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22. 余命10日①
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昨日からの気まずい夕食を無事に終えてから1時間、私は眠る準備を終えてベッドに入っていた。
「もう眠いから寝るわね。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
そう口にして、そっと部屋の扉を閉めるマリー。
既に感じていた眠気はあっという間に強くなって……。
……。
……気が付いたら、淡い光の中にいた。
「ようやく運命を変える気になったのね」
昨日と同じ、私の姿をした少女がそんなことを口にする。
「どういう意味?」
「ようやく行動してくれたから、安心したの」
よく分からないけど、私の選択は間違いではなかったらしい。
でも、精霊に未来を見る力なんてあるのかしら……?
そもそも、目の前にいる少女は本当に精霊なの……?
考えても答えは出なかった。
「ねえ、貴女って精霊なの……?」
「人間にはそう呼ばれてるみたい。でも、名前は別にあるよ」
「そうなのね……」
やっぱり、私は精霊に興味を持たれているらしい。
夢の中で精霊と会話出来る人は、精霊に愛されていると聞いたけれど、本当に愛されている確信は持てていない。
「じゃあ、昨日言ってた違う世界の私っていうのは……?」
「あんなの出鱈目に決まってるじゃない」
「え……?」
「まさかあれを信じてたの?」
笑いながらそう口にする精霊。ちょっと意地悪な性格らしい。
「信じてたのに……」
「正確に言うと、別の世界の貴女の記憶を持つ精霊ってところよ。だから、完全な嘘ではないわ」
要するに、ややこしくなるから分かりやすい説明をしてくれたってことね。
「そんなところね」
「さらっと人の心を読まないで……!」
「ねえ、私と契約しない?」
私の抗議の声は完全に無視されて、唐突にそんな提案をされた。
「契約したら不幸になるって聞いたのだけど?」
「あれは力に溺れて勝手なことをし過ぎたからよ。謙虚でいれば不幸にはならないわ」
「そうだったのね……」
結局のところ、不幸になるかならないかは自分次第らしい。
でも、契約する利点が化け物じみた力を使えるようになることしか思い浮かばない。
「それ以外にも、私が貴女を護れるようになるわ。事故死だって、ある程度は防げるのよ」
「契約しても運命が変わるかは分からないのね……」
「それは私にも分からないわ。運命なんて、その時にならないと変わっているか分からないもの」
「そう……」
正直、運命が変わるなら早く知りたかった。
そうすれば、あと10日で死ぬなんていう恐怖に震えずに済むから。
でも、精霊の加護があれば、事故死という運命を変えられるかもしれない。
機会を逃して後悔するより、出来る限りのことをして後悔したい。
「ちなみにだけど、私から貴女には何をすればいいの?」
「魔力さえ分けてくれれば満足よ。実は明日にでも魔力が切れて動けなくなってしまいそうなの……」
「分かったわ、そういうことなら契約してもいいわよ」
「ありがとうっ!」
すごく安心したような、とても嬉しそうな、一言では言い表せない眩しい笑顔がそこにあった。
「儀式は貴女が目を覚ましてから、誰もいない場所でするね」
「分かったわ」
「じゃあ、またね」
そんな言葉の直後、目の前の少女は姿を消して、辺りは真っ暗になってしまった。
……。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう」
いつも通りの時間に部屋に入ってきたマリーに挨拶を返す私。
すぐに学院に行くための準備を始めたのだけど……
「お嬢様、申し訳ないのですが……お手洗いに行ってきてもいいでしょうか?」
……マリーが少し辛そうな様子でそう口にした。
「いいわよ」
「ありがとうございます……」
足早にマリーが部屋を後にし、部屋の中が静寂に包まれる。
そんな時だった。
私の目の前に、突然人影が現れた。
「これで誰もいなくなったね。戻ってくる前に契約するよ」
白いワンピースに身を包んだ私と同じ姿の少女。彼女が夢の中で出てきた精霊だということはすぐに分かった。
「ええ、何をすればいいのかしら?」
だから、私は契約の方法を尋ねた。
「もう眠いから寝るわね。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
そう口にして、そっと部屋の扉を閉めるマリー。
既に感じていた眠気はあっという間に強くなって……。
……。
……気が付いたら、淡い光の中にいた。
「ようやく運命を変える気になったのね」
昨日と同じ、私の姿をした少女がそんなことを口にする。
「どういう意味?」
「ようやく行動してくれたから、安心したの」
よく分からないけど、私の選択は間違いではなかったらしい。
でも、精霊に未来を見る力なんてあるのかしら……?
そもそも、目の前にいる少女は本当に精霊なの……?
考えても答えは出なかった。
「ねえ、貴女って精霊なの……?」
「人間にはそう呼ばれてるみたい。でも、名前は別にあるよ」
「そうなのね……」
やっぱり、私は精霊に興味を持たれているらしい。
夢の中で精霊と会話出来る人は、精霊に愛されていると聞いたけれど、本当に愛されている確信は持てていない。
「じゃあ、昨日言ってた違う世界の私っていうのは……?」
「あんなの出鱈目に決まってるじゃない」
「え……?」
「まさかあれを信じてたの?」
笑いながらそう口にする精霊。ちょっと意地悪な性格らしい。
「信じてたのに……」
「正確に言うと、別の世界の貴女の記憶を持つ精霊ってところよ。だから、完全な嘘ではないわ」
要するに、ややこしくなるから分かりやすい説明をしてくれたってことね。
「そんなところね」
「さらっと人の心を読まないで……!」
「ねえ、私と契約しない?」
私の抗議の声は完全に無視されて、唐突にそんな提案をされた。
「契約したら不幸になるって聞いたのだけど?」
「あれは力に溺れて勝手なことをし過ぎたからよ。謙虚でいれば不幸にはならないわ」
「そうだったのね……」
結局のところ、不幸になるかならないかは自分次第らしい。
でも、契約する利点が化け物じみた力を使えるようになることしか思い浮かばない。
「それ以外にも、私が貴女を護れるようになるわ。事故死だって、ある程度は防げるのよ」
「契約しても運命が変わるかは分からないのね……」
「それは私にも分からないわ。運命なんて、その時にならないと変わっているか分からないもの」
「そう……」
正直、運命が変わるなら早く知りたかった。
そうすれば、あと10日で死ぬなんていう恐怖に震えずに済むから。
でも、精霊の加護があれば、事故死という運命を変えられるかもしれない。
機会を逃して後悔するより、出来る限りのことをして後悔したい。
「ちなみにだけど、私から貴女には何をすればいいの?」
「魔力さえ分けてくれれば満足よ。実は明日にでも魔力が切れて動けなくなってしまいそうなの……」
「分かったわ、そういうことなら契約してもいいわよ」
「ありがとうっ!」
すごく安心したような、とても嬉しそうな、一言では言い表せない眩しい笑顔がそこにあった。
「儀式は貴女が目を覚ましてから、誰もいない場所でするね」
「分かったわ」
「じゃあ、またね」
そんな言葉の直後、目の前の少女は姿を消して、辺りは真っ暗になってしまった。
……。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう」
いつも通りの時間に部屋に入ってきたマリーに挨拶を返す私。
すぐに学院に行くための準備を始めたのだけど……
「お嬢様、申し訳ないのですが……お手洗いに行ってきてもいいでしょうか?」
……マリーが少し辛そうな様子でそう口にした。
「いいわよ」
「ありがとうございます……」
足早にマリーが部屋を後にし、部屋の中が静寂に包まれる。
そんな時だった。
私の目の前に、突然人影が現れた。
「これで誰もいなくなったね。戻ってくる前に契約するよ」
白いワンピースに身を包んだ私と同じ姿の少女。彼女が夢の中で出てきた精霊だということはすぐに分かった。
「ええ、何をすればいいのかしら?」
だから、私は契約の方法を尋ねた。
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