フィックスド辺境伯家の秘密(元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)

星 佑紀

文字の大きさ
37 / 48
とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0031:昔のお話

しおりを挟む
⭐︎ ここは、フィックスド辺境伯邸母屋会議室。

「殿下、悪星教って……。(青褪めるノア)」

「うん。……ノアの領地だけじゃなかったんだね。……事態はかなり深刻そうだ。(顔を曇らせる殿下)」

「なに、……ヤンキー辺境伯も、悪星教のことを知っているのか?(眉間に皺を寄せている裏当主)」

「はい。……数年前に、フィックスド領とフローレンス領との境界に位置する関門に爆弾を仕掛けた新興宗教のことですよね?(神妙顔のノア)」

「ああ。その通りだ。そう言えば、爆弾事件の時に、とある暴走族集団が動いたという噂を聞いたが、まさか……。」

「いやいや、そんなのただの噂ですからね! そうですよね、殿下?(何故か誤魔化すノア)」

「えっ? あれは、僕達が……ムゴッ⁉︎(ノアに口元を抑えられる殿下)」

「あはははは! 爆弾事件のことは、後日色々お話しするんで、アルバートさん、悪星教とフローレンス辺境伯家との関係を教えていただけませんか?(額から汗がドバドバ出ているノア)」

「あ、ああ。(ノアと殿下を見てドン引きな裏当主)」

「悪星教か。……フローレンスの表の誰かが信仰したりしているのですか?(大変興味深いサネユキ)」

「……。(コクンと頷く裏当主)」

「えっ? そうなの⁉︎(初耳のコレクト)」

「……コレクトの過去の記憶は、私がから、知らないのも致し方ない。……少し長くなるが、いいか?(コレクトを更に抱き締める裏当主)」

「はい。この際、言いたい事も言っちゃってください!(殿下の口元からゆっくりと手を離すノア)」

「……。(後で覚えてなよ、ノア。 ジト目殿下)」

「では、……少し時間を遡る。……マジカル・リターン‼︎(可愛い呪文を唱える裏当主)」

「「「「えっ⁉︎(両目を見張る四人)」」」」

⭐︎ すると、呪文を唱えた裏当主を中心として、謎の女性と二人の子供達の透けた映像が、部屋一面に広がったではないか‼︎

「これは、過去の映像だ。コレクトがまだ女の子の格好をしていた頃のこと。(二人の子供を懐かしげに見る裏当主)」

⭐︎ 映像の二人の子供は、仲良さそうにお絵描きをしている。

「……アル、……あの、スカートを履いた女の子が……。」

「コレクトだ。……フローレンスの野原に咲く野花のように、美しく素朴で可愛かった。(コレクトを見つめる裏当主)」

「…………。(顔を真っ赤にするコレクト)」

「そうすると、コレクト様の横にいる、なよなよしている男の子が、アルバートさんなんですね。(ノア)」

「ああ。……あの頃はただの泣き虫だったから。……いつもコレクトと一緒にいた。」

「なるほど。それじゃあ、二人を優しい微笑みで見ているあの女性は……。(殿下)」

「コレクトの実母、……前々フローレンス辺境伯夫人だ。(裏当主)」

「「「「────っ⁉︎(衝撃が走る四人)」」」」

「えっ、じゃあ、今の前フローレンス辺境伯夫人は……。(冷や汗が滴り落ちる殿下)」

「あの女は、伯父上コレクトの実父の再婚者だ。……コレクトから見れば、継母にあたる。(ジト目になる裏当主)」

「ははははうえが、継母⁉︎(一番驚いているコレクト)」

「そうだ。……コレクトの母親にを盛ってフローレンス辺境伯夫人に成り代わった悪の根源。……コレクトに降り掛かる全ての災難の原因は、前フローレンス辺境伯夫人だ。(裏当主)」

「「「「────っ‼︎(固まる四人)」」」」

「は、ははうえがそんな……。(混乱のコレクト)」

「この映像の後、すぐに、コレクトの実母はあの女が届けに来た飲み物を飲んで、息を止めた。……コレクトの目の前でな。(ジト目の裏当主)」

「そ、そんな、ばかな、……母上がなんでそんな事を……。(顔面真っ青のコレクト)」

「……あの女の一番の目的は、フローレンス辺境伯家を掌握して、『悪星教』の聖地をフローレンス領に作ることだ。……伯父上コレクトの実父は、コレクトの実母を失って、あまりの苦しみ、悲しみに、我を忘れ、実の子であるコレクトをネグレクトにし、……近寄ってきたあの女に縋った。(苦虫を噛み潰したような表情の裏当主)」

「「「「────っ‼︎(顔を強張らせる四人)」」」」

「あの女に騙された伯父上は、あの女の言う通りに、あの女と再婚した。そして、……悪星教の洗礼を受けた。(曇り顔の裏当主)」

「「「「洗礼⁉︎(意味がわからない四人)」」」」

「なに、簡単なことだ。……フローレンス辺境伯家が代々守ってきた神様の御神体をぶち壊して、悪星教が崇拝しているよくわからん石を、フローレンス辺境伯家が管理している祭壇に据えた。……そして、あの女の言うがままに、自堕落な生き方を悪星教の神の御前で誓い、悪星教の神父から有り難い聖水を受けたのだ。(ジト目の裏当主)」

「……なかなか虫唾が走る昔話だね。(ジト目殿下)」

「ああ。……唯一の救いは、コレクトがまだ悪星教の洗礼を受けていない事。そして、こうなる前に、私とコレクトが結婚契約を終わらせていた事だ。」

「なるほど。……色々大変だったんたね。(殿下)」

「……いや、これは、ほんの一場面にすぎない。……本番は、これからだ。(目つきが悪くなる裏当主)」


⭐︎ 裏当主の昔話はまだまだ続く‼︎
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

私、魔王軍の四天王(紅一点)なんですが、敵であるはずの勇者が会うたびに口説いてきます

夏見ナイ
恋愛
魔王軍四天王「煉獄の魔女」リディア。魔王様に絶対の忠誠を誓い、最強の魔女として人間から恐れられていた私の日常は、一人の男によって打ち砕かれた。 人類の希望、勇者アルフレッド。戦場で相まみえるたび、彼は聖剣ではなく熱烈な愛の言葉を向けてくる。 「君は美しい。僕と結婚してほしい!」 最初は敵の策略だと警戒していたのに、彼の真っ直ぐすぎる求愛に、鉄壁だったはずの私の心が揺らぎっぱなし! 最強魔女の私が、敵の勇者にドキドキさせられるなんて……ありえない! これは、敵同士という運命に抗う二人が紡ぐ、甘くて少し切ない異世界ラブストーリー。

冷徹文官様の独占欲が強すぎて、私は今日も慣れずに翻弄される

川原にゃこ
恋愛
「いいか、シュエット。慣れとは恐ろしいものだ」 机に向かったまま、エドガー様が苦虫を噛み潰したような渋い顔をして私に言った。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...