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50. 殲滅作戦
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三下達が襲われ始めてから数分が経った。
今は胸の辺りまでスライムに包まれ、三下達は全員空気を求めて口を開けている。
しかし助けようとする人は誰もいない。
当然だろう。
この間、贖罪の機会が与えられたのにも関わらず、結界が破壊された原因を市長の娘さんにしたんだからな。
ちなみにこの情報は市役所防衛に貢献した人だけが教えられているらしいから、ここでの会話に出すことは出来ない。
「はぁはぁ……。頼む……助けてくれ……!」
必死に抜け出そうとしているのか、息を切らしながら三下が叫ぶ。
だが、当然のように誰も反応しない。もう見捨てられているからだ。
「ねぇ、塩かけたらどうかな?」
「ナメクジかよ」
「でも、水分が減って小さくなるかも……」
確かに、あの水々しい見た目からすればあり得ない話では無いだろう。
小さくすることができれば勝率は一気に上がるはずだ。
「可能性はあるな……。で、塩ってあるのか?」
「無いから、そこのスーパーから回収しよう?」
「分かった」
透明度を増したスライム越しに、服が溶けて三下たちの下半身が見えているこの状況。
離れられるのはかなり助かる。
というかスライムに服溶かされて丸見えになるのはエロマンガの世界だけで十分なんですよ。現実に、しかも男に起きたら最悪だ。
「塩はこの辺かな……」
「だな」
「チャック付きの方がいいよね?」
「当たり前だろ。先に開けておくぞ」
「うん」
接敵してから袋を開けていたらすぐに襲われてしまうからな。
アイテムボックスから出してひっくり返すだけで済む状態にしておく。
「これ全部やってる時間あるか?」
「スライムは焦らしてるみたいだから、大丈夫だと思うよ」
「どっちでもいいけど、急ぐぞ」
チョキチョキ……。
チョキチョキチョキチョキ。
「これだけあれば十分だろ」
「まだ不安だけど……」
「これ以上時間かけてたらヤバいだろ」
「うん……」
開封済みの食塩を全てアイテムボックスに詰め込み、さっきの公園に戻る俺達。
そこには、頭まで完全にスライムに飲み込まれ、服を溶かされた状態の三下達の姿があった。
「あー、死んでるなあれ……」
見殺しにせざるを得ない状況だったとはいえ、もやもやとした何かが胸の内に渦巻く。
同時に、理不尽に追い出された借りを返せたとスッキリもしている。
複雑な気持ちだ。
これを言ったらクズ扱いされるかもしれないが、一番はこの手を汚さずに三下たちの悪行を止められて安心している。
だが、スライムは安堵の時間などくれないようで……。
「逃げろ!」
三下たちから離れ、膜状に広がったスライムが俺達に襲い掛かってきた。
足がすくんだのか固まるレナさんを抱き抱え、地面を蹴る。
……が、周りの人と離れたのがいけなかったのかスライムは空中で軌道を変えて俺達に絡みつこうとしてきた。
そして、バラバラになって地面に落ちた。
「危なかったな……」
「うん……。なんかヒリヒリする……」
「触れてるとヤバそうだな。離れよう」
睡眠にかかったスライム達に足が埋もれ、ヒリヒリする。
が、簡単に抜け出せた。
液体が足にくっついたりもしていないが、靴の汚れが綺麗さっぱり取れていた。
靴の表面が少し溶けたようだ。
肌もツルツルになっているが、これは気にしないでおこう。
「大丈夫か?」
「ああ、なんとか」
全員揃ってスライムに攻撃しているが、弾力が良くて中々倒せていない。
「レナさん、一個だけ出してくれ」
「うん」
アイテムボックスの存在がバレないように、一掴みだけ塩を取り出してばら撒くレナさん。
次の瞬間、スライムから水分が染み出してきて、表面がカピカピになった。
そいつ目がけて剣を振り下ろす。
パアァンッ!
「うおまじか」
経験値が入ったという通知も動いた。
どうやら塩をかけてから叩けば倒せるようだ。
「今のどうやった!?」
「塩かけたらこうなった」
「マジか、塩でいけるのか。じゃあションベンかけたろ」
「見えないところでやれよ。てかそこのスーパーに塩あるだろ」
「俺様はそんな面倒なことはしないのさ」
「カッコつけてるのか知らんけど、汚いだけだよ。あっち行け」
露出は去れ。以上。
ちなみにスーパーの方は一気に人が押し寄せて大変なことになっているが、抜け出した一人が塩の袋を抱えて持ってきてくれた。
「よし、開けるぞ。せーの!」
あ、そのまま袋を引きちぎったら……。
それから数分、ぶちまけられた塩によって干からびたスライムを倒し終え、俺達は市役所に戻っていた。
発電機能とやらがついたお陰か、中は照明によって明るくなっている。
しかし少し暑いのは変わらないようだ。
エアコンの音はするが、これだけ広いと冷えるのに時間がかかるだろう。
ちなみに結界も広がっており、周囲の無事なマンションを勝手に借りて住居にする計画も出ているらしい。
それともう一つ。
結界を消滅させた犯人である三下達の死が広く知らされたことだ。
これによって皆安心できるようになり、市役所の中の活気は上がっていた。
「ハルさん、お腹すいたしそろそろお昼にしない?」
「そうだな」
換気扇が使えるようになったことで、通常通りの営業を始めた食堂に向かう俺達。
今日からの生活は少し変わりそうだ。
今は胸の辺りまでスライムに包まれ、三下達は全員空気を求めて口を開けている。
しかし助けようとする人は誰もいない。
当然だろう。
この間、贖罪の機会が与えられたのにも関わらず、結界が破壊された原因を市長の娘さんにしたんだからな。
ちなみにこの情報は市役所防衛に貢献した人だけが教えられているらしいから、ここでの会話に出すことは出来ない。
「はぁはぁ……。頼む……助けてくれ……!」
必死に抜け出そうとしているのか、息を切らしながら三下が叫ぶ。
だが、当然のように誰も反応しない。もう見捨てられているからだ。
「ねぇ、塩かけたらどうかな?」
「ナメクジかよ」
「でも、水分が減って小さくなるかも……」
確かに、あの水々しい見た目からすればあり得ない話では無いだろう。
小さくすることができれば勝率は一気に上がるはずだ。
「可能性はあるな……。で、塩ってあるのか?」
「無いから、そこのスーパーから回収しよう?」
「分かった」
透明度を増したスライム越しに、服が溶けて三下たちの下半身が見えているこの状況。
離れられるのはかなり助かる。
というかスライムに服溶かされて丸見えになるのはエロマンガの世界だけで十分なんですよ。現実に、しかも男に起きたら最悪だ。
「塩はこの辺かな……」
「だな」
「チャック付きの方がいいよね?」
「当たり前だろ。先に開けておくぞ」
「うん」
接敵してから袋を開けていたらすぐに襲われてしまうからな。
アイテムボックスから出してひっくり返すだけで済む状態にしておく。
「これ全部やってる時間あるか?」
「スライムは焦らしてるみたいだから、大丈夫だと思うよ」
「どっちでもいいけど、急ぐぞ」
チョキチョキ……。
チョキチョキチョキチョキ。
「これだけあれば十分だろ」
「まだ不安だけど……」
「これ以上時間かけてたらヤバいだろ」
「うん……」
開封済みの食塩を全てアイテムボックスに詰め込み、さっきの公園に戻る俺達。
そこには、頭まで完全にスライムに飲み込まれ、服を溶かされた状態の三下達の姿があった。
「あー、死んでるなあれ……」
見殺しにせざるを得ない状況だったとはいえ、もやもやとした何かが胸の内に渦巻く。
同時に、理不尽に追い出された借りを返せたとスッキリもしている。
複雑な気持ちだ。
これを言ったらクズ扱いされるかもしれないが、一番はこの手を汚さずに三下たちの悪行を止められて安心している。
だが、スライムは安堵の時間などくれないようで……。
「逃げろ!」
三下たちから離れ、膜状に広がったスライムが俺達に襲い掛かってきた。
足がすくんだのか固まるレナさんを抱き抱え、地面を蹴る。
……が、周りの人と離れたのがいけなかったのかスライムは空中で軌道を変えて俺達に絡みつこうとしてきた。
そして、バラバラになって地面に落ちた。
「危なかったな……」
「うん……。なんかヒリヒリする……」
「触れてるとヤバそうだな。離れよう」
睡眠にかかったスライム達に足が埋もれ、ヒリヒリする。
が、簡単に抜け出せた。
液体が足にくっついたりもしていないが、靴の汚れが綺麗さっぱり取れていた。
靴の表面が少し溶けたようだ。
肌もツルツルになっているが、これは気にしないでおこう。
「大丈夫か?」
「ああ、なんとか」
全員揃ってスライムに攻撃しているが、弾力が良くて中々倒せていない。
「レナさん、一個だけ出してくれ」
「うん」
アイテムボックスの存在がバレないように、一掴みだけ塩を取り出してばら撒くレナさん。
次の瞬間、スライムから水分が染み出してきて、表面がカピカピになった。
そいつ目がけて剣を振り下ろす。
パアァンッ!
「うおまじか」
経験値が入ったという通知も動いた。
どうやら塩をかけてから叩けば倒せるようだ。
「今のどうやった!?」
「塩かけたらこうなった」
「マジか、塩でいけるのか。じゃあションベンかけたろ」
「見えないところでやれよ。てかそこのスーパーに塩あるだろ」
「俺様はそんな面倒なことはしないのさ」
「カッコつけてるのか知らんけど、汚いだけだよ。あっち行け」
露出は去れ。以上。
ちなみにスーパーの方は一気に人が押し寄せて大変なことになっているが、抜け出した一人が塩の袋を抱えて持ってきてくれた。
「よし、開けるぞ。せーの!」
あ、そのまま袋を引きちぎったら……。
それから数分、ぶちまけられた塩によって干からびたスライムを倒し終え、俺達は市役所に戻っていた。
発電機能とやらがついたお陰か、中は照明によって明るくなっている。
しかし少し暑いのは変わらないようだ。
エアコンの音はするが、これだけ広いと冷えるのに時間がかかるだろう。
ちなみに結界も広がっており、周囲の無事なマンションを勝手に借りて住居にする計画も出ているらしい。
それともう一つ。
結界を消滅させた犯人である三下達の死が広く知らされたことだ。
これによって皆安心できるようになり、市役所の中の活気は上がっていた。
「ハルさん、お腹すいたしそろそろお昼にしない?」
「そうだな」
換気扇が使えるようになったことで、通常通りの営業を始めた食堂に向かう俺達。
今日からの生活は少し変わりそうだ。
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