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第五話【豹変】前
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なりゆきで冬真と力也がPlayするようになって、既に五度目になる。もっと強引かと思われた冬真だが、予想外に力也があっさりと言うことを聞いてくれるので少し様子見のようになっていた。
フェラを命じても、普通に行う様子に慣れている感が否めなくなっていたのもまた事実だ。
聞けば答えるのだろうが、撮影現場も同じ力也とは演技についての話をすることも多く、なんだかんだ二人は友人のような感じに落ち着いていた。
五回目になる今日も、2人は行きつけのホテルに来てPlayをしていた。
「って…」
今、力也は床に座り赤くなっている冬真の手首を舐めている。
「下手に抵抗するから」
それは今日の撮影で、力也が冬真の手首を捻り上げ痛めてしまった結果だった。格闘シーンをしている最中、力也は相手役の冬真を捻り上げ台本通りそのまま地面へと勢いよく押し倒したのだ。
「だからってここまでするか、おかげで傷だらけになったじゃねぇか」
「むしろ俺の方がなんで受け身をとらなかったのか聞きたいんだけど」
「とれるわけねぇだろ」
「え?」
部屋に入ってすぐに命じられ、舐めるより冷やしたほうがいいと思いながらも奉仕していたが言い返された内容に思わず顔をあげてしまう。
「受け身とれねぇの」
「誰でも取れると思うなよ」
体育会系の力也からすると、乱闘ありの役なんだから受け身ぐらいとれないと困るだろうと思っていたので意外だったようだ。
「えー、それ早く言ってよ」
「言ったら外されるかもしれないだろ」
「まあ、そうだけど…」
今回の撮影で出て、組織の構成人が一番顔が映るのはそのシーンだけだった。やられ役だが、死ぬわけではなく悔しがるシーンもある。売り出し中の冬真としては他に譲りたくはない役だったのだ。
ちなみにだが、今回の内容で誰を締め上げるかは決まっていたわけではなく、ほとんど思い付きのようなもので、だからこそ外される可能性が高かった。
「ってか傷いてぇなら今日やめればよかったじゃん」
「痛いから舐めさせようと思ったんだよ」
「舐めても直んないのに」
「いいから続けろ」
「はい」
怪我の対処法を熟知している力也は、命令とはいえ傷口を舐め回すのを躊躇っていた。舐めれば治るなんてものは迷信で、逆に悪化する可能性もあるからだ。
それでも舐めろと言われたからには舐めるしかなく、珍しく気乗りしない様子で傷の一つ一つに舌を這わせた。
「もういい」
手首だけでなく、受け身を取り損ねた背中も痛み、これ以上は無理だと思ったのだろう冬真は早々に終わりを告げた。
「GoodBoy」【よくできました】
いつも通りの誉め言葉をもらい、力也は立ち上がった。
「ちょっとまってて」
立ち上がり、手持ちのバックの中から冷却スプレーを取り出す。
「本当は真っ先にやったほうがよかったんだけど」
そうして痛めたところに、手際よく吹きかけていく。傷口にも消毒液をかけるところは、さすが生傷が絶えないスタントマンをしているからと言える。
「よし、これで大丈夫だろ」
「サンキュー」
相変わらずの気のききように、冬真が苦笑する。DomにつくしたいのはSubの本能ではあるが、Domの中にはSubに尽くしたいものも多い。
年上で、役者としても先輩にあたるSubでも、出会って数か月で世話をされる状況にはまだ慣れない。
「もし、明日もまだ痛むようだったら整骨院紹介するから」
「そこまでしなくともいいだろ」
そういい、ベッドサイドに置きっぱなしだったカバンに冷却スプレーを戻し持ち上げた時だった。
たまたま、そこに置かれたままになっていたテレビのリモコンのボタンを押してしまったのだ。
『Kneel』【おすわり】
それはまさに不意打ちだった。
耳によく通る切れのいいその声を聞いた瞬間、力也の膝から力がぬけ床に崩れ落ちた。
「どうした?」
突然のことに驚いて近寄ってきた冬真が見たのは、テレビの画面に映る。自分のPlayシーンの映像だった。
ここはダイナミクス専用ホテルであり、用意されている映像もそれ系のものが多い、2人は見たことがなかったが【DPV】もよく流れている。
「(しくじった)」
Play用にSubとしての行動を心掛けていた故の、過剰反応だった。現物と話していた時には起きなかった反応は、ビデオばかりみていた所為だろう。
確実に上がっていく体温と、ぼんやりしてくる思考を押さえつけるので力也は必死だった。
「これ、俺の奴じゃねぇか。なんでそんなに反応してんだよ」
目の前でグレアを放っても、流していた力也が普通のSubのようにプルプル震えているのをみて冬真の声色が変わった。
「目の前にいる俺に反応しねぇ癖に、なんで画面の向こうだと反応すんだよ。Sey」【言え】
「いつもビデオ見てたから……」
この状況で、コマンドと共にグレアを浴びせられ力也は観念した。終わったはずのPlayが再開されることがわかる。
フェラを命じても、普通に行う様子に慣れている感が否めなくなっていたのもまた事実だ。
聞けば答えるのだろうが、撮影現場も同じ力也とは演技についての話をすることも多く、なんだかんだ二人は友人のような感じに落ち着いていた。
五回目になる今日も、2人は行きつけのホテルに来てPlayをしていた。
「って…」
今、力也は床に座り赤くなっている冬真の手首を舐めている。
「下手に抵抗するから」
それは今日の撮影で、力也が冬真の手首を捻り上げ痛めてしまった結果だった。格闘シーンをしている最中、力也は相手役の冬真を捻り上げ台本通りそのまま地面へと勢いよく押し倒したのだ。
「だからってここまでするか、おかげで傷だらけになったじゃねぇか」
「むしろ俺の方がなんで受け身をとらなかったのか聞きたいんだけど」
「とれるわけねぇだろ」
「え?」
部屋に入ってすぐに命じられ、舐めるより冷やしたほうがいいと思いながらも奉仕していたが言い返された内容に思わず顔をあげてしまう。
「受け身とれねぇの」
「誰でも取れると思うなよ」
体育会系の力也からすると、乱闘ありの役なんだから受け身ぐらいとれないと困るだろうと思っていたので意外だったようだ。
「えー、それ早く言ってよ」
「言ったら外されるかもしれないだろ」
「まあ、そうだけど…」
今回の撮影で出て、組織の構成人が一番顔が映るのはそのシーンだけだった。やられ役だが、死ぬわけではなく悔しがるシーンもある。売り出し中の冬真としては他に譲りたくはない役だったのだ。
ちなみにだが、今回の内容で誰を締め上げるかは決まっていたわけではなく、ほとんど思い付きのようなもので、だからこそ外される可能性が高かった。
「ってか傷いてぇなら今日やめればよかったじゃん」
「痛いから舐めさせようと思ったんだよ」
「舐めても直んないのに」
「いいから続けろ」
「はい」
怪我の対処法を熟知している力也は、命令とはいえ傷口を舐め回すのを躊躇っていた。舐めれば治るなんてものは迷信で、逆に悪化する可能性もあるからだ。
それでも舐めろと言われたからには舐めるしかなく、珍しく気乗りしない様子で傷の一つ一つに舌を這わせた。
「もういい」
手首だけでなく、受け身を取り損ねた背中も痛み、これ以上は無理だと思ったのだろう冬真は早々に終わりを告げた。
「GoodBoy」【よくできました】
いつも通りの誉め言葉をもらい、力也は立ち上がった。
「ちょっとまってて」
立ち上がり、手持ちのバックの中から冷却スプレーを取り出す。
「本当は真っ先にやったほうがよかったんだけど」
そうして痛めたところに、手際よく吹きかけていく。傷口にも消毒液をかけるところは、さすが生傷が絶えないスタントマンをしているからと言える。
「よし、これで大丈夫だろ」
「サンキュー」
相変わらずの気のききように、冬真が苦笑する。DomにつくしたいのはSubの本能ではあるが、Domの中にはSubに尽くしたいものも多い。
年上で、役者としても先輩にあたるSubでも、出会って数か月で世話をされる状況にはまだ慣れない。
「もし、明日もまだ痛むようだったら整骨院紹介するから」
「そこまでしなくともいいだろ」
そういい、ベッドサイドに置きっぱなしだったカバンに冷却スプレーを戻し持ち上げた時だった。
たまたま、そこに置かれたままになっていたテレビのリモコンのボタンを押してしまったのだ。
『Kneel』【おすわり】
それはまさに不意打ちだった。
耳によく通る切れのいいその声を聞いた瞬間、力也の膝から力がぬけ床に崩れ落ちた。
「どうした?」
突然のことに驚いて近寄ってきた冬真が見たのは、テレビの画面に映る。自分のPlayシーンの映像だった。
ここはダイナミクス専用ホテルであり、用意されている映像もそれ系のものが多い、2人は見たことがなかったが【DPV】もよく流れている。
「(しくじった)」
Play用にSubとしての行動を心掛けていた故の、過剰反応だった。現物と話していた時には起きなかった反応は、ビデオばかりみていた所為だろう。
確実に上がっていく体温と、ぼんやりしてくる思考を押さえつけるので力也は必死だった。
「これ、俺の奴じゃねぇか。なんでそんなに反応してんだよ」
目の前でグレアを放っても、流していた力也が普通のSubのようにプルプル震えているのをみて冬真の声色が変わった。
「目の前にいる俺に反応しねぇ癖に、なんで画面の向こうだと反応すんだよ。Sey」【言え】
「いつもビデオ見てたから……」
この状況で、コマンドと共にグレアを浴びせられ力也は観念した。終わったはずのPlayが再開されることがわかる。
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