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15話 崖っぷち!スベン公国の現状
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公王様が臥せっていた部屋から出ると僕達は、今度は横長の広い部屋へと案内された。そこには長テーブルが置かれている事から会議室だと思われる。
メイドさんに促されて一緒に来た4人全員が席に付く。ガルロックと呼ばれた人が窓側に、その反対側にセリアさん、僕、フォニアさんの順に座る。ただ、フォニアさんは部屋から連れ出された時から無言で、今もうつむいたまま座っている。メイドさんはガルロックさんの斜め後ろに立っている。
「自己紹介が遅れたな。俺が、このカルナードを預かっている領主のガルロック・レーゲンだ。よろしくデアフレムデ殿」
「私は、ハイレルゲンの城でメイド長をしておりましたリーリア・フォルベルンと申します」
リーリアさんは、長身でめがねを掛けているが目つきが鋭く、怜悧な雰囲気を放っている。まるで有能な秘書がメイド服を着ているような違和感のある人だった。彼女は僕の方を向きながら綺麗なカーテシーを披露した。
「ヒデユキ・アマタです。アマタと呼んでください」
「では、さっそくだが、我が国の状況を説明しよう。君も知りたいだろう?」
「はい」
ガルロックさんから聞いた話は衝撃的だった。
スベン公国は、アバドンの侵攻により、既に多くの領土を失っていた。いや自ら手放したと言った方が正しいだろう。
難民を護衛しながら逃げてきたセリアさんの報告からの自国の持つ戦力では全てを守りきる事は出来ない公王は、国内に散った戦力を集める為に、多くの街や村を放棄し、首都へと国民を避難させた。
苦渋の決断だった。
ハイレルゲンが落とされる前は、主要な街はなんとか防衛は出来ているが、戦いを無傷で終える事は出来ず、アバドンに襲われるたびに兵士達がじりじりと失われている状況だったという。
何でその様な状態で持っていたのかというと、かつての宗主国の兵士や避難民達が義勇軍として、この地に留まり、公国軍と一緒に戦っていたからだったそうだ。
「そういえば人類同盟軍も来ているんですよね?そこからの増援は?」
ふとした疑問の答えは想像だにしないものだった。
「奴らは逃げ帰ったよ」
「逃げ帰った!?」
人類の守護をお題目にしている集団なのに?
「人類同盟というものが、長い時間を掛けて形骸化していた様に人類同盟軍もその力を失っているのだ。今ではどこぞの貴族の子息や、エリートの箔付けの為の団体と成り果てた。最初は、少ないながらも派遣されていたんだが、そんな連中が役に立つはずも無く。逃げ出していきましたよ。戦況を報告し援軍を呼んでくるとか言ってね。それ以来音沙汰はなく。もちろん援軍も来ていない」
なんでそんな軍が存在するのだろうか?きっと時間経過でお偉いさん連中の利権構造が出来上がっちゃってたんだろうなぁ。
正にジリ貧。そしてその結果が、ハイレルゲンの陥落。笑えない。
それでも最前線国家には、対アバドンの矢面に立っているので人類同盟からの支援があるのだが、公国は最前線国家の中でも国として一番小さく、支援もあまり受けれないのだそうだ。
そこまでガルロックさんが話し終えると、セリアさんが聞いた。
「ガルロック殿、ハイレルゲンで何があったか聞かせてください」
「それは私が答えましょう。あれは、フォニア様から、デアフレムデ殿が我が国へと来てくれると連絡が来た翌日の事でございました…」
セリアさんの質問に答えたのはリーリアさんだった。
最初は、何時も通りのアバドンの襲撃だと思っていたそうだ。ハイレルゲンは、スベン公国の首都にして、対アバドン最前線。所有するフォルスは旧型機であるダロスではあったが、パイロットは今まで戦い抜いてきた精鋭ぞろいで、城壁の上に据えつけられたバリスタや、地形を生かしてアバドンの小集団なら撃退する事は出来たそうだ。
アポリオンの襲撃はハイレルゲンにとって日常と為っていた。その日もアポリオンの襲撃を告げる鐘が鳴った。
だが、その日のアポリオンは異常だった。何度撃退しても数時間後には別の小集団がハイレルゲンを襲ってくるのだ。
長時間の戦闘に兵士達は疲労し、疲労はミスを誘発し、ダロスの損傷も増えていく。戦場で一人倒れ、次の戦闘でまた一人倒れる。
それは真綿で首をゆっくりと締め上げられているようだったと、その時の様子をリーリアさんは述懐した。
これはただ事では無いと感じた公王様は、もしもの場合を考え、脱出する準備を部下に命じた。
そして決定打となったのが大型のアポリオンの参戦だ。ギメランタイマイと呼ばれるバグリザドの三倍の大きさで、亀の様な甲羅を背負い、大きな蟹の様な腕を持つアポリオンだ。
ギメランタイマイは、過去の戦いで記録は残っていたが、今まで誰も見た事が無かったアポリオンだ。そして、神霊機以外では撃破されたという記録が無いアポリオンでもあった。ギメランタイマイが登場した事で公王様は、ハイレルゲンの放棄をしカルナートへの脱出をする事を決定した。
幸い、ギメランタイマイの足は遅く、尚且つ既に脱出の準備を整えていたので、すぐに動けたそうだ。
しかし、ギメランタイマイとその他のアポリオンの足止めをする必要があった。公王様は、兵士達の中からハイレルゲンに残って徹底抗戦する決死隊を募った。
僕達が見たハイレルゲンにあったダロスの残骸や、兵士の死体は、この決死隊の人達だった。
決死隊の人達が戦う中、脱出作戦は実行された。まず先行部隊が、敵の包囲を突き破り、その空いた穴から、馬車に載せた人達を脱出。最後に殿として、公王様が率いる部隊が脱出したのだという。
メイドのリーリアさんは、最初に脱出すべきだと主張したそうなのだが、王が最初に逃げては、民に示しがつかぬと言って自らダロスに乗り込み殿の部隊と一緒に脱出したそうだ。
しかし、アバドンの追撃は激しく、撤退戦の途中で公王様の乗ったダロスが大破。何とか救い出してここまで運んできたという事らしい。
「それでお父様は助かるのですか?」
目に涙を貯めたフォニアさんが顔を上げて聞いた。
「それは…」
「医師からは、もって数日だと…」
ガルロックさんが言い辛そうにしていると、背後に立っていたリーリアさんが答えた
「いやぁあああああ!」
フォニアさんは突如として立ち上がって叫ぶと、ふっと糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。
「危ない!」
「フォニア様!」
横に座っていた僕が、慌てて抱き留めなかったら、そのまま床に倒れていただろう。
「お嬢様!」
すぐさまリーリアさんが、駆け寄ってきて彼女を様子を見る。正面に座っていたガルロックさんも立ち上がってこちらへ駆け寄る。
「姫様!おい!リーリア!姫様は大丈夫なのか!」
「お黙り下さい。ガルロック様。気を失っているだけです。アマタ様。フォニア様をこちらへ」
「はい」
僕は言われたとおりに抱きとめたフォニアさんをリーリアさんに任せた。
リーリアさんは、フォニアさんをお姫様抱っこの状態で受け取ると力強く立ち上がり、会議室の外へと運んでいく。セリアさんとガルロックさんが、それを追う。
「付き添いは結構です」
だが、それはリーリアさんに止められた。
「だっだが!」
「フォニア様は、ただ気を失っただけです。いずれ目を覚まします。ガルロック様は、アマタ様と、セリアさんに我が国の現状の説明をお願いします。今は時間が惜しいのはお分かりでしょう?」
「くっ」
反論しようとするガルロックさんだったが、リーリアさんは冷静にその反論を否定する。
そう言うとガルロックさんの返事も聞かずにリーリアさんは部屋から出て行った。
「こうしていても仕方がありません。現在の状況について話を聞かせて下さい。ガルロックさん」
現状を知りたいというのは僕もだ。だから僕はガルロックさんに先を促す。
「そうだな」
ガルロックさんは席に戻って座ると肘をついて両手を組んだ。
「では説明しよう。我らがスベン公国は、状況だが、一言で言って最悪だな。首都が落ち、殆どの兵もフォルスも失った。他の都市とは、現在は連絡が途絶えてしまった。状況から考えて、他の都市は落ちた可能性が高い。例え落ちていなかったとしても現状の我々では何も出来ない」
「それって国家としての体裁がもう取れていないんじゃ…」
「そうだな。このまま陛下がお亡くなりになれば…。完全にこの国は終わるだろう」
「私達が持ってきた物資を使っても持たないの?」
セリアさんが聞いた。僕達が輸送して来た荷物は途中のアポリオンの襲撃で減ったが、それでも9割は無事に運ぶ事が出来ていた。
「確認させてもらったが、食料だけで言えば、次に支援を受けるまで持ちそうだが、それはアポリオンが襲ってこなければの話だ。ハイレルゲンと同じ様なペースで襲われたら、兵士とフォルスの方がもたんだろう」
「アマタが居れば大丈夫よ!」
「たった、一機で何が出来る?デアフレムデ殿の評判は聞いている。失礼だが、小さな集団を倒すのでせいぜいの能力しかない機体が一機増えた程度でどうにかなるモノではない」
「違うわ!アマタの召喚する機体は、無数に召喚出来るの!しかも私達が乗って動かす事が出来るのよ!」
「何!それは本当か!?」
それを聞いたガルロックさんが立ち上がる。
「まだ色々能力の検証中ではありますが、資材ポイントがあれば、複数のザムを召喚する事が可能だと思われます」
ザムが量産出来れば事態が打開出来る可能性は高いとは、僕も思う。だけどそれは、量産が終わるまで国が持てばの話だ。
「そうか!いや、だが…」
ザムを量産できると聞いて、喜色を見せていたガルロックさんだが、次の瞬間にはまた曇った。
「世継ぎとして姫様が居るが、陛下が亡くなられたら、しばらくは茫然自失となってしまうだろう。そうなれば政務など無理だ。例え看板として公王に据えて我らが政務をしても、そんな状態じゃ他の国、特に帝国と共和国が国家として認めないだろう」
「こうなる前に、何とかできなかったんですか?たとえば帝国が共和国のどちらかに併合してもらって勇者が簡単に来て貰う事が出来るようにするとか…」
国ではなくなるけど、そうすれば少なくとも国民は守れる。
「その提案は陛下がしていたのだよ。だが、断られた。表向きは、スベン公国を防衛する余力が無いと言う理由でな。だが、本当は違う。奴らは、スベン公国が滅亡した後で奪還、併合しても遅くは無いという打算が両国にあったのだろうよ。碌に愛国心も無い住人が居ない分、戦後自国の国民を送り込んだ方が簡単に統治出来る。そう考えたんだろうさ!クソッタレ共め!」
ガルロックさんは、苛立ちを紛らわす為に拳をテーブルへと叩き付けた。
「何と言うか、どろどろ、ぐだぐだですね」
「笑えるだろう。人類が一丸としてアポリオンの脅威に立ち向かわなければならないというのにな…」
「元の世界の人間も、ここの人達とそう変わらないと思いますよ。16年しか生きてない若造の意見ですけどね」
「ふっそうか…どちらにせよスベン公国がどうなるかは、姫様しだいという事だ」
最後にガルロックさんはうつむきながら言った。
「考えたくない事だが、姫様が陛下の後継にならなかった場合。おそらく帝国と共和国の分割統治になるだろう。国民は皆避難の名目で両国の僻地へと飛ばされ、例えアポリオンを勇者様方に撃退してもらったとしても、もう戻る事は出来ないだろう。変わりに生粋の帝国民と共和国民が送り込まれてその国の一地方へと成り下がる。かつてのスベン公国の民達は、それぞれの国家に溶け込み、いずれはスベン公国という国があった事を忘れるだろう。そうなればスベン公国の完全に終わる」
ガルロックさんの背後にある窓の向こうで夕日が山の向こうへ落ちた。
メイドさんに促されて一緒に来た4人全員が席に付く。ガルロックと呼ばれた人が窓側に、その反対側にセリアさん、僕、フォニアさんの順に座る。ただ、フォニアさんは部屋から連れ出された時から無言で、今もうつむいたまま座っている。メイドさんはガルロックさんの斜め後ろに立っている。
「自己紹介が遅れたな。俺が、このカルナードを預かっている領主のガルロック・レーゲンだ。よろしくデアフレムデ殿」
「私は、ハイレルゲンの城でメイド長をしておりましたリーリア・フォルベルンと申します」
リーリアさんは、長身でめがねを掛けているが目つきが鋭く、怜悧な雰囲気を放っている。まるで有能な秘書がメイド服を着ているような違和感のある人だった。彼女は僕の方を向きながら綺麗なカーテシーを披露した。
「ヒデユキ・アマタです。アマタと呼んでください」
「では、さっそくだが、我が国の状況を説明しよう。君も知りたいだろう?」
「はい」
ガルロックさんから聞いた話は衝撃的だった。
スベン公国は、アバドンの侵攻により、既に多くの領土を失っていた。いや自ら手放したと言った方が正しいだろう。
難民を護衛しながら逃げてきたセリアさんの報告からの自国の持つ戦力では全てを守りきる事は出来ない公王は、国内に散った戦力を集める為に、多くの街や村を放棄し、首都へと国民を避難させた。
苦渋の決断だった。
ハイレルゲンが落とされる前は、主要な街はなんとか防衛は出来ているが、戦いを無傷で終える事は出来ず、アバドンに襲われるたびに兵士達がじりじりと失われている状況だったという。
何でその様な状態で持っていたのかというと、かつての宗主国の兵士や避難民達が義勇軍として、この地に留まり、公国軍と一緒に戦っていたからだったそうだ。
「そういえば人類同盟軍も来ているんですよね?そこからの増援は?」
ふとした疑問の答えは想像だにしないものだった。
「奴らは逃げ帰ったよ」
「逃げ帰った!?」
人類の守護をお題目にしている集団なのに?
「人類同盟というものが、長い時間を掛けて形骸化していた様に人類同盟軍もその力を失っているのだ。今ではどこぞの貴族の子息や、エリートの箔付けの為の団体と成り果てた。最初は、少ないながらも派遣されていたんだが、そんな連中が役に立つはずも無く。逃げ出していきましたよ。戦況を報告し援軍を呼んでくるとか言ってね。それ以来音沙汰はなく。もちろん援軍も来ていない」
なんでそんな軍が存在するのだろうか?きっと時間経過でお偉いさん連中の利権構造が出来上がっちゃってたんだろうなぁ。
正にジリ貧。そしてその結果が、ハイレルゲンの陥落。笑えない。
それでも最前線国家には、対アバドンの矢面に立っているので人類同盟からの支援があるのだが、公国は最前線国家の中でも国として一番小さく、支援もあまり受けれないのだそうだ。
そこまでガルロックさんが話し終えると、セリアさんが聞いた。
「ガルロック殿、ハイレルゲンで何があったか聞かせてください」
「それは私が答えましょう。あれは、フォニア様から、デアフレムデ殿が我が国へと来てくれると連絡が来た翌日の事でございました…」
セリアさんの質問に答えたのはリーリアさんだった。
最初は、何時も通りのアバドンの襲撃だと思っていたそうだ。ハイレルゲンは、スベン公国の首都にして、対アバドン最前線。所有するフォルスは旧型機であるダロスではあったが、パイロットは今まで戦い抜いてきた精鋭ぞろいで、城壁の上に据えつけられたバリスタや、地形を生かしてアバドンの小集団なら撃退する事は出来たそうだ。
アポリオンの襲撃はハイレルゲンにとって日常と為っていた。その日もアポリオンの襲撃を告げる鐘が鳴った。
だが、その日のアポリオンは異常だった。何度撃退しても数時間後には別の小集団がハイレルゲンを襲ってくるのだ。
長時間の戦闘に兵士達は疲労し、疲労はミスを誘発し、ダロスの損傷も増えていく。戦場で一人倒れ、次の戦闘でまた一人倒れる。
それは真綿で首をゆっくりと締め上げられているようだったと、その時の様子をリーリアさんは述懐した。
これはただ事では無いと感じた公王様は、もしもの場合を考え、脱出する準備を部下に命じた。
そして決定打となったのが大型のアポリオンの参戦だ。ギメランタイマイと呼ばれるバグリザドの三倍の大きさで、亀の様な甲羅を背負い、大きな蟹の様な腕を持つアポリオンだ。
ギメランタイマイは、過去の戦いで記録は残っていたが、今まで誰も見た事が無かったアポリオンだ。そして、神霊機以外では撃破されたという記録が無いアポリオンでもあった。ギメランタイマイが登場した事で公王様は、ハイレルゲンの放棄をしカルナートへの脱出をする事を決定した。
幸い、ギメランタイマイの足は遅く、尚且つ既に脱出の準備を整えていたので、すぐに動けたそうだ。
しかし、ギメランタイマイとその他のアポリオンの足止めをする必要があった。公王様は、兵士達の中からハイレルゲンに残って徹底抗戦する決死隊を募った。
僕達が見たハイレルゲンにあったダロスの残骸や、兵士の死体は、この決死隊の人達だった。
決死隊の人達が戦う中、脱出作戦は実行された。まず先行部隊が、敵の包囲を突き破り、その空いた穴から、馬車に載せた人達を脱出。最後に殿として、公王様が率いる部隊が脱出したのだという。
メイドのリーリアさんは、最初に脱出すべきだと主張したそうなのだが、王が最初に逃げては、民に示しがつかぬと言って自らダロスに乗り込み殿の部隊と一緒に脱出したそうだ。
しかし、アバドンの追撃は激しく、撤退戦の途中で公王様の乗ったダロスが大破。何とか救い出してここまで運んできたという事らしい。
「それでお父様は助かるのですか?」
目に涙を貯めたフォニアさんが顔を上げて聞いた。
「それは…」
「医師からは、もって数日だと…」
ガルロックさんが言い辛そうにしていると、背後に立っていたリーリアさんが答えた
「いやぁあああああ!」
フォニアさんは突如として立ち上がって叫ぶと、ふっと糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。
「危ない!」
「フォニア様!」
横に座っていた僕が、慌てて抱き留めなかったら、そのまま床に倒れていただろう。
「お嬢様!」
すぐさまリーリアさんが、駆け寄ってきて彼女を様子を見る。正面に座っていたガルロックさんも立ち上がってこちらへ駆け寄る。
「姫様!おい!リーリア!姫様は大丈夫なのか!」
「お黙り下さい。ガルロック様。気を失っているだけです。アマタ様。フォニア様をこちらへ」
「はい」
僕は言われたとおりに抱きとめたフォニアさんをリーリアさんに任せた。
リーリアさんは、フォニアさんをお姫様抱っこの状態で受け取ると力強く立ち上がり、会議室の外へと運んでいく。セリアさんとガルロックさんが、それを追う。
「付き添いは結構です」
だが、それはリーリアさんに止められた。
「だっだが!」
「フォニア様は、ただ気を失っただけです。いずれ目を覚まします。ガルロック様は、アマタ様と、セリアさんに我が国の現状の説明をお願いします。今は時間が惜しいのはお分かりでしょう?」
「くっ」
反論しようとするガルロックさんだったが、リーリアさんは冷静にその反論を否定する。
そう言うとガルロックさんの返事も聞かずにリーリアさんは部屋から出て行った。
「こうしていても仕方がありません。現在の状況について話を聞かせて下さい。ガルロックさん」
現状を知りたいというのは僕もだ。だから僕はガルロックさんに先を促す。
「そうだな」
ガルロックさんは席に戻って座ると肘をついて両手を組んだ。
「では説明しよう。我らがスベン公国は、状況だが、一言で言って最悪だな。首都が落ち、殆どの兵もフォルスも失った。他の都市とは、現在は連絡が途絶えてしまった。状況から考えて、他の都市は落ちた可能性が高い。例え落ちていなかったとしても現状の我々では何も出来ない」
「それって国家としての体裁がもう取れていないんじゃ…」
「そうだな。このまま陛下がお亡くなりになれば…。完全にこの国は終わるだろう」
「私達が持ってきた物資を使っても持たないの?」
セリアさんが聞いた。僕達が輸送して来た荷物は途中のアポリオンの襲撃で減ったが、それでも9割は無事に運ぶ事が出来ていた。
「確認させてもらったが、食料だけで言えば、次に支援を受けるまで持ちそうだが、それはアポリオンが襲ってこなければの話だ。ハイレルゲンと同じ様なペースで襲われたら、兵士とフォルスの方がもたんだろう」
「アマタが居れば大丈夫よ!」
「たった、一機で何が出来る?デアフレムデ殿の評判は聞いている。失礼だが、小さな集団を倒すのでせいぜいの能力しかない機体が一機増えた程度でどうにかなるモノではない」
「違うわ!アマタの召喚する機体は、無数に召喚出来るの!しかも私達が乗って動かす事が出来るのよ!」
「何!それは本当か!?」
それを聞いたガルロックさんが立ち上がる。
「まだ色々能力の検証中ではありますが、資材ポイントがあれば、複数のザムを召喚する事が可能だと思われます」
ザムが量産出来れば事態が打開出来る可能性は高いとは、僕も思う。だけどそれは、量産が終わるまで国が持てばの話だ。
「そうか!いや、だが…」
ザムを量産できると聞いて、喜色を見せていたガルロックさんだが、次の瞬間にはまた曇った。
「世継ぎとして姫様が居るが、陛下が亡くなられたら、しばらくは茫然自失となってしまうだろう。そうなれば政務など無理だ。例え看板として公王に据えて我らが政務をしても、そんな状態じゃ他の国、特に帝国と共和国が国家として認めないだろう」
「こうなる前に、何とかできなかったんですか?たとえば帝国が共和国のどちらかに併合してもらって勇者が簡単に来て貰う事が出来るようにするとか…」
国ではなくなるけど、そうすれば少なくとも国民は守れる。
「その提案は陛下がしていたのだよ。だが、断られた。表向きは、スベン公国を防衛する余力が無いと言う理由でな。だが、本当は違う。奴らは、スベン公国が滅亡した後で奪還、併合しても遅くは無いという打算が両国にあったのだろうよ。碌に愛国心も無い住人が居ない分、戦後自国の国民を送り込んだ方が簡単に統治出来る。そう考えたんだろうさ!クソッタレ共め!」
ガルロックさんは、苛立ちを紛らわす為に拳をテーブルへと叩き付けた。
「何と言うか、どろどろ、ぐだぐだですね」
「笑えるだろう。人類が一丸としてアポリオンの脅威に立ち向かわなければならないというのにな…」
「元の世界の人間も、ここの人達とそう変わらないと思いますよ。16年しか生きてない若造の意見ですけどね」
「ふっそうか…どちらにせよスベン公国がどうなるかは、姫様しだいという事だ」
最後にガルロックさんはうつむきながら言った。
「考えたくない事だが、姫様が陛下の後継にならなかった場合。おそらく帝国と共和国の分割統治になるだろう。国民は皆避難の名目で両国の僻地へと飛ばされ、例えアポリオンを勇者様方に撃退してもらったとしても、もう戻る事は出来ないだろう。変わりに生粋の帝国民と共和国民が送り込まれてその国の一地方へと成り下がる。かつてのスベン公国の民達は、それぞれの国家に溶け込み、いずれはスベン公国という国があった事を忘れるだろう。そうなればスベン公国の完全に終わる」
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