長い夜、蒼い月

狂気の嫉妬

９２

洋輔に抱かれながら一夜を思い浮かべる。
洋輔の身勝手な動きに由紀子は合わせ、求められるまま従順な妻になりきる。
一夜にも愛されず、夫にも愛されていないと思うと由紀子は苦しくなった。
二人ともただ由紀子の身体だけなんだと思った。それでも由紀子はやっぱり一夜を求めてしまう。
一夜の他の女が憎いとさえ思ってしまうほど。


　どうしたって、一夜から逃げられない。
　会いたい。
　一夜に。


由紀子は夫が果てるまで我慢した。
由紀子はもう何年も洋輔でイったことがない。
洋輔とは、ただ子供が欲しいための儀式だったんだと由紀子も認めた。
洋輔が自分の快楽の為に、由紀子の身体を抱くのを今は仕方なく受け入れるしかなかった。
だからもう、一夜に会うのを我慢をするのはやめた。
愛する男に抱かれたい。女の悦びを感じたくて仕方なかった。たとえ破滅しても、一夜と離れられないと思った。
洋輔が寝ると、由紀子はスマホを見た。一夜からの着信が嬉しかった。
一夜にLINをした。夜中12時を過ぎていた。

【愛してる。離れて分かったわ。やっぱり一夜を忘れるなんて無理。身体の関係だけでいいの。お願い、側にいて】

既読になって、一夜がまだ起きていると分かった。

【明日の夜会いたい。由紀子が欲しい】

一夜の返事に泣きそうになった。

【わかったわ。明日、マンションに行きます】 

吹っ切れたように由紀子はベッドに戻ると眠った。
一夜もジェイクの事も忘れるくらい由紀子のことでいっぱいになる。
あれだけ虚しく寂しい気持ちが一気に吹き飛んだ。