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Ⅰ 王都へ

18 蜘蛛2

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翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳
ニケノス・・・カルナの荷車の御者
メル(メルトス)・・・翔達の荷車の同乗者、小学生に見える少年。
ファラ(ファラデーナ)・・・メルの連れ合い、こちらも小学生に見える少女
カルメナ・・・翔達の荷車の同乗者、一番大人びた少女。
ユーナ・・・翔達の荷車の同乗者、カルメラと同郷の少女
カーナ・・・翔達の荷車の同乗者、カルメラと同郷の少女
カルロ・・・翔達の荷車の同乗者、カルメラと同郷の少年

マッフル・・・カルナの荷車隊の護衛隊長
ガロン・・・・カルナの荷車隊の護衛副長
グルコス・・・翔達の荷車の護衛
アケミ・・・荷車隊の護衛の一人
ケスラ・・・荷車隊の治療師、彩音の治療魔法の師匠
キャル(キャロライン)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、金髪の妖精の様な超絶美少女
アミ(アルミナス)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、銀髪でキャルと同じく妖精の様な超絶美少女。二人はスノートの少女達のリーダー的存在で、キャルよりやや思慮深い。
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、武官の家系で普段から兵士達との交流が有り、口調が荒い。

カルナ・・・王命による地方から送られる少年少女の半強制移住者の呼び名、疫病の影響で減ってしまった都市部の少年少女を補充し、文化や技術を継承することを目的にしている。
ユニコ・・・眉間に輝く角を持つポニーくらいの馬。
メメ草・・・石鹸や消毒薬替わりの便利な草
グルノ草・・・傷薬になる薬草

タト・・・白金貨の単位
チト・・・金貨の単位
ツト・・・大銀貨の単位
テト・・・小銀貨の単位
トト・・・銅貨の単位

1タト=10チト=100ツト=1000テト=10000トト
1トトは日本円で100円位

ーーーーーーーーーー

蜘蛛の好みは物凄くはっきりしていた様で、食われたのは全て雌だった。
 
生き残ったユニコを駆って、何人かがクムの町に向かった。
ユニコの補充を依頼するのは勿論のこと、蜘蛛の屍骸の引き取りの依頼、大きな旅の不安材料である蜘蛛が討伐されたことを知らせるためだ。

男達は少し離れた場所あった小川で蜘蛛の体液に汚れた身体を洗い、紫色に染まった服を洗濯している。
女達はもっと離れた灌木の茂った場所で拾い集めた服やら身体やらを洗っている。

俺は最初、護衛達に混じって身体を洗っていたのだが、蜘蛛の弱点を見抜いた機転を盛んに褒められ、何度も背中をどやされた。
物凄く照れ臭かったのと、その周囲のハイテンションが鬱陶しくなって来たのとで、俺は少し離れた場所で一人静かに水浴びと洗濯をしていた。
必死で楔を握り締めていた左手の掌が赤く熱を持っており、冷たい水の中に手を入れると心地よい。
最前までの喧噪が遠い記憶のようだ。
夕暮れ間近の大気が肌に冷たい。

背後に人の足音が聞こえた。
振り向くと金色の長い髪、キャルだった。
白い短めの浴衣の様な服を纏っている。
その裾から覗く、長く伸びた白い足が眩しい。
金色の髪が夕日を受けて赤銅色に輝き、天使が目の前に舞い降りた様に神々しく魅力的だった。

「カケル、ありがとう。また命を救われた」
「ああ、たまたま目の前にキャルが居ただけだ。気にするな」

珍しくキャルが大人しい。
だが、俺は正直キャルに直ぐに立ち去って欲しかった。
キャルは気に留めていない様子なのだが、俺は今素っ裸だ。
手拭いで前を隠すのも不自然に思え、虚栄を張ってプラプラさせているが居心地悪い。

「カケルに放尿を見られてしまった。しかもカケルに尿を掛けてしまった。恥かしくて舌を噛み切りたい」

何か普段と雰囲気が違う、頬を赤く染めて恥らっている。
確かに追い込まれていたとはいえ、年頃の少女として恥かしいのだろう。

「気にするな、あんな状態じゃ不可抗力だ。人には言わん、俺も忘れる」
「約束だぞ」
「ああ」
「じゃっ、そのあかしにカケルが小便をしているところを見せてくれ。これで御相子だ」

突然物凄く変な事を言い始めた。
だが表情は真剣そのものだし、目に迫力が宿っている。
完全に本気だ。
この数日の付き合いだが、言い出したら引かない性格であることは理解している。

どうせ俺は、キャルの前にフルチンで立っている。
うんち見せろとかオナニー見せろとか言われた訳じゃ無い。
今更立ち小便を見せるくらい大した事じゃない、皿だろうが箸だろうがついでに食ってやろう。。

川の中へ放尿するのは気が引けたので近くの藪に移動する。
キャルが真剣な顔で見つめているので少々膨らんでしまう。
尿が勢い良く飛び出してなかなか止まらない。
目を輝かせて見詰めていたキャルが行き成り上着を脱ぎ捨てた。

下には何も履いて無い。
うん、キャルもまだつるつるだ。
胸は、それなりに形良く膨らみ始めている。
脱皮前の少女の儚い肢体、妖精のようだ。

そして俺の小便を被りながら勢い良く飛び付いてきた。
俺の右足に股間を押し付け、両足を絡めて抱き付いて来た。
俺は思わず両手で抱き上げてしまう。
キャルの両足に力が籠り、キャルが仰け反った。

「あー」

密着したキャルから俺の右腿に暖かい液体が勢い良く吹き付けられる。
キャルは恍惚とした表情で天使のような笑みを浮かべている。
その輝くような無邪気な表情に俺は見とれてしまった。
放尿が終わってもキャルは抱き付いたまま、しばらく俺の肩に顔を埋めて余韻を楽しんでいる様だった。

突然キャルが飛び降り、くるりと俺に背を向けて川に向かって歩き出す。
上機嫌で背中が踊っている様だった。

嬉しそうに水浴びを始めたキャルを見て、唖然としていた俺も再度水を浴びる為に川へ降りる。
右腿を集中的に洗うとキャルを傷つける様な気がして、全身をさりげなく洗う。

「カケル、手拭借りるぞ」
「ああ」

全身を拭き終ったキャルが上着を纏う。
そして告げた。

「カケル、忘れ無くて良いからな」

そして弾むような足取りで去って行った。
その背中を見送りながら、俺は何か大きな間違いを犯した様な気分、何かの深みに嵌った気分で落ち着かなかった。
キャルが身体を拭いた手拭を顔に寄せると何か良い匂いがした。

夕食の支度が始まる。
メインの食材は勿論蜘蛛だ。
肉は海老に似ており、滋養強壮の薬として重宝され、また脳味噌は蟹味噌に似ており、これまた魔力増強剤である。
王族や貴族の食事の食材であり、普通庶民が口に出来る物ではない。
密林の食材と煮たり、串に刺して焼いたりと、扱いに慣れているケスラさんが腕によりをかけて調理してくれた。

屍骸になったとは言え、荒野の野犬や蜥蜴達は蜘蛛を恐れて近づかない。
護衛達も気を緩め、焚火の上の鍋を囲んで穏やかな時を過ごす。

俺は調理途中の生の切り身を貰って、醤油の味に近い調味料を掛けて食べてみた。
思ったとおり、口の中に旨みが広がって美味しい。
その様子を見てキャルとアミが寄って来た。

「カケル、私達にも一口くれ」

生で肉を食べる俺に周囲は引き気味であったが、彼女達は興味が有るらしい。
皿に切り分けて、調味料を掛けて渡す。

「旨いなこれ、この調味料が合っている」
「この肉を食うは初めてだが、この味は何かに似てるな」
「海老じゃないか」
「ああ、なるほど。海老に似てるのか」

キャルは納得して頷いているが、アミは不思議そうな顔をして俺を見詰めている。
キャルは身体を密着させて俺の右側に座り、アミは少し離れて左側に座っている。
アミが急に居住まいを正した。

「カケル、礼がまだだったな。また命を助けられた。ありがとう」
「キャルにも言ったが、たまたま目の前に二人が居ただけだ。気にするな」
「キャルはもう礼を言ったのか」
「ああ、私はさっき水浴びのついでに言っといた」
「もーキャルは抜け駆けして。カケル、私達の国では蜘蛛は悪魔の使いと言われている。蜘蛛に食われると魂まで一緒に食われて天国に行けなくなるそうだ。食われた時の痛みが死んでも消えないで、苦しみながら地上を彷徨って人に害をなす悪霊に変る。だから、私達は蜘蛛に食われる前に舌を噛めと教わる。だが舌噛んで死ぬのは凄く苦しくて痛いらしいし、自ら命を絶つと天国への扉は閉ざされると言われている。だから怖くて悲しくて嫌で嫌で泣いていた。カケルに助けると言われた時も無理と思って信じなかったが、それでも慰めて貰えて無茶苦茶嬉しかった。最後に嬉しい思い出を貰ったから、これで覚悟を決めて死ねると思った。だが、信じられない事に本当に助けられてしまった。今でも不思議な気がする。私の命はおまえの物だ、本当に感謝する。真剣に私を娶ることを考えてくれ」
「駄目だ、アミ。これはあなたでも譲れない。私とカケルは・・・・、もうカケルと一緒じゃないと生きて行けない気がする。私がカケルの嫁になる」
「ダメ―、お兄ちゃんは私のよ」

先生の手伝いをしていた彩音が戻って来た。
二人を交互に睨んでいる。

「黙れ、蜘蛛も食わない棒切れみたい餓鬼が口挟むな」

蜘蛛に襲われなかった女性が数人いた。
全員の共通点が貧乳で、彼女達は皆物凄く怒っていた。
ゲジゲジは目が良いらしい。
たぶん未熟な果実は好みじゃ無かったのだろう。

「乳がでかけりゃ偉いってもんじゃ無いでしょ、私はまだ成長中なだけよ。それにお兄ちゃんは私の様な体格が好みなのよ」
「本当かカケル、そんな趣味なのか」
「私達の国じゃ幼児を犯すと犯罪だぞ」
「いや、誤解だ。俺にはそんな趣味は無い」
「失礼ね、幼児って誰のことよ」
「第一、お前の体格じゃカケルのナニは大き過ぎて入らないだろ」
「えっ!キャル見たのか」
「さっき一緒に水浴びした」
「キー、お兄ちゃん」
「キャル、どのくらいだった、大きいのか」
「ああ、私が見た事のある兵士どもと比べれば二回り大きい」
「ほー、それならば直ぐに強い子供が作れそうだな」
「ダメー」
そして夜は更けて行った。
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