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37話 勝利の宴
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あの融合アポリオンに勝った後、すぐにカルナート防衛隊のザムが、ザム・イーワックと一緒にトブタイに乗って現れた。
イーワック02からの通信が途絶えた後すぐに出撃させたそうだ。
ぎりぎりの戦闘で疲労困憊の僕はザムから下ろされ、問答無用でトブタイに乗せられると、カルナートへと連行された。
カルナートに帰還した僕に待っていたのは、全方位からのお説教だった。フォニアさん、ガルロックさんはもちろんオペメイドのアンさんに何故かリーリアさんにまで怒られた。
僕は、疲れで眠りそうになりながらも、全員からのお説教を全て聞かせていただく。全て聞いた後にようやく僕は眠る事を許された。
それからハイレルゲンに僕が向かう事が出来たのは、奪還してから三日目の朝だった。一日目は僕の休養にあて。二日目は、謝罪行脚とザムや、その他弾薬装備の補充をしていた。
そして三日目にしてようやく僕らが奪還した場所へと足を踏み入れる事が出来た、
カルナートからハイレルゲンまでの道行きは、支援物資を乗せたトブタイに便乗して向かった。
空から見たハイレルゲンは初めてトブタイに乗って偵察した時と同じようにボロボロだった。だが、前とは違いそのボロボロの街に居るのは、醜悪なアポリオンではなく、ザム達という事だろう。
彼らは、ハイレルゲンを制圧すると、仮拠点を引き払い、荷物をこちらに全て運び込んでいた。
ハイレルゲンには二重の城壁が作られており。街は第一壁の中に作られ、そこを取り巻くように畑や軍事施設などが作られている。第二壁はそこを更に囲むように建てられていた。
これは、第二壁から内側の部分は非常時に避難民とかの受け入れを考えて作られており、実際ハイレルゲンがアポリオンによって落とされた時には、避難民がそこにテントを張って暮らしていたそうだ。
そこに、スベン公国が誇る機甲師団とも言うべき三部隊、北進隊、西進隊、南進隊の三隊が集まっていた。無事だったザムがハイレルゲンの周囲を巡回しつつ、第二壁の内側に、仮拠点から運んできた天幕を張り、陣地としている。
地上ではトブタイを誘導する為に、ザムが待機していた。身振り手振りで着陸場所を指定している。それに従い、僕の乗っていたトブタイは、その場所に着陸した。この当りは、この国のパイロットも、慣れたものだ。
トブタイから下りるとそこにはセリアさん達が待っていた。
「お疲れ様!アマタ」
「セリアさんこそお疲れ様。無事で何よりです」
「心配したのはこっちよ。いきなりあのデカブツに向かっていくなんて…」
「それについては…はい、すいません」
僕は、頭を下げる事しかできない。あれはどう見ても正しい事ではなかった。
「まぁいいわ。お説教は猛皆からされたんでしょ。それはいいとして、デアフレムデ殿!我らの司令部へとご案内させていただきます!」
そういうとセリアさんは僕に敬礼した。
「頼みます」
僕もそれに答える。だけどそのやり取りは、まるでおまま事の様で笑いがこみ上げてきた。
何とかそれを飲み下し、司令部となっている天幕へと向かう。
天幕には既に、北進隊と南進隊の隊長が揃っていた。
「ようこそハイレルゲンへ!デアフレムデ殿。本当ならこうなる前のハイレルゲンにお迎えしたかった」
そう言ったのは、南進隊隊長のブラッドさんだ。彼は、元々ハイレルゲン防衛隊の隊長をしていた人だ。
「まだ片づけが済んで無くて汚い場所ですいません。アマタ殿」
今度言ったのは、北進隊の隊長をしていたアランさんだ。彼は、カルナート防衛戦の活躍により、昇進して北進隊の隊長を任されていた。
「皆さん、ハイレルゲン奪還お疲れ様です。フォニア公王陛下より、皆にお褒めと、労いの言葉を頂いてきました」
「光栄です。一刻も早く、スベン公国の領土を取り戻し、ハイレルゲンを復興させ、陛下をお迎えできるよう努力いたします」
「それとささやかながらお酒等の支援物資も持ってきました。兵の皆さんで飲んで下さい。ただ、飲み過ぎないように注意してくださいね」
「わぉ。お酒なんて久しぶりね!」
セリアさんが手を叩いて歓声を上げる。
「おお!兵達も喜ぶ事でしょう。早速、配らせてもらいます!」
それから、一通り業務連絡をすると、僕が来た本来の仕事を早速始めた。
それは、戦闘によって損傷したしたザムを送還し、また新たなザムを召喚する事だ。
天幕から出て損傷したザムや撃破されたザムが纏めておいて置かれている場所に僕は案内された。
そこには、損傷したザムが整然と置かれていた。その中には、置いていく羽目になったアポリオンの紫色の血にまみれた指揮官用ザムがあった。
ハイレルゲン奪還作戦は成功したものの、こちらにも想定以上の損害が出ていた。
僕らの予想では、最悪でもザムが何機か使い物にならなくなったとしても死者は出ないはずだった。しかし、想定外の融合アポリオンの登場により、ザム・イーワックの撃墜、多数のザムが撃破されるなどの多くの損害が出た。
特にパイロットの損失は、僕の心にも国家としても痛い。ザムは資源ポイントがあれば多少時間が掛かっても補充できるが、腕の良いパイロットは、そう簡単には補充できない。これからはパイロットの確保についても考えなければならないだろう。
ともかく今は自分の出来る事をしよう。僕は早速、手近にあったザムの残骸から送還を始めた。
ザムは一度でも使用した機体を送還すると、送還時に戻ってくる資材ポイントは召還時に支払った時より、2ポイントほど低くなる。これは帝国から大量にポイントを頂いた時に確認した。
そしてどうやら、損傷していると、そこからさらに帰ってくるポイントは少なくなる。損傷したザムを一機送還すると、6ポイントに変換された。
その時、思いがけない事が起こった。
――――経験値が一定値を超えました。レベルが5に上昇しました。
――――ここここここここここ
――――不ブツン!
――――アップデートを完了しました。オプションが追加されましたリストを確認して下さい。一日に召喚可能なGS数が3機に増加しました。テクスチャマッピングが開放されました。
そう、レベルアップだ。
今送還したのは、僕が乗った事の無いザムだ。それを送還したというのに経験値が入りレベルアップした。
という事は、僕自身が戦わなくても、他の人にザムで戦ってもらい、その機体を送還すれば僕に経験値が入るという事か…。
じゃあもう一機も送還してみよう。
すると、またレベルが上がり、召喚出来るザムの数が一機増えた。
皆、一体どれだけアポリオンを倒したんだろうか?
全てのザムを送還すると五回繰り返しす事になった。最終的に僕のレベルが10に到達し、一日に召喚出来るザムの数も8機になった。この世界に来て、早数ヶ月が過ぎてようやく二桁レベルだ。
うわっ!僕のレベルアップ速度遅すぎ!?
そういえば、先輩達は何レベルまで成長したんだろう?50くらいかなぁ。もしかしたら100レベルとか行ってるかもしれないなぁ。あっ!そもそも成長するとは言ってもレベル性じゃない可能性もあるか…。
召喚リストを表示させると、色々な物が新たに召喚出来る様になっていた。たとえば武器だと、剣タイプの近接武器に、足に装着するタイプのミサイルランチャー、ショットガンなど、いろんな種類に渡って追加されていた
そう言えば、パイロット達からアバドンと接近戦をする時に、標準装備のバトルアックスだと攻撃範囲がどうしても短く、足元に入られるとたったままでは対処がしにくいって報告があったな…。丁度いい。明日にでも、幾つかの新武器を試してもらおう。
でも、新たに召喚出来る物の中で僕には一際気になるモノがあった。それは、紫色の血まみれになった僕が乗っていた指揮官用ザムを送還した時、新たなザムが召喚可能になった物だ。
僕が一番気になった新機体。それは!GS-06S ヒデユキ・アマタ専用ザム!
そう!僕の専用機だ!専用機だよ!専用機!燃えるよね!ワンオフ機と専用機どっちが良いと問われれば僕は、せっかくだから専用機を選ぶぜ!と答えるだろう。
その性能は、驚くこと無かれ!指揮官用ザムと能力据え置き!ただのカラーバリエーション機なのだ!
メインカラーがつや消しのパープルに、白縁のイかしたカラーリングのザム!何故パープル?アポリオンの紫の血を盛大に被ったからか?
どうやら、あの融合アポリオンに戦い勝利した事により、何か承認されたらしい。多少僕なりのカスタムがされていればザム ノクトとか名前が変わっていたのだろうけど、残念ながらただのカラバリ機には、固有名称はつきません。僕らしいと言えるけどね
夜になると、簡単な祝勝会の様なものが催された。
第二壁の内側に適当に作られた広場には、大量のテーブルを並べその上には、大量の料理が置かれており、周囲に大量に焚かれた篝火が、料理をおいしそうに照らしている。
テーブルの上に置かれていたのは戦時とは思えないほど豪華な物だった。
広場の中心部では、子牛と丸々太った豚、そしてダチョウのような大きな鳥が並べて丸焼きにされていた。傍には、装甲を外されたダロスが三機が何処からか持ってきたブロックに座り、ゆっくりとそれらの食材が刺さった鉄棒をクランクでまわして丸焼きにしたのだ。コレは、ダロスのパイロットがかわるがわるクランクを回す役を交代しながら昼間からじっくりと焼かれており、おいしそうな香りを周囲へと放ち、僕及びハイレルゲンに駐屯している兵士達の腹に直撃した。
これらの食事には多くが一般の人達からの寄付だった。ハイレルゲン奪還を知ったカルナートの市民が、奪還を喜び、女王であるフォニアさんに献上したのだ。家畜と言うのは、市民にとって大きな財産だ。それを献上するという事は、それ程一般の人達も嬉しかったのだろう。フォニアさんは、献上してきて来た人達に直接会って礼をいい、そして、献上された食べ物を前線の兵士に下賜することを謝った。
直接会うとは思ってなかった市民は、激しく首を横に振りながら、恐縮していた。そしてフォニアさんの優しさに感動してそれぞれもう一頭づつ差し出そうとすらしたが、それは、フォニアさんが説得してやめさせたそうだ。
肉が焼かれるに臭いと言うものは、進軍中殆どが糧食しか食べていない兵士達にとって、これほど暴力的な香りは無いだろう。
僕も糧食を食べさせてもらった事があったけど、パンが歯が砕けそうになるほど固く、干し肉は保存を第一にしているせいでしょっぱいし、野菜も酢漬けで同じく保存の観点から物凄く酸っぱい。
この世界での糧食のは、一言で言って不味いとしか言い様が無い。いや、人の食べる物ではなかった。それを食べながら戦っていたこの世界の兵士は本当に凄いと思う。
広場には、空き木箱で作ったステージが作られ、その上には、お酒の入った木のコップを持ったセリアさんが立っている。
ステージの下には、警戒担当以外の兵士達がたむろし、お酒の入ったコップを片手に祝勝会が始まるのを今か今かと待っていた。
コップ一杯程度の酒ではあったが、それでも彼らが飲むのは久しぶりなのだそうな。
僕は、そのステージの端っこでジュースの入ったコップを片手に立っていた。
「え~!勇敢なるスベン公国兵士諸君!デアフレムデ殿のお力により召喚されたザムの力を借り、先日の我らは悲願であったハイレルゲンを我らの手で!我らの手で奪還した!デアフレムデ殿より、陛下からのお褒めの言葉も頂いた!」
ここで、兵士達の間からおおー!と言う声が上がった。やはり、王様の言葉と言うのは、なかなか来るモノがあるのだろう。
「ハイレルゲンをアポリオンに落とされ、先王陛下は、ハイレルゲン脱出の際におわれた傷が崩御された。私はもはやスベン公国もコレまでかと思った。諸君らの中にもそう思った者も少なくないはずだ。だが、フォニア陛下が大いなる希望を!デアフレムデ殿を我らが国へと連れて来てくださった。天は我らを見放してはいなかった!」
兵士達の間から「そうだ!」とか、「俺達はまだ戦える!」と言う威勢のよい声が上がる。それを聞いて満足したようにセリアさんは微笑むと、僕のほうを見た。
「では、乾杯の音頭をデアフレムデ殿にお願いしよう」
本当ならこういうのはやりたくないのだけれど…。
僕は渋々ステージの中央へと立った。
「えっと、ご紹介に預かりましたデアフレムデである天田英行です。こちら風に言うなら、英行・天田ですね。皆さん。ハイレルゲン奪還作戦お疲れ様でした。皆さんのお陰で作戦は成功裏に終わりました。今回の作戦では残念にも沢山の仲間が勇敢に戦い、失われました。これが残念で成りません。戦いの中兵士が死ぬのは仕方の無い事なのかもしれません。ですが僕は、それでも悔しいのです。皆さん。覚えて置いて下さいザムは壊れてもまた召喚出来ます。ですが、それに乗る皆さんが失われれば、二度と元に戻る事はありません。ですので危なくなったらザムを放棄してでも逃げて下さい。生き延びて下さい。もちろん場合によっては、始末書は書いてもらいますけど、死ぬよりはマシですよね!」
そういうと、聞いていた兵士達の間から笑いが漏れる。良かった多少は受けたようだ。
「では、作戦の成功と皆さんの無事の帰還を祝い。乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
僕の音頭で、みんながコップを掲げて飲み始める。それと同時に、手近にあった皿を手に取り、焼かれている肉へと殺到した。
もしかしたらここに居る人達の中で、作戦完了時には戦死しているかもしれない。でも今は、この勝利を喜ぼう。
イーワック02からの通信が途絶えた後すぐに出撃させたそうだ。
ぎりぎりの戦闘で疲労困憊の僕はザムから下ろされ、問答無用でトブタイに乗せられると、カルナートへと連行された。
カルナートに帰還した僕に待っていたのは、全方位からのお説教だった。フォニアさん、ガルロックさんはもちろんオペメイドのアンさんに何故かリーリアさんにまで怒られた。
僕は、疲れで眠りそうになりながらも、全員からのお説教を全て聞かせていただく。全て聞いた後にようやく僕は眠る事を許された。
それからハイレルゲンに僕が向かう事が出来たのは、奪還してから三日目の朝だった。一日目は僕の休養にあて。二日目は、謝罪行脚とザムや、その他弾薬装備の補充をしていた。
そして三日目にしてようやく僕らが奪還した場所へと足を踏み入れる事が出来た、
カルナートからハイレルゲンまでの道行きは、支援物資を乗せたトブタイに便乗して向かった。
空から見たハイレルゲンは初めてトブタイに乗って偵察した時と同じようにボロボロだった。だが、前とは違いそのボロボロの街に居るのは、醜悪なアポリオンではなく、ザム達という事だろう。
彼らは、ハイレルゲンを制圧すると、仮拠点を引き払い、荷物をこちらに全て運び込んでいた。
ハイレルゲンには二重の城壁が作られており。街は第一壁の中に作られ、そこを取り巻くように畑や軍事施設などが作られている。第二壁はそこを更に囲むように建てられていた。
これは、第二壁から内側の部分は非常時に避難民とかの受け入れを考えて作られており、実際ハイレルゲンがアポリオンによって落とされた時には、避難民がそこにテントを張って暮らしていたそうだ。
そこに、スベン公国が誇る機甲師団とも言うべき三部隊、北進隊、西進隊、南進隊の三隊が集まっていた。無事だったザムがハイレルゲンの周囲を巡回しつつ、第二壁の内側に、仮拠点から運んできた天幕を張り、陣地としている。
地上ではトブタイを誘導する為に、ザムが待機していた。身振り手振りで着陸場所を指定している。それに従い、僕の乗っていたトブタイは、その場所に着陸した。この当りは、この国のパイロットも、慣れたものだ。
トブタイから下りるとそこにはセリアさん達が待っていた。
「お疲れ様!アマタ」
「セリアさんこそお疲れ様。無事で何よりです」
「心配したのはこっちよ。いきなりあのデカブツに向かっていくなんて…」
「それについては…はい、すいません」
僕は、頭を下げる事しかできない。あれはどう見ても正しい事ではなかった。
「まぁいいわ。お説教は猛皆からされたんでしょ。それはいいとして、デアフレムデ殿!我らの司令部へとご案内させていただきます!」
そういうとセリアさんは僕に敬礼した。
「頼みます」
僕もそれに答える。だけどそのやり取りは、まるでおまま事の様で笑いがこみ上げてきた。
何とかそれを飲み下し、司令部となっている天幕へと向かう。
天幕には既に、北進隊と南進隊の隊長が揃っていた。
「ようこそハイレルゲンへ!デアフレムデ殿。本当ならこうなる前のハイレルゲンにお迎えしたかった」
そう言ったのは、南進隊隊長のブラッドさんだ。彼は、元々ハイレルゲン防衛隊の隊長をしていた人だ。
「まだ片づけが済んで無くて汚い場所ですいません。アマタ殿」
今度言ったのは、北進隊の隊長をしていたアランさんだ。彼は、カルナート防衛戦の活躍により、昇進して北進隊の隊長を任されていた。
「皆さん、ハイレルゲン奪還お疲れ様です。フォニア公王陛下より、皆にお褒めと、労いの言葉を頂いてきました」
「光栄です。一刻も早く、スベン公国の領土を取り戻し、ハイレルゲンを復興させ、陛下をお迎えできるよう努力いたします」
「それとささやかながらお酒等の支援物資も持ってきました。兵の皆さんで飲んで下さい。ただ、飲み過ぎないように注意してくださいね」
「わぉ。お酒なんて久しぶりね!」
セリアさんが手を叩いて歓声を上げる。
「おお!兵達も喜ぶ事でしょう。早速、配らせてもらいます!」
それから、一通り業務連絡をすると、僕が来た本来の仕事を早速始めた。
それは、戦闘によって損傷したしたザムを送還し、また新たなザムを召喚する事だ。
天幕から出て損傷したザムや撃破されたザムが纏めておいて置かれている場所に僕は案内された。
そこには、損傷したザムが整然と置かれていた。その中には、置いていく羽目になったアポリオンの紫色の血にまみれた指揮官用ザムがあった。
ハイレルゲン奪還作戦は成功したものの、こちらにも想定以上の損害が出ていた。
僕らの予想では、最悪でもザムが何機か使い物にならなくなったとしても死者は出ないはずだった。しかし、想定外の融合アポリオンの登場により、ザム・イーワックの撃墜、多数のザムが撃破されるなどの多くの損害が出た。
特にパイロットの損失は、僕の心にも国家としても痛い。ザムは資源ポイントがあれば多少時間が掛かっても補充できるが、腕の良いパイロットは、そう簡単には補充できない。これからはパイロットの確保についても考えなければならないだろう。
ともかく今は自分の出来る事をしよう。僕は早速、手近にあったザムの残骸から送還を始めた。
ザムは一度でも使用した機体を送還すると、送還時に戻ってくる資材ポイントは召還時に支払った時より、2ポイントほど低くなる。これは帝国から大量にポイントを頂いた時に確認した。
そしてどうやら、損傷していると、そこからさらに帰ってくるポイントは少なくなる。損傷したザムを一機送還すると、6ポイントに変換された。
その時、思いがけない事が起こった。
――――経験値が一定値を超えました。レベルが5に上昇しました。
――――ここここここここここ
――――不ブツン!
――――アップデートを完了しました。オプションが追加されましたリストを確認して下さい。一日に召喚可能なGS数が3機に増加しました。テクスチャマッピングが開放されました。
そう、レベルアップだ。
今送還したのは、僕が乗った事の無いザムだ。それを送還したというのに経験値が入りレベルアップした。
という事は、僕自身が戦わなくても、他の人にザムで戦ってもらい、その機体を送還すれば僕に経験値が入るという事か…。
じゃあもう一機も送還してみよう。
すると、またレベルが上がり、召喚出来るザムの数が一機増えた。
皆、一体どれだけアポリオンを倒したんだろうか?
全てのザムを送還すると五回繰り返しす事になった。最終的に僕のレベルが10に到達し、一日に召喚出来るザムの数も8機になった。この世界に来て、早数ヶ月が過ぎてようやく二桁レベルだ。
うわっ!僕のレベルアップ速度遅すぎ!?
そういえば、先輩達は何レベルまで成長したんだろう?50くらいかなぁ。もしかしたら100レベルとか行ってるかもしれないなぁ。あっ!そもそも成長するとは言ってもレベル性じゃない可能性もあるか…。
召喚リストを表示させると、色々な物が新たに召喚出来る様になっていた。たとえば武器だと、剣タイプの近接武器に、足に装着するタイプのミサイルランチャー、ショットガンなど、いろんな種類に渡って追加されていた
そう言えば、パイロット達からアバドンと接近戦をする時に、標準装備のバトルアックスだと攻撃範囲がどうしても短く、足元に入られるとたったままでは対処がしにくいって報告があったな…。丁度いい。明日にでも、幾つかの新武器を試してもらおう。
でも、新たに召喚出来る物の中で僕には一際気になるモノがあった。それは、紫色の血まみれになった僕が乗っていた指揮官用ザムを送還した時、新たなザムが召喚可能になった物だ。
僕が一番気になった新機体。それは!GS-06S ヒデユキ・アマタ専用ザム!
そう!僕の専用機だ!専用機だよ!専用機!燃えるよね!ワンオフ機と専用機どっちが良いと問われれば僕は、せっかくだから専用機を選ぶぜ!と答えるだろう。
その性能は、驚くこと無かれ!指揮官用ザムと能力据え置き!ただのカラーバリエーション機なのだ!
メインカラーがつや消しのパープルに、白縁のイかしたカラーリングのザム!何故パープル?アポリオンの紫の血を盛大に被ったからか?
どうやら、あの融合アポリオンに戦い勝利した事により、何か承認されたらしい。多少僕なりのカスタムがされていればザム ノクトとか名前が変わっていたのだろうけど、残念ながらただのカラバリ機には、固有名称はつきません。僕らしいと言えるけどね
夜になると、簡単な祝勝会の様なものが催された。
第二壁の内側に適当に作られた広場には、大量のテーブルを並べその上には、大量の料理が置かれており、周囲に大量に焚かれた篝火が、料理をおいしそうに照らしている。
テーブルの上に置かれていたのは戦時とは思えないほど豪華な物だった。
広場の中心部では、子牛と丸々太った豚、そしてダチョウのような大きな鳥が並べて丸焼きにされていた。傍には、装甲を外されたダロスが三機が何処からか持ってきたブロックに座り、ゆっくりとそれらの食材が刺さった鉄棒をクランクでまわして丸焼きにしたのだ。コレは、ダロスのパイロットがかわるがわるクランクを回す役を交代しながら昼間からじっくりと焼かれており、おいしそうな香りを周囲へと放ち、僕及びハイレルゲンに駐屯している兵士達の腹に直撃した。
これらの食事には多くが一般の人達からの寄付だった。ハイレルゲン奪還を知ったカルナートの市民が、奪還を喜び、女王であるフォニアさんに献上したのだ。家畜と言うのは、市民にとって大きな財産だ。それを献上するという事は、それ程一般の人達も嬉しかったのだろう。フォニアさんは、献上してきて来た人達に直接会って礼をいい、そして、献上された食べ物を前線の兵士に下賜することを謝った。
直接会うとは思ってなかった市民は、激しく首を横に振りながら、恐縮していた。そしてフォニアさんの優しさに感動してそれぞれもう一頭づつ差し出そうとすらしたが、それは、フォニアさんが説得してやめさせたそうだ。
肉が焼かれるに臭いと言うものは、進軍中殆どが糧食しか食べていない兵士達にとって、これほど暴力的な香りは無いだろう。
僕も糧食を食べさせてもらった事があったけど、パンが歯が砕けそうになるほど固く、干し肉は保存を第一にしているせいでしょっぱいし、野菜も酢漬けで同じく保存の観点から物凄く酸っぱい。
この世界での糧食のは、一言で言って不味いとしか言い様が無い。いや、人の食べる物ではなかった。それを食べながら戦っていたこの世界の兵士は本当に凄いと思う。
広場には、空き木箱で作ったステージが作られ、その上には、お酒の入った木のコップを持ったセリアさんが立っている。
ステージの下には、警戒担当以外の兵士達がたむろし、お酒の入ったコップを片手に祝勝会が始まるのを今か今かと待っていた。
コップ一杯程度の酒ではあったが、それでも彼らが飲むのは久しぶりなのだそうな。
僕は、そのステージの端っこでジュースの入ったコップを片手に立っていた。
「え~!勇敢なるスベン公国兵士諸君!デアフレムデ殿のお力により召喚されたザムの力を借り、先日の我らは悲願であったハイレルゲンを我らの手で!我らの手で奪還した!デアフレムデ殿より、陛下からのお褒めの言葉も頂いた!」
ここで、兵士達の間からおおー!と言う声が上がった。やはり、王様の言葉と言うのは、なかなか来るモノがあるのだろう。
「ハイレルゲンをアポリオンに落とされ、先王陛下は、ハイレルゲン脱出の際におわれた傷が崩御された。私はもはやスベン公国もコレまでかと思った。諸君らの中にもそう思った者も少なくないはずだ。だが、フォニア陛下が大いなる希望を!デアフレムデ殿を我らが国へと連れて来てくださった。天は我らを見放してはいなかった!」
兵士達の間から「そうだ!」とか、「俺達はまだ戦える!」と言う威勢のよい声が上がる。それを聞いて満足したようにセリアさんは微笑むと、僕のほうを見た。
「では、乾杯の音頭をデアフレムデ殿にお願いしよう」
本当ならこういうのはやりたくないのだけれど…。
僕は渋々ステージの中央へと立った。
「えっと、ご紹介に預かりましたデアフレムデである天田英行です。こちら風に言うなら、英行・天田ですね。皆さん。ハイレルゲン奪還作戦お疲れ様でした。皆さんのお陰で作戦は成功裏に終わりました。今回の作戦では残念にも沢山の仲間が勇敢に戦い、失われました。これが残念で成りません。戦いの中兵士が死ぬのは仕方の無い事なのかもしれません。ですが僕は、それでも悔しいのです。皆さん。覚えて置いて下さいザムは壊れてもまた召喚出来ます。ですが、それに乗る皆さんが失われれば、二度と元に戻る事はありません。ですので危なくなったらザムを放棄してでも逃げて下さい。生き延びて下さい。もちろん場合によっては、始末書は書いてもらいますけど、死ぬよりはマシですよね!」
そういうと、聞いていた兵士達の間から笑いが漏れる。良かった多少は受けたようだ。
「では、作戦の成功と皆さんの無事の帰還を祝い。乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
僕の音頭で、みんながコップを掲げて飲み始める。それと同時に、手近にあった皿を手に取り、焼かれている肉へと殺到した。
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