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9、店舗改装のため一週間営業を休止します
後悔、しない
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貴広は黙っていた。
「良平君はまだ帰ってきてないの?」
「ええ。しばらくは向こうです。あちこち回ってくるみたいで」
ゆうこママはキレイに整えた自分の爪の先を眺めて言った。
「お金がかかるわね」
「そうでもないみたいですよ。LCCで片道一万円。向こうでは、友人のところを泊まり歩くって」
「あなたは平気なの?」
ゆうこママには、どこまで知られているのだろう。貴広は、それらしい誤魔化しもせず素直に答えた。自分でも意外だった。
「はは。こんなオッサンはね、若者にとっては踏み台ですよ」
貴広はソファにぐったりと寄りかかった。言ってしまってから、その言葉に自分がダメージを受けていることに気づく。
ゆうこママは、キッと貴広に向き直った。
「今の欲望は、今叶えないと!」
「は」
ゆうこママの目がキラッと輝いた。
ゆうこママは立ち上がり、そして言った。
「じゃね、マスター。若いひとと違って、あたしたちには、やり直しルートが無限にある訳じゃないのよ」
「ゆうこさん……」
ゆうこママは雨の中へ赤い傘を差して出ていった。
(…………)
貴広は狭い階段を二階へ上がり、ポケットのスマホを取り出した。
「……ちょっと来い。この土日は大人しくこっちにいるんだろ」
「良平君はまだ帰ってきてないの?」
「ええ。しばらくは向こうです。あちこち回ってくるみたいで」
ゆうこママはキレイに整えた自分の爪の先を眺めて言った。
「お金がかかるわね」
「そうでもないみたいですよ。LCCで片道一万円。向こうでは、友人のところを泊まり歩くって」
「あなたは平気なの?」
ゆうこママには、どこまで知られているのだろう。貴広は、それらしい誤魔化しもせず素直に答えた。自分でも意外だった。
「はは。こんなオッサンはね、若者にとっては踏み台ですよ」
貴広はソファにぐったりと寄りかかった。言ってしまってから、その言葉に自分がダメージを受けていることに気づく。
ゆうこママは、キッと貴広に向き直った。
「今の欲望は、今叶えないと!」
「は」
ゆうこママの目がキラッと輝いた。
ゆうこママは立ち上がり、そして言った。
「じゃね、マスター。若いひとと違って、あたしたちには、やり直しルートが無限にある訳じゃないのよ」
「ゆうこさん……」
ゆうこママは雨の中へ赤い傘を差して出ていった。
(…………)
貴広は狭い階段を二階へ上がり、ポケットのスマホを取り出した。
「……ちょっと来い。この土日は大人しくこっちにいるんだろ」
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