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高校最後の想い出に
しおりを挟む海には四人で行った。
デート中なのに、と友人たちは遠慮したが、二人とは元々志望校が違い、離れる事は決まっていた。
これからは今までのように頻繁には集まれないだろう。
それなら、みんなで楽しく高校最後の想い出を作りたかった。
海を背景に皆で写真を撮り、美少女を囲む男三人に、どんな関係だよ! と友人は爆笑した。
アイドルとツーショットイベント、と言いながら写真を撮り、もうそれにしか見えないと言ってまた笑う。
笑いすぎて顎が痛い。共有された写真を見ながら、壱村はそっと目を細めた。
「次に来る時は、男の格好で、だな」
もうすぐこんな格好は似合わなくなる。それで良いはずなのに、何となく寂しい気持ちになった。
「高校最後の写真がこれになるかもってちょっとあれだけどさ、何年か後に見て、あの頃は馬鹿やってたなーってのもいい想い出だろ?」
そう言うと、そうだな、と皆笑う。
「大学は違うけどさ、休みの時とかまた集まろうぜ」
友人の言葉に、皆はまた頷く。
「次はどっか旅行とか行きたいよなー」
「あー、海外とか?」
「え、壱村、英語話せんの?」
「俺はいまいちだけど、ここに通訳がいる」
「えっ? 俺? うん、いいけど」
「いいのかよ!? ありがとう!」
いつでも素直な友人が可愛く見えてきて、壱村と一見はナデナデと頭を撫でた。
そんな高校最後の想い出を作り、大学に入れば忙しさと充実感のある日々。
話していた通りに皆で旅行にも行った。
きっと社会に出てもずっとこんな関係でいられるのだろう。
一見との同居は、とんでもなく甘い日々……という事ばかりではなく、わりと普通のルームシェアだった。
甘い時はとことん、という感じだったが、その割合が居心地が良くて、それも一見の計算のうちだったのかもしれない。
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