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代表作:元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎(修正前)
0000:辺境伯家に嫁いで追放されました。
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「……旦那様、メアリー、……どうして⁉︎」
トルネード王国辺境伯領を治める、フローレンス辺境伯邸の書斎で、私の叫び声が響き渡りました。
「…………。(気まずい旦那)」
「あらら、オリビア、どうしたの?(きょとん)」
目の前にいるのは本日、夫になられた旦那様と、私の古くからの友人であったメアリーです。お二人は、絶賛情事の真っ只中なのでした。あまりの大胆さが逆に清々しいですわ!
「……何故、メアリーがここにいるの?(怒)」
「ーーっ? ……私は、ずっと前からコレクト様とこうゆうことをする仲だったの♡(微笑)」
「何ですって⁉︎」
「まあ、生真面目なオリビアには到底理解出来ないと思うけれど、今巷で流行っている『パパ活』で出会ったのよ♡」
メアリーは、更に旦那様に密着して、呆然としている私に、旦那様との仲を見せつけてきました。
「コレクト様とは、唯一無二というか、なんていうか、……離れられないの♡ オリビアからコレクト様を奪っちゃって、ホント、ごめんなさいね♡(旦那にキスを落とす)」
「……オリビア、……悪いが、君には愛が感じられない。私とメアリーとの仲が許せないのであるならば、今すぐ屋敷から出て行ってくれ。(不機嫌)」
「旦那様……。わかりました。……旦那様がそう仰るのであるならば、私も、好きにさせてもらいます。」
「そうか、出て行くのか?(素直過ぎて逆に気になる)」
「いえ、領地経営に携わらせていただきますわ‼︎」
「「ーーーーっ⁉︎」」
◇ ◇ ◇
旦那様と友人メアリーの不貞現場を目撃してから、早一年が経ちました。……本当は、離縁したかったのは山々なのですが、私の実家、レイ家はしがない貧乏子爵家なので、帰ることは出来ませんでした。その為、旦那様とメアリーの逢瀬を側で見ながら、せっせと領地でのお仕事に明け暮れました。……フローレンス辺境伯領は、アデル皇国との国境沿いに位置するのもあって、面積はだだっ広いのですが、平地が少なく作物を育てるのも難しい立地でした。私は、そんな悪条件の土地でもある程度の収穫が得られるように、領民の皆様とともに、汗水を垂らして働きました。……そして、私が『えっさ、ほらさ!』と土を耕している横で、旦那様とメアリーが、イチャイチャ、イチャイチャ発情していました。……領民の子ども達も横で手伝ってくれているので、教育上、あのお二人には辺境伯邸の中でやってもらいたいのですが、……気づけば横でイチャイチャしています。はじめは、子ども達の精神衛生上悪いので、強めに注意したのですが、全然聞き入れてくださらないので、とりあえず、放置しています。(汗)
「オリビア、……今日の朝食の前菜はなんだい? とっても不味かったわよ!」
「申し訳ありません。お義母様。(棒読み)」
「一回言われたら次言われないようにキチンとしなさい!」
「はい、お義母様。(棒読み)」
「オリビア、……そろそろ実家に帰ったらどうだ?」
「お義父様、私には、帰る場所がございません。どうか、辺境伯家に置いてくださいませ。(棒読み)」
「ふん、卑しい出の娘が、生意気な!」
「申し訳ありません、お義父様。(棒読み)」
旦那様とメアリーからの当てつけに、舅姑からの執拗な言葉の暴力……。なかなかにアグレッシブですが、これだけではへこたれません。周りには敵しかいませんが、自身の信念を貫き通して、辺境伯領を盛り上げますわよ!
……これが、結婚して一年が経った後の出来事で、私が十九歳の時のお話です。
◇ ◇ ◇
結婚生活二年目。なんと、メアリーは旦那様の子を身籠ってしまいました。普通の妻であるならば、自分より先に愛人の方が身籠ってしまって、焦るかもしれませんが、私は逆にラッキーだなと思い、去年よりもいっそう仕事に全力を注ぎました。……ちなみに、メアリーの妊娠が発覚してからというもの、旦那様が毎晩、私のお部屋にやってくるのですが、得意の体術でバキバキのボキボキにしてやっていますわ‼︎
バキバキ、ボキボキ! バキボキ、ボキ‼︎
「ーーーーっ⁉︎ 俺は、お前の夫なんだぞ‼︎」
「存じておりますとも。(澄まし顔)」
「何故、夜の相手をしてくれないのだ!」
「……それは、旦那様、ご自分のお胸に手を当てて、よおーく考えてみてくださいな。(しれーーっとした表情)」
「ふざけるな! ……お前は俺の嫁なんだから、夜の相手は強制なんだぞ!(ビシッと)」
「……私、旦那様から性病をうつされたくありませんの。」
「ーーーーっ‼︎ 誰にそんな口を聞いている‼︎」
「メアリーを孕ませた旦那様ですわ。」
「うるさい、黙れ! この鉄仮面が‼︎」
「なんとでも仰ってくださいな。妻を裏切るお方と夜を共にするつもりは、さらさらありませんわよ。(ビシッと)」
「……ママとパパに言いつけてやるからな‼︎」
旦那様は、重度なマザコン(とファザコン)でした。ちなみにその後、義父母を連れてきて、こんこんと夫婦のなんたるかを説かれていらっしゃいましたが、旦那様、今、貴方がやるべきなのは、メアリーに誠心誠意付き添うことではないのですか? ……そう言えば、最近メアリーを見かけませんねえ。悪阻が酷いのでしょうか。とても心配ですわ。
◇ ◇ ◇
結婚生活三年目。みんなが待ち望んだ旦那様とメアリーの第一子が誕生致しました! とっても可愛い男の子ですわ!
「メアリー、ありがとう。(涙ダラダラ)」
「コレクト様のお子ですよ。(げっそり)」
義父母も感動して、嬉し涙を流されていらっしゃいます。やはり赤ちゃんがいると、お家が明るくなりますわね!
しかし、この感動は、そう長くは続かなかったのでした。
「おぎゃあ、おぎゃあ‼︎(みるくとおしめとおひるね!)」
「……ピギャピギャうるさいわね。オリビア、悪いけど、私、もう次の子妊娠しちゃって悪阻が酷いから、アルトの面倒見てちょうだい。……貴女は子なしなんだから。」
「…………アルト、あっちに行きましょう。」
「おぎゃあ、おぎゃあ!(まま、ひどいでちゅよ‼︎)」
私は、アルトを抱き抱えて、ミルクを作りに食堂へと向かいました。行く途中で、旦那様とお会いしましたが、何故だか旦那様は、まるでゾンビのように、げっそりとやつれていらっしゃって、我が子であるアルトの顔さえ見ることはありません。私は、とりあえず、食堂の調理場までやってくると、アルトのミルクの準備を始めました。
「(哺乳瓶に粉ミルクとお湯を注ぎながら)……アルト、もう少しでミルクできるからねー。」
「うきゃうきゃ!(お姉ちゃん、あざす!)」
アルトは、両親と違って、なかなか素直で可愛いです。温度を確認してから、アルトにミルクを飲ませていると、つい、表情が柔らかくなってしまうのでした。
「……メアリー、どういう事なんだ⁉︎」
「コレクト様、……貴方が私を裏切っている証拠はきちんと押さえているのですよ。(何故か傷付いたような表情)」
「俺は浮気なんてしていない‼︎」
おや? 廊下の方から何やら言い争っている声が聞こえてきますが、……旦那様とメアリーが、食堂の中までやってきてしまいましたわ。……アルトの精神衛生上、喧嘩なら他所でしてほしいのですが、お二人は絶賛『二人だけの世界』にいらっしゃるので、言っても聞いてはくれないでしょう。
「メアリー、信じてくれ!」
「アルトがいながら娼婦に更けるだなんて最低ですわ!」
「うっぷ! ゲップ!(たくしゃん、のんだのんだ!)」
「アルトはゲップがお上手ですねー。(何この状況。)」
「娼館なんて行った事なんて無いぞ!」
「……領民からの目撃情報が出揃っていますわ。」
「……アルト、おしめ、変えましょうか。」
「ばぶばぶ!(よろしくたのむよ、お姉ちゃん!)」
いや、こんがらがるわ! 痴情のもつれをアルトに聞かせないでください! 貴方達は、アルトの親なのですよ‼︎
「……アルト、裏庭で日光浴しましょうねー。」
「ばぶばぶ!(お姉ちゃん、くろうにんだね!)」
「私たちも、裏庭に移動しましょう。」
「……そうだな。」
いや、来るな! 私はアルトを抱えて逃げるのでした。
◇ ◇ ◇
アルトが誕生して一年後、旦那様が謎の不審死を遂げました。朝食に起きて来られませんでしたので執事が呼びに行くと、ベッドの上で事切れていたとのことです。真っ青なお顔で永遠の眠りにつかれて、死因は結局わかりませんでした。
旦那様は簡単に浮気しますし私の言うことは一切聞かない亭主関白なお方でしたが、領民にはとても優しく、あたたかなご友人の多いお方でした。領民やご友人にはとても好かれていましたので、葬式には沢山の方々がご参列してくださいましたが、一方で、メアリーと旦那様の弟にあたるキリト様のお姿が見えません。私は、そわそわした心を抑えて、アルトと一緒に、旦那様との最後のお別れを致しました。
「ばぶ、ばぶ。(ぱぱ、やすらかに眠るのでちゅ。)」
◇ ◇ ◇
旦那様の葬儀を終えた翌日辺境伯家に衝撃が走ります! なんとメアリーが、旦那様の弟キリト様と結婚すると、突然宣言してきたのです!(何で⁉︎)
「婚姻届を出してきたわ! 今日から私とキリト様は、夫婦になったのよ!」
「メアリー、愛してる。(謎に酔いしれているキリト)」
「……貴方達、アルトはどうするつもりなの?(般若顔)」
「オリビア、貴女にあげるわ!」
「何ですって⁉︎(怒りを通り越した驚き)」
ご自身でお腹を痛めて産んだ、可愛い可愛いアルトを簡単に私にあげるだなんて、笑止千万‼︎ 許せませんわ‼︎
「だって、アルト、……私には懐かないんですもの。」
「アルトに懐かれないメアリーがとても可哀想だ。でも僕達の子どもならきっと、メアリーに懐いてくれるはずだよ!」
「そうですわね、キリト様♡」
「……浮気していたのは、貴女だったのね。」
「……何を言っているの? 私とキリト様は、コレクト様と出会う前から、恋人同士だったのよ♡」
「ーーーーっ⁉︎(二股かい!)」
「本当はキリト様と結婚したかったのだけれど、両家の親から反対されたから、出来なかったの。だから……。」
「旦那様に近づいて誑かし、アルトが生まれてから、キリト様との不貞を知った旦那様を殺したのですね?(怒)」
「ノーコメントよ♡」
メアリーとキリト様は、『二人だけの世界』でイチャコラ、イチャイチャ……。アルトの前で、ディープキスしたり、衣服をずらすのはやめてくださいまし!
「あっ、言うの忘れてたわ! 今日から辺境伯家の当主は、キリト様になったから。オリビアには悪いけど今夜中に荷物を纏めて出て行ってちょうだい♡ あと、オリビアの離縁届も出しておいたから、財産分与も無しね♡ 今まで辺境伯家で色々大変だったけれど、自由になれて良かったわね♡」
「はっ? ふざけるなよ、このアバズレが!(般若顔)」
「……お義姉さん、いい加減、メアリーを妬むのはやめてくれないか!(激おこ馬鹿キリト)」
「……いえ、一度も妬んだことはありませんが。」
「……とにかく! お義姉さんのパワハラ恐怖政治はもう終わりだ! 私が当主になったからには、画期的な改革を行って、メアリーを虐める輩全員を追放処分にする!」
こりゃだめですね。おそらく何を言っても埒があかないでしょう。私は最後に、義父母の承諾を得ているのか、ということを聞いてから、荷物を纏めようと思います。
「最後に質問をいいですか?」
「なんだ、言ってみろ‼︎」
「お義父様、お義母様の承諾は得られたのですね?」
「当たり前だ! 私のやる事にぬかりはない!」
「……そうですか。今まで、ありがとうございました。」
「ぷぷぷ、追い出されるオリビア可哀想。でも、私のことを陰で馬鹿にしていたのだからしょうがないでしょ? もう会う事も無いと思うけど、じゃあね、オリビア♡」
最後の最後まで、メアリーは我が子であるアルトに目もくれずに、キリト様とイチャコラ致していました。追い出されることに、怒りはありませんが、アルトを蔑ろにしたことに関しては、私オリビア、激おこですわ!
「アルト、私が、アルトを立派な男に育ててみせるからね!(強くアルトを抱き締めながら)」
「ばぶばぶばぶ!(お姉ちゃん、たいへんでちゅね!)」
これが辺境伯家に嫁いでから追放されるまでのお話です。
ーーオリビアとアルトは、野に解き放たれた!ーー
トルネード王国辺境伯領を治める、フローレンス辺境伯邸の書斎で、私の叫び声が響き渡りました。
「…………。(気まずい旦那)」
「あらら、オリビア、どうしたの?(きょとん)」
目の前にいるのは本日、夫になられた旦那様と、私の古くからの友人であったメアリーです。お二人は、絶賛情事の真っ只中なのでした。あまりの大胆さが逆に清々しいですわ!
「……何故、メアリーがここにいるの?(怒)」
「ーーっ? ……私は、ずっと前からコレクト様とこうゆうことをする仲だったの♡(微笑)」
「何ですって⁉︎」
「まあ、生真面目なオリビアには到底理解出来ないと思うけれど、今巷で流行っている『パパ活』で出会ったのよ♡」
メアリーは、更に旦那様に密着して、呆然としている私に、旦那様との仲を見せつけてきました。
「コレクト様とは、唯一無二というか、なんていうか、……離れられないの♡ オリビアからコレクト様を奪っちゃって、ホント、ごめんなさいね♡(旦那にキスを落とす)」
「……オリビア、……悪いが、君には愛が感じられない。私とメアリーとの仲が許せないのであるならば、今すぐ屋敷から出て行ってくれ。(不機嫌)」
「旦那様……。わかりました。……旦那様がそう仰るのであるならば、私も、好きにさせてもらいます。」
「そうか、出て行くのか?(素直過ぎて逆に気になる)」
「いえ、領地経営に携わらせていただきますわ‼︎」
「「ーーーーっ⁉︎」」
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旦那様と友人メアリーの不貞現場を目撃してから、早一年が経ちました。……本当は、離縁したかったのは山々なのですが、私の実家、レイ家はしがない貧乏子爵家なので、帰ることは出来ませんでした。その為、旦那様とメアリーの逢瀬を側で見ながら、せっせと領地でのお仕事に明け暮れました。……フローレンス辺境伯領は、アデル皇国との国境沿いに位置するのもあって、面積はだだっ広いのですが、平地が少なく作物を育てるのも難しい立地でした。私は、そんな悪条件の土地でもある程度の収穫が得られるように、領民の皆様とともに、汗水を垂らして働きました。……そして、私が『えっさ、ほらさ!』と土を耕している横で、旦那様とメアリーが、イチャイチャ、イチャイチャ発情していました。……領民の子ども達も横で手伝ってくれているので、教育上、あのお二人には辺境伯邸の中でやってもらいたいのですが、……気づけば横でイチャイチャしています。はじめは、子ども達の精神衛生上悪いので、強めに注意したのですが、全然聞き入れてくださらないので、とりあえず、放置しています。(汗)
「オリビア、……今日の朝食の前菜はなんだい? とっても不味かったわよ!」
「申し訳ありません。お義母様。(棒読み)」
「一回言われたら次言われないようにキチンとしなさい!」
「はい、お義母様。(棒読み)」
「オリビア、……そろそろ実家に帰ったらどうだ?」
「お義父様、私には、帰る場所がございません。どうか、辺境伯家に置いてくださいませ。(棒読み)」
「ふん、卑しい出の娘が、生意気な!」
「申し訳ありません、お義父様。(棒読み)」
旦那様とメアリーからの当てつけに、舅姑からの執拗な言葉の暴力……。なかなかにアグレッシブですが、これだけではへこたれません。周りには敵しかいませんが、自身の信念を貫き通して、辺境伯領を盛り上げますわよ!
……これが、結婚して一年が経った後の出来事で、私が十九歳の時のお話です。
◇ ◇ ◇
結婚生活二年目。なんと、メアリーは旦那様の子を身籠ってしまいました。普通の妻であるならば、自分より先に愛人の方が身籠ってしまって、焦るかもしれませんが、私は逆にラッキーだなと思い、去年よりもいっそう仕事に全力を注ぎました。……ちなみに、メアリーの妊娠が発覚してからというもの、旦那様が毎晩、私のお部屋にやってくるのですが、得意の体術でバキバキのボキボキにしてやっていますわ‼︎
バキバキ、ボキボキ! バキボキ、ボキ‼︎
「ーーーーっ⁉︎ 俺は、お前の夫なんだぞ‼︎」
「存じておりますとも。(澄まし顔)」
「何故、夜の相手をしてくれないのだ!」
「……それは、旦那様、ご自分のお胸に手を当てて、よおーく考えてみてくださいな。(しれーーっとした表情)」
「ふざけるな! ……お前は俺の嫁なんだから、夜の相手は強制なんだぞ!(ビシッと)」
「……私、旦那様から性病をうつされたくありませんの。」
「ーーーーっ‼︎ 誰にそんな口を聞いている‼︎」
「メアリーを孕ませた旦那様ですわ。」
「うるさい、黙れ! この鉄仮面が‼︎」
「なんとでも仰ってくださいな。妻を裏切るお方と夜を共にするつもりは、さらさらありませんわよ。(ビシッと)」
「……ママとパパに言いつけてやるからな‼︎」
旦那様は、重度なマザコン(とファザコン)でした。ちなみにその後、義父母を連れてきて、こんこんと夫婦のなんたるかを説かれていらっしゃいましたが、旦那様、今、貴方がやるべきなのは、メアリーに誠心誠意付き添うことではないのですか? ……そう言えば、最近メアリーを見かけませんねえ。悪阻が酷いのでしょうか。とても心配ですわ。
◇ ◇ ◇
結婚生活三年目。みんなが待ち望んだ旦那様とメアリーの第一子が誕生致しました! とっても可愛い男の子ですわ!
「メアリー、ありがとう。(涙ダラダラ)」
「コレクト様のお子ですよ。(げっそり)」
義父母も感動して、嬉し涙を流されていらっしゃいます。やはり赤ちゃんがいると、お家が明るくなりますわね!
しかし、この感動は、そう長くは続かなかったのでした。
「おぎゃあ、おぎゃあ‼︎(みるくとおしめとおひるね!)」
「……ピギャピギャうるさいわね。オリビア、悪いけど、私、もう次の子妊娠しちゃって悪阻が酷いから、アルトの面倒見てちょうだい。……貴女は子なしなんだから。」
「…………アルト、あっちに行きましょう。」
「おぎゃあ、おぎゃあ!(まま、ひどいでちゅよ‼︎)」
私は、アルトを抱き抱えて、ミルクを作りに食堂へと向かいました。行く途中で、旦那様とお会いしましたが、何故だか旦那様は、まるでゾンビのように、げっそりとやつれていらっしゃって、我が子であるアルトの顔さえ見ることはありません。私は、とりあえず、食堂の調理場までやってくると、アルトのミルクの準備を始めました。
「(哺乳瓶に粉ミルクとお湯を注ぎながら)……アルト、もう少しでミルクできるからねー。」
「うきゃうきゃ!(お姉ちゃん、あざす!)」
アルトは、両親と違って、なかなか素直で可愛いです。温度を確認してから、アルトにミルクを飲ませていると、つい、表情が柔らかくなってしまうのでした。
「……メアリー、どういう事なんだ⁉︎」
「コレクト様、……貴方が私を裏切っている証拠はきちんと押さえているのですよ。(何故か傷付いたような表情)」
「俺は浮気なんてしていない‼︎」
おや? 廊下の方から何やら言い争っている声が聞こえてきますが、……旦那様とメアリーが、食堂の中までやってきてしまいましたわ。……アルトの精神衛生上、喧嘩なら他所でしてほしいのですが、お二人は絶賛『二人だけの世界』にいらっしゃるので、言っても聞いてはくれないでしょう。
「メアリー、信じてくれ!」
「アルトがいながら娼婦に更けるだなんて最低ですわ!」
「うっぷ! ゲップ!(たくしゃん、のんだのんだ!)」
「アルトはゲップがお上手ですねー。(何この状況。)」
「娼館なんて行った事なんて無いぞ!」
「……領民からの目撃情報が出揃っていますわ。」
「……アルト、おしめ、変えましょうか。」
「ばぶばぶ!(よろしくたのむよ、お姉ちゃん!)」
いや、こんがらがるわ! 痴情のもつれをアルトに聞かせないでください! 貴方達は、アルトの親なのですよ‼︎
「……アルト、裏庭で日光浴しましょうねー。」
「ばぶばぶ!(お姉ちゃん、くろうにんだね!)」
「私たちも、裏庭に移動しましょう。」
「……そうだな。」
いや、来るな! 私はアルトを抱えて逃げるのでした。
◇ ◇ ◇
アルトが誕生して一年後、旦那様が謎の不審死を遂げました。朝食に起きて来られませんでしたので執事が呼びに行くと、ベッドの上で事切れていたとのことです。真っ青なお顔で永遠の眠りにつかれて、死因は結局わかりませんでした。
旦那様は簡単に浮気しますし私の言うことは一切聞かない亭主関白なお方でしたが、領民にはとても優しく、あたたかなご友人の多いお方でした。領民やご友人にはとても好かれていましたので、葬式には沢山の方々がご参列してくださいましたが、一方で、メアリーと旦那様の弟にあたるキリト様のお姿が見えません。私は、そわそわした心を抑えて、アルトと一緒に、旦那様との最後のお別れを致しました。
「ばぶ、ばぶ。(ぱぱ、やすらかに眠るのでちゅ。)」
◇ ◇ ◇
旦那様の葬儀を終えた翌日辺境伯家に衝撃が走ります! なんとメアリーが、旦那様の弟キリト様と結婚すると、突然宣言してきたのです!(何で⁉︎)
「婚姻届を出してきたわ! 今日から私とキリト様は、夫婦になったのよ!」
「メアリー、愛してる。(謎に酔いしれているキリト)」
「……貴方達、アルトはどうするつもりなの?(般若顔)」
「オリビア、貴女にあげるわ!」
「何ですって⁉︎(怒りを通り越した驚き)」
ご自身でお腹を痛めて産んだ、可愛い可愛いアルトを簡単に私にあげるだなんて、笑止千万‼︎ 許せませんわ‼︎
「だって、アルト、……私には懐かないんですもの。」
「アルトに懐かれないメアリーがとても可哀想だ。でも僕達の子どもならきっと、メアリーに懐いてくれるはずだよ!」
「そうですわね、キリト様♡」
「……浮気していたのは、貴女だったのね。」
「……何を言っているの? 私とキリト様は、コレクト様と出会う前から、恋人同士だったのよ♡」
「ーーーーっ⁉︎(二股かい!)」
「本当はキリト様と結婚したかったのだけれど、両家の親から反対されたから、出来なかったの。だから……。」
「旦那様に近づいて誑かし、アルトが生まれてから、キリト様との不貞を知った旦那様を殺したのですね?(怒)」
「ノーコメントよ♡」
メアリーとキリト様は、『二人だけの世界』でイチャコラ、イチャイチャ……。アルトの前で、ディープキスしたり、衣服をずらすのはやめてくださいまし!
「あっ、言うの忘れてたわ! 今日から辺境伯家の当主は、キリト様になったから。オリビアには悪いけど今夜中に荷物を纏めて出て行ってちょうだい♡ あと、オリビアの離縁届も出しておいたから、財産分与も無しね♡ 今まで辺境伯家で色々大変だったけれど、自由になれて良かったわね♡」
「はっ? ふざけるなよ、このアバズレが!(般若顔)」
「……お義姉さん、いい加減、メアリーを妬むのはやめてくれないか!(激おこ馬鹿キリト)」
「……いえ、一度も妬んだことはありませんが。」
「……とにかく! お義姉さんのパワハラ恐怖政治はもう終わりだ! 私が当主になったからには、画期的な改革を行って、メアリーを虐める輩全員を追放処分にする!」
こりゃだめですね。おそらく何を言っても埒があかないでしょう。私は最後に、義父母の承諾を得ているのか、ということを聞いてから、荷物を纏めようと思います。
「最後に質問をいいですか?」
「なんだ、言ってみろ‼︎」
「お義父様、お義母様の承諾は得られたのですね?」
「当たり前だ! 私のやる事にぬかりはない!」
「……そうですか。今まで、ありがとうございました。」
「ぷぷぷ、追い出されるオリビア可哀想。でも、私のことを陰で馬鹿にしていたのだからしょうがないでしょ? もう会う事も無いと思うけど、じゃあね、オリビア♡」
最後の最後まで、メアリーは我が子であるアルトに目もくれずに、キリト様とイチャコラ致していました。追い出されることに、怒りはありませんが、アルトを蔑ろにしたことに関しては、私オリビア、激おこですわ!
「アルト、私が、アルトを立派な男に育ててみせるからね!(強くアルトを抱き締めながら)」
「ばぶばぶばぶ!(お姉ちゃん、たいへんでちゅね!)」
これが辺境伯家に嫁いでから追放されるまでのお話です。
ーーオリビアとアルトは、野に解き放たれた!ーー
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