【極楽遊廓、偽り申す】
風に乗ってヒラヒラと花が散ってゆく。貴方様の大好きな「梅」の花が。
また会いに来てくれる事を願っていたが、待てど待てども、貴方様は来ない。
それでも、私はいつまでも待ち続ける。貴方様に貰った琥珀色の簪を髪に刺して。
嗚呼、今宵も偽りと共に客に抱かれるのか。ならば、わっちは「それ以上の偽り」を持って接しよう。
提灯の明かりに照らされ、今宵も吉原「珠瑠璃屋」は男達で賑わう。
第一話【禿殺し】
今日は朝から騒がしい、何事かと思い二階の階段から顔を覗かせて見ると楼主が叫んでいた。
「おい、しっかりしろ!!」
よく見てみると、全身が血で赤く染まった禿が2人倒れていた。
「朝から騒がしいじゃないか、一体何事だい?」
私は天霧、歳は今年で二十ニになる。ここ珠瑠璃屋の花魁だ。私がまだ五つの時、両親に借金のかたとしてここに売られてきた。
しかし、最近吉原ではおかしな事件が起こっている。
「天霧か……見てみろ、また禿殺しが出たんだ。酷いもんだろ、これでうちの店を合わせて6人目だぞ」
事件というのは、この江戸の町にたたずむ吉原の禿達が立て続けに殺されているのだ。着物はボロボロに破かれ、身体中にアザを残した姿で。
「このニ人は…鈴松と彩風の禿じゃないか。二人は無事なのかい?」
すると、楼主は表情を曇らせニ階の奥を指差した。
ゆっくりと階段を登り、座敷部屋の障子を開けると……そこにいたのは顔や身体中をズタズタに切り裂かれた鈴松と彩風の変わり果てた姿だった。
「な、何で…鈴松…彩風…!」
私は昔からあまり感情を表に出さない性格だ、……楼主や他の遊女の前ではな。
「嘘じゃ…嘘といっておくれよ…」
私は死体など今までいくらでも見てきた。梅毒や客に無理心中をしいられ殺される者、遊女として生きる事に限界を感じ自ら命をたつ者など。
それでも私がこうして生きているのは、鈴松と彩風の存在があったからだった。
二人がまだ幼い禿だった頃、その姉女郎となったのが私だった。二人共故郷に残してきた妹達によく似ており、私は実の妹のように可愛がっていた。そして彼女達も私を姉のように慕ってくれていた。
「天霧花魁…辛いのは分かるがそろそろ支度をしてくれ」
「分かってるさ…。そうじゃ楼主、これ以上被害が出ないように見張りを立てといておくれ」
「あぁ、分かった。任せておけ」
個室へ戻ると、私は声を押し殺して泣いた。何故、あの子達があの様な目に合わなければならなかったのだろうか?
「あのニ人は決して客に無礼を働く事はしない。なのに…どうして」
また会いに来てくれる事を願っていたが、待てど待てども、貴方様は来ない。
それでも、私はいつまでも待ち続ける。貴方様に貰った琥珀色の簪を髪に刺して。
嗚呼、今宵も偽りと共に客に抱かれるのか。ならば、わっちは「それ以上の偽り」を持って接しよう。
提灯の明かりに照らされ、今宵も吉原「珠瑠璃屋」は男達で賑わう。
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今日は朝から騒がしい、何事かと思い二階の階段から顔を覗かせて見ると楼主が叫んでいた。
「おい、しっかりしろ!!」
よく見てみると、全身が血で赤く染まった禿が2人倒れていた。
「朝から騒がしいじゃないか、一体何事だい?」
私は天霧、歳は今年で二十ニになる。ここ珠瑠璃屋の花魁だ。私がまだ五つの時、両親に借金のかたとしてここに売られてきた。
しかし、最近吉原ではおかしな事件が起こっている。
「天霧か……見てみろ、また禿殺しが出たんだ。酷いもんだろ、これでうちの店を合わせて6人目だぞ」
事件というのは、この江戸の町にたたずむ吉原の禿達が立て続けに殺されているのだ。着物はボロボロに破かれ、身体中にアザを残した姿で。
「このニ人は…鈴松と彩風の禿じゃないか。二人は無事なのかい?」
すると、楼主は表情を曇らせニ階の奥を指差した。
ゆっくりと階段を登り、座敷部屋の障子を開けると……そこにいたのは顔や身体中をズタズタに切り裂かれた鈴松と彩風の変わり果てた姿だった。
「な、何で…鈴松…彩風…!」
私は昔からあまり感情を表に出さない性格だ、……楼主や他の遊女の前ではな。
「嘘じゃ…嘘といっておくれよ…」
私は死体など今までいくらでも見てきた。梅毒や客に無理心中をしいられ殺される者、遊女として生きる事に限界を感じ自ら命をたつ者など。
それでも私がこうして生きているのは、鈴松と彩風の存在があったからだった。
二人がまだ幼い禿だった頃、その姉女郎となったのが私だった。二人共故郷に残してきた妹達によく似ており、私は実の妹のように可愛がっていた。そして彼女達も私を姉のように慕ってくれていた。
「天霧花魁…辛いのは分かるがそろそろ支度をしてくれ」
「分かってるさ…。そうじゃ楼主、これ以上被害が出ないように見張りを立てといておくれ」
「あぁ、分かった。任せておけ」
個室へ戻ると、私は声を押し殺して泣いた。何故、あの子達があの様な目に合わなければならなかったのだろうか?
「あのニ人は決して客に無礼を働く事はしない。なのに…どうして」
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