量産型英雄伝

止まり木

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18話 ギメランタイマイ

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 しばらく走っていると聞き慣れたマシンガンの発砲音が聞こえてきた。
 近い。
「セリアさん!近くまで来ました!戦闘に参加します!」
 僕は、繋ぎっぱなしだった通信でセリアさん報告する。
『了解!皆!スベン公国にきてくださったデアフレムデ殿が援護に来てくれたわよ!』
 今の声は、周囲で戦っているダロスへの激励だろう。小さな音ではあったが、「おお~!」と言う声が聞こえた。
 
 そこでセリア機はアバドンに向けて両手で保持したマシンガンを撃ち、随伴していたダロス達が、魔力ライフルを放ちながら距離を詰められないように一歩一歩下がりながら戦闘をしていた。

 視界に映るそんなアバドンを、ザムのFCSは一匹残らず四角い枠をつけてマーキングする。そのうちの一つにロックオンカーソルが重なりププププピーとロックオン完了を知らせる音が鳴った。 
「射程内に入りました。攻撃を開始します!」
 ザムのマシンガンの攻撃力は、二度の戦闘で折り紙付きだ。見る見るセリア機に迫っていたアバドンを破裂させていく。しかし、アバドンはすぐ横で仲間の頭が爆散し、血が自分に掛かろうがお構い無しにこちらへと突撃してくる。

 アバドンの数の多い場所を優先的に狙いつつ、セリアさんと合流する、
「お待たせしました」
 僕らが到着すると、セリアさんの乗ったザムのモノアイがギュイン!と動いてこちらを捉える。
「待ってたわ!節約して使ってたけど、これが最後のマガジンなの!悪いけど弾を頂戴!」
 見ればザムの腰につけていた予備マガジンは存在せず、今撃っているマシンガンからは、銃弾が光って見える曳光弾が発射されている。弾切れ間近の証だ。
「分かりました。これ使ってください!」
 僕は自分のザムが持っていた予備マガジンを差し出す。
 丁度その時カカカカ!とセリア機のマシンガンが銃声ではない音を響かせた。弾切れだ。
「助かるわ!」
 セリア機がマガジンを受け取り、自身のマシンガンをリロードする。
 そういえば、ザムに乗ったままの召喚はした事が無かったな。ええい、ままよ!やれば分かる!
「コール!装填済み75mmマシンガンマガジン!」
 コックピット内でコールすると、ザムの足元にマガジンが現れた。
――――コール終了。現在の資材ポイント25です。
 乗ったまま召喚できるのはありがたい!
「マガジンを召喚しました。適当に持ってってください!弾が切れそうになったら言って下さい。また召喚します!とは言え、ポイントにも限りがありますので無駄撃ちはしないようにお願いします」
「大事に使わせてもらうわ!」

 召喚が終わると僕も、セリアさんに渡した分のマガジンを自機のマガジンラックに装着して前線に立つ。
 それにしても数が多い!ってか多すぎでしょ!
 二機のザムのマシンガン攻撃と、ダロスによる魔力ライフルの射撃。圧倒的火力でアバドンを屠っているというのに次から次へと湧いて出てくる。既にアバドンの死体の道が出来ており、現在はその死体を掻き分けて、新たなアバドンが現れる。まるで砂糖に群れる蟻の様だ。
 はっきり言って押されている。
 ザム二機と魔力ライフル持ちとはいえダロス二機では、押し止める事は出来ない。僕達はゆっくりと交代しながら、敵の足止めを目的とした戦闘、遅滞戦闘を続ける。
 僕は、セリア機とリロードのタイミングが、合わない様に注意しつつ、ばら撒くように撃つ。地面が爆ぜ、それに巻き込まれたアバドンが吹き飛ばされる。
『セリア隊長!防衛体制の準備が終わりました。現在自分もそちらに向かっています!』
 そこへ、アランさんから通信が入った。
「分かったわ。こちらは後退しつつ足止めを続けるわ。なるべく早く合流してね。この数は私達だけじゃ辛いわ」
「了解しました!」
 その後、アラン機が合流しても、アバドンの数は一向に減らなかった。とうとう、城壁の前まで下がって来てしまった。
 これ以上は下がれない。
 でも、時間稼ぎのお陰でカルナートの防衛体制は完全に整っていた。
 城壁の上にはクロスボウや、魔力ライフルを持ったダロスが並び、アポリオンの到着を待っていた。
「クロスボウ奇数隊構えー!目標アバドン集団前面!放て!」
 放てといわれた瞬間、斜め上に構えられたクロスボウから一斉に矢が放たれた。山なりの軌道を描いた矢は、ザァ!と雨のようにアバドンの群れへと降り注ぐ。
 クロスボウは、一発一発装填する必要があるが、その分魔力ライフルと違って魔力を消費する事は無い。護衛任務や、野戦などには使いづらいが、壁に守られている安全地帯がある防衛戦には、すこぶる役に立つ。数があれば、三段撃ちのような事も出来る。

 それにより大量のアバドンが、血に沈んでいくが、周りに居るアバドンは気にした風も無く、カルナートへと殺到している。まったく嫌になる。
 カルナートからの援護射撃が増えたお陰で、ようやく完全にアバドンの群れの足を止める事に成功した。

 戦闘は、こう着状態に陥った。僕らが撃破する数と攻めて来るアバドンの数が拮抗しているのだ。
「戦闘開始は何分くらい前でしたっけ?」
「ざっと30分前ってとこね!」
「こんな襲撃、普通だったら神霊機が無ければ防衛なんて出来ませんでしたね!」
 その時、自機のマシンガンがカカカ!という音がした。弾切れだ。
「リロード!」
 僕は叫ぶと同時に"しまった!"と思った。
 横目に見た時、セリア機とアラン機もほぼ同時にマガジンを落下させていたからだ。
 長時間の戦闘で、集中力が途切れてた!気をつけてたのに!
 そう考えた時はもう遅い。リロードには数秒かかかる。三機ともリロード作業に入った為、その間は完全に銃撃が止む。それなのに、アバドンの群れは、変わらずに押し寄せてくる。。
 銃弾の雨が止んだことによりアバドン達が一気に押し寄せてきた。城壁の上からの放たれるクロスボウの矢を受けならがらアバドンの群れが突っ込んでくる。さらに最悪な事に、先に殺していたアバドンの死体が盾になり、クロスボウの矢の多くが外れる。
「くっ!くるぞ!全力射撃!」
 城壁の上に居た指揮官機と思われる頭に房を付けたダロスが檄を飛ばす。今まで偶数と奇数で分けていたダロスのクロスボウ隊が、一斉に矢を放ち始める。
 マシンガンのリロードが終わり、再び攻撃を開始した時、アバドンの群れは目の前にまで迫っていた。
 大急ぎで、マシンガンを乱射して駆逐していくが、それでも迫り来る全てのアバドンを止める事は出来なかった。
 二匹のアバドンが弾幕を抜け自機の足元を通り過ぎていく。
「申し訳ありません!二匹抜けました!」
「ちっ!」
 抜けたアバドンは、城壁に取り付くと、壁に爪を突き立てて足場とし、登り始める。城壁のクロスボウ部隊も登らせまいと撃つが、アバドンはまるで痛みを感じていないかのように壁を登る。
 僕は、自機を振り向かせ壁を登りつつあるアバドンにマシンガンを向けさせ、トリガーに指にかける。
「止めてっ!ザムのマシンガンじゃ威力が大きすぎる!」
 セリアさんから待ったが掛かった。
「なら、近接武器でっ!」
「前線の弾幕が薄くなるわ!中のダロスに任せなさい!優先順位を間違わないで!」
「急ぎ、防衛隊は追跡部隊を編成し、追撃しろ!俺達の機体では、街に入れない!」
 隣ではアラン機がマシンガンを撃ちながら防衛隊のに指示を出している。
 ダロスより倍近く大きなザムでは、街中に入る事は出来ない。マシンガンで狙おうにも、街中をすばやく移動していくアバドンを正確に狙うのは難しい。下手に撃てば、流れ弾で街に甚大な被害を与えかねない。何せ近くに人の近くに着弾しただけで、人間を消し飛ばす威力があるのだ。街中の戦闘は、ダロス任せにするしかない。
 セリアさんの指摘は正しい。
「我々が出来るのは、これ以上アバドンを後ろに通さない事だ!集中しろ!アマタァ!」

 その時、今まで感じた事の無い振動を感じた。ずずずずずと。何か巨大な物が高速で地面を這っている様な、振動だ。
「何だこれは!?」
 それは、山となっていたアバドンの死体を吹き飛ばしならが見た事のない大型のアポリオンが現れた。
 現れたのは、トゲトゲとした甲羅を背負った陸亀の様な化け物で、背中甲羅の隙間からから蟹の爪が伸びている。
 今まで僕が見てきた中では最大のアポリオンだ。

 それが、目の前にいるのが、死んだアバドンだろうが生きているアバドンだろうが関係無く、弾き飛ばしながら爆走してくる。
「ギメランタイマイだと!?何でこんな化け物が!」
 ギメランタイマイ。
 たしか、前回のアポリオン侵攻の時にも出現した亀の化け物で、確か倒された記録は、神霊機による攻撃のみ。それ以外の記録は、せいぜい足止めしたという記録があるだけ。
 敵の名前を聞いただけで、兵士達の士気がぐんと下がった。
「くっザム三機でアイツに集中攻撃よ!」
 三機のザムによりマシンガンの集中攻撃。だが殆どの弾がチュンチュンと火花を散らしながら甲羅に弾かれる。ヒビを入れることすら出来ない。
「そんなっ!」
 セリアさんが絶望の入り混じった声を上げる。今まで75mmマシンガンでダメージを与えられなかった敵は存在しなかった。
「まだ!顔を狙えば!」
 僕が顔に向かってマシンガンを向ける。だが、それに気付いたギメランタイマイは、頭を甲羅の中に引っ込めた。
 甲羅の中目掛けてマシンガンを連射するが、頭を引っ込めた時に、甲羅の一部が動き、頭を引っ込めた穴を覆い隠し、弾丸が弾かれる。
 ギメランタイマイは、その状態でも突撃してくる。
 
「ちっ!なら足だ!」
 しかし、大型化してる分、足の太さが、バグリザドと比べ圧倒的に太い。弾丸は足に刺さり、気色の悪い紫の血を流すが、止る気配は無い。
 街に入れないザムに街の中で防衛は無理であり、そしてダロスによってギメランタイマイの討伐は無理。すなわち、あれに防衛線を突破されたら、簡単に街は蹂躙される。
 あの化け物を、ここで食い止めないと終わりだ!
「クソッタレ!ならコイツはどうだ!」
 僕がそう思った時、アラン機はがマシンガンをバックパックに格納してサイドアーマーに懸架されているバトルアックスを抜いた。
「これ以上近づけさせるかぁ!」
 アラン機がスラスタを全開にして、飛ぶ様に加速。その勢いのままバトルアックスを振り上げる。その気配を察知したギメランタイマイが両腕の爪を振り回す。だが、頭を引っ込めているせいか、ちゃんとアラン機を狙う事は出来ていない。
 初めて操縦しているというのに、アラン機は、器用にその腕を掻い潜る。
「おらぁああああああああああああ!」
 アラン機は、ギメランタイマイの甲羅へと叩き付けた。
 ズガン!
 ザムの全力で叩き込まれたバトルアックスは、ギメランタイマイの甲羅に突き刺さる。だが、それだけだった。甲羅を突き破る事は無く、甲羅に傷をつけただけだ。
 一体ドンだけ固いんだよ!
「ぬっ抜けない!」
 ザムが甲羅から抜こうとバトルアックスを引っ張るが、ガッチリと甲羅に食い込み抜けない。
 その間に今度はギメランタイマイの爪が、バトルアックスを抜こうとしているアラン機に振り上げられた。
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