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後の祭り

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 王宮に婚約者から呼び出しがあり、出かけてみると

 「公爵令嬢マリアンヌ、貴様との婚約は、今日をもって破棄するものとする。」

 高らかに宣言されたのは、王太子殿下クリストファー様です。

 「なぜでございますか?理由をお聞かせ願えませんか。」

 「この度、聖女認定の儀があったであろう。それで聖女に選ばれしリリアーヌ様と結婚したいのだ。それで、マリアンヌが邪魔になったので、婚約破棄したいというわけである。」

 「さようでございますか、聖女様とご結婚されるのであれば、致し方ございませんわね。それでは、わたくしはこれにて失礼いたします。」

 マリアンヌは、さっさと公爵邸に帰ることにした。これから婚活しなければならないし、大忙しである。

 父の帰宅後、クリストファー殿下と婚約破棄になったことを告げると、すでに知っていた。宰相である父のところへ、最初に話が行き、「マリアンヌが承知したら、婚約破棄にする。」との話ができていたそうだ。

 「それにしても今度の聖女様は、平民出身とか?大丈夫でしょうか?」

 「それは、聖女様次第ということになろう。マリアンヌには関係ないことだ。」

 「そうですわね。もう、あのクリストファー殿下とかかわりを持たないことのほうが意味は大きいですしね。」

 「婚活は、国内でするか?それとも伯母様がいらっしゃる隣国でするか?」

 「どうせなら、隣国でしたいです。また国内にいると、クリストファー殿下から無理難題を吹っかけられる恐れがあるから。」

 そうなのです。クリストファー殿下は今までは、妃教育の終了していることをいいことに王家のスケジュール管理のような秘書の仕事から、外交問題の処理、領地からの税収の計算、精査を含めて、ありとあらゆる王太子がしなければならない仕事を押し付けてくるのである。

 そこへもってきて、今度は平民出身の聖女様と結婚するということになれば、聖女様の衣装代の計算、王太子妃としての公務も押し付けられることになりそうなので、さっさと国を出るほうが賢明であると言えよう。

 父公爵の命令により、一晩中かかって、マリアンヌの国外脱出のための準備が進められ、翌朝には、旅立つことができたのである。侍女と護衛の騎士と御者の荷物をまとめ上げ、馬車に積み、国境へ向かって馬車を走らせる。

 国境を超え、無事伯母様がいらっしゃる隣国に入る。あらかじめ父が伯母さまにひょっとすれば、今日、国境を超えるかもしれないと連絡をしてくださいましたので、国境を越えたらすぐに、お迎えが来てくださっていました。お迎えの騎士を先頭に、馬車は伯母さまの住む領地まで一直線に行く。

 おばさまのお屋敷に着いたときは、もう夜になっていて、晩御飯をいただきお風呂に入り、すぐ寝ました。翌朝は、婚活のため、ドレスを仕立ててくださいます。絵姿のための絵師が呼ばれ、仕立て屋が呼ばれ、大忙しです。仮縫いをされながら、絵コンテを描いていかれます。

 その翌日には、ドレスも絵姿ももう出来上がっていて、伯母様はそれを旦那様に渡し、この国の王宮に持って行ってもらい配ってくれるそうです。

 その翌日には、一人目のお見合いが決まり、王宮に出向くことになりました。立派なドレスに身を纏い、楚々と王宮の廊下を歩くと、誰もが振り向いてマリアンヌの姿を目で追います。

 お見合い相手は、なんと王太子ギルバート様でございます。美しくカーテシーをして、ごあいさつ。13年間のお妃教育の賜物でございます。

 ギルバート様は、美しいマリアンヌに一目惚れされたご様子で、モジモジされています。
 マリアンヌは、というと、とにかく嫁にもらってくれるなら誰でもよいという捨て身だから、異存はない。

 その場で、一方的なギルバートの片思いのまま、結婚が決まります。本当にこれでいいの?と余計なお世話かもしれないけれど、心配してしまう。

 それほどクリストファー殿下のことが嫌いだったのでしょう。ギルバートの抱擁もキスもいやがらず、受け入れます。

 結婚式は、大聖堂で行われることになり、下準備のために二人で訪れることになり、ふとした拍子から何気に水晶玉に近づきすぎたマリアンヌに水晶玉が異変を起こし、キラキラ輝きだしたので、司祭様があわてて、マリアンヌに手をかざすように勧められましたら、なんと!聖女様として、認定されてしまいました。母国で認定されなくて、よかったね。

 結婚式の日、大聖堂では、マリアンヌの聖女認定が発表され、国民は喜びに沸きあがりました。

 その頃、母国では、リリアーヌ聖女との結婚を拒否されたクリストファーは、「不敬だぞ!」と叫びながら、自室のモノを投げつけ、当たり散らしている。リリアーヌ聖女様は、市井に好きな男性がいて、その方と結婚されることになり、クリストファーが文句を言うので、聖女を返還すると言い出す始末。

 マリアンヌが隣国の王太子殿下と挙式して、挙式の際に聖女覚醒したとの知らせがクリストファーのもとに届いたときは、もう後の祭りのことである。
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