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Episode08:I don't know own feeling

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 荒巻が連れて行ってくれたのは、会社の近くにある海鮮メインの居酒屋だった。

「ここのぶっかけ寿司うまいんだよね。清水さん食べたことある?」

「いいえ。食べたことないです」

「ウニとイクラとマグロとカニがこれでもかってくらい、大量に乗っててさ。酢飯が全然見えないんだよ」

 想像しただけでインパクトが大きそうな寿司だ。

 店に入ると「予約した荒巻です」といつの間に予約したのか、荒巻が店員に名前を名乗る。

 店員も「お待ちしておりました」と荒巻と萌衣を、ボックス席に案内した。

「清水さんももう結構なベテランになったよね」

 テーブルの上に設置されているタブレット式のメニューで飲み物の画面を開きながら、荒巻が感慨深いといった様子で萌衣に言った。

「もう二十八ですもん」

「アラサーかあ。早いね。俺も三十四だしな……。この前まで二十代だったはずなんだけど」

「時間ってあっという間ですよね」

 何気ない会話をしながら、飲み物の注文を送信する。

 注文してから数分も経たないうちに、飲み物とお通しが運ばれて来た。

 荒巻おススメのぶっかけ寿司と、焼き魚、炭火焼きエイヒレのマヨネーズ添えなど、料理も色々と注文していく。

「とりあえず、乾杯」

「お疲れ様です」

 乾杯をした後、萌衣はすきっ腹にカシスオレンジをぐっと入れた。

 早く酔いたい気分だった。

 荒巻が「おいおい、なんか腹に入れてから、飲んだ方がいいぞ」と笑いながら注意する。

「荒巻さん」

「なに?」

「結婚するって……どんな感じですか?」

 荒巻の左手の薬指につけらている指輪を眺めながら、萌衣は尋ねた。

「清水さん、結婚するの?」

「いえ……まあ、はい」

「どっちだよ」

 曖昧な返事をする萌衣に、荒巻は笑いながらツッコミを入れる。

「一応結婚する予定なんですけど……」

「あんまり乗り気じゃないの?なんか嫌そう」

「そ、そんなことないです!」

 荒巻の言葉に驚いて、否定する。

「そうなの?あんまり乗り気に見えなさそうだし、むしろちょっと困ってるように見えたから」

 関係のない荒巻から見ても、そんな風に見えているなら、ジャンはもっとそんな風に見えていたのかもしれない。

 萌衣がそんな態度であれば、結婚は無理しなくていいとジャンだって言いたくなるだろう。

「すいません。そういう訳ではないんですけど……」

 荒巻にジャンとTOMOKAの関係を考えると胸が苦しくなるのだなど言えるはずもなく、萌衣は更に言葉を濁した。

「まあ、結婚ってそんないいもんでもないよ?」

 荒巻の返答に顔を上げる。

「そうなんですか……?」

「そうだよ。自由な時間は減るし、嫁は結婚前と態度が急変するし、子供は夜泣きで眠れないわで大変だよ」

 だから家に帰りたくなくなるんだよねと首を横に振りながら、荒巻はビールを一気に飲み干した。 
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