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23 手紙

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明美からの手紙が届いた

・・・・・・・・
 兄ちゃん元気ですか、僕は兄ちゃんと分かれて少し寂しいですが、元気です。
 僕達は今、ベジット国という国の王宮にいます。
 僕とハル姉とリコとメイとリンは勇女、ユウとタカとコウは勇者と呼ばれて大歓迎されています。
 
 ストロベリを出てから、色々な王宮に招待されながら、西へ向かっています。
 ここが、六国番目の王宮になります。
 太るのが心配ですが、毎日美味しい食事を食べ、召使付きの広い豪華な部屋に泊まってます。
 だから、心配しないで下さい。

 兄ちゃんと引き離された時のことを思い出して少し書きます。

 組合長の部屋を出て、検査する部屋で服を脱いで浴衣一枚になった時は物凄く恥ずかしかったです。
 狭い箱の中に寝かされ、真っ暗な中でなかなか出して貰えなった時は、泣きそうになりました。
 やっと蓋が開けられ箱から出ることが出来て、周りを見回したら周囲の人全員が片膝を突いて頭を下げていました。
 黄門様の決め台詞でも言ってみようかと思いましたが自重しました。
 でも良かったです、ユウが先にやって滑っていたそうです。

 キラキラが一杯付いたドレスに着替えさせられ、扉の前に、兵隊さんが一杯並んでいる部屋に案内されました。
 部屋には、ユウもリコもメイもリンもコウもタカも全員揃っていたので少し安心しました。
 みんな、キラキラの服を着ていました。
 何が起こっているか誰も解らず、結局、兄ちゃんとハル姉が来たら聞いてみることにして、用意されていたケーキを食べることにしました。

 暫くすると、ハル姉が部屋を覗きこんでキョロキョロしています。
 大きな声で呼ぶと、ほっとした顔で部屋に入ってきました。
 ハル姉に何が起こっているのか聞いてみたら、たぶん僕達全員が勇者と判断されたので、こんな恰好をさせられていると言う事でした。
 これからの事は判らないので、何時もどおりに、兄ちゃんが来たら相談しようと言うことになりました。

 でも兄ちゃんが来る前に二階の部屋へ連れて行かれました。
 その部屋には広いベランダ付いていて、そのベランダには大きな船が横付けされていました。
 船に乗るように言われたので、みんな船に乗ったら、兄ちゃんがまだ乗っていないのに、船が動き出しました。
 僕は慌てて船から飛び降りようとしました。
 でも大勢の兵隊さんに押えられてしまいました。
 その時、私達を引率してくれているキャリアさんが僕の耳元で忠告してくれました。

「あの者は、貴方達に会える身分ではありません。今あなたが飛び降りたら、あの者は処分されますよ」

 僕は身体が固まって動けなくなってしまいました。
 涙が一杯出て来て、大泣きしてしまいました。

 ハル姉に相談したら、キャリアさんには、兄ちゃんの話はしない方が良いとの意見でした。
 僕達が兄ちゃんを好きなことが解ったら、兄ちゃんが殺されちゃうかも知れないと言っていました。

 だからこの手紙も、キャリアさんに知られない様に、ベジットの王宮で僕達の世話をしてくれる、仲良くなった女の子に託しています。
 また隙をみて手紙を出します。
 兄ちゃん、僕は兄ちゃんを物凄く愛してます。
・・・・・・・
 なんか涙が滲んで来た。

ーーーーー
聖都国家連合 能力者保護観察局 主任警吏官 キャリア

 手紙の追跡を依頼した情報兵より、手紙の受取者の報告があった。
 思ったとおり、あの日勇女様が固執していた草の民だった。
 今後の勇女様の婚姻に、支障を及ぼす可能性が高い。
 私には隠しているが、召使達から得た情報によると、他の勇女様達も同様な感情を持っており、非常に危険な存在だ。

「ケスラ!」
「はっ、御呼びでしょうか」
「暗殺者の手配をなさい。勇女様たちの言動から察するに、ターゲットは幼い者に対する嗜好あるようです。万全を期すため、その嗜好を利用なさい」
「了解しました」

ーーーーー
 僕は毎日、野犬狩りを終えると真っ暗闇の中を船で酒場へ戻って来る。
 真っ暗闇の中、灯り一つ灯さず疾走する僕の船が、密かな噂になったらしい。
 歓楽街の裏組織から声が掛かり、夜の配達を頼まれる様になった。
 多いのは手紙、教区の教会の裏口で受け取り、落陽門や昇陽門の外の森で待っている奴に渡す。
 その次に多かったのが人、時々袋に詰められた奴もいたが、何も聞かない事にした。
 教会の裏口で受け取って、外の森で受け渡すのは、手紙と同じだった。
 
 闇の中、船を待ち伏せしている連中も多かった。
 だが、魔素の目でそいつらを僕は発見できる。
 僕は、そいつらを無難に避けることによって、裏組織の連中の信頼を積み重ねた。

 僕が裏組織の仕事を手伝っているのは理由がある。
 酒場の女に惚れたチンピラから、絡まれることが多くなったので、バックに裏組織が居れば、馬鹿が減ると思ったのだ。

 案の定チンピラから絡まれることは減った。
 でも、酒場の女へ一方的に入揚げた堅気の冒険者の襲撃は減ることがなかった。
 こいつらチンピラと違って、思い込みと妄想で目の前が全然見えなくなってるから怖い。
 突然酒を呑んでいるところに切り掛かられたり、女の部屋のドアを蹴破って入って来たりする。

 蔓は最近、野犬狩りの手伝いは怠ける様になって来たのだが、酒を呑んだり、女の身体を撫で廻すのは好きな様で、邪魔者が現れるとちゃんと撃退してくれる。
 突然見えない何かが足を掴んで、壁へ叩き付けるのだ。
 みな、恐怖に顔引き攣らせて逃げて行く。
 
 そんな日々の繰り返しをしていたら、今日は変な襲撃者に遭遇した。
 女と一戦交えていたら、鍵を掛けてあった筈のドアを開け、下の酒場で働いていた十二歳くらいの餓鬼が背後から襲って来たのだ。
 蔓が両足を掴んで壁に叩き付けてくれた。
 猫の様に、両手両足を壁へ突いて、咄嗟に身体を支えた体捌きは素人じゃなかった。

 それでも、蔓が両手両足へ絡みついて反撃すると、身体の動きを封じられた状態で叩き付けられ、気を失った。
 こいつは、酒を呑んでいる時に、スカートの裾を持ち上げてやたら粉を掛けて来た。
 何か目的が有ったのだろう、僕は縛り上げて尋問してみることにした。
 服を剥ぎ取り、餓鬼を後ろ手に縛り上げた。
  
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