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1-2.欺瞞に満ちた世界で
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それから私は学校に向かった。
職員の通用門がまだ空いている時間は、忍び込む苦労もなく校舎を見上げることができた。
卒業式を明日に控えた校舎はシンとしていて、春の夜に現れた大きなお墓みたいだ。
きっとそう。私たち学生の墓標だ。
まだ明かりがついている職員棟は、墓守たちの休憩所。高校生でいることに未練がある亡者からお墓を守っているんだ。
冷たい春風がびゅっと校舎を降りて、私の身体を切るように通り過ぎた。ダッフルコートを前で掻き合せ抱きしめた私は、暗い校舎の西側――理科棟へ駆けた。
雑然とした生物準備室は、学校特有の匂いと埃と先生の匂いがする。
息を大きく吸い込むと、先生の体臭と汗と体液と、それから私自身の唾液の匂いでクラクラした。
膝のあいだに座っている私は、傘が張った段差を舌でれろんと舐めて、グレーの事務椅子に座っている先生を見上げる。
「コートの下は全裸か。ますます変態だな、吉崎」
ダッフルコートをはだけさせただけで、私はほとんど裸になった。ついさっきまでは指先すら冷たかったのに、先生のペニスを舐めている間に全身が熱くなった。きっと、ストーブなんていらないよ。
「んむ……ん、ここのところ……先生に会えなかったから喜んでもらおうと思って」
卒業式が明日だからなのか、先生の帰宅時間は1週間連続で遅かった。同じ屋根の下で暮しているのに、顔を合わさないのは数年前に戻ったみたいで寂しくなる。
会いたい、なんてメッセージをスマホに送ろうとしたけど、私は先生のアドレスやアカウントを何一つ知らない。
先生は私のことを知っているのに、私は先生のことを少ししか知らない。
教えてって聞いても、素直に教えてくれる人じゃないのを痛いぐらい知っているから、怖くて聞けないでいる。
「ふぅん。自分から変態の道に進んだわけか。究極の進化だな。――根元まで咥えろ」
喉の奥を突かれ苦しくても、顎が痛くても、私は言われた通りに教えられたことをする。
「上も下もゆるゆるだな、おまえの口。ちんぽだったらすぐ咥えるんだろ」
ひどいことを言いながら先生は、はあ、と息を零す。その息が好き。もっと聞きたくて、夢中でしゃぶってしまう。
「吉崎。ちんぽ舐めながらまんこ濡らすなよ」
「……んうっ」
先生の足の指が、私のぐずついた秘裂をなぞる。おっぱいの丸みを擽り触る、先生の節ばった指に期待して乳首がピリッとした。
「乳首ビン勃ちにして腰振ってさ。ド淫乱にもほどがあるな」
ニヤニヤへらへら。楽しそうに嗤う頬は上気して、垂れた目元がセクシーだ。そう思えるぐらい、私は毒されてしまった。
そうだよ。先生のせいで、私は変になったんだよ。
「気持ちいいか? 足の指」
ぐちゃぐちゃ浅い所を掻く先生の足の親指は、ぜんぜん物足りない。私の身体は、駄々っ子みたいに勝手に動く。
もっともっと先生がほしい。先生が変えてしまった身体に先生をいれてよ。
「ひもひ、いい……れす」
おちんぽを咥えたまま喋ると、唾液がだらっと垂れてリノリウムの床にぱたぱた零れた。
「物足りないんだろ」
「う、んっぐ」
私の乳首を抓る先生は、喉を無遠慮に突き始めた。秘所を抉っていた足の指は消えて、代わりに腰が私の口を攻め動く。
オンボロ事務椅子は、ガタガタ壊れそうな音を立てる。先生は容赦なく私の口を犯す。私はそれを苦しくても受け入れる。
大きく息を乱れさせる先生は、快楽に蕩けた目で私を見下ろすから、乱暴な行為でも私は愛されている錯覚に陥ってしまう。
「顔射? 咥内? 選ばせてあげるよ。ただし言えたらな」
私はどっちでもよかった。でも、目に入ると痛いし、鼻に入ると臭いからできれば口の中がいい。
私が好きな低い声が「出すぞ」短く言って射精で喘ぐ。その同時に、喉の奥めがけて解き放たれ、私は噎せてえずいた。
「んぐ……っ!」
吐き出さずに、精液を全部喉の奥に押し流す。独特の匂いと味はまだ慣れなくて涙が零れた。
「あーあ。口の端から出てるぞ」
滲んだ世界の先生の顔は、覚めてない興奮で発熱してへらへら笑っている。そして、私の口から零れたものを指で拭ってくれて、それを舐めさせる。
私がうんと小さな頃、おじいちゃんちの桃をお従兄ちゃんが剥いてくれたことを思い出した。
開け広げられた縁側と、もじゃもじゃ頭の眠たそうな顔をしたお従兄ちゃん。それと幼い頃の私。
お従兄ちゃんに、剥きたての瑞々しい桃を食べさせてもらった。彼の指の桃の汁まで、幼い私はぺろぺろ舐め取った。
どうして今、思い出したのかもわからない。先生の指なんて何度も何度も舐めさせられたのに。
「おにいちゃん」
まぁるい肉の先からまだ出てくる精液を舐めながら、私は先生を見上げる。眉を上げた先生は、口の端を上げてくっと笑う。
「何年ぶりに聞いたかな? けど、ここは学校だから呼ぶなら、先生だ」
視線に促されて立ち上がった。座っている先生を見下ろせる唯一の姿勢は、キスがしやすい。
何回も何回もえっちなことも、それ以上のこともしているのに、私と先生はキスを一度もしていない。
キスがしたいよ。
キスをちょうだい。
職員の通用門がまだ空いている時間は、忍び込む苦労もなく校舎を見上げることができた。
卒業式を明日に控えた校舎はシンとしていて、春の夜に現れた大きなお墓みたいだ。
きっとそう。私たち学生の墓標だ。
まだ明かりがついている職員棟は、墓守たちの休憩所。高校生でいることに未練がある亡者からお墓を守っているんだ。
冷たい春風がびゅっと校舎を降りて、私の身体を切るように通り過ぎた。ダッフルコートを前で掻き合せ抱きしめた私は、暗い校舎の西側――理科棟へ駆けた。
雑然とした生物準備室は、学校特有の匂いと埃と先生の匂いがする。
息を大きく吸い込むと、先生の体臭と汗と体液と、それから私自身の唾液の匂いでクラクラした。
膝のあいだに座っている私は、傘が張った段差を舌でれろんと舐めて、グレーの事務椅子に座っている先生を見上げる。
「コートの下は全裸か。ますます変態だな、吉崎」
ダッフルコートをはだけさせただけで、私はほとんど裸になった。ついさっきまでは指先すら冷たかったのに、先生のペニスを舐めている間に全身が熱くなった。きっと、ストーブなんていらないよ。
「んむ……ん、ここのところ……先生に会えなかったから喜んでもらおうと思って」
卒業式が明日だからなのか、先生の帰宅時間は1週間連続で遅かった。同じ屋根の下で暮しているのに、顔を合わさないのは数年前に戻ったみたいで寂しくなる。
会いたい、なんてメッセージをスマホに送ろうとしたけど、私は先生のアドレスやアカウントを何一つ知らない。
先生は私のことを知っているのに、私は先生のことを少ししか知らない。
教えてって聞いても、素直に教えてくれる人じゃないのを痛いぐらい知っているから、怖くて聞けないでいる。
「ふぅん。自分から変態の道に進んだわけか。究極の進化だな。――根元まで咥えろ」
喉の奥を突かれ苦しくても、顎が痛くても、私は言われた通りに教えられたことをする。
「上も下もゆるゆるだな、おまえの口。ちんぽだったらすぐ咥えるんだろ」
ひどいことを言いながら先生は、はあ、と息を零す。その息が好き。もっと聞きたくて、夢中でしゃぶってしまう。
「吉崎。ちんぽ舐めながらまんこ濡らすなよ」
「……んうっ」
先生の足の指が、私のぐずついた秘裂をなぞる。おっぱいの丸みを擽り触る、先生の節ばった指に期待して乳首がピリッとした。
「乳首ビン勃ちにして腰振ってさ。ド淫乱にもほどがあるな」
ニヤニヤへらへら。楽しそうに嗤う頬は上気して、垂れた目元がセクシーだ。そう思えるぐらい、私は毒されてしまった。
そうだよ。先生のせいで、私は変になったんだよ。
「気持ちいいか? 足の指」
ぐちゃぐちゃ浅い所を掻く先生の足の親指は、ぜんぜん物足りない。私の身体は、駄々っ子みたいに勝手に動く。
もっともっと先生がほしい。先生が変えてしまった身体に先生をいれてよ。
「ひもひ、いい……れす」
おちんぽを咥えたまま喋ると、唾液がだらっと垂れてリノリウムの床にぱたぱた零れた。
「物足りないんだろ」
「う、んっぐ」
私の乳首を抓る先生は、喉を無遠慮に突き始めた。秘所を抉っていた足の指は消えて、代わりに腰が私の口を攻め動く。
オンボロ事務椅子は、ガタガタ壊れそうな音を立てる。先生は容赦なく私の口を犯す。私はそれを苦しくても受け入れる。
大きく息を乱れさせる先生は、快楽に蕩けた目で私を見下ろすから、乱暴な行為でも私は愛されている錯覚に陥ってしまう。
「顔射? 咥内? 選ばせてあげるよ。ただし言えたらな」
私はどっちでもよかった。でも、目に入ると痛いし、鼻に入ると臭いからできれば口の中がいい。
私が好きな低い声が「出すぞ」短く言って射精で喘ぐ。その同時に、喉の奥めがけて解き放たれ、私は噎せてえずいた。
「んぐ……っ!」
吐き出さずに、精液を全部喉の奥に押し流す。独特の匂いと味はまだ慣れなくて涙が零れた。
「あーあ。口の端から出てるぞ」
滲んだ世界の先生の顔は、覚めてない興奮で発熱してへらへら笑っている。そして、私の口から零れたものを指で拭ってくれて、それを舐めさせる。
私がうんと小さな頃、おじいちゃんちの桃をお従兄ちゃんが剥いてくれたことを思い出した。
開け広げられた縁側と、もじゃもじゃ頭の眠たそうな顔をしたお従兄ちゃん。それと幼い頃の私。
お従兄ちゃんに、剥きたての瑞々しい桃を食べさせてもらった。彼の指の桃の汁まで、幼い私はぺろぺろ舐め取った。
どうして今、思い出したのかもわからない。先生の指なんて何度も何度も舐めさせられたのに。
「おにいちゃん」
まぁるい肉の先からまだ出てくる精液を舐めながら、私は先生を見上げる。眉を上げた先生は、口の端を上げてくっと笑う。
「何年ぶりに聞いたかな? けど、ここは学校だから呼ぶなら、先生だ」
視線に促されて立ち上がった。座っている先生を見下ろせる唯一の姿勢は、キスがしやすい。
何回も何回もえっちなことも、それ以上のこともしているのに、私と先生はキスを一度もしていない。
キスがしたいよ。
キスをちょうだい。
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