿した
ことはなく、聴く専門なのだが。

それはさておき。
その、歌投稿のなかでも有名なアプリが
SINglesシングレス】だ。
オリジナルの歌やカバー曲を録音投稿したり
リアルタイム動画を配信できるアプリだ。
動画といっても、ほとんど顔出しで歌っている人が多い。
『歌投稿』だから当たり前なのだが…
ファン制度もあり、ファンが一定数を越えると運営委員にその結果が通達される。
そしてこの運営委員から認められれば
SINglesを運営する会社【バルトアルフィ】の専属歌手になれると言うものらしい。

バルトアルフィの説明もしておこう。

バルトアルフィは、主にアイドルや歌手を
排出している会社で有名なアイドルや歌手はだいたいバルトアルフィ所属が多い。
SINglesも歌手やアイドルの卵を見つけるために開発されたアプリらしい。

そして、このアプリにはキングとクイーンという存在がいる。
投稿すれば観覧数が必ずミリオン達成というものだ。
実際はキングは不在であるが、クイーンは実在している。
僕もよく聞いているが、サラというアカウント名の人だ。

噂では、このアプリを運営している会社社長の娘ではないか
とまで言われている。
まぁ投稿する曲が全てミリオンを達成しているからそんな憶測も飛ぶのだろう。
僕、オタクでもないのにこんなに詳しいのか…

「あれ?今何時ですっけ?」

不意に時間が気になった。なぜかというと
実は今日は高校の入学式、8時30分までに登校しなければならないのだが……

「……8時10分……」

ちなみにここから学校までは自転車で30分ほどかかる。

「ち、遅刻じゃないですか!」

色々考えてたら遅刻しそうになっていた。
急いで学校に行く準備をしなければ!

ピーンポーン

バタバタと準備をしていたら来客を伝えるベルが鳴った。

「おーい優里、学校いくぞ~!」

ドアの前で大きな声で叫んでいるのは、近くに住んでいる幼馴染みだ。
名前は、来栖 健太くるす けんた
この人もSINglesを利用している1人だ。

歌を投稿することもあるが、リアルタイム配信を主にしている。
見た目もよく歌もうまいため、キング候補ではないかと
噂されているが、本人は『お前の歌唱力には負ける』などと冗談を言ってからかってくる。

「ゆーりー!遅刻するぞー」

やばい!早くしなきゃ!…というか

「なんで待ってるんですか!?健太まで遅刻しますよ!」

「ん?いやいや、まだ7時半だから大丈夫だろ」

「? なにいって…」

健太の言葉で時計を見直してみると、やはり8時半
この人、時計も読めないのでしょうか。

「あの健太?僕の家の時計は8時30分を指しているのですが…」

時計を指差して健太にそう告げると、

「スマホの時計を見てみろよ」

と、言われたので見てみると…7時30分とディスプレイに映った。
時計が壊れているだけだった。
その瞬間、顔が暑くなるの分かった。
そのまま、健太の方に目をやると呆れた様子で

「お前って時々抜けてるよな~」

と言われ余計に恥ずかしくなり顔を隠した。
その後も、茶化されながら準備をし、通学路を自転車で走っている。

「そういえば朝の通知見たか?」

急に健太が話題を振ってきた。

「SINglesですか?」

多分…というか絶対そうだろうと
分かっていながらも、とりあえず聞いてみた。

「それ以外になにがあんだよ」

「ですよね」

やはりSINglesのことだった。

「通知が来ていたのは見ましたが詳しくは見ていません。なにかあったんですか?」

通知が来ていたが時計事件があったので中身を見ていなかった。
そんな重要なランキングだったのかな?

「キングが現れたらしい」

「……え?」

信じられない言葉だった。
SINglesが始まって今だかつてキングが存在したことはなかった。
これが本当のことならなぜ今まで僕は気がつかなかったんだろう。
あんなにいろんな曲を聴いてきたのに!

「そ、それって誰なんですか?アカウント名は!?」

早く知りたかった。歌は好きでよく聞いている。
自分では、あまり歌わないが聴くのはものすごく好きなのだ。

「キングだろ?それはな…それは……俺だ」

「……はぁ?」

ニカッとして…いや、ニヤニヤしながら僕の方を向いていた。
この人まさか…

「嘘…吐きましたね…僕がまだ寝ぼけていると思って」

「おっ!分かったか?あはは~」

「健太さん…いくら僕が寝ぼけているといってもついて良い嘘と悪い嘘があるのはわかります…よね?」

「やべっ…いや…ごめん…だって、ボーッとしてるか面白くて…まじ許して…ご、ごめんなs」

「問答無用です。後悔してくださいね?」

「ギャーーーーー!!」


良い子の皆や悪い子の皆にも表現しずらい…
してはいけない物となっておりますので、少々お待ちください。




「ふぅ~スッキリしました!」

健太に天罰が下ってスッキリしているといつの間にか復活した健太が
ヨロヨロになって自転車を押してきた。

「お、お前…学校では猫被って根暗なくせに~」

「なにか…言いましたか?」

「いえ…な、何も言ってません!」

ビクビクしながら自転車にまたがる健太。
別にそんな怯えなくてもいいんですが…
自分でも分かってはいる。
しかし、猫を被っているわけではない。
気の知れた人であれば素が出せる。
しかし、学校に行くとなぜか周りが怖くなり喋れなくなる。
中学校の時も健太以外とは話したことはない。
だからこそ高校では少しは変わりたいと思っている。

「自分でも分かってはいるんです…根暗なことぐらい、変わらなければならないことぐらい…」

「ふ~ん、…ならさ!お前もSINglesに投稿してみない?」

「……えぇ!?なんでそういう結論になったんですか?」

「だってさお前もいろいろやってみたいんだろ?変わってみたいんだろ?だったらさ~」

「でも僕にはできる気がしません。あんな上手い人たちの中に入るなんて…」

「大丈夫だ!まぁとにかく、学校は入学式だけだからその後、俺のウチに集合な」

あれ?これってもしかして決定事項になってる?
嘘でしょ。やばいどうにかしなきゃ!

「いや…ちょっと、健太…あのs」

「おい!時間!早くしないとやばいぞ!」

あぁ~これは本当にまずい…どうなるんだろう。
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