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26話 弱者の悪巧み
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帝都に着くと、早速中心部にあるグランドース城へと向かう。
帝都の城門の前で僕はザムを送還して、フォニアさんの乗る馬車に乗っている竜車へと乗り込んだ。
窓から見る街の様子は、カルナートとは比べ物にならない位活気ついていた。大通りには露店がならび、それぞれの店には商品があふれている。
カルナートでは現在配給制が実施されている。そのせいで店はほぼ全て閉められ、大通りに露店が出ることすらない。最初僕がカルナートに到着した時は、閑散とした通りの脇に避難民達が肩を寄せ合って座っていた。今では農作業とかの仕事が用意されている為、そんな感じではなくなってはいる。
カルナートと同じ最前線国家とは思えないな。まるでアバドンの脅威など存在しないみたいだ。
これが大国レグオン帝国か…。
グランドース城の正面玄関に到着して竜車を降りる。
僕が先に降り、次に降りるフォニアさんに向けて手を差し出す。その手を掴んでフォニアさんが降りる。
その時、ガエリオ団長が、下りてきたフォニアさんを見た時目を丸くしていた。何故なら彼女は今、真っ黒な喪服なドレスに顔には、同じく黒のベールを被っているのだ。普通に考えれば他国の城へと来る格好ではない。だが、ガエリオ団長は、言葉を飲み込むと、正面玄関へと続く短い階段を登った
正面玄関にはフォルスが余裕で通れるほどの高さがある、両開きのドアが設置され、その左右に煌びやかな装飾が施された、カニンガムが立っていた。
「スベン公国公王フォニア・ダリル・スベン様が到着なされた!扉を開けられたし!」
ガエリオ団長が、扉の前に立ち、大声で言う。すると、左右に立っていたカニンガムが、扉に付いた大きな円い取っ手を掴み、息のあった動作で扉を開けた。
「おお」
その光景に思わず声を上げてしまった。
中も豪華なものだった質実剛健を地でいくカルナートの城とは違い、絢爛なものだった。大理石の廊下に、廊下のいたる所に美術品が展示されている。その中をガエリオ団長の案内で進む。
そもそもカルナートは、要塞であり、煌びやかな装飾とは無縁で、本来なら比べる対象にはならないのだけど、どうしても比べてしまう。
「こちらです」
衛兵が左右に並んだ大きな扉の前まで案内された。この先が謁見の間なのだろう。
衛兵の鎧も豪華だった。それぞれの鎧にエングローブが施され、僕とセリアさんが着ている革鎧とは、比べ物にならない位輝いている。
「スベン公国公王フォニア・ダリル・スベン様が御到ーちゃーく!」
ガエリオ団長が到着を告げると二人の衛兵は声を合わせて大声で言った。
扉が開かれるとそこは大きな広間だった、床には玉座の前まで続く赤い絨毯が敷かれ、その奥には玉座に座った皇帝アルカリウス七世がいた。その横には一目で偉い人と分かる豪華な服を着た中年男性が立っている。
宰相とかそんな人だろう。
それから一団下がった所にも、無数の人達が立っていた。その人々の中に何人か、見覚えのある人達が混じっていた。
たしか、あの人達は、僕が教会にいた頃にケンジさんを見に来ていた人だな。それに服装からして教会関係者もいる。けど、そいつらは僕がデアフレムデである事には気付いた様子は無い。
ちなみにこの場に、ケンジさんはいなかった。きっとフレイムソスで飛び回っているのだろう。
彼らは、扉から入ってきたフォニアさんの喪服ドレス姿を見てざわついている。
僕とセリアさんは彼女の後ろに付き従うように歩く。そして、皇帝の前まで来ると、僕とセリアさんは跪く。フォニアさんは堂々と立ったままだ。一国の国王が、たとえ他国の王であろうともそう簡単に膝をつく事は無い。
「よく来た。フォニア嬢。いや、公王フォニア・ダロス・スベン殿。態々御身が来るとは思わなかったぞ」
「お久しぶりですね。アルカリウス七世殿」
かわりにフォニアさんは、綺麗なカーテシーを披露した。
「壮健そうで何よりです。即位の挨拶といただける物資の礼には、私自身が赴かねば、礼に失すると思ったのです」
「そうか、ご丁寧なことで痛み入る。前公王ダリル殿は残念だった。お悔やみ申し上げる」
アルカリウス七世は、残念そうに言った。
「はい。ですが、父は最期まで民の事を憂いていました。私は、父の意思を継ぎ、民達を守っていこうと思います」
「葬儀はされたのか?それにその格好は…?」
「まだ父の葬儀は、まだしておりません。それより優先すべき事がありますので。葬儀は、アポリオンから領土を取り返してからになります。それとこの服は、私の誓いです」
「誓い?」
「アポリオンを滅ぼし、失地を奪還するまで、散っていた父や民達の喪に服し続けるという誓いです」
「…そうか。だが、そんな服を着ていたら婚姻もままならないのではないか?喪に服すのも良いが、未来の事を考え、普通の格好をした方が良いと思うが?」
「滅びかかっている国に婿に来ようとする、そんな馬鹿な方がいるとお思いですか?それに、申し上げた通りこれは今は亡き父の前でした誓い。曲げることなど出来ませぬ」
決意が硬いと悟ったアルカリウス七世は、一度目を閉じた。
「…本題に入ろうか。手紙でも書いた様に我々レグオン帝国には、貴殿らの最大限の支援の用意がある。だが、こちらも色々と物資を各領地に運ばなくては為らないのだ。今貴殿らの支援物資を輸送する竜車が無い。申し訳ないが輸送手段の確保は貴殿らのほうでやってくれ」
「存じております。竜車も連れてきていますが、出来るならば、帝都のほうで輸送手段の確保も考えております」
「民間の物を買い上げるつもりか?」
「場合によっては、その様な事も選択肢の一つに為っています」
「そうか。では、何を我らに所望する?」
「申し訳ないのですが、帝国が一度に出せる最大限の物資のリストを頂きたい」
「リストか?言えば何でも用意させるつもりだが?」
「もしかしたら私共が思い至っていない必要な物資があるかもしれません。それに最大限を超える範囲でお願いしてしまう可能性もありますから…」
「ふむ。あい、分かった。明日の朝までには用意させよう」
「あと、申し訳ないのですが、貴国のスクラップを頂く許可を頂きたいのですが」
「スクラップを?構わんが何故だ。何故そんな物を欲しがる?」
「もちろん戦力の回復の為です。現在我が国には、損傷したダロスが多数あります。貴国にも現在運用されていないだけで過去にはダロスを運用していた事があったはずです」
「うむ。確かにあったな」
「であれば、その頃に廃棄されたダロスがあるはずです。そのパーツを頂きたいのです」
「支援物資の中にフォルスもあるが?とは言え我が国が用意出来るのは、とは言え我が国にはダロスは無く、後継機であるゼロスだけだが…」
ゼロスか…カニンガムを配備し終えたレグオン帝国にとっては、もはや処分予定の旧型機でしかないという事か、カニンガムを寄越さない当り、つくづく舐めたマネをして来るなぁ。
「竜車のスペースは限られています。フォルスを一機丸々持って行って戦力にするより、フォルス一機分のスペースに複数のダロスの修理する為のパーツを持って行き、それで我が国のダロスを修理したいのです」
「なるほど…良かろう。好きなだけ持っていくが良い。許可証も一緒に明日持っていかせよう」
「ありがとうございます」
周囲で聞いていた貴族と思われる連中は小声で、フォニアさんを笑っている。勇者様に戦わせておいて、後方で偉ぶっている貴族共が、必死に国を立て直そうとしているフォニアさんを嘲笑する。"乞食か?""ゴミ拾い""お似合い"とかの文言が貴族共のヒソヒソ声の中から聞こえてくる。ここにいる僕にも聞こえているのだからフォニアさんの耳にもその声は聞こえているはずだ。なのにフォニアさんは笑っている。隣に居るセリアさんからも怒気がまるで熱波の様に立ち上り隣に居る僕が熱いくらいだ。その気持ちには同意するが、今は耐えてください。
彼らが笑っていられるのも今のうちだけ、尻の毛まで抜いてやるのだから。
「では、明日の夕刻までにこちらの提示するリストの中から欲しい物資を選んでもらえるか?」
「分かりました。そういたします」
「では、今日は我が城でゆるりと休むが良いだろう」
その日の謁見は終了した。結局お偉いさん達は、誰もデアフレムデである僕に話しかける事は無かった。誰も気付かなかったか、それか勇者のおまけ程度にしか僕を思っていない様だ。これは好都合。好きに動かさせてもらおう。
フォニアさんが案内された部屋は、豪華なものだった天蓋つきのベットに細工の凝らされたサイドテーブル、クローゼットにこの世界では珍しいガラスの水差しが置かれている。
僕とセリアさんを含む、フォニアさんをお世話するメンバーは、フォニアさんの部屋の近くにある使用人用の部屋へと案内された。それ以外の竜車の御者さん達は、帝国が用意した街の宿屋に行った。
うん。デアフレムデって言う存在が、帝国では認識されていない事は分かった。
僕らは、部屋に荷物を置くとフォニアの部屋でこれからの事について話し合う事にした。
「すみません。僕がこんな策を考えなければフォニアさんにこんな屈辱的な事をさせてしまいました」
僕は、部屋に入るとフォニアさんに深々と頭を下げた。
「大丈夫です。我が国は前からこんな扱いでしたからね。腹が立たないと言えば嘘になりますが、今後ぎゃふんと言わせるのでしょう?」
「そうよ。明日に備えて今日は寝ましょう?野宿続きでベットで寝るのは久しぶりなんだから、しかも帝国の城なのよ。例え使用人の部屋だってそこらの街の宿のベットより上等なはずだからね」
翌日、用意されたスベン公国に宛がわれた専用の食堂で、フォニアさんと一緒に朝食の後お茶を飲んでいると、この国の文官が支援物資のリストとスクラップの譲渡許可証を持って現れた。
帝国の朝食は比べ物にならない位おいしい食事だった。まさに貴族の朝食と言った感じで白パンに、とろりとしたポタージュスープ、それにスクランブルエッグ。黒パンと乾燥野菜と豆のスープと比べるとおいしさは雲泥の差だった。
「フォニア陛下。こちらが、支援物資のリストとスクラップの譲渡許可証になります。ご確認下さい」
「はい。確かに受け取りました。では、本日の夕刻までには、決めれると思います。それと、スクラップに関してはこの後すぐに、この者達に見に行ってもらってよろしいか?」
「かしこまりました。では、案内のものを後ほどこちらの方に遣わせます。スクラップに関しましては、責任者にその書類を見せれば、すぐにでも持って行って構いません。ただ城内への持込は出来ませんので、そちらの竜車への保管をお願いします」
「そんな事はしないわ。では、アマタ。貴方が見に行って頂戴」
「畏まりました。陛下」
フォニアさんには外では、僕の事をアマタと呼び捨てにして貰っている。フォニアさんいわく、ご主人様にとんでもない!と言っていたが、公衆の面前で僕をご主人様呼びした時のデメリットを説明してやっと説得に成功した。
「では、すぐに迎えの者を用意いたします。では失礼します」
受け取りを確認すると、文官は、足早に食堂から出て行った。
フォニアさんはパラパラと、分厚いリストをめくって中身を確認している。
「随分と帝国さんは、奮発してくれたようですね…。これだけの物資があれば、かなりの時間戦えるわ」
一通り見たフォニアさんがそのリストを僕に渡してくれた。
リストの中には、食料、薬、武器、フォルス、そしてお金などの支援物資が大量にリストアップされていた。輸送がこちら持ちという事で、たいした量を持っていけないと高をくくっているのだろう。王国、共和国、そして人類同盟から送られてくる予定の救援物資の中で群を抜いて量が多い。
「では、私達は物資の総重量の計算をしておきますので、そちらの方もよろしくお願いしますね」
「ええ、帝国の方々に目に物見せて差し上げますとも」
「楽しみだねぇ」
「ええ、本当に…」
僕らは怪しく笑った。
帝都の城門の前で僕はザムを送還して、フォニアさんの乗る馬車に乗っている竜車へと乗り込んだ。
窓から見る街の様子は、カルナートとは比べ物にならない位活気ついていた。大通りには露店がならび、それぞれの店には商品があふれている。
カルナートでは現在配給制が実施されている。そのせいで店はほぼ全て閉められ、大通りに露店が出ることすらない。最初僕がカルナートに到着した時は、閑散とした通りの脇に避難民達が肩を寄せ合って座っていた。今では農作業とかの仕事が用意されている為、そんな感じではなくなってはいる。
カルナートと同じ最前線国家とは思えないな。まるでアバドンの脅威など存在しないみたいだ。
これが大国レグオン帝国か…。
グランドース城の正面玄関に到着して竜車を降りる。
僕が先に降り、次に降りるフォニアさんに向けて手を差し出す。その手を掴んでフォニアさんが降りる。
その時、ガエリオ団長が、下りてきたフォニアさんを見た時目を丸くしていた。何故なら彼女は今、真っ黒な喪服なドレスに顔には、同じく黒のベールを被っているのだ。普通に考えれば他国の城へと来る格好ではない。だが、ガエリオ団長は、言葉を飲み込むと、正面玄関へと続く短い階段を登った
正面玄関にはフォルスが余裕で通れるほどの高さがある、両開きのドアが設置され、その左右に煌びやかな装飾が施された、カニンガムが立っていた。
「スベン公国公王フォニア・ダリル・スベン様が到着なされた!扉を開けられたし!」
ガエリオ団長が、扉の前に立ち、大声で言う。すると、左右に立っていたカニンガムが、扉に付いた大きな円い取っ手を掴み、息のあった動作で扉を開けた。
「おお」
その光景に思わず声を上げてしまった。
中も豪華なものだった質実剛健を地でいくカルナートの城とは違い、絢爛なものだった。大理石の廊下に、廊下のいたる所に美術品が展示されている。その中をガエリオ団長の案内で進む。
そもそもカルナートは、要塞であり、煌びやかな装飾とは無縁で、本来なら比べる対象にはならないのだけど、どうしても比べてしまう。
「こちらです」
衛兵が左右に並んだ大きな扉の前まで案内された。この先が謁見の間なのだろう。
衛兵の鎧も豪華だった。それぞれの鎧にエングローブが施され、僕とセリアさんが着ている革鎧とは、比べ物にならない位輝いている。
「スベン公国公王フォニア・ダリル・スベン様が御到ーちゃーく!」
ガエリオ団長が到着を告げると二人の衛兵は声を合わせて大声で言った。
扉が開かれるとそこは大きな広間だった、床には玉座の前まで続く赤い絨毯が敷かれ、その奥には玉座に座った皇帝アルカリウス七世がいた。その横には一目で偉い人と分かる豪華な服を着た中年男性が立っている。
宰相とかそんな人だろう。
それから一団下がった所にも、無数の人達が立っていた。その人々の中に何人か、見覚えのある人達が混じっていた。
たしか、あの人達は、僕が教会にいた頃にケンジさんを見に来ていた人だな。それに服装からして教会関係者もいる。けど、そいつらは僕がデアフレムデである事には気付いた様子は無い。
ちなみにこの場に、ケンジさんはいなかった。きっとフレイムソスで飛び回っているのだろう。
彼らは、扉から入ってきたフォニアさんの喪服ドレス姿を見てざわついている。
僕とセリアさんは彼女の後ろに付き従うように歩く。そして、皇帝の前まで来ると、僕とセリアさんは跪く。フォニアさんは堂々と立ったままだ。一国の国王が、たとえ他国の王であろうともそう簡単に膝をつく事は無い。
「よく来た。フォニア嬢。いや、公王フォニア・ダロス・スベン殿。態々御身が来るとは思わなかったぞ」
「お久しぶりですね。アルカリウス七世殿」
かわりにフォニアさんは、綺麗なカーテシーを披露した。
「壮健そうで何よりです。即位の挨拶といただける物資の礼には、私自身が赴かねば、礼に失すると思ったのです」
「そうか、ご丁寧なことで痛み入る。前公王ダリル殿は残念だった。お悔やみ申し上げる」
アルカリウス七世は、残念そうに言った。
「はい。ですが、父は最期まで民の事を憂いていました。私は、父の意思を継ぎ、民達を守っていこうと思います」
「葬儀はされたのか?それにその格好は…?」
「まだ父の葬儀は、まだしておりません。それより優先すべき事がありますので。葬儀は、アポリオンから領土を取り返してからになります。それとこの服は、私の誓いです」
「誓い?」
「アポリオンを滅ぼし、失地を奪還するまで、散っていた父や民達の喪に服し続けるという誓いです」
「…そうか。だが、そんな服を着ていたら婚姻もままならないのではないか?喪に服すのも良いが、未来の事を考え、普通の格好をした方が良いと思うが?」
「滅びかかっている国に婿に来ようとする、そんな馬鹿な方がいるとお思いですか?それに、申し上げた通りこれは今は亡き父の前でした誓い。曲げることなど出来ませぬ」
決意が硬いと悟ったアルカリウス七世は、一度目を閉じた。
「…本題に入ろうか。手紙でも書いた様に我々レグオン帝国には、貴殿らの最大限の支援の用意がある。だが、こちらも色々と物資を各領地に運ばなくては為らないのだ。今貴殿らの支援物資を輸送する竜車が無い。申し訳ないが輸送手段の確保は貴殿らのほうでやってくれ」
「存じております。竜車も連れてきていますが、出来るならば、帝都のほうで輸送手段の確保も考えております」
「民間の物を買い上げるつもりか?」
「場合によっては、その様な事も選択肢の一つに為っています」
「そうか。では、何を我らに所望する?」
「申し訳ないのですが、帝国が一度に出せる最大限の物資のリストを頂きたい」
「リストか?言えば何でも用意させるつもりだが?」
「もしかしたら私共が思い至っていない必要な物資があるかもしれません。それに最大限を超える範囲でお願いしてしまう可能性もありますから…」
「ふむ。あい、分かった。明日の朝までには用意させよう」
「あと、申し訳ないのですが、貴国のスクラップを頂く許可を頂きたいのですが」
「スクラップを?構わんが何故だ。何故そんな物を欲しがる?」
「もちろん戦力の回復の為です。現在我が国には、損傷したダロスが多数あります。貴国にも現在運用されていないだけで過去にはダロスを運用していた事があったはずです」
「うむ。確かにあったな」
「であれば、その頃に廃棄されたダロスがあるはずです。そのパーツを頂きたいのです」
「支援物資の中にフォルスもあるが?とは言え我が国が用意出来るのは、とは言え我が国にはダロスは無く、後継機であるゼロスだけだが…」
ゼロスか…カニンガムを配備し終えたレグオン帝国にとっては、もはや処分予定の旧型機でしかないという事か、カニンガムを寄越さない当り、つくづく舐めたマネをして来るなぁ。
「竜車のスペースは限られています。フォルスを一機丸々持って行って戦力にするより、フォルス一機分のスペースに複数のダロスの修理する為のパーツを持って行き、それで我が国のダロスを修理したいのです」
「なるほど…良かろう。好きなだけ持っていくが良い。許可証も一緒に明日持っていかせよう」
「ありがとうございます」
周囲で聞いていた貴族と思われる連中は小声で、フォニアさんを笑っている。勇者様に戦わせておいて、後方で偉ぶっている貴族共が、必死に国を立て直そうとしているフォニアさんを嘲笑する。"乞食か?""ゴミ拾い""お似合い"とかの文言が貴族共のヒソヒソ声の中から聞こえてくる。ここにいる僕にも聞こえているのだからフォニアさんの耳にもその声は聞こえているはずだ。なのにフォニアさんは笑っている。隣に居るセリアさんからも怒気がまるで熱波の様に立ち上り隣に居る僕が熱いくらいだ。その気持ちには同意するが、今は耐えてください。
彼らが笑っていられるのも今のうちだけ、尻の毛まで抜いてやるのだから。
「では、明日の夕刻までにこちらの提示するリストの中から欲しい物資を選んでもらえるか?」
「分かりました。そういたします」
「では、今日は我が城でゆるりと休むが良いだろう」
その日の謁見は終了した。結局お偉いさん達は、誰もデアフレムデである僕に話しかける事は無かった。誰も気付かなかったか、それか勇者のおまけ程度にしか僕を思っていない様だ。これは好都合。好きに動かさせてもらおう。
フォニアさんが案内された部屋は、豪華なものだった天蓋つきのベットに細工の凝らされたサイドテーブル、クローゼットにこの世界では珍しいガラスの水差しが置かれている。
僕とセリアさんを含む、フォニアさんをお世話するメンバーは、フォニアさんの部屋の近くにある使用人用の部屋へと案内された。それ以外の竜車の御者さん達は、帝国が用意した街の宿屋に行った。
うん。デアフレムデって言う存在が、帝国では認識されていない事は分かった。
僕らは、部屋に荷物を置くとフォニアの部屋でこれからの事について話し合う事にした。
「すみません。僕がこんな策を考えなければフォニアさんにこんな屈辱的な事をさせてしまいました」
僕は、部屋に入るとフォニアさんに深々と頭を下げた。
「大丈夫です。我が国は前からこんな扱いでしたからね。腹が立たないと言えば嘘になりますが、今後ぎゃふんと言わせるのでしょう?」
「そうよ。明日に備えて今日は寝ましょう?野宿続きでベットで寝るのは久しぶりなんだから、しかも帝国の城なのよ。例え使用人の部屋だってそこらの街の宿のベットより上等なはずだからね」
翌日、用意されたスベン公国に宛がわれた専用の食堂で、フォニアさんと一緒に朝食の後お茶を飲んでいると、この国の文官が支援物資のリストとスクラップの譲渡許可証を持って現れた。
帝国の朝食は比べ物にならない位おいしい食事だった。まさに貴族の朝食と言った感じで白パンに、とろりとしたポタージュスープ、それにスクランブルエッグ。黒パンと乾燥野菜と豆のスープと比べるとおいしさは雲泥の差だった。
「フォニア陛下。こちらが、支援物資のリストとスクラップの譲渡許可証になります。ご確認下さい」
「はい。確かに受け取りました。では、本日の夕刻までには、決めれると思います。それと、スクラップに関してはこの後すぐに、この者達に見に行ってもらってよろしいか?」
「かしこまりました。では、案内のものを後ほどこちらの方に遣わせます。スクラップに関しましては、責任者にその書類を見せれば、すぐにでも持って行って構いません。ただ城内への持込は出来ませんので、そちらの竜車への保管をお願いします」
「そんな事はしないわ。では、アマタ。貴方が見に行って頂戴」
「畏まりました。陛下」
フォニアさんには外では、僕の事をアマタと呼び捨てにして貰っている。フォニアさんいわく、ご主人様にとんでもない!と言っていたが、公衆の面前で僕をご主人様呼びした時のデメリットを説明してやっと説得に成功した。
「では、すぐに迎えの者を用意いたします。では失礼します」
受け取りを確認すると、文官は、足早に食堂から出て行った。
フォニアさんはパラパラと、分厚いリストをめくって中身を確認している。
「随分と帝国さんは、奮発してくれたようですね…。これだけの物資があれば、かなりの時間戦えるわ」
一通り見たフォニアさんがそのリストを僕に渡してくれた。
リストの中には、食料、薬、武器、フォルス、そしてお金などの支援物資が大量にリストアップされていた。輸送がこちら持ちという事で、たいした量を持っていけないと高をくくっているのだろう。王国、共和国、そして人類同盟から送られてくる予定の救援物資の中で群を抜いて量が多い。
「では、私達は物資の総重量の計算をしておきますので、そちらの方もよろしくお願いしますね」
「ええ、帝国の方々に目に物見せて差し上げますとも」
「楽しみだねぇ」
「ええ、本当に…」
僕らは怪しく笑った。
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