兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅲ 王都フルムル

12 兄妹王都に住みつく2

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事務所の従業員さんと思って話していたのだが、事務所に入るとこのおっさんはとことこと奥の立派な扉の部屋に入って行った、扉には小さな字で所長室と書いてあった。
部屋の中には立派なデスクと応接セットがドンと置いてあったのは普通なのだが、そのデスクと応接セットを囲むように、部屋一杯に怪しげなガラスの装置を組上げて並べてある。

大きな底の平たいガラスフラスコの中の紫色の液体が、火石の炎に炙られてぐつぐつと泡立って震えているし、螺旋状になったガラス管からぽたりぽたりとガラス瓶に流れ落ちている青い液体が、瓶の中でパチパチと火花を散らしている。
なんかドカンと爆発しそう雰囲気で凄く気になる。
所長室と言うよりも、何か危ない研究室の様だ。

「座ってくれ」

勧められてソファーに座る。

「エチレン、契約書を持って来てくれ」

所長さんが事務所声を掛けると、白衣を着た髪の毛がぼさぼさのお姉さんが紙をひらひらさせながら入って来た。

「所長、私は事務員じゃないんですよ、早く事務員を雇って下さいよ」
「エチレン喜べ、粉挽き作業から解放してやるぞ」
「えっ、本当ですか」
「だから文句言わないで手続きしてやってくれ」
「了解、了解、そんなら了解。貴方達がそうね、頼むわよ。所長は人使いが荒くて、ほら、私手が豆だらけなの」

エチレンさんが豆だらけ手を見せながらテーブルの上に紙を乗せた。

「仕方がないだろ、雪が降る前に焙煎まで終わらせないと薬草の成分が半減するんだから」

「名前だけ書いて貰えば、後は私が適当に作るわ。作業場に案内するから、今日からお仕事をお願いするわね」

冗談なのかと思ったら、本当に名前を書いたら契約書を取り上げられた。

「ギルド札は明日渡すわ、さあ、付いてきて頂戴」

ギルドを出てひたすらエチレンさんは北に向かって歩く。

「王都の北斜面に工房があるからちょっと遠いんだけど、あそこが一番日当たりが良い場所なの。薬草って早く乾かさないと質が落ちちゃうでしょ」

商店や宿屋が並んだ地区を抜けて、運河を渡し船で越えると、周囲は水路が巡らされた果樹や畑が広がる田園風景に変わった。

「へー、王都の中にもこんな場所が有るんですね」
「こんな場所だから周囲を封鎖されて食糧攻めに持ち込まれたら脆いでしょ、だから王都の食糧の四割は戦略的に自給で賄ってるのよ。キャノーラ国との戦争の時は、封鎖されても十五年間持ち堪えたそうよ。この地区の一番奥を国から借りてギルドの薬草園を作ってあるのよ」

道が急な登り坂になり、王都を囲う岩壁が目の前に迫って来た。
人の背の倍程の高さの木塀で囲まれた場所があり、エチレンさんが鍵を開けて中に入る。

「ここが薬草園よ、幻覚作用の有る物も栽培してるから一般の人が入れないようにしてるの。でも主力はヒールポーションね、自給率四割は薬草にも適用されてるから結構ノルマが厳しいのよ。ギルドとしては儲けが少ないから義務みたいな物ね。あなた達には暫くヒール草の粉挽きと焙煎を担当して貰うわね」

王都の人口は二千万人と言われている、その四割、八百万人分のヒールポーションを作るのは結構大変な作業かもしれない。

暫く歩くと稲が刈り取られた後の水田の様な光景が広がっている。

「ヒール草の収穫が先週終わったばかりなの。ほら、あそこで天日乾燥させてるでしょ」

エチレンさんが指差す先には、ヒール草の束を細い丸太に掛けて干してある光景が延々と続いていた。

「これを一月で処理するのよ、見ただけで嫌になっちゃうわよね」

干場の奥には木造のログハウスが三棟建っていた、真ん中の建物が大きく、高い煙突が立っている。

「あそこが作業場よ、真ん中がポーション作りの工房、左が薬草園の栽培作業の人達の作業場兼宿舎よ。右があなた達の工房よ、五夫婦が住んでたんだけど、二夫婦が田舎に帰っちゃったの。だから大忙し。紹介は夜するから早速作業を始めてね」

案内されたのは並んだ五部屋のうちの一番左側の部屋、鍵を預かって中に入ると、手前に幅十メートル奥行き六メールくらいの土間があり、ヒール草の束で半分埋まっている。
空いている場所に焙煎用の大きな石窯と、銅の大きな浅鍋、ごつい大きな薬研が置いてあった。

部屋の奥には幅八メートル、奥行き三メートルくらいの板の間と二メートル各の小部屋、覗いたら便器と浴槽が置いてあった。
板の間には、調理用の小さな流しと石窯も置いてある。

「食材は隣のポーション工房の売店で買ってね、薪は外に積んであるよ、足りなかったらポーション工房の倉庫から持って来てね。報酬は毎週末現金で渡すよ、まあ、家賃が差し引かれるからあまり期待しないでね。なにか質問は」
「いえ、特に」
「ヒール草が無くなったら干して有る奴を適当に持って来てね」
「はい」
「それじゃお願いね」
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