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16話 公王の死
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僕が宛がわれた部屋は、調度品の少ない客室だった。ベットと机と、洋服箪笥それだけだ。部屋の隅には、竜車に乗せておいた荷物が運ばれていた。とはいっても大した量の荷物では無いけれど。
夕食は部屋に来る前に城にある大きな食堂に案内されて食べた。
はっきり言って、あまり美味しくなかった。味は薄く、パンは硬かった。コレなら、旅で食べていた料理の方が美味しかった。
どうやらこの城では、どんなに偉い人でも、戦時は全員同じものを食べるのがしきたりだとガルロックさんが言っていた。つまり公女であるフォニアさんも一般兵も同じものを食べるのだそうだ。
今回は支援物資が届いた事から多少はマシになるとは思うけど、もうちょっと美味しい物が食べたかったな。
ラフな格好に着替えベットに横になると、僕はこれからの事を考えた。
公王様が死んだら、たとえ後継にフォニアさんを指名していたとしても、他国に国として認められなくなる可能性がある。むしろそうしそうな気がする。そうなった場合の僕の扱いはどうなるのだろう?教会に戻されるのか?それとも他の最前線国家に再配置されるか?
それは嫌だなぁ。あの蔑みや哀れみの目を向けられて生活するのはゴメンこうむりたい。なら、この国で暮らせるようにしなければならないか・・・。だけど、どうにかするにもフォニアさんが次の公王として立つ意思を持たなければ為らない。
様は、フォニアさん次第という事だ。なら、ここでうだうだ考えても仕方が無い。どっちにせよ。碌な事には、ならないのだ。ならば、それを覚悟して、今はゆっくり休もう。さすがにザムに乗っているだけとは言え、長距離行軍は堪えた。
僕はあっという間に眠りに落ちた。
僕はドンドンドンという激しく扉を叩く音で眼を覚ました。その音に目を開けると、目の前は真っ暗だった。
「アマタ様!申し訳ありません!起きてくださいませ!アマタ様!」
一瞬アポリオンの襲撃かもとも思ったが、アポリオンの襲撃の際に鳴るといわれている鐘の音はしていない。
「何だ?まだ夜じゃないか?」
ベットから降りると、真っ暗の部屋の中を記憶を頼りに扉まで移動する。手を伸ばしてドアノブを確認すると、扉を開けた。扉の向こうには思いつめた表情のリーリアさんが、ランプを片手に待っていた。
「どうしたんですか?まだ夜じゃないですか?」
「こんな夜分に申し訳ありません。陛下がお呼びです。至急と…」
迎えに来たリーリアさんは、無表情ではあったが、その言葉には焦りがあった。それは、何が起きるか察せられた。
「分かりました。すぐに行きます」
公王様の部屋には、公王様のベットを囲むようにフォニアさん、セリアさん、ガルロックさんそして医者と思われる男性が立っていた。
フォニアさんは、ワンピースの寝巻きの上にショールを掛けていた事から彼女も休んでいた所で呼ばれたのだろう。
「失礼します。遅くなりました」
「お待ちしてましたぞ。アマタ殿」
ベットの上で公王様は、背中に大きなクッションをはさんで身を起こしていた。顔色は、血の気は無く真っ白で、死相が浮かんでいた。この人はもうすぐ死ぬと僕には分かった。
「ここで皆を呼んだのは他でもない。スベン公国の次代の王を指名しようと思ってな」
だが、公王様は死のふちに瀕していると言うのに、それに反して声は弱弱しくあったが穏やかだった。
「お止め下さい!お父様!そんな話は聞きたくありません」
フォニアさんはベットの横ですがりつきながら言う。
「そうもいかん。私は、もうすぐ死ぬ」
「そんな事…言わないでくださいませ!」
「私の体の事は私が一番良くわかっている。いや、お前達にも分かっているだろう。私は、後継としてフォニア。お前を指名する」
16歳の娘に王位を託すのは酷では無いかと僕は思う。元の世界では、高校に入学して勉強に遊びにと青春を謳歌している年齢だ。なのにいきなり国のトップに立ち、率いて行けとは、無理な話だ。
「ですがハイレルゲンは!もうスベン公国はおしまいです!首都を落とされ、兵も殆ど失ってしまいました!」
「国は王にあらず首都にあらず。国とは人。民なのだ。民が無事であれば、そこはまだ国がある。であるならば、我ら王族には最後まで民を庇護する義務がある」
「私には無理です!お父様が居なければ!お父様でなければ!」
「難しく考えるな。無理に国を再興する必要ない。フォニア。せめて民が後の世界を生きていける様に道筋をつけるだけで良いのだ。民が生きていればそこに我が国があるのだ。たとえスベン公国の名が忘れられたとしてもだ」
公王様は、残された左腕でフォニアさんの頭を撫でた。
「不甲斐無い父ですまない。お前にこの様な事を頼み、逝く父を恨んでくれ」
「お父様を恨むなど!…お父様。わっ私は、最後までスベン公国の王…族として、国・・・を」
ベットの横でひざまづい顔を伏せていたフォニアさんは、泣いていた。何とか言葉にしようともそれがうまく言えていない。けれど、フォニアさんが言おうとしている事はこの場に居る全員に伝わっていた。
僕にいきなり国を率いてけと言われたらこんなにすぐに了承できるだろうか?そもそも了承する事が出来るだろうか?無理だ。
公王様も、フォニアさんを撫でながらゆっくりと頷いた。
「そうか、すま…そうでは無いな。ありがとうフォニア。ガルロック。リーリア。すまないが、娘を頼むぞ」
「身命に誓いまして…」
「この身の続く限り、お仕えさせていただきます」
二人は、それぞれの最上級の礼をしてそれに答える。
「そして、アマタ殿、こんな事になって申し訳ない。先行き見えぬ我が国だが、フォニア達なら君の事を悪く扱う事は無いだろう」
「いえ、悪いのはアポリオンです。御気になさらずに」
「そう言ってくれるか…。さすがに疲れた。今日はもう休むとしよう」
公王様は、フォニアさんを撫でていた手を止めそっと目を閉じた。
「お父様!」
「陛下!」
傍に居た医師が慌てて、公王様の腕を取り、脈を調べる。僕達はその様子を黙ってみているしかない。
「…陛下は、お亡くなりになりました」
その言葉を聞いたフォニアさんは、公王様に取り縋り大声で泣いた。僕以外の人達が無言で涙を流している。
これが、僕が生まれて初めて立ち会った人の死だった。
部屋に帰り、ベットへと座る。
異邦人の僕があの場に居ても出来る事は何も無い。リーリアさんに促されて、僕は部屋へと戻った。
人の死を間近でみた。
眠れない僕は、ベットに座ってサイドテーブルに置かれたランプの炎を見てボーっとしていた。
ふいに扉がノックされた。
僕はランプを持って扉へと向かう。
「はい!なんでしょうか?」
「フォニアです。お休みの所申し訳ありません。少しお話を聞いて欲しいのです」
扉を開けるとそこには、思いつめた表情のフォニアさんがメイドさんを伴わずに一人で立っていた。
「どっどうしたんですか?」
「中に入ってもよろしいですか?廊下で出来る話ではないのです」
「どっどうぞ」
「失礼します」
フォニアさんを迎え入れ、部屋に備え付けてあった椅子を持ってきて運ぶ。
「いえ、大丈夫です。アマタ様はお座り下さい」
「はぁ」
僕は、ベットに腰掛けると、フォニアさんを見上げる形になった。
「まず最初に、謝らせてください。ごめんなさい!私は嘘をつきました!我が国は絶えずアポリオンとの戦いを繰り返し、首都ハイレルゲンは、その最前線だったのです」
フォニアさんはそう言って頭下げた。
「はい、知ってます。崖が崩れ落ちてから、ここまでの道中にセリアさんから話を聞きましたから…」
まぁもしこの状態で「だ~まされた騙された!あははは!」とか言われたら僕も切れただろうけど。本当に申し訳なさそうに頭を下げている彼女に怒鳴り散らす事が出来るほど僕も強い精神を持ってない。
「でもまぁ。自分の国を救いたかったんでしょ?僕を騙したのは、悪い事だけど、ちゃんと調べなかった僕も悪かったんだよ。ね。だから、頭上げてよ」
僕は気にしていないという風に両手を前で軽く振りながら言う。
「アマタ様。これは、私の自分勝手なわがままである事は分かっています。どうか、民達の処遇が決まるまでの間。このカルナートの…いえ、スベン公国の防衛に協力してくださいお願いします!」
そう言うとフォニアさんは、今度は、僕の目の前で土下座した。
「フォニアさん!?」
「代償は、もちろん対価はお支払いいたします。ですが、私が貴方様へ差し出せる物は一つだけ。私は、この身を全て貴方様へと奉げます。足を舐めろと言われれば舐めます。夜伽をせよ言うなら喜んで致しましょう。ですからどうかお願いします!スベン公国を守るのにお力をお貸し下さい!」
「ちょっちょっちょっちょっと落ち着いて!」
「落ち着いています。落ち着いて考えた結果。こうすべきだと私は、判断しました。今の我が国の戦力では、アバドンに到底太刀打ちできない。このカルナートを守る為にはアマタ様の力は不可欠。であるならば、相応の対価を支払い、助力を請うのが当然です。ですが、今あるお金も物資も全て民の為に使われるべき物。王家としての資産も、残りの殆どがハイレルゲンにあります。些少な対価ですが、今私が支払いに使えるのは、この身しかないのです」
ああ、もう!何でこんな事に!こんなの僕の役目じゃない!ケンジさん達の役目だろう!僕はモブなんだぞ!量産型モブなんだぞ!片田舎でのんびり害獣を駆除してのんびり生活出来ると思っていたのに!
「分かった。分かりましたから頭を上げてください!もう卑怯ですよ!こんなの!」
「ほっ本当ですか!」
フォニアさんは顔を上げて聞いてきた。頬には、涙が流れた跡があり、それがランプの明かりを反射する。
「本当ですから。もう土下座なんてしないでください」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
しかし、フォニアさんは僕がいくら言っても涙を流しながら、頭を上げたり下げたりを繰り返していた。そんなに頭を振ったら脳みそがシェイクになっていますから!
「やめて下さい。お願いしますから!貴方女王になるのでしょう!そんなに軽々しく頭を下げちゃいけないですよ!」
僕には、女の子を涙目で土下座させて喜ぶ性癖なんて無い!
止めさせる為に、フォニアさんの肩をつかんで無理矢理立たせる。その時僕は気付いた。フォニアさんの体は震えていた。そりゃそうだ。民の為とは言っても殆ど見ず知らずのような男に体を奉げに来たんだ。怖くないはずなんて無い。
「アマタ様は女王のご主人様なのです!頭を下げても問題ありません!」
女王のご主人様って何ですかね?
「じゃあ命令です。明日からの仕事に備えて、部屋に帰ってもう寝てください」
「ですが…それでは。夜伽が出来ません!」
「いいですから!今日は寝てください!メイドさん呼んで引き取ってもらいますよ!安心して下さいちゃんと戦いますから…」
僕はフォニアさんをそのまま部屋の外まで押し出す。
「分かりました。部屋に戻る事にします。失礼しますご主人様。おやすみなさいませ」
そこでようやくフォニアさんは諦めてくれた。
「はい。おやすみなさい。また明日」
最後にパタンと扉を閉めた時、ドット疲れが押し寄せてきた。僕は、一応の用心に扉に鍵をかけるとすぐにベットにもぐりこんだ。息を吹きかけ、ランプを消し、部屋の中を真っ暗にする。明るくしたままにしていたらまたフォニアさんが突撃してきそうだったからだ。
ご主人様なんて台詞、アニメでしか聞いた事無いよ。健全なオタクには刺激が強すぎる!
一人ベットの上で悶々としていると、いつの間にか朝になっていた。
夕食は部屋に来る前に城にある大きな食堂に案内されて食べた。
はっきり言って、あまり美味しくなかった。味は薄く、パンは硬かった。コレなら、旅で食べていた料理の方が美味しかった。
どうやらこの城では、どんなに偉い人でも、戦時は全員同じものを食べるのがしきたりだとガルロックさんが言っていた。つまり公女であるフォニアさんも一般兵も同じものを食べるのだそうだ。
今回は支援物資が届いた事から多少はマシになるとは思うけど、もうちょっと美味しい物が食べたかったな。
ラフな格好に着替えベットに横になると、僕はこれからの事を考えた。
公王様が死んだら、たとえ後継にフォニアさんを指名していたとしても、他国に国として認められなくなる可能性がある。むしろそうしそうな気がする。そうなった場合の僕の扱いはどうなるのだろう?教会に戻されるのか?それとも他の最前線国家に再配置されるか?
それは嫌だなぁ。あの蔑みや哀れみの目を向けられて生活するのはゴメンこうむりたい。なら、この国で暮らせるようにしなければならないか・・・。だけど、どうにかするにもフォニアさんが次の公王として立つ意思を持たなければ為らない。
様は、フォニアさん次第という事だ。なら、ここでうだうだ考えても仕方が無い。どっちにせよ。碌な事には、ならないのだ。ならば、それを覚悟して、今はゆっくり休もう。さすがにザムに乗っているだけとは言え、長距離行軍は堪えた。
僕はあっという間に眠りに落ちた。
僕はドンドンドンという激しく扉を叩く音で眼を覚ました。その音に目を開けると、目の前は真っ暗だった。
「アマタ様!申し訳ありません!起きてくださいませ!アマタ様!」
一瞬アポリオンの襲撃かもとも思ったが、アポリオンの襲撃の際に鳴るといわれている鐘の音はしていない。
「何だ?まだ夜じゃないか?」
ベットから降りると、真っ暗の部屋の中を記憶を頼りに扉まで移動する。手を伸ばしてドアノブを確認すると、扉を開けた。扉の向こうには思いつめた表情のリーリアさんが、ランプを片手に待っていた。
「どうしたんですか?まだ夜じゃないですか?」
「こんな夜分に申し訳ありません。陛下がお呼びです。至急と…」
迎えに来たリーリアさんは、無表情ではあったが、その言葉には焦りがあった。それは、何が起きるか察せられた。
「分かりました。すぐに行きます」
公王様の部屋には、公王様のベットを囲むようにフォニアさん、セリアさん、ガルロックさんそして医者と思われる男性が立っていた。
フォニアさんは、ワンピースの寝巻きの上にショールを掛けていた事から彼女も休んでいた所で呼ばれたのだろう。
「失礼します。遅くなりました」
「お待ちしてましたぞ。アマタ殿」
ベットの上で公王様は、背中に大きなクッションをはさんで身を起こしていた。顔色は、血の気は無く真っ白で、死相が浮かんでいた。この人はもうすぐ死ぬと僕には分かった。
「ここで皆を呼んだのは他でもない。スベン公国の次代の王を指名しようと思ってな」
だが、公王様は死のふちに瀕していると言うのに、それに反して声は弱弱しくあったが穏やかだった。
「お止め下さい!お父様!そんな話は聞きたくありません」
フォニアさんはベットの横ですがりつきながら言う。
「そうもいかん。私は、もうすぐ死ぬ」
「そんな事…言わないでくださいませ!」
「私の体の事は私が一番良くわかっている。いや、お前達にも分かっているだろう。私は、後継としてフォニア。お前を指名する」
16歳の娘に王位を託すのは酷では無いかと僕は思う。元の世界では、高校に入学して勉強に遊びにと青春を謳歌している年齢だ。なのにいきなり国のトップに立ち、率いて行けとは、無理な話だ。
「ですがハイレルゲンは!もうスベン公国はおしまいです!首都を落とされ、兵も殆ど失ってしまいました!」
「国は王にあらず首都にあらず。国とは人。民なのだ。民が無事であれば、そこはまだ国がある。であるならば、我ら王族には最後まで民を庇護する義務がある」
「私には無理です!お父様が居なければ!お父様でなければ!」
「難しく考えるな。無理に国を再興する必要ない。フォニア。せめて民が後の世界を生きていける様に道筋をつけるだけで良いのだ。民が生きていればそこに我が国があるのだ。たとえスベン公国の名が忘れられたとしてもだ」
公王様は、残された左腕でフォニアさんの頭を撫でた。
「不甲斐無い父ですまない。お前にこの様な事を頼み、逝く父を恨んでくれ」
「お父様を恨むなど!…お父様。わっ私は、最後までスベン公国の王…族として、国・・・を」
ベットの横でひざまづい顔を伏せていたフォニアさんは、泣いていた。何とか言葉にしようともそれがうまく言えていない。けれど、フォニアさんが言おうとしている事はこの場に居る全員に伝わっていた。
僕にいきなり国を率いてけと言われたらこんなにすぐに了承できるだろうか?そもそも了承する事が出来るだろうか?無理だ。
公王様も、フォニアさんを撫でながらゆっくりと頷いた。
「そうか、すま…そうでは無いな。ありがとうフォニア。ガルロック。リーリア。すまないが、娘を頼むぞ」
「身命に誓いまして…」
「この身の続く限り、お仕えさせていただきます」
二人は、それぞれの最上級の礼をしてそれに答える。
「そして、アマタ殿、こんな事になって申し訳ない。先行き見えぬ我が国だが、フォニア達なら君の事を悪く扱う事は無いだろう」
「いえ、悪いのはアポリオンです。御気になさらずに」
「そう言ってくれるか…。さすがに疲れた。今日はもう休むとしよう」
公王様は、フォニアさんを撫でていた手を止めそっと目を閉じた。
「お父様!」
「陛下!」
傍に居た医師が慌てて、公王様の腕を取り、脈を調べる。僕達はその様子を黙ってみているしかない。
「…陛下は、お亡くなりになりました」
その言葉を聞いたフォニアさんは、公王様に取り縋り大声で泣いた。僕以外の人達が無言で涙を流している。
これが、僕が生まれて初めて立ち会った人の死だった。
部屋に帰り、ベットへと座る。
異邦人の僕があの場に居ても出来る事は何も無い。リーリアさんに促されて、僕は部屋へと戻った。
人の死を間近でみた。
眠れない僕は、ベットに座ってサイドテーブルに置かれたランプの炎を見てボーっとしていた。
ふいに扉がノックされた。
僕はランプを持って扉へと向かう。
「はい!なんでしょうか?」
「フォニアです。お休みの所申し訳ありません。少しお話を聞いて欲しいのです」
扉を開けるとそこには、思いつめた表情のフォニアさんがメイドさんを伴わずに一人で立っていた。
「どっどうしたんですか?」
「中に入ってもよろしいですか?廊下で出来る話ではないのです」
「どっどうぞ」
「失礼します」
フォニアさんを迎え入れ、部屋に備え付けてあった椅子を持ってきて運ぶ。
「いえ、大丈夫です。アマタ様はお座り下さい」
「はぁ」
僕は、ベットに腰掛けると、フォニアさんを見上げる形になった。
「まず最初に、謝らせてください。ごめんなさい!私は嘘をつきました!我が国は絶えずアポリオンとの戦いを繰り返し、首都ハイレルゲンは、その最前線だったのです」
フォニアさんはそう言って頭下げた。
「はい、知ってます。崖が崩れ落ちてから、ここまでの道中にセリアさんから話を聞きましたから…」
まぁもしこの状態で「だ~まされた騙された!あははは!」とか言われたら僕も切れただろうけど。本当に申し訳なさそうに頭を下げている彼女に怒鳴り散らす事が出来るほど僕も強い精神を持ってない。
「でもまぁ。自分の国を救いたかったんでしょ?僕を騙したのは、悪い事だけど、ちゃんと調べなかった僕も悪かったんだよ。ね。だから、頭上げてよ」
僕は気にしていないという風に両手を前で軽く振りながら言う。
「アマタ様。これは、私の自分勝手なわがままである事は分かっています。どうか、民達の処遇が決まるまでの間。このカルナートの…いえ、スベン公国の防衛に協力してくださいお願いします!」
そう言うとフォニアさんは、今度は、僕の目の前で土下座した。
「フォニアさん!?」
「代償は、もちろん対価はお支払いいたします。ですが、私が貴方様へ差し出せる物は一つだけ。私は、この身を全て貴方様へと奉げます。足を舐めろと言われれば舐めます。夜伽をせよ言うなら喜んで致しましょう。ですからどうかお願いします!スベン公国を守るのにお力をお貸し下さい!」
「ちょっちょっちょっちょっと落ち着いて!」
「落ち着いています。落ち着いて考えた結果。こうすべきだと私は、判断しました。今の我が国の戦力では、アバドンに到底太刀打ちできない。このカルナートを守る為にはアマタ様の力は不可欠。であるならば、相応の対価を支払い、助力を請うのが当然です。ですが、今あるお金も物資も全て民の為に使われるべき物。王家としての資産も、残りの殆どがハイレルゲンにあります。些少な対価ですが、今私が支払いに使えるのは、この身しかないのです」
ああ、もう!何でこんな事に!こんなの僕の役目じゃない!ケンジさん達の役目だろう!僕はモブなんだぞ!量産型モブなんだぞ!片田舎でのんびり害獣を駆除してのんびり生活出来ると思っていたのに!
「分かった。分かりましたから頭を上げてください!もう卑怯ですよ!こんなの!」
「ほっ本当ですか!」
フォニアさんは顔を上げて聞いてきた。頬には、涙が流れた跡があり、それがランプの明かりを反射する。
「本当ですから。もう土下座なんてしないでください」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
しかし、フォニアさんは僕がいくら言っても涙を流しながら、頭を上げたり下げたりを繰り返していた。そんなに頭を振ったら脳みそがシェイクになっていますから!
「やめて下さい。お願いしますから!貴方女王になるのでしょう!そんなに軽々しく頭を下げちゃいけないですよ!」
僕には、女の子を涙目で土下座させて喜ぶ性癖なんて無い!
止めさせる為に、フォニアさんの肩をつかんで無理矢理立たせる。その時僕は気付いた。フォニアさんの体は震えていた。そりゃそうだ。民の為とは言っても殆ど見ず知らずのような男に体を奉げに来たんだ。怖くないはずなんて無い。
「アマタ様は女王のご主人様なのです!頭を下げても問題ありません!」
女王のご主人様って何ですかね?
「じゃあ命令です。明日からの仕事に備えて、部屋に帰ってもう寝てください」
「ですが…それでは。夜伽が出来ません!」
「いいですから!今日は寝てください!メイドさん呼んで引き取ってもらいますよ!安心して下さいちゃんと戦いますから…」
僕はフォニアさんをそのまま部屋の外まで押し出す。
「分かりました。部屋に戻る事にします。失礼しますご主人様。おやすみなさいませ」
そこでようやくフォニアさんは諦めてくれた。
「はい。おやすみなさい。また明日」
最後にパタンと扉を閉めた時、ドット疲れが押し寄せてきた。僕は、一応の用心に扉に鍵をかけるとすぐにベットにもぐりこんだ。息を吹きかけ、ランプを消し、部屋の中を真っ暗にする。明るくしたままにしていたらまたフォニアさんが突撃してきそうだったからだ。
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