死の間際で思い出した、私は乙女ゲームのヒロインだった

死の床で、五十年連れ添った夫の手を握りながら、私は自分の人生を振り返っていた。
派手ではなかったけれど、穏やかで、満ち足りた日々。

――そのとき、突如として現れたのは、かつて夢中で遊んだ乙女ゲームの“プレイログ”。

私はこの世界で、ヒロインとして生きていたらしい。
王太子の求婚、華やかな夜会、数々の「正解ルート」。

けれど私が選んだのは、
名も残らない、地味な伴侶との人生だった。

屋台の煙、手の温度、若い日の記憶の断片。
平凡で騒がしくて、愛おしい五十年。

死の間際、彼女が最後に思い出したのは――
「攻略」ではなく、「幸せだった人生」そのものだった。
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