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70話 セシルの刀技
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控え室に向かうと、セシルが既に中で待機していた。
「来たか」
椅子に座ったままこちらを見るセシル、椅子よりはみれるもふもふな尻尾が目に入るが、今は試合直前……もふもふを楽しむのは帰ってからだ。
「セシル、案外すぐ再戦する事になったな」
「そうだな、私としては願ったり叶ったりだ。私の影楼を初見で防ぐ相手なんてそう居ない、どちらかが敗退する前に戦いたかったからな」
影楼は幻影のようにフッと姿を消して移動する技だ。
バトルロイヤルの時に、俺の前から姿を消して背後から攻撃を仕掛けてきた、普通なら何も分からずに斬られていてもおかしくない。
嫌な予感を感じて背後にアイスウォールを設置したのがたまたま功を奏したが、確実に防げていたかと言われたら、そうとは思えない。
「セシルとは中途半端で終わったからな、また戦えると分かって良かったよ。そしてセシルに勝てば、カエデとも戦える」
「カエデって、あの変なオーラに包まれた、めちゃくちゃ強い奴か!」
カエデの強さは、バトルロイヤルを見た人なら誰もが分かっている。
仲間であるメイランやソルト……ミツキ達ですら驚いた程だ。
「あぁ、カエデは俺の仲間なんだ。俺と真剣勝負がしたいって言ってな」
「そうだったのか、なるほど……私の影楼が破られたのにも納得だな」
仲間が強いからって俺が強いとは限らないのだが……カエデが俺と戦いたい、と言うことは俺も強い、そう結びついても仕方ない。
「そろそろ第2試合が始まるな」
「だな、よく見ておくか」
俺とセシルは、控え室にあるモニターより第2試合の様子を確認する。
ゴリスターが居るので勝ち上がるとは思えないが、だからと言って手を抜いてもいい訳じゃない。
もしかしたらゴリスター以上に強い人かもしれないからな。
第2試合が開始して15分が経過した。
第2試合は剣士と槍使いの試合なのだが、激しい攻防によってお互いボロボロになっており、いつ累積ダメージで弾き出されてもおかしくないのに、弾き出される様子がない。
「なぁ、あれだけボロボロになってるのに何で外に弾き出されないんだ?」
「バトルロイヤルの時とトーナメントの時のダメージ蓄積上限が違ってな、トーナメントの方が蓄積上限が高く設定されているから長く戦えるようになってるんだ」
「そうだったのか……」
バトルロイヤルでは背中を斬るだけで弾き出されていたが、どうやらトーナメントでは違うようだ。
恐らく一瞬でケリが着くのは面白くないのだろう、強い者同士が長く戦う事により、見どころたくさんで盛り上がる……ってとこか。
まぁ、さっきのゴリスターの試合は例外と言えるだろうな……一瞬で場外だもんな。
「お互いの体力が限界そうだ、次で勝負が決まるだろう」
セシルがモニターに映る状況を読み取り、そう判断した。
画面に映る2人は最後の力を振り絞って、今出来る最高のスキルを繰り出した。
剣と槍が交差して……ステージから弾き出されたのは剣士だった。
試合終了の声がかかった瞬間、歓声が巻き起こった。
ギリギリの戦いで制した槍使いと、惜しくも敗れた剣士の双方へ暖かい拍手が起きる。
「ふふ、私達もああやって拍手が送られるくらい良い試合をしようじゃないか」
「だな!よろしく頼む」
俺はセシルに向かって手を差し出した。
セシルはゆっくりと手を出して握手に応じてくれた。
「あぁ、よろしく頼むぞ」
俺達は2人並んでステージに出た。
ステージに出ると拍手で迎えられた、観客は先程の興奮から冷めきっていないようだ。
「さぁ!第3試合出場選手が2人並んでステージへ出てきました!先程の熱い戦いの熱が冷める前に、第3試合始めたいと思います!」
俺はセシルと向かい合う。
「コウガさん!頑張ってください!」
「コウガ様!しっかりやりなさい!」
「ご主人!頑張るっす!!」
みんなの応援が聞こえてくる。
カエデは次の試合なので控え室に居るはず、きっと控え室で俺の勝利を信じて待っている筈だ。
「モテモテだな」
「まぁな、良い仲間と巡り会えたと思うよ」
「ふっ、羨ましいな。私もそういう仲間が欲しいものだ……」
「……?」
何かあったのだろうか?仲間が欲しいって発言に何かが引っ掛かった。
「さぁ!構えてください!」
司会より合図がされる、セシルの発言に何か引っ掛かりつつも、俺はナイフを構える。
セシルも腰を低くし、抜刀の構えをして試合開始を待つ。
「第3試合始めます!レディーーーーッ、GO!!」
武闘会、個人戦トーナメント第3試合開始だ。
「抜刀、飛翔閃!」
先手必勝、セシルは抜刀からの斬撃を飛ばしてきた、バトルロイヤルで見たあれだ。
そして鮮やかな流れで納刀まで完了する。
「アイスウォール!」
俺はアイスウォールを右腕に展開し斬撃を防ぐが、氷の厚さの2/3程傷が入る。
「ぐっ……」
「まだまだ行くぞ!」
セシルは抜刀の構えのまま俺の元へ駆けてくる。
「身体強化!アクセルブースト!」
俺は身体強化からの加速スキルで同じくセシルの元へ駆け出す。
2人は中央に向かっていき、刃が交わる。
「抜刀、一の太刀!」
セシルは一の太刀で俺の首へ一閃、俺はそれをナイフで受け流した。
一の太刀は1度生で見ている、抜刀からの剣筋なら対応出来る。
一の太刀を受け流した後、2人の身体はクロスして位置が逆になる。
2人は振り返り、再度見合う。
「一の太刀を防ぐか!」
「1度見たからな、首を狙う事は分かってた!」
「なるほど、なかなかな才能だ!1度見ただけで完全に防がれるとは思わなかったぞ!」
「そりゃどうも!これでも喰らえ!」
俺は風の魔力をナイフに纏い、魔力を増幅させる。
「す、凄い魔力だ……!」
セシルが来る攻撃に備えて身構える。
「風刃!」
俺は風刃を放つ、1つだけではなく……連続で。
「こんなもの、全て受け流してやる!抜刀、流水!!」
セシルは刀を水魔法で濡らし、俺の風刃を全て滑らすように受け流す。
「遠距離攻撃も持っていたか!ならば、これはどうだ!?」
セシルは再び俺に向かって駆け出す。
「抜刀、一の太刀!」
「それはもう見切ってるぞ!」
前と同じく、一の太刀を受け流すが……
「だろうな、だが!これでは終わらん!」
振り抜かれた一の太刀から、更に刀が踊る。
「二の太刀!」
更なる2連閃が迫るも、俺はステップで躱していく。
「まだまだ!三の太刀!」
更に3連閃、計6連斬を繰り出す。
全て躱しきることが出来ず、最後の一閃はアイスウォールでのガードも強要された。
そのガードを破らんとす、更なる連撃を繰り出す。
「終焉、四の太刀!」
四の太刀が4連、計10連撃をコウガは全て受け切った。
しかし、コウガは四の太刀を受けた時に思った。
『一の太刀や三の太刀の最後の一閃より威力が低い……?』
そう思いつつ、アイスウォールの盾とセシルの刀が拮抗し力比べとなっていた。
「なんて流れるような連撃だ……」
「これも当たらないか……!」
セシルは1度バックステップで距離を取る。
俺はその隙を逃さなかった。
「凍えろ!ブリザード!」
ブリザードがセシルを襲う、ブリザードにより移動速度が低下する。
「あぁぁっ!」
セシルは防御出来ず、ダメージを喰らって速度低下デバフを喰らってしまう。
「今だ!アクセルブースト!」
俺はチャンスと見てセシルへ駆け出す、もう少しでセシルに辿り着く所で。
「くっ、魔力消費が激しいが……仕方ない!狐火!装填!」
「!?」
セシルは火を操り、火を納刀された刀に宿す。
火により身体が温められ、ブリザードの速度低下が解除される。
「抜刀、華時雨!」
セシルは抜刀からの鮮やかな連斬を繰り出す。
火が舞うが如く、華麗で、美しく、踊るような連斬。
俺はアイスウォールで受けられないと判断、風魔力をナイフに込めて受け続けるが、9連斬目でナイフが1つ弾かれる。
後に知るのだが、華時雨は10連斬……後わずかだったのだが、耐えきれなかった。
「ぐっ!?ナイフが!」
「散れ!!」
「がぁっ!」
俺は腹に最後の一閃を喰らい、少し吹き飛んで地面に転がるように倒れる。
防御力の低い俺は、一撃を貰うだけでダメージがでかい。
まだステージより弾き出されていないって事は、まだ試合は続いている筈だ……
お腹からは血が流れるが、気を失う程ではなかった。
「ご主人!」
「コウガ様!!」
応援席から2人の声が聞こえた、きっとモニターでカエデも見ている、そして俺の勝利を願ってる筈だ。
ここで負けられない……!
「……ヒール」
俺は人前で殆ど見せた事がない、ヒールを使用した。
俺の傷が癒えていく。
「なっ!?ひ、ヒール!?」
セシルはかなり驚いた顔をしたが、急がなければマズいと思ったのか俺に向かって駆け出す。
狼人族がヒールを使うのは珍しいのだろう、ヒールのような回復魔法は魔法使いや聖職者、ヒーラーが使う魔法だ。
俺の正体は魔法使いだ、だから使えても違和感ないのだが、今の姿では驚かれて当たり前だろう。
しかし、俺は負ける訳にはいかないんだ……使えるものは使ってやるよ。
「グレイヴ!」
俺に向かって駆けてくるセシルの少し前くらいに調整してグレイヴを発動、地面が光りだした事に気付いたセシルは全力で横へ回避。
「アイスショット!」
それを追撃せんとアイスショットによる氷の礫を乱射する。
「防ぎ斬る!抜刀!」
この時、コウガは思った。
セシルが、毎回抜刀と納刀を繰り返す理由だ。
もしかしたら、抜刀からでないといけない理由があるのでは?と思ったのだ。
何故なら、一の太刀から四の太刀を受けて少し思ったのだ、四の太刀の威力が弱かった事を。
俺の場合ではだが、魔法にしろ風刃にしろスキルを連続発動した場合でも、当たる場所によって変わる場合もあるが、大体は初撃から最終まで全て均一に近いダメージが入る。
しかし、彼女の場合は抜刀してから納刀までの間にスキルを連打した場合、威力が落ちていくのだ。
ならば、抜刀からでないと火力が出ないのでは?と結論に至る。
ならば、そこを突けば勝ち筋がある……そう思った。
「アイスショット!アイスショット!アイスショットッ!」
俺は更にセシルへアイスショットを連発する。
「くっ!」
どんどんセシルの顔が険しくなる、刀を振り続けないと魔法を防げない状況により、納刀が出来ていない。
アイスショットを弾く刀のキレが無くなっていくのが良く分かった、そして……徐々にアイスショットを捌けなくなり命中しだす。
「くっ……うっ!」
それでも諦めずに刀を振るうセシル、俺も魔力が限界に近くなってくる……決めるなら今しかない!
「今だ!パラライズサイズ!」
「!?」
アイスショットの最後にパラライズサイズを発動。
雷のリングがセシルの腰周りに発生する、セシルはアイスショットをかろうじて捌き切ったが回避する余裕がなかった、なのでパラライズサイズの雷を斬ろうとするが限界まで刀を振り続けていたゆえに納刀が出来ず火力が最低まで落ちていた……
なので、拘束する為の頑丈な雷を斬る事が出来ず、拘束されて尻餅をついてしまう。
「くっ、しまった……」
俺はアクセルブーストを発動し、セシルに詰め寄って首筋にナイフを当てる。
「終わり、だな」
「……そうだな、私の……負けだ」
セシルはパラライズサイズに捕まっているので手を挙げることが出来ないが、肘から手まではまだ動かせるので両手を少し上に上げて降参のポーズをする。
「セシル選手が降参しました!よって勝者コウガ選手!!」
応援席から先程よりも大きな歓声が起きた、そして今まで聞いた事のないくらいの拍手で2人の健闘を称えた。
俺はパラライズサイズを解き、セシルに手を伸ばす。
「ありがとうセシル、良い試合だったよ」
「……ありがとう、悔しいが私の負けだ。良い試合だったよ」
セシルは俺の手を取って立ち上がり、握手を交わした。
その瞬間、またしても大歓声が巻き起こったのだった。
「来たか」
椅子に座ったままこちらを見るセシル、椅子よりはみれるもふもふな尻尾が目に入るが、今は試合直前……もふもふを楽しむのは帰ってからだ。
「セシル、案外すぐ再戦する事になったな」
「そうだな、私としては願ったり叶ったりだ。私の影楼を初見で防ぐ相手なんてそう居ない、どちらかが敗退する前に戦いたかったからな」
影楼は幻影のようにフッと姿を消して移動する技だ。
バトルロイヤルの時に、俺の前から姿を消して背後から攻撃を仕掛けてきた、普通なら何も分からずに斬られていてもおかしくない。
嫌な予感を感じて背後にアイスウォールを設置したのがたまたま功を奏したが、確実に防げていたかと言われたら、そうとは思えない。
「セシルとは中途半端で終わったからな、また戦えると分かって良かったよ。そしてセシルに勝てば、カエデとも戦える」
「カエデって、あの変なオーラに包まれた、めちゃくちゃ強い奴か!」
カエデの強さは、バトルロイヤルを見た人なら誰もが分かっている。
仲間であるメイランやソルト……ミツキ達ですら驚いた程だ。
「あぁ、カエデは俺の仲間なんだ。俺と真剣勝負がしたいって言ってな」
「そうだったのか、なるほど……私の影楼が破られたのにも納得だな」
仲間が強いからって俺が強いとは限らないのだが……カエデが俺と戦いたい、と言うことは俺も強い、そう結びついても仕方ない。
「そろそろ第2試合が始まるな」
「だな、よく見ておくか」
俺とセシルは、控え室にあるモニターより第2試合の様子を確認する。
ゴリスターが居るので勝ち上がるとは思えないが、だからと言って手を抜いてもいい訳じゃない。
もしかしたらゴリスター以上に強い人かもしれないからな。
第2試合が開始して15分が経過した。
第2試合は剣士と槍使いの試合なのだが、激しい攻防によってお互いボロボロになっており、いつ累積ダメージで弾き出されてもおかしくないのに、弾き出される様子がない。
「なぁ、あれだけボロボロになってるのに何で外に弾き出されないんだ?」
「バトルロイヤルの時とトーナメントの時のダメージ蓄積上限が違ってな、トーナメントの方が蓄積上限が高く設定されているから長く戦えるようになってるんだ」
「そうだったのか……」
バトルロイヤルでは背中を斬るだけで弾き出されていたが、どうやらトーナメントでは違うようだ。
恐らく一瞬でケリが着くのは面白くないのだろう、強い者同士が長く戦う事により、見どころたくさんで盛り上がる……ってとこか。
まぁ、さっきのゴリスターの試合は例外と言えるだろうな……一瞬で場外だもんな。
「お互いの体力が限界そうだ、次で勝負が決まるだろう」
セシルがモニターに映る状況を読み取り、そう判断した。
画面に映る2人は最後の力を振り絞って、今出来る最高のスキルを繰り出した。
剣と槍が交差して……ステージから弾き出されたのは剣士だった。
試合終了の声がかかった瞬間、歓声が巻き起こった。
ギリギリの戦いで制した槍使いと、惜しくも敗れた剣士の双方へ暖かい拍手が起きる。
「ふふ、私達もああやって拍手が送られるくらい良い試合をしようじゃないか」
「だな!よろしく頼む」
俺はセシルに向かって手を差し出した。
セシルはゆっくりと手を出して握手に応じてくれた。
「あぁ、よろしく頼むぞ」
俺達は2人並んでステージに出た。
ステージに出ると拍手で迎えられた、観客は先程の興奮から冷めきっていないようだ。
「さぁ!第3試合出場選手が2人並んでステージへ出てきました!先程の熱い戦いの熱が冷める前に、第3試合始めたいと思います!」
俺はセシルと向かい合う。
「コウガさん!頑張ってください!」
「コウガ様!しっかりやりなさい!」
「ご主人!頑張るっす!!」
みんなの応援が聞こえてくる。
カエデは次の試合なので控え室に居るはず、きっと控え室で俺の勝利を信じて待っている筈だ。
「モテモテだな」
「まぁな、良い仲間と巡り会えたと思うよ」
「ふっ、羨ましいな。私もそういう仲間が欲しいものだ……」
「……?」
何かあったのだろうか?仲間が欲しいって発言に何かが引っ掛かった。
「さぁ!構えてください!」
司会より合図がされる、セシルの発言に何か引っ掛かりつつも、俺はナイフを構える。
セシルも腰を低くし、抜刀の構えをして試合開始を待つ。
「第3試合始めます!レディーーーーッ、GO!!」
武闘会、個人戦トーナメント第3試合開始だ。
「抜刀、飛翔閃!」
先手必勝、セシルは抜刀からの斬撃を飛ばしてきた、バトルロイヤルで見たあれだ。
そして鮮やかな流れで納刀まで完了する。
「アイスウォール!」
俺はアイスウォールを右腕に展開し斬撃を防ぐが、氷の厚さの2/3程傷が入る。
「ぐっ……」
「まだまだ行くぞ!」
セシルは抜刀の構えのまま俺の元へ駆けてくる。
「身体強化!アクセルブースト!」
俺は身体強化からの加速スキルで同じくセシルの元へ駆け出す。
2人は中央に向かっていき、刃が交わる。
「抜刀、一の太刀!」
セシルは一の太刀で俺の首へ一閃、俺はそれをナイフで受け流した。
一の太刀は1度生で見ている、抜刀からの剣筋なら対応出来る。
一の太刀を受け流した後、2人の身体はクロスして位置が逆になる。
2人は振り返り、再度見合う。
「一の太刀を防ぐか!」
「1度見たからな、首を狙う事は分かってた!」
「なるほど、なかなかな才能だ!1度見ただけで完全に防がれるとは思わなかったぞ!」
「そりゃどうも!これでも喰らえ!」
俺は風の魔力をナイフに纏い、魔力を増幅させる。
「す、凄い魔力だ……!」
セシルが来る攻撃に備えて身構える。
「風刃!」
俺は風刃を放つ、1つだけではなく……連続で。
「こんなもの、全て受け流してやる!抜刀、流水!!」
セシルは刀を水魔法で濡らし、俺の風刃を全て滑らすように受け流す。
「遠距離攻撃も持っていたか!ならば、これはどうだ!?」
セシルは再び俺に向かって駆け出す。
「抜刀、一の太刀!」
「それはもう見切ってるぞ!」
前と同じく、一の太刀を受け流すが……
「だろうな、だが!これでは終わらん!」
振り抜かれた一の太刀から、更に刀が踊る。
「二の太刀!」
更なる2連閃が迫るも、俺はステップで躱していく。
「まだまだ!三の太刀!」
更に3連閃、計6連斬を繰り出す。
全て躱しきることが出来ず、最後の一閃はアイスウォールでのガードも強要された。
そのガードを破らんとす、更なる連撃を繰り出す。
「終焉、四の太刀!」
四の太刀が4連、計10連撃をコウガは全て受け切った。
しかし、コウガは四の太刀を受けた時に思った。
『一の太刀や三の太刀の最後の一閃より威力が低い……?』
そう思いつつ、アイスウォールの盾とセシルの刀が拮抗し力比べとなっていた。
「なんて流れるような連撃だ……」
「これも当たらないか……!」
セシルは1度バックステップで距離を取る。
俺はその隙を逃さなかった。
「凍えろ!ブリザード!」
ブリザードがセシルを襲う、ブリザードにより移動速度が低下する。
「あぁぁっ!」
セシルは防御出来ず、ダメージを喰らって速度低下デバフを喰らってしまう。
「今だ!アクセルブースト!」
俺はチャンスと見てセシルへ駆け出す、もう少しでセシルに辿り着く所で。
「くっ、魔力消費が激しいが……仕方ない!狐火!装填!」
「!?」
セシルは火を操り、火を納刀された刀に宿す。
火により身体が温められ、ブリザードの速度低下が解除される。
「抜刀、華時雨!」
セシルは抜刀からの鮮やかな連斬を繰り出す。
火が舞うが如く、華麗で、美しく、踊るような連斬。
俺はアイスウォールで受けられないと判断、風魔力をナイフに込めて受け続けるが、9連斬目でナイフが1つ弾かれる。
後に知るのだが、華時雨は10連斬……後わずかだったのだが、耐えきれなかった。
「ぐっ!?ナイフが!」
「散れ!!」
「がぁっ!」
俺は腹に最後の一閃を喰らい、少し吹き飛んで地面に転がるように倒れる。
防御力の低い俺は、一撃を貰うだけでダメージがでかい。
まだステージより弾き出されていないって事は、まだ試合は続いている筈だ……
お腹からは血が流れるが、気を失う程ではなかった。
「ご主人!」
「コウガ様!!」
応援席から2人の声が聞こえた、きっとモニターでカエデも見ている、そして俺の勝利を願ってる筈だ。
ここで負けられない……!
「……ヒール」
俺は人前で殆ど見せた事がない、ヒールを使用した。
俺の傷が癒えていく。
「なっ!?ひ、ヒール!?」
セシルはかなり驚いた顔をしたが、急がなければマズいと思ったのか俺に向かって駆け出す。
狼人族がヒールを使うのは珍しいのだろう、ヒールのような回復魔法は魔法使いや聖職者、ヒーラーが使う魔法だ。
俺の正体は魔法使いだ、だから使えても違和感ないのだが、今の姿では驚かれて当たり前だろう。
しかし、俺は負ける訳にはいかないんだ……使えるものは使ってやるよ。
「グレイヴ!」
俺に向かって駆けてくるセシルの少し前くらいに調整してグレイヴを発動、地面が光りだした事に気付いたセシルは全力で横へ回避。
「アイスショット!」
それを追撃せんとアイスショットによる氷の礫を乱射する。
「防ぎ斬る!抜刀!」
この時、コウガは思った。
セシルが、毎回抜刀と納刀を繰り返す理由だ。
もしかしたら、抜刀からでないといけない理由があるのでは?と思ったのだ。
何故なら、一の太刀から四の太刀を受けて少し思ったのだ、四の太刀の威力が弱かった事を。
俺の場合ではだが、魔法にしろ風刃にしろスキルを連続発動した場合でも、当たる場所によって変わる場合もあるが、大体は初撃から最終まで全て均一に近いダメージが入る。
しかし、彼女の場合は抜刀してから納刀までの間にスキルを連打した場合、威力が落ちていくのだ。
ならば、抜刀からでないと火力が出ないのでは?と結論に至る。
ならば、そこを突けば勝ち筋がある……そう思った。
「アイスショット!アイスショット!アイスショットッ!」
俺は更にセシルへアイスショットを連発する。
「くっ!」
どんどんセシルの顔が険しくなる、刀を振り続けないと魔法を防げない状況により、納刀が出来ていない。
アイスショットを弾く刀のキレが無くなっていくのが良く分かった、そして……徐々にアイスショットを捌けなくなり命中しだす。
「くっ……うっ!」
それでも諦めずに刀を振るうセシル、俺も魔力が限界に近くなってくる……決めるなら今しかない!
「今だ!パラライズサイズ!」
「!?」
アイスショットの最後にパラライズサイズを発動。
雷のリングがセシルの腰周りに発生する、セシルはアイスショットをかろうじて捌き切ったが回避する余裕がなかった、なのでパラライズサイズの雷を斬ろうとするが限界まで刀を振り続けていたゆえに納刀が出来ず火力が最低まで落ちていた……
なので、拘束する為の頑丈な雷を斬る事が出来ず、拘束されて尻餅をついてしまう。
「くっ、しまった……」
俺はアクセルブーストを発動し、セシルに詰め寄って首筋にナイフを当てる。
「終わり、だな」
「……そうだな、私の……負けだ」
セシルはパラライズサイズに捕まっているので手を挙げることが出来ないが、肘から手まではまだ動かせるので両手を少し上に上げて降参のポーズをする。
「セシル選手が降参しました!よって勝者コウガ選手!!」
応援席から先程よりも大きな歓声が起きた、そして今まで聞いた事のないくらいの拍手で2人の健闘を称えた。
俺はパラライズサイズを解き、セシルに手を伸ばす。
「ありがとうセシル、良い試合だったよ」
「……ありがとう、悔しいが私の負けだ。良い試合だったよ」
セシルは俺の手を取って立ち上がり、握手を交わした。
その瞬間、またしても大歓声が巻き起こったのだった。
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