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俺はそう言いながら、樹里にスマホを見せる。




樹里は俺のスマホを黙って見ながら、目に涙を溜めた・・・。
これは・・・小学3年生の頃から会う度によくしていた。




いつもは、あまり気にしないようにしていた・・・。
気にしたら樹里のNGの基準になると分かっていたから・・・




でも、今日の俺は・・・




どうかしている・・・。




心臓に、何か問題があるかもしれない・・・
それくらい、苦しかった・・・。




その時、樹里がゆっくりと・・・




口を開いた。




こんなに、樹里の口を見たのも・・・初めてだったかもしれない・・・。




そんなことを思った時・・・








「樹里・・・それ、持ってないの。」




それには、驚いた。
お金のない家庭なのは知っていたが・・・もう大学3年生だし、樹里も・・・バイトも出来るし・・・。




それに気付き、俺は心の中で後悔をした。
母親からは、毎日のように書道教室に来ていると聞いていた。
それに、樹里は・・・一般的なバイトは難しい子だった・・・。
いつもならそんなことすぐに気付くのに、今日の俺はミスばかりしていた。




分かりやすいという俺の顔を見ながら、目に涙を溜めた樹里が笑った・・・。





「持ってないから、樹里はエロ親父と連絡出来ない・・・。
だから、高校3年の夏に会ってから・・・毎日書道教室の最後の1枚は、エロ親父に伝えたいことを届けてた。」





そう言って瞬きをした瞬間、涙が1筋・・・頬を流れた。





樹里が涙を流したのを、俺は初めて見た・・・。





「ちゃんと・・・伝わってた?
エロ親父から返事がないから、少しだけ心配してたから。」



 

樹里はそう言って・・・泣きながら、笑った。





でも、その笑顔は・・・笑顔になっていなかった。






樹里こそ、分かりやすい顔をしている・・・。






「今回も、結構可愛い女の子じゃん。
だから・・・もう、エロ親父に渡さないようにするから。
これ以上すると、迷惑掛けちゃいそうだし。」
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