公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多

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「これは何の騒ぎですか?」

 私がアンセルを問い詰めていると、この授業の担当の教授が近付いてきた。

「火の魔法で攻撃をされたので、理由を聞いていましたの」
「なるほど。後で個別に事情を聴くので、今は練習に戻ってください」
「分かりましたわ」

 教授の言葉で私は練習に戻った。
 のだけど……

「ああもう、イライラしますわ……」
「私もですわ」

 私の愚痴に頷くリエルさん。
 私も彼女も、魔法の威力が高くなっているのは勘違いではなさそうね。

「次同じことをされたら反撃してしまいそうですわ」

 そう言いながら放った火の玉が的に当たった瞬間だった。
 ガシャンと派手な音を立てながら、的が砕け散った。

 予想外の出来事に固まってしまう私。
 まさか練習用の、そこそこ頑丈な的が壊れるとは思わなかった。

「なんですか、今の音は?」

 そんなことを言いながらやってきた教授。
 惨状を見ると少しの間固まって、ゆっくりと口を開いた。

「弁償、ですわよね……?」
「これは消耗品なので、そのようなことはありません。替えを用意するので、少し待っていてください」

 そう言われて安心する私。
 お父様に頭を下げることまで考えていたのだけど、杞憂に終わって良かったわ……。



 それから数十分、授業が終わると私とアンセルは魔法演習室に残されて、話を聞かれていた。

「つまり、アンセルさんが脅されたことを理由にレシアさんに攻撃魔法を放った。そういうことで間違い無いですね?」
「はい」

 素直に非を認めるアンセル。
 ある程度の無礼が許される学院内と言っても、攻撃をしたら責任を追求されるのは分かりきっているのに……何故こんなことをしたのかしら?

 事故を装うつもりだったのか、それとも他人に罪をなすり付けるつもりだったのか。それは分からない。
 でも、これだけは言える。セラフィの根があり得ないくらい腐ってて、卑怯者だということだけは。

「今回は何事もありませんでしたが、このことは会議にかけて処分を検討します。それまで、アンセルさんは反省室にいるように。
 レシアさんは戻っていただいて構いません」
「分かりましたわ」

 一礼してから練習室を出る私。
 すぐに昼食のために食堂に向かったのだけど……。

「やっぱりそうなるわよね……」

 全ての席が埋まっていて、私は踵を返そうとした。

「レシア様~! こっちですわ!」

 手を振りながら私に声をかけてくるリエルさん達。
 そこに行ってみるとしっかりと私の席が確保されていて、私は初めて取り巻きの有難さを実感した。

「他の方を脅したりしていませんわよね……?」
「「当然していませんわ」」

 自信に満ちたその言葉を聞いて、私は安心して席についた。
 でも、この後の会話は色々と気を遣ってしまって、いつもよりも疲れてしまった。
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