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77ハーメルン
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争っている真っただ中の上空から、インプリンティング薬を散布すること10分。ものの見事に地上では、静かになった模様。
そこで二人と1匹と1羽は、地上に降り立ったところ。
「聖女様だぁ!」
大歓声に包まれる。
あとは、ハーメルンの笛吹きよろしく、旧アンダルシアの国境まで連れていく。ついて来た連中の中には、マルベール王子の側近の重鎮までが含まれている。家族とともに、旧アンダルシアへ疎開するため目指していたところ、雨に打たれて、気づいたら、旧アンダルシアの国歌を口遊んでいたのだ。
何が一体どうなっているかなど、見当もつかない。でも妙にカラダが軽く、アンダルシアへ入ることを心待ちにしている自分がいる。
ふと横を見るとマルベールの騎士団長がいる。彼も心底楽しげな表情で、アンダルシアにさえ行けば、幸せが待っていると信じて疑わない様子だ。
まるで、幼い子が母親の後ろ姿を追いかけているかのような様子に、自分も同じことをしているにもかかわらず笑いがこみあげてくる。
それでいて、なぜか自分も幸せを実感しているのだ。安定した優しさとぬくもりが心地よい。
ここにあのマルベールの王子がいないことも幸いしているのかもしれない。
せいぜい王宮で裸の王様でもしてろっ!
クランベールの王子様は、ただでさえ覇気がないにも関わらず、初陣に参加していた。
どうせぼろ勝ちするからと、クランベール国王陛下が許可をしたのだ。
マルベールの国境を超えたあたりで、通り雨にあっただけなのに、ますますやる気がなくなってくる。
この戦争に参加したのは、一つは戦争経験がないと部下への示しがつかない。もう一つは、マルベールに男妾を押し付けられては叶わないから、そのための牽制でもある。
なんとしても聖女様の正夫の座を獲得しなければ、親戚筋や他の王子にとってかわられてしまう。
自分の存在意義に関わる話なのである。
王子に生まれたからといって、必ずしも王位が転がり込んでくるわけではない。
それぞれの継承権者の中での競争がある。その競争に勝ち残った者だけに与えられる栄誉。それが王位の座。
もし、それに落っこちてしまったら、みじめそのもの。臣下に下がり、政の中心にいられたらまだしも、そうでなければ家畜に近い扱いを受ける。
この世界では、いつから人間を家畜扱いにしたのだろうか?力の強いものが弱いものを支配する世界。道理は合っているような?気もしないわけではないが、力の弱い者、お年寄りや病人、女性に子供からすれば、たまったものではない。
本当は、人間は皆平等のはずなのだ。神が作った世界に不平等など存在しない。
オリヴィアは、この世界が神の手により出現したものでないことを知っている。もちろん、この世界を作ったのは、乙女ゲームの製作者であり、その運営会社なのだが、ずいぶん歪んだ性格なのだろう。
このことを知っているのは、オリヴィアとエリオットだけ。
言わぬが花、知らぬが仏。
オリヴィアは、アンダルシアの国境を超えたところで、全員に持っている武器を捨てさせる。
名前と生年月日、家族構成、平民か貴族かなどを聞き出す、簡易の人別長を作るためである。社会的地位など、どうでもいいことなのだが、秩序として利用するため、聞いておくことにした。
そして、その場でワインに混ぜたインプリンティング薬をもう一度飲ませる。子供には、グレープジュースだ。
大人はワインが飲めるくせに、子供が美味しそうに飲んでいるのを見て、ワインにグレープジュースを混ぜて飲んでいる者もいる。同じ色だからね。
飲み終わった者から、今度は風呂に入ってもらう。
ニッポン式の大浴場で、男女別れて入ってもらう。10歳までの男の子に限って、女湯に入っても構わないことにする。
浴槽にはいきなり浸からせない。まず、洗い場で入念にカラダを洗ってから入らせることを徹底する。
そこで二人と1匹と1羽は、地上に降り立ったところ。
「聖女様だぁ!」
大歓声に包まれる。
あとは、ハーメルンの笛吹きよろしく、旧アンダルシアの国境まで連れていく。ついて来た連中の中には、マルベール王子の側近の重鎮までが含まれている。家族とともに、旧アンダルシアへ疎開するため目指していたところ、雨に打たれて、気づいたら、旧アンダルシアの国歌を口遊んでいたのだ。
何が一体どうなっているかなど、見当もつかない。でも妙にカラダが軽く、アンダルシアへ入ることを心待ちにしている自分がいる。
ふと横を見るとマルベールの騎士団長がいる。彼も心底楽しげな表情で、アンダルシアにさえ行けば、幸せが待っていると信じて疑わない様子だ。
まるで、幼い子が母親の後ろ姿を追いかけているかのような様子に、自分も同じことをしているにもかかわらず笑いがこみあげてくる。
それでいて、なぜか自分も幸せを実感しているのだ。安定した優しさとぬくもりが心地よい。
ここにあのマルベールの王子がいないことも幸いしているのかもしれない。
せいぜい王宮で裸の王様でもしてろっ!
クランベールの王子様は、ただでさえ覇気がないにも関わらず、初陣に参加していた。
どうせぼろ勝ちするからと、クランベール国王陛下が許可をしたのだ。
マルベールの国境を超えたあたりで、通り雨にあっただけなのに、ますますやる気がなくなってくる。
この戦争に参加したのは、一つは戦争経験がないと部下への示しがつかない。もう一つは、マルベールに男妾を押し付けられては叶わないから、そのための牽制でもある。
なんとしても聖女様の正夫の座を獲得しなければ、親戚筋や他の王子にとってかわられてしまう。
自分の存在意義に関わる話なのである。
王子に生まれたからといって、必ずしも王位が転がり込んでくるわけではない。
それぞれの継承権者の中での競争がある。その競争に勝ち残った者だけに与えられる栄誉。それが王位の座。
もし、それに落っこちてしまったら、みじめそのもの。臣下に下がり、政の中心にいられたらまだしも、そうでなければ家畜に近い扱いを受ける。
この世界では、いつから人間を家畜扱いにしたのだろうか?力の強いものが弱いものを支配する世界。道理は合っているような?気もしないわけではないが、力の弱い者、お年寄りや病人、女性に子供からすれば、たまったものではない。
本当は、人間は皆平等のはずなのだ。神が作った世界に不平等など存在しない。
オリヴィアは、この世界が神の手により出現したものでないことを知っている。もちろん、この世界を作ったのは、乙女ゲームの製作者であり、その運営会社なのだが、ずいぶん歪んだ性格なのだろう。
このことを知っているのは、オリヴィアとエリオットだけ。
言わぬが花、知らぬが仏。
オリヴィアは、アンダルシアの国境を超えたところで、全員に持っている武器を捨てさせる。
名前と生年月日、家族構成、平民か貴族かなどを聞き出す、簡易の人別長を作るためである。社会的地位など、どうでもいいことなのだが、秩序として利用するため、聞いておくことにした。
そして、その場でワインに混ぜたインプリンティング薬をもう一度飲ませる。子供には、グレープジュースだ。
大人はワインが飲めるくせに、子供が美味しそうに飲んでいるのを見て、ワインにグレープジュースを混ぜて飲んでいる者もいる。同じ色だからね。
飲み終わった者から、今度は風呂に入ってもらう。
ニッポン式の大浴場で、男女別れて入ってもらう。10歳までの男の子に限って、女湯に入っても構わないことにする。
浴槽にはいきなり浸からせない。まず、洗い場で入念にカラダを洗ってから入らせることを徹底する。
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