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Ⅲ 王都フルムル
11 兄妹王都に住みつく1
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美味しい食事とガイド付の名所案内、王都観光ツアーは物凄く楽しかった、楽しかったのだが、楽しい時間はあっと言う間に終わってしまう。
勿論俺達だけ独り占めして楽しむなんて薄情な真似はしない、昼飯後の数時間はジョージとマリアにちゃんと身体を明け渡して楽しんでもらった。
二人共物凄く喜んでいた、辺境住まいだった二人にとって、俺達では想像できないくらい王都への憧れが強かったようだ。
もっと遊んでいたいし勤労意欲は皆無なのだが、一応闇ギルド員の端くれなので、そろそろギルドの中も落ち着いた時分と考えて闇ギルドの事務所に顔を出してみた。
闇ギルドは物凄く落ち着いていた、落ち着き過ぎて人の気配は無いし、入口と裏口は厚い板を打ち付けられて塞いである。
ギルドも倒産するのだろうか、まだ通行証は発行して貰っていないし、第一金貨五百枚を預けたままだ。
「どうしたんだい、君達」
隣の事務所の階段を箒で掃いていたおじさんが心配して声を掛けてくれた。
「ここのギルドにお金を預けていたんですが、何処かへ移転したんですか」
「それは災難だったな、一昨日王軍の突撃隊が来て中の物一切合財と中に居た人間を全員捕縛して行ったぞ、よっぽど誰かが悪いことやらかしたんだろうな。昨日も未収金の心配をした商人達が随分押し掛けて来たが、たぶんみんな回収は諦めたみたいだぞ。それにそこでうろうろしてるとギルド関係者と思われて兵隊に捕まるぞ」
これはショックだ、金貨の損失ならまだ毛皮を持って居るので諦めが付くが、ギルド証が使えないと身分証明として使える物が何もない。
王都から出ることも出来ないし、宿にも泊まれなくなる、これは困った。
だれがこんな事態を引き起こす真似をしたんだろうか、迷惑な話だ。
ふと隣の事務所の看板を見上げると薬師ギルドと書いてある。
「あのー、俺達身分証を隣に預けたままなんです」
「そりゃ困ったね」
「薬師ギルドに入れて貰えないでしょうか」
「そりゃ駄目だよ、身分証明目的でギルド証を発行するのは禁じられているからね」
「働きますから、俺達薬草園育ちですから少しは薬草の事が判ります」
「へー、薬研を使った事はあるかい」
「はい、あります」
「焙煎は」
「はい、あります」
「抽出と調合は」
「脇に付いて見ていましたが、自分で経験してません」
「そーか、それならばちょうど道具が一式揃った長屋が空いているから手伝って貰うか、作業を頼んでた職人が急に田舎に帰っちまって手が足りなかったんだ、さあ、中に入ってくれ」
ーーーーー
「どうだ、ミハエル」
「間違いなくあの二人だね」
黒竜城の公爵の居室、ニコノス将軍から大鷲便で送られてきた人相書きをテーブルの上に広げ、公爵とその息子ミハエルが頭を突き合わせて覗き込んでいた。
「見付かったか」
「ううん、全然。王都中の宿を虱潰しにしたんだけどね。王軍も二小隊規模を動員して闇ギルドのギルド証で宿泊している奴を全員捕縛したらしいんだけど、居なかったらしいよ。何処に消えたんだろ」
「王も必死じゃの」
「僕が王権移譲を迫るためにメテオの魔術師を雇ったなんて噂が流れているからね」
「姫の件も有るしの」
「マーシャル国からの助力を得るために姫を婚約者として連れて来たって噂だろ。逆に攻撃されそうなんだけどね、アリューシャの父さん怒ってたんだろ」
「ああ、責任を取れと言って来た」
「責任って言われても、僕は手を出してないよ」
「なら何故領事館へ連れて行かぬのだ」
「連れて行こうとしたさ、そしたら腕に噛付かれてさ、見るかい父さん、咬み跡」
「見せんで宜しい、しかし困ったの、やはりお前はトラブルメーカーじゃった」
「酷いな父さん」
ーーーーー
「ネルトネッテ伯爵、どうだ」
「申し訳ありません、間違いなく私の馬鹿息子と馬鹿娘です。見付け次第処分いたします」
ここは赤竜城の王の居室、ニコノス将軍の元に潜ませている密偵から送られて来た人相書きをテーブルの上に広げて、王が密かに呼び出したネルトネッテ伯爵と密談を行っている。
「勘違いするな、相姦の罪を問う為にお前を呼び出した訳じゃ無い、何故娘の土術の才を隠していた」
「へっ?娘に土術の才は御座いませんが」
「偽りを申すな、メテオの使い手じゃぞ。それとも息子の方か」
「メテオ?何の話でしょうか。息子にはもっと魔術の才はございませんが」
「メルメス湿地帯の流星雨の話は聞いておるか」
「はい、噂では」
「あれはメテオだ。狙われたのは南部方面軍の部隊じゃ。メテオを仕掛けた者の人相書きがこれで、噂ではミランダの息子に雇われてこの街に連れて来られているらしい。お前が説得してこちらの陣営に引き入れろ」
「説得と言われましても、この二人は犯罪者ですので処分せねば」
「頭が固いのう、良いか、男はお前の弟の息子じゃったと最近判明した。お前の娘との婚姻ならば問題無かろう」
「ですがノーラ様が」
「大丈夫じゃ、形式と手続さえ整えればノーラ様は許して下さる。実質なぞ問題じゃない、そうゆう神様じゃ」
勿論俺達だけ独り占めして楽しむなんて薄情な真似はしない、昼飯後の数時間はジョージとマリアにちゃんと身体を明け渡して楽しんでもらった。
二人共物凄く喜んでいた、辺境住まいだった二人にとって、俺達では想像できないくらい王都への憧れが強かったようだ。
もっと遊んでいたいし勤労意欲は皆無なのだが、一応闇ギルド員の端くれなので、そろそろギルドの中も落ち着いた時分と考えて闇ギルドの事務所に顔を出してみた。
闇ギルドは物凄く落ち着いていた、落ち着き過ぎて人の気配は無いし、入口と裏口は厚い板を打ち付けられて塞いである。
ギルドも倒産するのだろうか、まだ通行証は発行して貰っていないし、第一金貨五百枚を預けたままだ。
「どうしたんだい、君達」
隣の事務所の階段を箒で掃いていたおじさんが心配して声を掛けてくれた。
「ここのギルドにお金を預けていたんですが、何処かへ移転したんですか」
「それは災難だったな、一昨日王軍の突撃隊が来て中の物一切合財と中に居た人間を全員捕縛して行ったぞ、よっぽど誰かが悪いことやらかしたんだろうな。昨日も未収金の心配をした商人達が随分押し掛けて来たが、たぶんみんな回収は諦めたみたいだぞ。それにそこでうろうろしてるとギルド関係者と思われて兵隊に捕まるぞ」
これはショックだ、金貨の損失ならまだ毛皮を持って居るので諦めが付くが、ギルド証が使えないと身分証明として使える物が何もない。
王都から出ることも出来ないし、宿にも泊まれなくなる、これは困った。
だれがこんな事態を引き起こす真似をしたんだろうか、迷惑な話だ。
ふと隣の事務所の看板を見上げると薬師ギルドと書いてある。
「あのー、俺達身分証を隣に預けたままなんです」
「そりゃ困ったね」
「薬師ギルドに入れて貰えないでしょうか」
「そりゃ駄目だよ、身分証明目的でギルド証を発行するのは禁じられているからね」
「働きますから、俺達薬草園育ちですから少しは薬草の事が判ります」
「へー、薬研を使った事はあるかい」
「はい、あります」
「焙煎は」
「はい、あります」
「抽出と調合は」
「脇に付いて見ていましたが、自分で経験してません」
「そーか、それならばちょうど道具が一式揃った長屋が空いているから手伝って貰うか、作業を頼んでた職人が急に田舎に帰っちまって手が足りなかったんだ、さあ、中に入ってくれ」
ーーーーー
「どうだ、ミハエル」
「間違いなくあの二人だね」
黒竜城の公爵の居室、ニコノス将軍から大鷲便で送られてきた人相書きをテーブルの上に広げ、公爵とその息子ミハエルが頭を突き合わせて覗き込んでいた。
「見付かったか」
「ううん、全然。王都中の宿を虱潰しにしたんだけどね。王軍も二小隊規模を動員して闇ギルドのギルド証で宿泊している奴を全員捕縛したらしいんだけど、居なかったらしいよ。何処に消えたんだろ」
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「なら何故領事館へ連れて行かぬのだ」
「連れて行こうとしたさ、そしたら腕に噛付かれてさ、見るかい父さん、咬み跡」
「見せんで宜しい、しかし困ったの、やはりお前はトラブルメーカーじゃった」
「酷いな父さん」
ーーーーー
「ネルトネッテ伯爵、どうだ」
「申し訳ありません、間違いなく私の馬鹿息子と馬鹿娘です。見付け次第処分いたします」
ここは赤竜城の王の居室、ニコノス将軍の元に潜ませている密偵から送られて来た人相書きをテーブルの上に広げて、王が密かに呼び出したネルトネッテ伯爵と密談を行っている。
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「へっ?娘に土術の才は御座いませんが」
「偽りを申すな、メテオの使い手じゃぞ。それとも息子の方か」
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「メルメス湿地帯の流星雨の話は聞いておるか」
「はい、噂では」
「あれはメテオだ。狙われたのは南部方面軍の部隊じゃ。メテオを仕掛けた者の人相書きがこれで、噂ではミランダの息子に雇われてこの街に連れて来られているらしい。お前が説得してこちらの陣営に引き入れろ」
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