長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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溺れる人魚

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優姫はアシスタントディーラーであった。今日は、アメリカで一夜の親友でありディーラーのジェイクを成田まで迎えに来たのだが、初対面からとんだ失敗をしでかした。

「あんた、結構まともな英語喋れるんだな」

関心してジェイクは言う。

「中学までアメリカにいました。日本ではアメリカンスクールに通って、大学はまたアメリカに留学しました。両親が日本人なので、大学卒業後帰ってきました」

ふーん、とジェイクは言う。

「そう言えばまだ名前聞いてなかったな」

「すみません!慌ててばかりで自己紹介遅れました。胡桃沢優姫です。今年入社した23歳です」

若いなとジェイクは思った。

「とりあえずユーキって呼ぶわ。これからよろしくな、俺のアシスタントさん」

ジェイクと優姫は握手をした。

「手も本当にちっさいな。子供にしか見えない」

ジェイクは吹き出して笑う。その顔を優姫はジッと見つめる。

「な、なんだよ」

さっきから小馬鹿にしていたので怒ったのかとジェイクは思った。

「一夜さんといい、ジェイコブさんも、仕事できる人って顔も良いんですか?」
    
不意打ちで真顔で優姫が言うので、ジェイクは思わずにやけてしまった。

 
 単純な人そう。確か30って聞いた気がするけど、見た目はインテリイケメンだけど中身子供だな。


一夜を相手にしていたので、ジェイクの方が取っつきやすいと優姫は思った。
一夜に初めて会った時、この人はヤバい人だと思ってたからだった。綺麗な顔で色気があって、どこか影があって。普通の女なら簡単に落とすのだろうと。
優姫は海外経験が長い割に意外と純情で、未だ処女で全く男を知らなかった。
なので見るからに“触るな危険”の一夜には近づかなかった。

「そろそろ会社に行きましょう。車を待たせてます」

コーヒーショップを出て、優姫はジェイクのトランクを引こうとした。

「良いよ。女の子に持たせたらカッコ悪いだろ」

ジェイクは自分で持ってサッサと歩く。脚の長さが違うので優姫は付いていくのがやっとだった。
会社に17時に着くと、一夜とジェイクはハイタッチをした。

「疲れただろう?住むところは僕が住んでるマンションと同じところを用意してくれたから、後で社長秘書の高輪由紀子が案内してくれる。僕も仕事が終わったらジェイクの部屋へ行くよ」

「了解。どうだ日本は」

「それもゆっくり後でね。ところで優姫、君って子は」

一夜が優姫を笑いながら睨む。

「すみませんでした!二度とないように気をつけます」

優姫はそう言って一夜の部屋を出た。
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