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第2章
第5話
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ディスプレイを見ると、そこにはお母さんの名前が表示されていた。
……タイミングが最悪すぎる。
そして、出るべきか出ないべきか。すごく、迷った。
(どうせ、さっきのお話の続きだろうし……)
そもそも、私は今、丞さんといる。そのうえで、電話の相手はお母さん。
……別に、後からかけ直しても問題ないだろう。
「出ないんですか?」
丞さんが、心配そうに私に声をかけてこられる。
なので、私は曖昧に頷いた。
そうすれば、少しして呼び出しのバイブレーションが止む。私は鞄にスマホを放り込んだ。
「俺に遠慮したなら……」
「そ、そういうわけでは、ないです……」
ゆるゆると首を横に振って、私は曖昧に笑った。
「相手、お母さんなので」
肩をすくめてそう伝えれば、丞さんは一瞬ぽかんとされていた。でも、すぐに「あぁ」と声を上げられる。
「入院されているっていう……」
「はい、そうです。……ここに来るまで、ちょっとお話してて。その続きだと、思うので」
正直、話の内容は丞さんの耳にはいれたくない。
だって、嘘つきとかそういう風に思われたら立ち直れない。……けど、それって。
(なんで、そう思うの……?)
上司との間に信頼関係が必要だから……ということでは、ないような気もしてしまう。
眉間にしわを寄せてそう考えてしまって。丞さんが「あの」と声をかけてこられるまで、じっと俯いてしまっていた。
「……その、俺がいたら話しにくいことなら、俺はとりあえず少し離れていますけれど」
絶対に、気を遣われた。
瞬時にそれを悟って、私はぶんぶんと首を横に振る。
「本当、大したことじゃないのです」
「そう、ですか」
丞さんはそこで話を切り上げてくださった。正直、これ以上深入りされるとぼろが出てしまいそうだったので、助かった。
どうしてか。丞さんには、色々と話してしまうのだ。
「で、あの、用件、ですが……」
話題の変え方が露骨だったような気もする。が、丞さんはそこに突っ込んでこられることはなく。
大きく頷いてくださった。
「……あんまり、重要な案件じゃないんですけど。職権乱用とか、思われそうなんですけれど」
「別に、全然大丈夫です」
どうせ私は独り身で、用事もないし。
そういう意味を込めて笑えば、丞さんが「とりあえず、場所を移動しましょう」と言ってくださる。
「この近くに、個室のあるレストランがありまして。そこの部屋を予約しているので、行きましょう」
「え、あ、はい……」
なんだろうか。これって、ただのデート……のような、気もする。
丞さんがさりげなく私の手を取られたから、余計にそう思うのかも。
(でも、一度関係を持っただけで恋人って、そういうの、私が思っていいもの……?)
……考えようによっては、思いあがっていると思われないだろうか。
けど、いや、でも……。
(頭の中、ぐるぐるしてる……)
もう、どうすればいいかわからなくて。結局、私は彼に連れられるがまま移動することしか出来なかった。
……タイミングが最悪すぎる。
そして、出るべきか出ないべきか。すごく、迷った。
(どうせ、さっきのお話の続きだろうし……)
そもそも、私は今、丞さんといる。そのうえで、電話の相手はお母さん。
……別に、後からかけ直しても問題ないだろう。
「出ないんですか?」
丞さんが、心配そうに私に声をかけてこられる。
なので、私は曖昧に頷いた。
そうすれば、少しして呼び出しのバイブレーションが止む。私は鞄にスマホを放り込んだ。
「俺に遠慮したなら……」
「そ、そういうわけでは、ないです……」
ゆるゆると首を横に振って、私は曖昧に笑った。
「相手、お母さんなので」
肩をすくめてそう伝えれば、丞さんは一瞬ぽかんとされていた。でも、すぐに「あぁ」と声を上げられる。
「入院されているっていう……」
「はい、そうです。……ここに来るまで、ちょっとお話してて。その続きだと、思うので」
正直、話の内容は丞さんの耳にはいれたくない。
だって、嘘つきとかそういう風に思われたら立ち直れない。……けど、それって。
(なんで、そう思うの……?)
上司との間に信頼関係が必要だから……ということでは、ないような気もしてしまう。
眉間にしわを寄せてそう考えてしまって。丞さんが「あの」と声をかけてこられるまで、じっと俯いてしまっていた。
「……その、俺がいたら話しにくいことなら、俺はとりあえず少し離れていますけれど」
絶対に、気を遣われた。
瞬時にそれを悟って、私はぶんぶんと首を横に振る。
「本当、大したことじゃないのです」
「そう、ですか」
丞さんはそこで話を切り上げてくださった。正直、これ以上深入りされるとぼろが出てしまいそうだったので、助かった。
どうしてか。丞さんには、色々と話してしまうのだ。
「で、あの、用件、ですが……」
話題の変え方が露骨だったような気もする。が、丞さんはそこに突っ込んでこられることはなく。
大きく頷いてくださった。
「……あんまり、重要な案件じゃないんですけど。職権乱用とか、思われそうなんですけれど」
「別に、全然大丈夫です」
どうせ私は独り身で、用事もないし。
そういう意味を込めて笑えば、丞さんが「とりあえず、場所を移動しましょう」と言ってくださる。
「この近くに、個室のあるレストランがありまして。そこの部屋を予約しているので、行きましょう」
「え、あ、はい……」
なんだろうか。これって、ただのデート……のような、気もする。
丞さんがさりげなく私の手を取られたから、余計にそう思うのかも。
(でも、一度関係を持っただけで恋人って、そういうの、私が思っていいもの……?)
……考えようによっては、思いあがっていると思われないだろうか。
けど、いや、でも……。
(頭の中、ぐるぐるしてる……)
もう、どうすればいいかわからなくて。結局、私は彼に連れられるがまま移動することしか出来なかった。
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