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後編・約束
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ベッドの上に横になっていると、いきなりドアが開いた。
ドアの方を見ると、手首にテーピングを巻いた葉月が立っていた。
僕はすぐに立ち上がる。
「なっ!……あんた……」
葉月は僕の姿を見つけると、少し驚いたような声を出してすぐに俯いた。
「葉月!大事な話があるんだ!聞いてくれないか!?」
「……今更話すことなんてない!」
葉月は強い口調でそう言い放った。
「僕があるんだ!……話を……聞いてくれるかな?」
「……好きにすれば……」
葉月と会話をしたのはいつ以来だろうか?
僕が凛音と付き合い始めたのは中一の冬だ。
葉月と話さなくなったのは凛音と付き合い始めてからだから、二年半ぶりの会話だ。
「葉月……さっきはごめん。怪我……させてしまって……本当にごめん!」
そう言って僕は頭を下げた。
葉月の顔は見えないが、おそらく怒っているだろう。
彼女は謝られるのをとても嫌う。
でも、やっぱり謝らないわけにはいかないと思う。
「ごめん……」
「……そんなことを伝えるためだけに話しかけてきたの?」
葉月の声音からは怒気が感じられる。
双葉葉月という女の子はとても強い女の子だった。
決して人前で涙を見せることはせず、誰かが泣いているときはいつも笑いながら励ましていた。
僕は一度だけ、彼女の涙を見たことがある。
僕が凛音と付き合い始めたあの日、偶然校舎裏を通りかかったときのことだった。
凛音が声を押し殺して泣いていたのだった。
僕はそのとき、声をかけてあげることができなかった。
約束を破った自分に声をかける資格はないと思ってしまったのだった。
ついさっき、葉月を待っている間にメールが届いていた。
メールは彩姉からだった。
『雛菊、君はまだ約束を破ったわけじゃない。まだ、やり直せるかもしれない』
そんな内容のメールだった。
すごい緊張だ。
顔が熱い。
心臓が暴れる。
このまま死ぬんじゃないかとさえ思う。
やっぱりすごいや、凛音は。
この緊張の中で告白をしたなんて。
「それだけじゃない!もう一つ……伝えたいことがあるんだ!」
緊張で声が震える。
足も震えて、立つのがやっとだ。
「……」
葉月は無言で続きを促してくる。
ごめんね、凛音。
僕はやっぱり葉月のことが好きみたいなんだ。
だから、君とは今日で最後だ。
今までありがとう。
僕は凛音に心の中で謝罪とお礼を言い、覚悟を決める。
「葉月……ぼっ、僕はっ!……好きです、付き合ってください!」
僕はもう一度頭を下げる。
もうまともに顔を見ることができない。
告白をしてすぐに感じたのは恐怖だった。
フラれるのが怖い。
拒絶されることが怖い。
そんなことをを考えてしまう。
「……」
葉月は何も言わない。
顔を見れないので、どんなことを思っているのかわからない。
それからしばらく、お互いに黙ったままの時間が続いた。
その時間は一分のようにも感じられたし、一時間のようにも感じられた。
「……彼女さんは……どうするの?」
葉月は震えた声でそう訊ねた。
顔を上げると、顔をりんごのように真っ赤にした葉月が立っていた。
その姿を見て、「やっぱり葉月のことが好きだ」と改めて恋心を自覚する。
「別れるよ……葉月の答えがどんなものでも……ね」
「……そっか……ねえ、約束……覚えてる?」
忘れるはずもない。
あの日、月の下で交わした約束。
「大人になったら、葉月と結婚する……だよね?」
僕がそういうと葉月は破顔した。
あの日と同じように。
その顔を見て、「あのときと何も変わってないな」と思った。
「ひな……こちらこそ、よろしくお願いします」
それから僕と葉月は、キスをした。
ずっと昔、まだ幼かった頃に二人でしたキスと同じように。
ドアの方を見ると、手首にテーピングを巻いた葉月が立っていた。
僕はすぐに立ち上がる。
「なっ!……あんた……」
葉月は僕の姿を見つけると、少し驚いたような声を出してすぐに俯いた。
「葉月!大事な話があるんだ!聞いてくれないか!?」
「……今更話すことなんてない!」
葉月は強い口調でそう言い放った。
「僕があるんだ!……話を……聞いてくれるかな?」
「……好きにすれば……」
葉月と会話をしたのはいつ以来だろうか?
僕が凛音と付き合い始めたのは中一の冬だ。
葉月と話さなくなったのは凛音と付き合い始めてからだから、二年半ぶりの会話だ。
「葉月……さっきはごめん。怪我……させてしまって……本当にごめん!」
そう言って僕は頭を下げた。
葉月の顔は見えないが、おそらく怒っているだろう。
彼女は謝られるのをとても嫌う。
でも、やっぱり謝らないわけにはいかないと思う。
「ごめん……」
「……そんなことを伝えるためだけに話しかけてきたの?」
葉月の声音からは怒気が感じられる。
双葉葉月という女の子はとても強い女の子だった。
決して人前で涙を見せることはせず、誰かが泣いているときはいつも笑いながら励ましていた。
僕は一度だけ、彼女の涙を見たことがある。
僕が凛音と付き合い始めたあの日、偶然校舎裏を通りかかったときのことだった。
凛音が声を押し殺して泣いていたのだった。
僕はそのとき、声をかけてあげることができなかった。
約束を破った自分に声をかける資格はないと思ってしまったのだった。
ついさっき、葉月を待っている間にメールが届いていた。
メールは彩姉からだった。
『雛菊、君はまだ約束を破ったわけじゃない。まだ、やり直せるかもしれない』
そんな内容のメールだった。
すごい緊張だ。
顔が熱い。
心臓が暴れる。
このまま死ぬんじゃないかとさえ思う。
やっぱりすごいや、凛音は。
この緊張の中で告白をしたなんて。
「それだけじゃない!もう一つ……伝えたいことがあるんだ!」
緊張で声が震える。
足も震えて、立つのがやっとだ。
「……」
葉月は無言で続きを促してくる。
ごめんね、凛音。
僕はやっぱり葉月のことが好きみたいなんだ。
だから、君とは今日で最後だ。
今までありがとう。
僕は凛音に心の中で謝罪とお礼を言い、覚悟を決める。
「葉月……ぼっ、僕はっ!……好きです、付き合ってください!」
僕はもう一度頭を下げる。
もうまともに顔を見ることができない。
告白をしてすぐに感じたのは恐怖だった。
フラれるのが怖い。
拒絶されることが怖い。
そんなことをを考えてしまう。
「……」
葉月は何も言わない。
顔を見れないので、どんなことを思っているのかわからない。
それからしばらく、お互いに黙ったままの時間が続いた。
その時間は一分のようにも感じられたし、一時間のようにも感じられた。
「……彼女さんは……どうするの?」
葉月は震えた声でそう訊ねた。
顔を上げると、顔をりんごのように真っ赤にした葉月が立っていた。
その姿を見て、「やっぱり葉月のことが好きだ」と改めて恋心を自覚する。
「別れるよ……葉月の答えがどんなものでも……ね」
「……そっか……ねえ、約束……覚えてる?」
忘れるはずもない。
あの日、月の下で交わした約束。
「大人になったら、葉月と結婚する……だよね?」
僕がそういうと葉月は破顔した。
あの日と同じように。
その顔を見て、「あのときと何も変わってないな」と思った。
「ひな……こちらこそ、よろしくお願いします」
それから僕と葉月は、キスをした。
ずっと昔、まだ幼かった頃に二人でしたキスと同じように。
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