【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

文字の大きさ
301 / 693
20

20-3

しおりを挟む
青さんが好きな顔で可愛く笑いながら聞いてきた野々ちゃんに、私は口を開いた。



どうしても言わずにはいられなくて。



青さんとの夫婦生活を思い出しながら言った。



「私は全然可哀想じゃない。
加藤の“家“に生まれたから私は好きな男の人と幸せな時間を過ごすことが出来た。
本当ならそんなことが出来なかったはずなのに、私は加藤望だからそれが出来た。
凄く凄く幸せだった。
私はちゃんと幸せだった・・・、本当に、私は、私だけは本当に幸せだった。
だからバレンタインの差し入れを渡せなかったくらい全然可哀想じゃない。」



「ああ、望さんは一平さんのことが男の人として好きらしいですからね!
やっぱり、好きな人と一緒に暮らせるとか凄く幸せですよね、分かります!」



私には余計なことを言わないように言ってきた青さんは、私のことはめちゃくちゃ野々ちゃんに言っているらしい。



「望さんは一平さんのことが好きだから、青さんと一緒に暮らしていても青さんのことが異性として好きとかそういうのはなかったんですよね?
青さんからこの前すぐに聞きました!」



”どうしよう、苦しい・・・。“



“どうしよう、泣きそう・・・。“



「私と再会した後、青さんがすぐに増田清掃に行ったんです。
望さんのことで望さんのお兄さんと話をしたそうですよ。
”俺は望と絶対に結婚しない“と怒鳴り散らしたと聞きました。
仕事とはいえ、彼氏でも何でもない人と一緒に暮らすなんて望さんも大変でしたね。」



この口がもうこれ以上開かないように唇を噛み締める。



青さんとの幸せだった毎日を思い出しながら、その思い出を私だけは忘れてしまわないように必死に思い出し続ける。



青さんにとってはもう、全然幸せな1ヶ月ではなくなってしまったけれど、私だけは絶対に忘れないように。



呆けたお婆さんになった時、青さんとの幸せ
な夢の中にいられるように、必死に思い出し続ける。



青さんと野々ちゃんが2人で並ぶ姿を1ミリも思い浮かべないように。



「じゃあ、私達はこれからデートに行ってきます♪
この前は本当にありがとうございました。
望さんのお陰で私達付き合うことになりました!」



野々ちゃんが可愛く手を振りながら、青さんがいるオフィスビルへ守君と入っていった。



私の手には、渡すことが出来たかった甘々なチョコケーキが。



青さんとの約束のチョコケーキを持ち続けながら青さんとの結婚生活を思い出し続けたけれど・・・



青さんと私の約1ヶ月間は、噛み締めた唇から滲み出た血の味しかしなかった・・・。



「どうしよう・・・、野々ちゃんのこと嫌いになりそう・・・。」



見上げた空は今日も灰色で。



やけに灰色で。



雪が降りそうな空だった。



「私の青(あお)は何処に行っちゃったんだろう・・・。」



”青さん、帰って来てよ・・・。”



そんな望みを抱いてしまう私は、やっぱり“大バカなダメ秘書”だった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...