兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅴ 中央大陸

6 兄妹王城を訪問す

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幽霊船との戦いで、中のマリアに遅れを取ったのが物凄く悔しかったらしく、マリアは聖術をレベルアップさせて聖術の練習にいそしんでいる。
レベルアップできるのは、十三隻の幽霊船を祓った、中のマリアが積み上げた経験値のおかげなのだが、それは割り切って利用させて貰うことにしたらしい。
そして、幽霊船を祓った翌日から聖舞を真似て毎日練習しているのだが、何故か準備体操風になってしまい、一向に上達しない、同じ肉体を共有してる筈なのに得手不得手は有るらしい。

中のマリアは中のマリアで、これが凄く嬉しいらしく、マリアが練習に疲れて舟を漕ぎ始めた時には、態々入れ替わって俺に踊って見せに現れる。
何度見ても不思議な美しい舞なので見惚れてしまうのだが、マリアが戻って来た時には、マリアがこれを覚えていて、何故か俺がマリアに八つ当たりされてしまう。

「兄ちゃん、此奴、図に乗るから誉めちゃだめだよ」

投石は圧倒的にマリアの勝ちなのだが、魔術のセンスは中のマリアの方が良く、土術は良い勝負で火術は中のマリアの方が少し優れ、聖術は圧倒的に中のマリアが勝ちという状況だ。
まあ俺は公平に見て互角と思っているが、二人は互いに自分の方が上と思っているようだ。

ジョージと俺の場合は、同じスキルで同じ知識の筈なのだが、何故かジョージの俺より優れている点が思い浮かばない。
運動神経は俺の方が良さそうだし、根性は明らかに俺の勝ちだろう。
魔術のセンスに関しても、この世界の住民の癖にジョージはセンスが悪い、熱術で氷の銃弾を作る事すら出来ないのだ。
だがジョージが落ち込むと、俺の気持ちまで影響を受けて暗くなってしまうので、極力俺達は一心同体と暗黙の了解で思い込む様している。
そして今俺達が心配しているのは、中のマリアの理想のお兄ちゃん像が徐々に俺サイドへ傾き始めていると思えることだ。
恐らく、マリアの持って居る俺に対する信頼感と、普通の両親の元、平和な世界で育ったマリアの俺への記憶の憧憬が、無意識の内に影響しているのかも知れない。
ジョージは、中のマリアがマリアとの入れ替わりを望んでいると思い始めているのだが、それは考え過ぎだと俺は思っている、俺は昔から女性にもてたことが無い。

ーーーーー
メイレンでのパレードの翌朝、もう少し寝たいと思っていたのだが、部屋のドアを懸命に叩く宿の支配人の声で起こされた。

「勇者様、申し訳ありません。王城からお迎えが参っております。起きて下さい」

裸で俺にしがみ付いているマリアを引き剥し、慌てて着替えてドアに向かう。

「どうしたの」
「誠に申し訳ございません。王軍が表通りで勇者様の御起床をお待ちしております、起きて頂けるとありがたいのですが」

窓の外を覗くと確かに軍隊が表通りで整列して立っている、そしてその軍隊の後ろには、荷車が長蛇の列を作っていた。
要するに、軍隊が道を塞いでいるので、ご近所が大迷惑しているのだ。

「はい、至急着替えて出発します」
「ありがとうございます」

半分寝ているマリアを起こして着替えさせ、大急ぎで顔を洗ってやる、寝癖はこの際我慢だ。
状況を伝える為にホークさんの部屋へ行くと、外の気配に気が付いていた様で、五人集まってお茶を飲んでいた。

「ホークさん、俺達は王城へ呼ばれてるんですが、どうします」
「準備もあるし、俺達は先に魔法国へ行く。待ち合わせ場所は王都の冒険者ギルドで良いか」
「はい、了解です。なるべく早く行きます」
「もし僕達が見当たらなかったら、掲示板に連絡方法を貼りつけて置くからね」
「はい、これ」
「アニーさん、これなんですか」
「王都でのお土産品リストだよ。この国の王都って御菓子の名店が多いんで有名なんだぞ。楽しみにしてるからな」
「はい、努力します」

軍隊に先導されて王城に向かう、王都メルンと自由商業都市メイレンを結ぶ、商店が両側に立ち並んだ短い街道は、大勢の見物客で賑わっていた。

王都に入る、赤茶色の焼き煉瓦の壁に藤色の屋根瓦、古都らしい落ち着いた雰囲気の街並みの中を、俺達は馬に乗ってゆっくりと時々手を振りながら進んで行く。
メルルーレン国の王城は面白い構造で、城の中に町が作られているような感じで、街との境目があまりはっきりしない。
ギルドが立ち並ぶ通りの建物の扉を開けると、そこが王の謁見室になっていた。

王夫妻と一緒に、船で一緒だったグラハニル三世さんと奥さんのアントワールさんも一緒に出迎えてくれた。

「ようこそ、メルルーレンへ。歓迎するよ」
「ようこそ、勇者殿、賢者殿。御活躍は父からお聞きしました。どうぞこちらへ」

広いテーブルの上に食事が用意されていた、朝食を食べずに飛び出して来たのでありがたかった。

「面白い城の造りだろ。これは昔、我が国の沖合に水竜が居座った時の名残なんじゃ。商船が港から出られなくなって、税収が入らなくなってな、それでも生活困窮者が大勢出たんで支援してたら、借金が膨らみ過ぎて我が国は一回財政破綻したんじゃ。本当に馬鹿な王様じゃ。借金の形に城内がギルドや商人に差し押さえられて、店や宿屋や借家を作られてしまっての、その後竜に王都を襲われた時に住民を城内に匿ったら、皆居付いてしまって今の形になっておる、財政が少し立ち直った時に城の一部を買い戻したんじゃが、応じてくれる者も少なくてな」
「懐かしいわね、お城を追い出されて下町の長屋を借りて住んだのよ。あなたはその時生まれたのよ」
「いやー、お恥ずかしい」
「恥ずかしい物か、本来会議なんて井戸端で十分なんじゃ。竜の嫌がる音を出す魔道具を王宮魔術師が考案しての、それから少しずつ事態が好転を始めた」
「でもね、その魔道具を他の国の人達が壊そうとするの。あなたを背負って夫人隊の監視活動に狩り出されたわ」
「母上がですか」
「そうよ、割烹着着て棒を持って、懐かしいわねー」
「その後も海運の保証料の高騰や魔道具に使う魔石の高騰に苦しめられたが、利息よりも返済が多くなり、借金が半分に減った時点で息子に王位を譲り渡す事が出来たんじゃ。じゃが、おまえ、勇者殿達が水竜を討伐して下さったんで一気に財政状況が好転するぞ。保障料は十分の一以下に減るじゃろうし、竜避けの魔道具も不要になる。少なくとも、年間で金貨数十万枚は負担が減るぞ」
「えっ!父上、そんなに支出が減るのですか」
「安心して荷が動かせる様になるから税収はもっと増えるぞ。そこでじゃ、勇者殿と賢者殿に感謝の印として中央大陸の国間の通行が自由になる様に名誉子爵の称号を送ろうと思う、如何じゃ」
「父上、勿論異議はございません。宰相に至急手続を執らせましょう」

そして俺達はもう一日王城に据え置かれ、子爵位を受け取ることになった。
俺達は既に三回ほど国境を跨いでいる筈なのだが、ミハエルから貰った渡航許可証はマジックボックスの中で眠っている。

アニーさんに頼まれた菓子を買いに行く事にした、部屋付のメイドさんに頼んだら案内をしてくれた。
何故か食堂へ向かい、厨房の中に入る、厨房を抜けるとそこは表通りに面した土産物屋になっていた。

「ここは国営の土産物屋なんです。ここの品なら従業員価格で購入できますよ」
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