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16話 口説き文句のダメージがすごい
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「……」
「オレンさん、顔、真っ赤」
「っ!」
手で口元を覆っても顔の上半分は見えてる! まだ真っ赤!
「す、すみませ、ん! ちょ、っと、からかおうなって思って……出来心ですすみません!!」
「いや……」
真面目でお堅いオレンに恋愛絡みの冗談はだめだった!
フォロー! いえ、誤魔化さないと!
折角の好意で筋肉見れる、ちがう、絵を描かせてもらえるんだから!
セクハラでクビになる前にどうにかするのよ、私! どうする? ひとまず謝り通して言い訳しよう!
「……その、この際だ。私はミナを」
「すみません本当すみません! 違うんです! 絵を描ける喜びでテンションハイといいますか、だんちょ違う、オレンさんと親睦を深める為に冗談を交えて会話を盛り上げようとしただけなんです! すみません、他意はないんです! 本当です!」
「……」
顔の赤みが引いてきりっとした顔に戻った。
まさか本当にこの場で解雇とかオチないよね?! 大丈夫だよね?!
「その……怒ってないですよね?」
「怒ってはいない」
怒って、は、とは……心配になる。
無言の視線をオレンに送ると察してくれた。
「……大丈夫だ。ミナに悪しき感情は抱いていない。逆だ」
「よかった! そしたらそうですね! 早速絵を描きましょう!」
「……ああ」
そしてついにオレンがシャツを脱いだ。
ついぞ見た素晴らしい筋肉が顕になる。
「ふわあああ」
「私はここに座っていればいいか?」
「はいいいい! あ、今日は上腕二頭筋を描きたいので少し横を向いて……そう、そうです!」
たまらない。バランスのよい盛り上がり、ステータスで分かる見えない部分の筋肉レベルまで完璧だ。
「はあああ最高ですううう!」
「そんなに?」
「なにも分かっていませんね! この美しさに到達するにはかなりの鍛練が必要です! しなやかさに力強さ、均整のとれた流れの良い筋肉なんてそう生まれません!」
「……ふっ」
オレンが小さく笑うのを見て我に返った。
私ってばまたしても暴走してたわ。
「……すみません」
「それがミナの素なのか?」
「ええ、そうですね」
上質な筋肉を目の前にした時に限る。
「普段は全くその姿を見ないな」
「いえ、出さない方がいいですし、気持ち悪いでしょうし今後気を付けます」
「いや、これからは素を出せばいいじゃないか」
「え?」
「自分を抑える必要はない。素の方が魅力的だ」
ああああ口説き文句のダメージがすごい!
絵のことも筋肉好きなのも、今まで自分を抑えて隠してきた。
それをあっさりオレンは取っ払ってくれる。
「……き、気持ち悪くないです?」
「気にならない」
「う……」
「少しずつでいい。素のミナを見せてくれ」
この時間だけでもかまわないからと穏やかに笑った。
本当優しい人だ。騎士団員や王城内でも多くの人に好かれる理由が分かる。
「やってみます」
「ああ」
だってほら、頑なに抑えてきた私がこの瞬間あっさりオレンが言うなら抑えなくていいって思っちゃうんだもの。俺の力ってすごい。人を変える力があるんだわ。
「あ、じゃ、じゃあ、描きますね!」
照れを誤魔化すように描き始める。オレンもそれ以上なにも言わず黙ってモデルをしてくれた。
にしても本当たまらないわ、この筋肉!
ヨダレはさすがに我慢しないと。
* * *
「できました!」
「ふむ。見せてくれるか?」
「え、あの……」
にこりと笑うオレンにおずおずスケッチブックを差し出す。
「……ふむ?」
「あの、やっぱり久しぶりで崩れてたり」
「いや、うまい。専門家でないが、ミナの描く絵は素晴らしい」
「ありがとうございます!」
「気になることが一つあるんだが」
「はい」
「首から上は描いてくれないのか?」
絵には肩の三角筋から上腕二頭筋を通り前腕筋肉群しか描かれてなかった。
「……あ」
筋肉があまりにも素晴らしくて、なんて言い訳は通らない。
次回の約束だと再び謝り通した。
「オレンさん、顔、真っ赤」
「っ!」
手で口元を覆っても顔の上半分は見えてる! まだ真っ赤!
「す、すみませ、ん! ちょ、っと、からかおうなって思って……出来心ですすみません!!」
「いや……」
真面目でお堅いオレンに恋愛絡みの冗談はだめだった!
フォロー! いえ、誤魔化さないと!
折角の好意で筋肉見れる、ちがう、絵を描かせてもらえるんだから!
セクハラでクビになる前にどうにかするのよ、私! どうする? ひとまず謝り通して言い訳しよう!
「……その、この際だ。私はミナを」
「すみません本当すみません! 違うんです! 絵を描ける喜びでテンションハイといいますか、だんちょ違う、オレンさんと親睦を深める為に冗談を交えて会話を盛り上げようとしただけなんです! すみません、他意はないんです! 本当です!」
「……」
顔の赤みが引いてきりっとした顔に戻った。
まさか本当にこの場で解雇とかオチないよね?! 大丈夫だよね?!
「その……怒ってないですよね?」
「怒ってはいない」
怒って、は、とは……心配になる。
無言の視線をオレンに送ると察してくれた。
「……大丈夫だ。ミナに悪しき感情は抱いていない。逆だ」
「よかった! そしたらそうですね! 早速絵を描きましょう!」
「……ああ」
そしてついにオレンがシャツを脱いだ。
ついぞ見た素晴らしい筋肉が顕になる。
「ふわあああ」
「私はここに座っていればいいか?」
「はいいいい! あ、今日は上腕二頭筋を描きたいので少し横を向いて……そう、そうです!」
たまらない。バランスのよい盛り上がり、ステータスで分かる見えない部分の筋肉レベルまで完璧だ。
「はあああ最高ですううう!」
「そんなに?」
「なにも分かっていませんね! この美しさに到達するにはかなりの鍛練が必要です! しなやかさに力強さ、均整のとれた流れの良い筋肉なんてそう生まれません!」
「……ふっ」
オレンが小さく笑うのを見て我に返った。
私ってばまたしても暴走してたわ。
「……すみません」
「それがミナの素なのか?」
「ええ、そうですね」
上質な筋肉を目の前にした時に限る。
「普段は全くその姿を見ないな」
「いえ、出さない方がいいですし、気持ち悪いでしょうし今後気を付けます」
「いや、これからは素を出せばいいじゃないか」
「え?」
「自分を抑える必要はない。素の方が魅力的だ」
ああああ口説き文句のダメージがすごい!
絵のことも筋肉好きなのも、今まで自分を抑えて隠してきた。
それをあっさりオレンは取っ払ってくれる。
「……き、気持ち悪くないです?」
「気にならない」
「う……」
「少しずつでいい。素のミナを見せてくれ」
この時間だけでもかまわないからと穏やかに笑った。
本当優しい人だ。騎士団員や王城内でも多くの人に好かれる理由が分かる。
「やってみます」
「ああ」
だってほら、頑なに抑えてきた私がこの瞬間あっさりオレンが言うなら抑えなくていいって思っちゃうんだもの。俺の力ってすごい。人を変える力があるんだわ。
「あ、じゃ、じゃあ、描きますね!」
照れを誤魔化すように描き始める。オレンもそれ以上なにも言わず黙ってモデルをしてくれた。
にしても本当たまらないわ、この筋肉!
ヨダレはさすがに我慢しないと。
* * *
「できました!」
「ふむ。見せてくれるか?」
「え、あの……」
にこりと笑うオレンにおずおずスケッチブックを差し出す。
「……ふむ?」
「あの、やっぱり久しぶりで崩れてたり」
「いや、うまい。専門家でないが、ミナの描く絵は素晴らしい」
「ありがとうございます!」
「気になることが一つあるんだが」
「はい」
「首から上は描いてくれないのか?」
絵には肩の三角筋から上腕二頭筋を通り前腕筋肉群しか描かれてなかった。
「……あ」
筋肉があまりにも素晴らしくて、なんて言い訳は通らない。
次回の約束だと再び謝り通した。
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