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28話 サンビーク散策

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 服屋から出た俺達3人。
 今までの奴隷服ではなく、可愛い服装で俺の隣を歩くカエデとメイラン。

「ご主人様!次はどこ行く?お昼にはまだ早いよね?」
「そうだな、昼前にシェミィにご飯あげたいから近場で行ける所があればいいが……」

 周りを見渡すが大半が民家だ、他には宿や道具屋、先程の服屋系統であろう武器屋防具屋、食事処や朝市とは別の食材屋等の店が並んでいる。

「なら、ガルム様が言っていた朝市が行われる場所に行きましょうか、昼までお店を開けてる所もあったはずよ」
「お、朝市か。今日の内に下見しておくのもありだな!ついでだし、そこで材料を買って今日の晩御飯は俺が作ろう!」

 俺の作る飯と聞いてカエデの耳がピンとなる。

「ご主人様の手作り!前食べたけど美味しかったから楽しみ!」
「コウガ様がお料理をなさるとは、もしかして転生前の世界の食事が作れたりするのかしら?」
「頑張って再現してはみるけど、食材を見てみないと何とも言えないな……名前と物が前世の物と酷似してる食材が多いから、何とかなりそうな気はするけどな」

 前世の再現料理が作れたらいいが……一応一人暮らし中のご飯は自分で作ってたから、ある程度の物は作れるとは思う。
 お店を周りながら作れそうな物を模索するか。
 ここは農業と畜産業が盛んな所だ、王国では見掛けないような野菜や肉があるだろう、その中には前世の食材と似た物もあるはずだ。

「もし良かったら、私にコウガ様の前世のお料理を教えて貰えないかしら?」
「前世の料理を?それは構わないが、メイランは料理経験があるのか?」
「少しだけね、母から教えて貰った程度よ」
「わかった、俺が作る時はメイランに手伝ってもらうぞ」
「ありがとうコウガ様」

 話している内に朝市の会場に辿り着く、半分程店は開いていたので1店舗ずつ品揃えを確認していく。
 まず目に入ったのは肉屋だ、モウ肉やボア肉、ピグ肉やゲロッグ肉が並んでいる。
 ちなみにピグ肉は豚肉みたいな見た目で、ゲロッグ肉は形的にカエル?っぽい見た目だった、ゲロッグ肉の大きさが前世とは比べ物にならないくらいデカいが。
 更に言うと、モウ肉やボア肉の中にも種類があり、ブラックモウ肉やワイルドボア肉といったレア度違いの肉があった。

「ブラックモウ肉が食べたいな……」
「カエデったら、ここに着く前もそう言ってたわね」
「ブラックモウ肉はサンビークの特産品だからね。私王国には行ったことあるんだけど、村に近いサンビークには1度も来たこと無かったから食べてみたくて……」

 カエデがこちらをちらっと見た、これは買ってやらねば。

「良いぞ、買っておくか」
「いいの!?」
「あぁ、見た感じ良い肉っぽいしな、塊のまま焼いて頂くとしようか」
「やった!ありがとご主人様!」

 カエデが大喜びしている、これで喜んでくれるなら安いもんだ。
 そして各種肉をまとめて買っておく、時間経過無しのストレージに入れておけば腐る事が絶対にないからな!これで1~2週間くらいは肉の買い足しは要らないだろう。
 次に八百屋だ、今日の朝採れたての野菜が並んでいる。
 朝市の終わりかけな時間の為、あまり多くは残っていないみたいだ。

「ほとんど売れちゃったっぽいな、今日の分だけでも買っとくか、何を作るかだが……」

 残ってる物をみるとネギタマ、トメト、ピルマン、キャベジ等が残っていた。
 ネギタマは何だか牛丼を思い出される名前だが、玉ねぎによく似た物みたいだ、ピルマンはピーマンだな。
 ってかキャベジって……キ〇〇ジンっていう胃痛の薬あったよな?見た目キャベツなんだが名前……異世界だし仕方ないんだろうが気になってしまう。

 野菜以外にクックの卵も置いてある、俺の前世で近くの八百屋によくお世話になっていたが、卵をいつからか置かなくなったんだよな……八百屋さんに卵があるのが妙に懐かしく感じる。
 ネギタマとクックの卵とキャベジを買おう、パンがまだストレージに残ってるので、後はモウの乳を買ってハンバーグが出来そうだ!
 ソースも前回初めてサンドイッチ作った際に使ったソースがあるから、あれをネギタマと砂糖、醤油でアレンジしよう。

「よし決めた、前世料理のハンバーグって奴を作ろうか!」
「ハンバーグ!?聞いた事ないけどどんな料理なの??」
「モウの肉を細かくしたやつとクックの卵、パンを細かく崩した物とモウの乳を入れてこねてから焼くんだ」
「お肉は塊で食べる物だと思ってたけど、そういう料理もあるんだね」
「楽しみにしとけよ?前世で結構好きな人が多い人気食だぞ」
「うん!楽しみにしてる!」

 カエデがお肉を食べられると喜んでいる、前に思った通りしっかりしなきゃと背伸びしていたんだろう。
 まだ16歳、俺の感覚ではまだ高校生で子供だからな、これくらい元気で無邪気な方がいい。

 さて、買い物も順調に進んだ。
 後はモウの乳なんだが……

「モウの乳は店で買うよりも農場から直接買った方が更に新鮮なの、だから昼から畜産農場行って乳搾り体験してみない?そのついでに乳も買うのがいいかもしれないわ」

 メイランの提案で、昼からは乳搾り体験しに行く事に決まった。
 街から外に出るのだが、すぐに着く距離なので帰りが遅くなる事もないだろう。
 昼に近くなってきたので一度宿に戻りシェミィに食事をさせる、満腹になるとシェミィも満足したのかもう一眠りするようだ。
 俺達はサンビークでも人気という食事処へ行った、店名は満腹屋。
 店名で分かるように、1品がなかなかのボリューミーで沢山食べられると冒険者に人気だそうだ、畜産や農業で大量の食材が集まるが為に出来る事だろうな。

「この肉美味いな、ピグシュラコだったか?塩であっさりと食えていいな。キャベジとかピルマンと一緒に食うと尚良い、まるでバーベキューだ。」

 焼いたピグ肉を削ぎ落としながら食べる料理がピグシュラコだ。
 ケバブのような食べ方だったのだが、ピグでもアリだなと思う。

「バーベキューってのは良く分からないけれど、似たような感じなの?」
「違いはあるが似ているな、火を炊いた所に網をセットして、元々切ってある肉や野菜を網に乗せて焼くんだ。それとは別に肉を削いで食べる肉も前世にはあったぞ、確かシュラルコ……だったか?」
「なるほど、名前が似てるわね」

 確かに似ている、これも過去の転生した人の影響か、もしくはそもそもが前世とかなり酷似した世界なのかもしれないな。
 俺とメイランで話してる中、カエデは喋らず料理にがっついていた、時折美味しそうな顔をしながら堪能している姿も見られた。
 可愛い。

 俺達3人はボリューミーで美味しい料理に大満足し、腹いっぱいになったお腹を擦りながら畜産農場へ向かう事にした。
 多数ある農場の中から、乳搾り体験が出来るというレーヌ農場って所に行く事になっている。

「あー満腹だよ~」
「カエデ、喋らずずっと料理にがっついてたな」
「だって美味しかったんだから仕方ないよ!」
「ふふっ、そうね。確かに美味しかったわ」
「美味しかったのは確かにそうだな、さぁ門を出てレーヌ農場に行くぞ!」
「「はーい」」

 門より外に出て、柵で覆われている牧場らしき所の横道を通りながらレーヌ農場に向かって歩いていく。

「あれがモウか?」
「そうよ、今は放牧されてるっぽいわね。普段は畜舎にいるんだけど」

 牧場を眺めながら道なりに進んでいくと、看板にレーヌ農場と書かれた施設が見えてきた。

「お、見えてきたぞ」
「楽しみだね!早く行こ!」
「あっカエデ走ったら危ないぞー!」
「ふふ、見てて楽しいわねこの2人は」

 カエデを追いかけるように小走りになる俺とメイラン。
 乳搾りは前世でもやった事なかった為、密かに俺も楽しみにしている。
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