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本編

モテる幼馴染の秘密 3

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「……騎士団に新しく入って来た後輩と、付き合うことになったんだ」
「……うん」

 騎士団は女子禁制なので、相手は自然と男になる。

 まぁ、幼馴染の贔屓目を抜いてもマルクスはかっこいいし、魅力的だと思う。

 だから、その後輩の気持ちもわからなくはない。

「後輩と言っても、同い年だった」
「……うん」

 その補足は必要なのだろうか?

 そう思いつつも、話は遮らない。

 のんびりとしていれば、マルクスはハッとして「勘違いするな」と言う。

 ……勘違い、なにをだ?

「あっちが強引に付き合ってほしいと言ってきただけで、俺があいつを好きだったことは……多分、ない」
「それはそれで最低だな」

 ぽつりとそう言葉を零せば、マルクスはガシガシと頭を掻いた。

 ……なんか、余計なことを言っちゃったような気もする。

(でも、実際最低だし……)

 本気じゃないのに付き合うとか、俺じゃあ考えられないことだ。

 これが、非モテの発想なのかもしれないが。

「自分を好きじゃなくてもいい。一時期でも夢を見せてほしいと、言われた」
「……そっか」

 けどまぁ、相手も了承済みの関係だったら問題ないだろう。

 そこに関しては、他人が口を出すようなことじゃないから。

 そう、自分に言い聞かせた。

「で、だな。まぁ、それっぽい雰囲気になったんだよ」

 いきなり話が飛躍した。

「というか、だったら童貞じゃないじゃんか」

 頬杖を突きつつそう言えば、マルクスはバンっとテーブルをたたく。

 うわ、びっくりした……。そう思って俺が身体を跳ねさせれば、マルクスがすぐに「悪い」と謝罪をしてくる。

 こういうところが、マルクスが憎まれにくい要因なのだろう。自分の非をすぐに認められるのは、素晴らしいことだ。

「いや、童貞だ。……最後まで、出来なかったからな」
「……そっか」

 まぁ、うん。そういうときもあるよな。

 そう言ってやろうかと思ったが、マルクスの求めている言葉がこれじゃないことは、容易にわかった。

 なので、マルクスの言葉の続きを待つ。

「俺は、男女問わず、誰であろうと大体抱けないような気がするんだ」
「それ、俺じゃなくて専門の人に相談したら?」

 ついつい口を挟んでしまった。

 しかし、そうじゃないか。こんなこと、俺が解決できることじゃない。範疇を超えている。

「ほら、今後のことを考えたら、一生の恥をかいてでも、専門の人に相談するのがいいと思うんだ」

 年齢を重ねると、余計に相談しにくくなるかもだし……。

 とか、なんとか。

 マルクスを説得する言葉を探していれば、マルクスはゆるゆると首を横に振った。

「違う」

 ……俺の言葉のなにが不満なんだ。

(俺、正しいことを言っている気がするんだけど……)

 正しくなかったとしても、俺に相談するのは間違っている。

 俺には医学の心得もないし、そっち方面の知識も拙い。

 到底、マルクスの力にはなれそうにない。それだけは、正しいのだ。

「……話には、まだ続きがあるんだ」
「そ、そうか」

 どうやら、早とちりしてしまったらしい。

 理解して、落ち着くようにと何度か深呼吸。よし、落ち着いた。

「で、続きってなんだ?」

 二人そろってお茶を一口飲んで、二人そろってティーカップを元の位置戻す。

 かちゃりという音が部屋に響く中、俺は話の続きを促した。

 ……マルクスが、露骨に俺から視線を逸らす。

(もしかして、俺になにか関係があるのか……?)

 俺、マルクスになにかしてしまったのか……?

 思考回路を必死に動かして、考える。が、考えても考えても答えが出てきてくれない。

「……そのとき、俺は気が付いたんだ。……俺は、気持ちを拗らせた結果童貞のままなんだって」
「うん?」
「俺、ロドルフが好きなんだって。あのとき、ようやく気が付いたんだ」

 ……うん? うん?

(え、今、マルクス、なんて言った……?)

 聞き間違いじゃなかったら、俺の名前が出てきて、「好き」って単語が聞こえたような……。

「……ごめん、マルクス。もう一回言ってくれ」

 申し訳なさそうな表情を浮かべて、俺はマルクスにそう頼んだ。

 聞き間違い。絶対に、聞き間違いだ……。

「俺、ロドルフが好きだ。ロドルフじゃないと、欲情しないんだ」

 その言葉を聞いて、俺は確かに思ったのだ。

 ……聞くんじゃなかった、と。
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