フィックスド辺境伯家の秘密(元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)

星 佑紀

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とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0008:どうする?

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 ──ここは、フィックスド辺境伯家、屋敷地下。──

 ──毒ガスが充満している独房の中、ノアと気絶パトリック殿下、モヒカン青年キース、気絶フィックスド辺境伯、そして、謎の侍サネユキが、何故だかいた。──


「…………。(砕けた床石の上で茫然と立ち尽くすノア)」

「おっ、パトリックはお昼寝中か!(ど天然サネユキ)」

「ちょっ、……あなた、いきなり現れて、何者なんですか⁉︎(怪訝な表情のモヒカン)」

「ははは! なんと言えば伝わるかなー。(微笑む侍)」

「僕の従兄弟って言えば良いじゃない?(ムクっと起き上がる、ちょっと機嫌の悪いパトリック殿下)」

「「──っ!(驚愕ノアとキース)」」

 ──パトリック殿下、復活する!──

「パトリック殿下、生きてたんですね!(安心ノア)」

「当たり前だよ。……色々手こずらせやがって。(近くにいたモヒカンの肩をガバッと掴んで引き寄せて、モヒカンのモヒカンをわっさわっさするパトリック殿下)」

「────っ‼︎ あ、あの、パトリック殿……?(さりげなくパトリック殿下から逃げようとするが、ガッシリ固定されてて逃げられないモヒカン)」

「ほんとさ、ノアの叔父ちゃんの行動が意味わからんくて、大変だったでしょ、モヒカン君。(モヒカンの触り心地を楽しむパトリック殿下)」

「いや、……ええと、……。(チラチラとノアを見ながらしどろもどろなモヒカン)」

「……パトリック殿下とキースって、仲良いんですね。(冷静に見たままを呟くノア)」

「うん? まあ、マブダチというかなんというか……。ずっとここでトランプしてたもん。モヒカン君と、ノアの叔父ちゃんフィックスド辺境伯とね。(きゅるるんパトリック殿下)」

「ええええええええ⁉︎(驚愕ノア)」

「そうなのか。てっきりパトリックとフィックスド辺境伯は、死闘を繰り広げてたと思っていたぞ。(ほえーとサムライ男)」

「いやさ、僕も最初、モヒカン君に頭殴られて腹が立ったから、ノアの叔父ちゃんと対面したら、絶対にボコボコにしてやろうと思ってたんだけどね、いざやろうとしたら、なんか凄いおもてなしをしてもらっちゃって、叔父ちゃんサマサマなんだよ。(謎の神妙な表情のパトリック殿下)」

「おもてなし……?(信じられないという表情のノア)」

「そうそう。……僕の憧れの人の幼少期の写真とか貰っちゃってさー。いやー、ノアの叔父ちゃん、気が利くわあ。(モヒカンのモヒカンにトドメを刺すパトリック殿下)」

「うああああああ⁉︎(パトリック殿下からモヒカンをむしられて多大なるショックを受けるモヒカン)」

「ああ、ごめんごめん。……つい、憧れの人のことを考えると、手に力が入っちゃってね。ごめんね、ピーマン‼︎(きゅるるんパトリック殿下)」

「ううっ……おれの、モヒカン……。(ハラハラと床に落ちていく自身の髪の毛を見て、打ちひしがれるモヒカン)」

「ドンマイ、ドンマイ! モヒカン君は、まだ若いんだから、いつかまた生えてくるよ!(モヒカン青年から抜けていった髪の毛を手に持って、モヒカン青年の頭の上に乗せて、傷に塩を塗りたくりまくるパトリック殿下)」

「…………。(あまりのショックに気絶するモヒカン)」

「きーーすーー⁉︎ 死ぬなー‼︎ いきろおおお‼︎(床に落ちていくモヒカン青年の上体を抱え上げて支えるノア)」

「おい、やりすぎだぞ、パトリック。(窘めるサネユキ)」

「大丈夫だよ、ほら、……あの二人、仲良さそうにしてるでしょ。(ノアとモヒカンを指し示すパトリック殿下)」

「それはそうだが、モヒカン君が可哀想ではないか。」

「モヒカン君には、六日前に、ガツンと貰ってるからね。……お互い様だから、オールオッケーだよ!(地味に背後から殴られたことを恨んでいるパトリック殿下)」

「そうか。それなら仕方がないな。(すんなり納得するサムライ男)」

「はっ! パトリック殿下、ここは、毒ガスで充満してますので、危険です! 早く脱出しないと……‼︎(焦りすぎて汗が滝のように流れるノア)」

「うん? ああ、大丈夫だよ。……だって、その毒ガス、……僕が、ドライアイスと取り換えていたから。(ドヤ顔パトリック殿下)」

「────っ‼︎ あ、ありがとうございます、パトリック殿下!(ガバッと頭を下げるノア)」

「うんうん、そうだよね。たくさん感謝してくれていいから、崇め奉ってくれていいからね。(かなり嬉しそうなパトリック殿下)」

「よしっ! よくはわからないが、この部屋から脱出するか!(一人元気なサムライ男)」

「そうだね、ちゃちゃちゃっと出て、みんなで打ち上げしようよ! キャンプ場で焼き肉焼いたりしてさ!(興奮気味なパトリック殿下)」

「…………。(一人押し黙るノア)」

「ノアっち、どうやってここから出るのかな?(きゅるるんパトリック殿下)」

「…………ません。(ちょっと様子のおかしいノア)」

「うん? どうしたの?(聞き取れなかった殿下)」

「……ドアの開錠に必要な床石が、木っ端微塵になってしまいましたから、ドアからは、出られません‼︎(滝汗が流れまくるノア)」

「「────っ⁉︎(危機感を感じる殿下と侍)」」

「外から開けてもらうという方法もあるにはありますが、現在、外に続く出口は、土の中に埋まっていて、開けることは、不可能に近いです。(顔が青いノア)」

「…………詰んだね。(頑張って平静を装う殿下)」

「ここまでか……。(覚悟を決めるサムライ男)」

「……。(せっかくキースと仲直りできたし、運命の人にも出逢えたのに、ここで、終わるのか。短かったけれど、楽しかったな。神様、ありがとう。 諦めて、現状を受け入れようとするノア)」

 パキッ……メキメキメキッ‼︎(何かが割れる音)

「うん? なんだ、この音は?(不審がる殿下)」

 グアッシャー!(普通の壁から扉が出てくる音)

「「「────っ⁉︎(驚愕ノア、殿下、侍)」」」

 カチャカチャカチャッ!(ドアノブを回す音)

 ガチャッ、キイイイー。(扉の開く音)

「皆様ご無事ですか‼︎(キリッとしたとある女性)」

「「「──っ‼︎(びっくりノア、殿下、侍)」」」

「この建物が崩れる前に、早く外へ逃げますわよ‼︎」

「──っはい! 先輩‼︎(ガバッと立ち上がるノア)」


 ──ノアの前に、一人の天使、否、女神が現れた!──
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