兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅱ 自由都市トルトノス

1 兄妹ギルドに加入する

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「お兄ちゃん、お姉ちゃん、宿を探してるんだったら撲が安くて綺麗な宿を紹介するよ。僕も御駄賃を少し貰えるから助かるんだけどなー」

八、九才位の、貧しい身形だが目がクリクリした可愛らしい男の子が声を掛けてきた。
素直な、明るくて知的な感じがする子で好感が持てた。

「風呂が有って、飯の美味い宿が良いな。宿代は少し高くても構わない」
「お兄ちゃん、この町は初めて」
「ああ、初めてだけど。何かあるのかい」
「ううん、貴族様の御屋敷じゃないんだから、この町にはお風呂の付いた宿なんか無いよ」
「そーか、みんな身体は何処で洗ってるんだ」
「井戸端で洗うに決まってるじゃないか、変な事聞きな」
「・・・・すまん、じゃっ、飯の美味い店を頼む」
「うん、解った」

少年が俺達の袖を掴んで勢いよく歩き始めた。

薄暗い路地を何度も曲がり、段々周囲の街並みが薄汚れた雰囲気に変わり、道端に人相の悪い男達が屯するようになって来る。
そして道が袋小路に突き当ると、少年は正面の塀に垂れ下がっている縄を伝って塀の上に登り、塀の上に腰かけると縄を引き上げてしまった。

「旦那、お客さん連れて来たぜ」

少年の雰囲気がガラリと変わり、抜け目のない、人を小馬鹿にしたような目付きで俺達を見下ろしている。

「おうご苦労」

背後から声が聞こえ、振り向くと人相の悪い男達が板を並べて路地を塞いでいた。
鎖の付いた首輪を二つ持って、スキンヘッドの逞しい男が褌一丁の姿で近付いて来る。

「へっへっへ、兄貴、此奴等良いとこのお嬢ちゃんと御坊ちゃまらしいから金目の物はきっと持ってるぜ。じゃあな、間抜けな兄ちゃんと姉ちゃん、次が有るかどうか解んないけど、良い人生勉強だろ。たっぷりと旦那に仕込んでもらいな、じゃあな」

スキンヘッドの男が銅貨を一枚少年に飛ばす、少年はその銅貨を受け取ると、器用に塀の上を走って去っていった。
自由都市とは聞こえが良いが、ある意味色々な事が自由なのだろう。

「ほれ、おめーら、奴隷の作法を仕込んでやるから服脱いで裸になりな」
「兄貴、生き良い内に味見して良いですか」
「仕方ねーなー、そっちの女の餓鬼ならいいぞ。判ってるだろうが壊すなよ、売り物なんだから。男の餓鬼は味見の予約が入ってるから駄目だ」

身包み剥いでから、俺達を奴隷として売り飛ばす積りなのだろう、男に犯される心配をする日が来るとは思って無かった、美少年も大変だ。
さてどうするか。

「おめーら、舐めるんじゃないぞ」
「兄ちゃん、声裏返ってるよ」

あー、恥ずかしい、慣れない事はするもんじゃない、凄んでみたのだが男達に大笑いされてしまった。
でも目的は達した、ちゃんと”威圧”のスキルが湧いて来た、急いで二ポイント割り振る。

「笑えて貰えて嬉しいよ。じゃっ、互いになごんだところで取引きをしよか」

俺の雰囲気が急に変わった所為のだろう、スキンヘッドの男が怪訝そうな顔に変わる。

「てめえ、舐めてるのか」
「いや、大真面目だぜ。さっきの餓鬼はいい感してるぜ、確かに俺達は金目の物を持っている。ほれ、これが何か判るか、マジックボックスなんだぜ。まあお宝だ、俺達より高く売れるぜ。ん?信じてねーな、ほれ」

野犬の毛皮を中から取出して見せる。

「こいつと所有者は魔法で繋がっている。だから所有者以外は中身が出せないし、使えない」
「なんだ、そんな事か。なら簡単だ、大人しく魔法を解いて、中身を全部出したくなるまで、じっくり仕込んでやるさ」
「勘違いするんじゃねーぞ。取引きしたいのは、お前達が革剥かれてこのマジックボックスに入りたいかどうかって取引なんだぜ。はいよ、マリア」

マリアにアイテムボックスから取り出した石を渡す。

「ほい、兄ちゃん。それっ」

マリアがスキンヘッドの男の足元に石を投げる。

”ドーン”

凄まじい音がして石が土にめり込んで穴が開く、マリアの瞬発力と投石スキルなら、足元にライフル銃を打ち込まれたくらい迫力がある。
逃げ出そうとした奴がいたので、マリアがそいつらの足元にも石を投げる。

”ドーン”
”ドーン”
”ドーン”
「ひっ!」
「ひっ!」
「ひっ!」

「動くんじゃねー、まだ、話が終わってねーぞ。次に動いた奴はぶっ殺す」

男達が顔を引き攣らせて頷いている。

「金か」
「金じゃない、闇ギルドに俺達を案内しろ」
「それは」

”ドーン”
「ひー!」

スキンヘッドの男が口篭った途端、マリアが瞬時に男の足元に石を投げ付けた、なんか俺よりおっかない。

「案内しろ」
「判った、判ったから殺さないでくれ」

取引きは円満に成立した様だ。
俺達は言わばお尋ね者だ、町へ入る時は適当に誤魔化せたが、国境の検問所を越えるのは難しいと思っていた。
なので通行証の偽造を何処かで頼む必要が有ると思っていたのだが、たぶん普通の人に聞いても教えてくれるはずが無い。
だからその筋の聞いてみる必要があったのだが、ちょうど人攫いという、その手の話に詳しそうな人が向こうから声を掛けてくれたのだ。

案内された闇ギルドは、貧民窟とか怪しげな店の立ち並ぶ歓楽街の中とかを想像していたのだが、表通りの普通のギルドの事務所が立ち並ぶ中に有った。
中は普通の事務所で、受付のカウンターに普通の少し禿げた中年のおじさんが座っていた。

「ガルロ、奴隷の買い取りなら隣だぞ」
「クロードさん、違うんで。此奴等が客なんです。見た目と違って此奴等危ないんです」
「何?、客?、此奴等が」
「マーシャル国への通行証が欲しい、それと今出回っている手配書が見たい」
「ふーん、たいして強そうに見えんがな、訳有か」
「余計な詮索は不要だ。答えは」
「金は有るのか」
「金は有る、足りなければ売り物は有る」
「その売り物とやらを見せろ、口じゃ信用できん」

野犬の毛皮を百枚程マジックボックスから引き出して見せる、クロードという男はその毛皮を丹念に確認している。

「成程な、石斧か何かで殴り殺したか、見た目通りじゃ無いらしいな。良かろう、引き受けよう。他のギルドや神殿の通行証の偽造なら金貨百枚、領主発行の住民証の偽造なら金貨十枚だ」
「船に乗れる通行証が欲しい」
「へっ、渡航通行証かい。それじゃ金貨千枚は必要だぞ」

高い、銀貨百枚で金貨一枚だから、日本円で考えれば一億円だ、勿論渡航通行証の価格なんてジョージの知識には無い。
マジックボックスに毛皮が三万枚程入っている、一枚銅貨八十枚だから全部で金貨二百四十枚、魔石や蠍の部材を売っても、全部で金貨四百枚程度にしかならないだろう。
もう一度アカクルカ荒野で野犬を狩って来る必要が有りそうだ、だが八万匹も野犬を狩ったら絶滅しないだろうか。

「うちのギルドに加入すれば金貨百枚で用意するぜ」
「そりゃ魅力的だが、何か条件あるのか」
「仕事の依頼を受けて貰えれば良い、ただしその報酬の一割は上納して貰うがな。どうせ通行証の作成には半年は必要だ。暇潰しにちょうど良いだろう」
「殺とか、誘拐とかか」
「物を運んで貰うだけの簡単な仕事だ」
「ならば加入しよう」
「魔法契約になるが構わんか」
「俺達の秘密が漏れる心配は無いのか」
「透明インクで名と生国を書いて貰う、虚偽は紙がインクを受け付けんし、真実なら直ぐに字が消えるから神にしか判らん」
「了解だ」

契約書に名前と生国を記入する、日本語で名前と住所を記入したら、すんなりと紙が受け入れてくれた。
勿論マリアにも教えて日本語で書かせる。

「ギルド札を作るが名はどうする」
「そーだな、ジョウとマリにしてくれ」
「なら札を作るから手配書でも見ててくれ」

分厚い紙束を渡されたので、俺達の手配書の有無を二人で確認した。
荒野を横断しなければヒューロス国の手配書が届くまでは半年以上掛かる筈だ。
案の定まだ手配書は届いて無かった。

札を渡され、明朝ギルドにまた来る様に指示された。
宿はギルドが経営する宿を紹介された。
宿でギルド札を示したら、宿泊料、食費は無料との説明を受けた、ただし、酒代は有料だった。
ラッキーな事に、地下に隠した風呂場が作ってあった、たぶん血の臭いを消すためだろう。

ーーーーー

「クロードさん、申し訳ありませんでした」
「ガルロ、命が有って良かったな」
「へっ、何でですか」
「これを見てみろ」

クロードが机の下から少し湾曲した、先端が細く尖った棒を取り出す。

「毛皮の間に挟まっていた。アカクルカ大蠍の足先だ」
「へっ、あの餓鬼共が」
「ああ、たぶん、冒険者ならA級の連中の獲物だ。まあ、良い拾い物だったかもしれん。ユリーサ」
「はい事務長なんでしょうか」
「奴らが見ていた手配書の傾向を整理しておいてくれ」
「はい」
「デン、覗けたか」
「へい、覗けやしたが・・・。これです」
「なんだこれは、何処の字だ」
「いえ、あっしにもサッパリで」
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