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39真実の愛(つづき
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バーナードは、アンダルシアの妃教育の厳しさから逃げ出したオリビアを追って、王城を抜け出しことに成功。
「俺には、もうオリビアしかいない。愛している。」
「嘘よ。だったらなぜ助けに来てくれなかったの?」
「将来、王妃になるためには必要な教育なのだ。母もその母も、皆同じように教育をうけてから王妃となっている。オリビアは王妃になりたくはないのか?」
「それは……、私はバーモンドさえ側にいてくれるだけで幸せよ。(うそ)でもバーモンドが王様になって、もっと私を幸せにして欲しい。でもそのために鞭でぶたれるのはイヤなの。」
赤くミミズ腫れをした箇所を見せる。
オリビアにとって、もう頼れる人間はバーモンドしかいない。
「わっ!なんてひどいことを!俺の大切なオリビアにこんなことするなんて、許せない!わかった。だったら、二人で逃げよう。そして結婚しよう。既成事実さえ作ってしまえば、ほとぼりが冷めたころを見計らい、アンダルシアに戻って、王になる。オリビアが王妃になり悪弊を排除するために動けばいい。」
「そんなにうまくいくかしら?」
「いくさ。手始めに妃教育係を血祭りにあげればいい。たとえば、の話さ。まぁ実際には、クビにすることが精いっぱいだろうけど、貴族の身分をはく奪するだけでも、奴らには十分なお仕置きになる。」
「そうね。それならできそうだわ。どこへ逃げればいいの?」
「とりあえず、隣国マルベールだ。海がある。そこから船に乗り、気に入った島で下りればいい。オリビアは海を見たことがあるかい?湖よりもデッカイ水たまりさ。」
「楽しみだわ。二人でお魚を釣って、ヤシの実を食べて、もし耕せる土地があれば、何か作物を植えましょうよ。」
「そうだな。オリビアは何が好きだい?」
「う……。バーモンドよ。」
「俺もさ、オリビアが一番好きだよ。」
二人は、その日初めて結ばれた。
幸せいっぱいの二人は、その足でマルベールに入国し、結婚式を挙げるべく大聖堂に赴いたのだ。
ほぼ同時にマーガレットもまた、学園の同級生が結婚するためにマルベール国に入国し、結婚式が行われる大聖堂を下見に来ていたところだったことが運の尽き?だったわけで。
オリビアは自分でも気づかないチートスキルをまたしても発動してしまい、大聖堂の水晶玉を輝かせてしまったことで、思わぬ災いをしょい込んでしまう。
マルベール国王に報告されてしまい、バーモンドと結婚するはずがいつの間にか、バーモンドと引き離され、マルベールの好きでもない王子様と婚約が相整っていたのである。
妃教育はなかったけれど、マルベールの王城の一室に閉じ込められ、侍女や他の貴族は礼儀として傅いてはくれるが、建前だけで、腹の底であざ笑っていることが見てとれる。
こんなことなら、まだ教育してくれようとしていたアンダルシアのほうがマシ。隙を見て逃げ出そうにも、廊下にも見張りが剣を振りかざしていて立っているから、どこへも行けない。
見知らぬ国へ来て、貴族牢のような座敷牢のような一室に閉じ込められ、誰とも話す機会もなくどんどん気持ちが暗くなっていく。
食事も一人だけで取り、風呂も寝るときも誰も話しかけてくれない。あのまま逃げ出さなくて、妃教育をやり遂げたら、バーモンドと結婚できたものを自らの意思で、手放してしまった。
このまま好きでもない男に抱かれ、子を生し、男児なら取り上げられ、そのまま一生を終えるのか?
毎晩、毎晩、泣いて。朝、泣きはらした目でいたら、ついに侍女から王家に報告が言ったみたいで、それで南の島へバカンスに行くことになったのだ。
やっと外へ出られる。もしかしたら、バーナードにも会えるかもしれない。そう思うと少しだけ、気分が軽くなったような気がする。
南の島へ行くことになったのは、オリビア一人だけではなく、婚約者の王子様もご一緒で、王子の護衛の騎士と身の回りの世話をする侍女がついていくことになった。
馬車には、オリビアだけが乗せられ、王子様は別の馬車に乗られる。
あの部屋から馬車に代わっただけで、景色が動くだけマシか?と思うような待遇にうんざりする。
なんで?王子まで付いてくるのよ?
王子がついてこられたら、気が晴れない。今夜はまた一晩中泣いてやろうか?と思っていたら、南の島のコテージに着くなり、侍女から体をごしごしと洗われる。
そして、ほとんどスケスケの前世で言えば、ストリッパーが着るような夜着を着せられた。なんとなくイヤな予感がする。
その予感はすぐに的中する。
王子は自分だけ食事を済ませ、その足でコテージのオリビアの元へ行き、いきなり押し倒したのだ。
そして夜着の上からおっぱいを揉み、夜着をまくり上げ、足を開かせようとした。その間、終始無言のままで。
愛の言葉は一度も発せられず、いきなりのことでオリビアは必死に抵抗するも男の力の前では無力同然。
「いや。やめて。助けて。」
無情にも、カラダは反応せず、痛いままで押し入れられた。
「痛い。」
その言葉にほくそ笑んでいる王子様。
その数分後、微笑みは怒りへと変わっていく。
「この淫売が!だましやがったな!」
オリビアは、訳が分からないまま顔を殴られる。
「お前のようなブスを抱いてやったのに。処女ではなかったのだな?相手は誰だ?あの時、一緒にいた男か?ぶっ殺してくれる。」
「やめて。バーモンドに手を出さないで。」
オリビアは必死にすがるも、
「何?バーモンドと言ったな?これはアンダルシアの王太子殿ではないかな?これは面白いことを聞いたぞ。アンダルシアに攻め入り、バーモンドをぶっ殺してやる!」
「やめてー!」
「うるさい!黙れ!」
今度は、頭を思いっきり殴られ、意識が遠のいていく。
意識を失う瞬間、確かに地震のような地響きを感じる。
それは、オリビアの悲しみと絶望が、海の魔物を呼んでしまったのだ。
その海域にはいないはずの魔物サルガッソーを。
サルガッソーは、津波となり、南の島をひとのみで飲み込む。
コテージごと、海に投げ出され、海の底へと沈んでいく。
海難事故で亡くなった人の魂とオリビアの絶望感が相まって、巨大なゴジラのような姿へと変わっていくオリビア。
サルガッソーの中でオリビアが芽生えたのではなく、まったく新しい魔物としてオリビアは誕生したのだ。
海の魔物オリビアの誕生の瞬間に、世界中は震撼するだろう。
「おのれー、マルベールめ。私をこんな姿に変えて……。許さない。許さない!あのまま、そっとしておいてくれていたら、バーモンドと幸せな一生を送れたものなのに。」
オリビアは海上まで上がり、まだ生きている人間がいないか確かめる。
誰もいないようだ。
まずはバーモンドを探そう。バーモンドなら、こんな姿になってもまだ、私を愛してくれる。はず。
来た道は、ほとんど跡形もないが、明かりの見える方向がマルベールの国なのだろう。
朝になるのを待とう。しばらくは、海の中で英気を養い、時を待つ。ひょっとすれば、王子の救出のために討伐隊が組まれることになるかもしれないから。
王子の救出のための討伐隊が組まれることはなかった。魔物に殺られるのなら、仕方がない。という考え方があるらしい。魔物は災害と同じレベルだからと言うのがその理由。
海の中は存外気持ちがいい。
生命の源だということが肌で感じられる。
ずいぶん、長居をしてしまったことに後悔して、そろそろ海から上がる。バーモンドを探すためだ。
いくらマルベール国の中を探しても、バーモンドはいない。バーモンドの匂いも気配もない。
最初は、バーモンド探しが第1の目的だったが、そのうち、オリビアに酷い待遇を強いていた女官長を見つけ、そのオンナを踏みつぶしたことから復讐するために、マルベール国へ行くようになったのだ。
恐怖におののき、逃げる姿は滑稽で、踏みつぶした後の爽快感は今まで経験したことがないほどのものだった。
それからは、今までオリビアを腹の底でバカにしていたものを見つけ出し、踏みつぶすことに専念する。まずは大聖堂の奴らだ。あいつらがマルベール王家に報告さえしなければ、今頃、バーモンドと幸せになれたというのに。
次に狙うは、王城に住む王族、出仕している貴族。
ドレスの趣味が悪いとさんざんバカにし、悪口を言いふらした令嬢、令夫人に社交界の面々。
マルベール王は、援軍をアンダルシアに要請したが、アンダルシア王は、断わったみたいだった。
ということは?バーモンドがアンダルシアに戻った可能性があるということか?
それならば、マルベールを壊滅させた後は、バーモンドに逢いにアンダルシアへ行こう。
この姿を見たら、バーモンドは何というかしら?驚いて、愛想を尽かされるかもしれない。
そうだ。アンダルシアに戻れば、あの偉そうに鞭をふるっていた妃教育の教官どもを見つけ出し、血祭りにあげてやろう。
まずは、海に戻り英気を養ってから、アンダルシアへ帰ろう。
「俺には、もうオリビアしかいない。愛している。」
「嘘よ。だったらなぜ助けに来てくれなかったの?」
「将来、王妃になるためには必要な教育なのだ。母もその母も、皆同じように教育をうけてから王妃となっている。オリビアは王妃になりたくはないのか?」
「それは……、私はバーモンドさえ側にいてくれるだけで幸せよ。(うそ)でもバーモンドが王様になって、もっと私を幸せにして欲しい。でもそのために鞭でぶたれるのはイヤなの。」
赤くミミズ腫れをした箇所を見せる。
オリビアにとって、もう頼れる人間はバーモンドしかいない。
「わっ!なんてひどいことを!俺の大切なオリビアにこんなことするなんて、許せない!わかった。だったら、二人で逃げよう。そして結婚しよう。既成事実さえ作ってしまえば、ほとぼりが冷めたころを見計らい、アンダルシアに戻って、王になる。オリビアが王妃になり悪弊を排除するために動けばいい。」
「そんなにうまくいくかしら?」
「いくさ。手始めに妃教育係を血祭りにあげればいい。たとえば、の話さ。まぁ実際には、クビにすることが精いっぱいだろうけど、貴族の身分をはく奪するだけでも、奴らには十分なお仕置きになる。」
「そうね。それならできそうだわ。どこへ逃げればいいの?」
「とりあえず、隣国マルベールだ。海がある。そこから船に乗り、気に入った島で下りればいい。オリビアは海を見たことがあるかい?湖よりもデッカイ水たまりさ。」
「楽しみだわ。二人でお魚を釣って、ヤシの実を食べて、もし耕せる土地があれば、何か作物を植えましょうよ。」
「そうだな。オリビアは何が好きだい?」
「う……。バーモンドよ。」
「俺もさ、オリビアが一番好きだよ。」
二人は、その日初めて結ばれた。
幸せいっぱいの二人は、その足でマルベールに入国し、結婚式を挙げるべく大聖堂に赴いたのだ。
ほぼ同時にマーガレットもまた、学園の同級生が結婚するためにマルベール国に入国し、結婚式が行われる大聖堂を下見に来ていたところだったことが運の尽き?だったわけで。
オリビアは自分でも気づかないチートスキルをまたしても発動してしまい、大聖堂の水晶玉を輝かせてしまったことで、思わぬ災いをしょい込んでしまう。
マルベール国王に報告されてしまい、バーモンドと結婚するはずがいつの間にか、バーモンドと引き離され、マルベールの好きでもない王子様と婚約が相整っていたのである。
妃教育はなかったけれど、マルベールの王城の一室に閉じ込められ、侍女や他の貴族は礼儀として傅いてはくれるが、建前だけで、腹の底であざ笑っていることが見てとれる。
こんなことなら、まだ教育してくれようとしていたアンダルシアのほうがマシ。隙を見て逃げ出そうにも、廊下にも見張りが剣を振りかざしていて立っているから、どこへも行けない。
見知らぬ国へ来て、貴族牢のような座敷牢のような一室に閉じ込められ、誰とも話す機会もなくどんどん気持ちが暗くなっていく。
食事も一人だけで取り、風呂も寝るときも誰も話しかけてくれない。あのまま逃げ出さなくて、妃教育をやり遂げたら、バーモンドと結婚できたものを自らの意思で、手放してしまった。
このまま好きでもない男に抱かれ、子を生し、男児なら取り上げられ、そのまま一生を終えるのか?
毎晩、毎晩、泣いて。朝、泣きはらした目でいたら、ついに侍女から王家に報告が言ったみたいで、それで南の島へバカンスに行くことになったのだ。
やっと外へ出られる。もしかしたら、バーナードにも会えるかもしれない。そう思うと少しだけ、気分が軽くなったような気がする。
南の島へ行くことになったのは、オリビア一人だけではなく、婚約者の王子様もご一緒で、王子の護衛の騎士と身の回りの世話をする侍女がついていくことになった。
馬車には、オリビアだけが乗せられ、王子様は別の馬車に乗られる。
あの部屋から馬車に代わっただけで、景色が動くだけマシか?と思うような待遇にうんざりする。
なんで?王子まで付いてくるのよ?
王子がついてこられたら、気が晴れない。今夜はまた一晩中泣いてやろうか?と思っていたら、南の島のコテージに着くなり、侍女から体をごしごしと洗われる。
そして、ほとんどスケスケの前世で言えば、ストリッパーが着るような夜着を着せられた。なんとなくイヤな予感がする。
その予感はすぐに的中する。
王子は自分だけ食事を済ませ、その足でコテージのオリビアの元へ行き、いきなり押し倒したのだ。
そして夜着の上からおっぱいを揉み、夜着をまくり上げ、足を開かせようとした。その間、終始無言のままで。
愛の言葉は一度も発せられず、いきなりのことでオリビアは必死に抵抗するも男の力の前では無力同然。
「いや。やめて。助けて。」
無情にも、カラダは反応せず、痛いままで押し入れられた。
「痛い。」
その言葉にほくそ笑んでいる王子様。
その数分後、微笑みは怒りへと変わっていく。
「この淫売が!だましやがったな!」
オリビアは、訳が分からないまま顔を殴られる。
「お前のようなブスを抱いてやったのに。処女ではなかったのだな?相手は誰だ?あの時、一緒にいた男か?ぶっ殺してくれる。」
「やめて。バーモンドに手を出さないで。」
オリビアは必死にすがるも、
「何?バーモンドと言ったな?これはアンダルシアの王太子殿ではないかな?これは面白いことを聞いたぞ。アンダルシアに攻め入り、バーモンドをぶっ殺してやる!」
「やめてー!」
「うるさい!黙れ!」
今度は、頭を思いっきり殴られ、意識が遠のいていく。
意識を失う瞬間、確かに地震のような地響きを感じる。
それは、オリビアの悲しみと絶望が、海の魔物を呼んでしまったのだ。
その海域にはいないはずの魔物サルガッソーを。
サルガッソーは、津波となり、南の島をひとのみで飲み込む。
コテージごと、海に投げ出され、海の底へと沈んでいく。
海難事故で亡くなった人の魂とオリビアの絶望感が相まって、巨大なゴジラのような姿へと変わっていくオリビア。
サルガッソーの中でオリビアが芽生えたのではなく、まったく新しい魔物としてオリビアは誕生したのだ。
海の魔物オリビアの誕生の瞬間に、世界中は震撼するだろう。
「おのれー、マルベールめ。私をこんな姿に変えて……。許さない。許さない!あのまま、そっとしておいてくれていたら、バーモンドと幸せな一生を送れたものなのに。」
オリビアは海上まで上がり、まだ生きている人間がいないか確かめる。
誰もいないようだ。
まずはバーモンドを探そう。バーモンドなら、こんな姿になってもまだ、私を愛してくれる。はず。
来た道は、ほとんど跡形もないが、明かりの見える方向がマルベールの国なのだろう。
朝になるのを待とう。しばらくは、海の中で英気を養い、時を待つ。ひょっとすれば、王子の救出のために討伐隊が組まれることになるかもしれないから。
王子の救出のための討伐隊が組まれることはなかった。魔物に殺られるのなら、仕方がない。という考え方があるらしい。魔物は災害と同じレベルだからと言うのがその理由。
海の中は存外気持ちがいい。
生命の源だということが肌で感じられる。
ずいぶん、長居をしてしまったことに後悔して、そろそろ海から上がる。バーモンドを探すためだ。
いくらマルベール国の中を探しても、バーモンドはいない。バーモンドの匂いも気配もない。
最初は、バーモンド探しが第1の目的だったが、そのうち、オリビアに酷い待遇を強いていた女官長を見つけ、そのオンナを踏みつぶしたことから復讐するために、マルベール国へ行くようになったのだ。
恐怖におののき、逃げる姿は滑稽で、踏みつぶした後の爽快感は今まで経験したことがないほどのものだった。
それからは、今までオリビアを腹の底でバカにしていたものを見つけ出し、踏みつぶすことに専念する。まずは大聖堂の奴らだ。あいつらがマルベール王家に報告さえしなければ、今頃、バーモンドと幸せになれたというのに。
次に狙うは、王城に住む王族、出仕している貴族。
ドレスの趣味が悪いとさんざんバカにし、悪口を言いふらした令嬢、令夫人に社交界の面々。
マルベール王は、援軍をアンダルシアに要請したが、アンダルシア王は、断わったみたいだった。
ということは?バーモンドがアンダルシアに戻った可能性があるということか?
それならば、マルベールを壊滅させた後は、バーモンドに逢いにアンダルシアへ行こう。
この姿を見たら、バーモンドは何というかしら?驚いて、愛想を尽かされるかもしれない。
そうだ。アンダルシアに戻れば、あの偉そうに鞭をふるっていた妃教育の教官どもを見つけ出し、血祭りにあげてやろう。
まずは、海に戻り英気を養ってから、アンダルシアへ帰ろう。
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