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15話 顔、真っ赤
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「空き部屋、あったんですね」
「この手の部屋ならそこそこある。物置になっていることが多いが」
確かに物置になっていた形跡があった。多少物が積まれているのは仕方ない。
「陽の光も程よく入ってきてるし広さも充分です」
「そうか」
よかったと微笑むオレン。
オレンは買い物デートから少し肩の力が抜けたように感じる。
なんて、私都合よく考えてるわね。こうして心の中だけでも名前で呼んでるあたり、私の頭の中はご都合主義だ。
「私、考えたんですけど」
「ああ」
「騎士一人一人の筋肉のプロフィールを作ればいいかなって思ったんです」
「というと?」
日々の鍛練・訓練で役立てないか提案してみた。さすがにこの眼のことは言えないけど、個々の能力を把握すれば適材適所の配置も出来るし効率のいい訓練もできると思う。
当然、筋肉は個人の尊厳なのでプライバシーに配慮した上で鍛錬に活かしたい。
「確かに有効な手段だ」
「なら」
「だがやめておこう」
肩透かし。オレンは穏やかに続けた。
「ミナの服を破く力はれべるが上がるのだろう?」
「はい」
名前呼びにどきりとしたのは内緒だ。
今は絵描きの時間、つまりプライベート……だからってこと?
絵描き用の空き部屋に二人きり、オレンの服装もラフだし、私も汚れるから制服はやめてエプロンまでしている。
「騎士全員の筋肉を見て服が破れる力が強くなっても困る」
「確かに」
「加えて、その能力が知られすぎた時、悪用しようと考えた者がミナ自身を狙う可能性がでてくる」
薬を産み出した大元や、その他利権絡みにはまず狙われる。戦争にさえ利用できるとも言う。
そしたらますますバレないようにしないといけない。
「制御できるようになってから検討しよう」
「はい」
片っ端からびりびりになっても悲惨だ。挙げ句射程圏内が広がりそうだから危険極まりない。
「まあこれは個人的なものだが」
「はい」
「他の男をじっくり見られるのは嫌だな」
「へ?」
視線を外し口元に手を添え至極真面目に考え、私の元に視線が戻ってきた。
「不可抗力なら仕方ないが、ミナが私以外の男をじっくり見るのが嫌だと感じた」
あああ破壊力! 嬉しいけど恥ずかしい! 口説き文句がひどい!
勘違いさせるにはもってこいの褒め言葉、あれ褒め言葉? まあそこはいいとしてオレンって普段から優しいけどここまでとは知らなかった。すごく甘やかされてる。
「いやーもー……そうですね、やめときます」
「ああ、まずは絵を描くことからだな」
買ったものを出して配置していく。キャンバスも大小たくさん買ってしまった。いやでも肖像画描くし。けどさすがにブランクあいてるからスケッチやデッサンからにしようかな。
「それに描かないのか?」
オレンが不思議そうにキャンバスを指す。
「まずはこっちでスケッチやデッサンやってからかなあと思いまして……」
「そうか……」
残念そうに眉を下げる。
期待値高くない?
「そ、そんな楽しみにしてくれてるんですか?」
「そうだな」
素直で可愛い……嬉しい。けどスケッチやデッサンから始めるのだけは譲れない。
「必ずこっちには入りますので、今日は勘弁してください」
「ふむ」
「楽しみをとっておくのもいいですよ?」
「……そうだな」
普段きりっとしてる表情しか見てなかったから、こんなに感情豊かな人だと思わなかった。可愛い……いや大の大人、騎士団長様様に思うことじゃないけど。
口説き文句も殺し文句もさらっと言って私を動揺させもする。意外だけど、そこもまたいいと思っていた。
ただ私の心臓ばかりがもたなくて困っている。
オレンも少しは動揺するシーンがあってもいい。まあ大人の男性、騎士団長な彼に死角はないだろう。
「団長」
この時、少し魔が差した。
ずっとどきどきさせられっぱなしで、恥ずかしさに悔しくてオレンを少し驚かせたかったのもある。
「名前」
「……オレンさん」
名前呼びにこだわったり、こんなに優しくされたら勘違いもする、と言い訳したい。
「オレンさんて、私のこと結構好きですよね~」
「え?」
「責任とる~って言って、普段の私が可愛いって口説いてきて、私のこと好きすぎて言っちゃった感じです、か、なん、て……」
魔が差したことを今切実に後悔している。
「あわ……」
失敗した。
明らかに調子乗った。
今のオレンを見れば明らか。
「……」
「オレンさん、顔、真っ赤」
「っ!」
「この手の部屋ならそこそこある。物置になっていることが多いが」
確かに物置になっていた形跡があった。多少物が積まれているのは仕方ない。
「陽の光も程よく入ってきてるし広さも充分です」
「そうか」
よかったと微笑むオレン。
オレンは買い物デートから少し肩の力が抜けたように感じる。
なんて、私都合よく考えてるわね。こうして心の中だけでも名前で呼んでるあたり、私の頭の中はご都合主義だ。
「私、考えたんですけど」
「ああ」
「騎士一人一人の筋肉のプロフィールを作ればいいかなって思ったんです」
「というと?」
日々の鍛練・訓練で役立てないか提案してみた。さすがにこの眼のことは言えないけど、個々の能力を把握すれば適材適所の配置も出来るし効率のいい訓練もできると思う。
当然、筋肉は個人の尊厳なのでプライバシーに配慮した上で鍛錬に活かしたい。
「確かに有効な手段だ」
「なら」
「だがやめておこう」
肩透かし。オレンは穏やかに続けた。
「ミナの服を破く力はれべるが上がるのだろう?」
「はい」
名前呼びにどきりとしたのは内緒だ。
今は絵描きの時間、つまりプライベート……だからってこと?
絵描き用の空き部屋に二人きり、オレンの服装もラフだし、私も汚れるから制服はやめてエプロンまでしている。
「騎士全員の筋肉を見て服が破れる力が強くなっても困る」
「確かに」
「加えて、その能力が知られすぎた時、悪用しようと考えた者がミナ自身を狙う可能性がでてくる」
薬を産み出した大元や、その他利権絡みにはまず狙われる。戦争にさえ利用できるとも言う。
そしたらますますバレないようにしないといけない。
「制御できるようになってから検討しよう」
「はい」
片っ端からびりびりになっても悲惨だ。挙げ句射程圏内が広がりそうだから危険極まりない。
「まあこれは個人的なものだが」
「はい」
「他の男をじっくり見られるのは嫌だな」
「へ?」
視線を外し口元に手を添え至極真面目に考え、私の元に視線が戻ってきた。
「不可抗力なら仕方ないが、ミナが私以外の男をじっくり見るのが嫌だと感じた」
あああ破壊力! 嬉しいけど恥ずかしい! 口説き文句がひどい!
勘違いさせるにはもってこいの褒め言葉、あれ褒め言葉? まあそこはいいとしてオレンって普段から優しいけどここまでとは知らなかった。すごく甘やかされてる。
「いやーもー……そうですね、やめときます」
「ああ、まずは絵を描くことからだな」
買ったものを出して配置していく。キャンバスも大小たくさん買ってしまった。いやでも肖像画描くし。けどさすがにブランクあいてるからスケッチやデッサンからにしようかな。
「それに描かないのか?」
オレンが不思議そうにキャンバスを指す。
「まずはこっちでスケッチやデッサンやってからかなあと思いまして……」
「そうか……」
残念そうに眉を下げる。
期待値高くない?
「そ、そんな楽しみにしてくれてるんですか?」
「そうだな」
素直で可愛い……嬉しい。けどスケッチやデッサンから始めるのだけは譲れない。
「必ずこっちには入りますので、今日は勘弁してください」
「ふむ」
「楽しみをとっておくのもいいですよ?」
「……そうだな」
普段きりっとしてる表情しか見てなかったから、こんなに感情豊かな人だと思わなかった。可愛い……いや大の大人、騎士団長様様に思うことじゃないけど。
口説き文句も殺し文句もさらっと言って私を動揺させもする。意外だけど、そこもまたいいと思っていた。
ただ私の心臓ばかりがもたなくて困っている。
オレンも少しは動揺するシーンがあってもいい。まあ大人の男性、騎士団長な彼に死角はないだろう。
「団長」
この時、少し魔が差した。
ずっとどきどきさせられっぱなしで、恥ずかしさに悔しくてオレンを少し驚かせたかったのもある。
「名前」
「……オレンさん」
名前呼びにこだわったり、こんなに優しくされたら勘違いもする、と言い訳したい。
「オレンさんて、私のこと結構好きですよね~」
「え?」
「責任とる~って言って、普段の私が可愛いって口説いてきて、私のこと好きすぎて言っちゃった感じです、か、なん、て……」
魔が差したことを今切実に後悔している。
「あわ……」
失敗した。
明らかに調子乗った。
今のオレンを見れば明らか。
「……」
「オレンさん、顔、真っ赤」
「っ!」
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