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Ⅲ 王都フルムル
13 兄妹薬草工房で働く1
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早速作業を開始する、ヒール草は稲に似た草で、実にも茎にも葉にも同じようにヒールの有効成分が含まれている。
ヒールの有効成分は豊富に含まれているのだが、そのまま薬草として使うには細胞壁が硬過ぎて使えない。
このため、薬草としては見向きもされなかったのだが、紫魚の油でヒール成分の抽出が出来ることが発見されてからは、ヒールポーションの主原料として栽培されている。
細胞壁を壊すために極力細かく擂り潰し、紫魚の油が浸透し易い様に水分を飛ばす。
細胞壁を壊すとヒール成分を分解する酵素も一緒に溶け出すのでなるべく早く焙煎して酵素の動きを止める。
これがヒールポーションの良い原料の作り方のポイントなのだが、機械化が進んでいないこの世界では、薬研と石窯を使った職人の腕次第と言う事になる。
干して竹籤の様に硬くなったヒール草を大きな石の鉢に入れ、大きな擂粉木の様な棒で叩いて粉砕する。
粉砕した粗粉は薬研に移し、石の車輪で丹念に擂り潰す。
擂り潰した細粉は銅の浅鍋に移して石窯の上で焦げない様に掻き混ぜながら焙煎する、だいたいこんな工程だ。
棍棒のスキルと火術のスキルがあるマリアが擂粉木での粉砕と焙煎を担当し、俺が薬研での擂り潰しを担当する。
「こらマリア、バットじゃないんだから部屋の中で擂粉木を振るなよ」
「ほーい」
二工程を受け持っているマリアの方が俺に比べて余裕がある、焙煎なんて火術で一瞬の内に終わらせている。
俺の持って居るスキルで役にたったのは鑑定だけだったが、粉の均一さと細かさが解るだけで、処理速度向上には役に立たなかった。
ヒール草の束の下に埋もれていた木箱を見付けたマリアが、木箱にせっせと粉砕した祖粉を貯め込んで俺にプレッシャーを掛けて来る。
「あら早いわね」
様子を見に来たエチレンさんが勘違いして、またヒール草の束を土間一杯に運び込んでしまった、祖粉だけがどんどん貯まって行く。
賽の河原では、鬼が一所懸命積み上げた石を蹴散らしに来るそうだが、今はそんな気分だ。
「今日の作業はここまでで良いわ、上出来よ。ヒール粉の搬入先の説明とポーション工房の親方に紹介するから追いて来て」
エチレンさんが持って来た台車に仕上がった粉の入った袋を載せて運び出す、我ながら結構な量になっている。
搬入口の係員さんに重さを量って貰い、伝票を工房の片隅にある事務室に持って行く。
「この箱があなた達の伝票入れよ」
事務員の机の脇に小さな木箱が五個並んでおり、その内の一つ示された。
「この子達新人なの、工房長さんいるかしら」
エチレンさんが座っている事務員さんに声を掛ける。
「今第六蒸留塔の様子を見に行ってます」
「ありがとう」
工房の中の通路をエチレンさんの後ろに付いて歩いて行く。
両側には銅の釜とガラス細工を組み合わせた様な装置が一杯並んでおり、工房の職人さん達が忙しそうに働いていた。
「ブロムさん、新人です」
「ジョージです、此奴が家内のマリアです。よろしく」
「おう、俺が工房長のブロムだ。質の悪い粉を納めたら突き返すからその積りで仕事してくれ」
「はい」
初老の怖そうな角刈りのおっさんだった。
ポーション工房の売店にも案内してくれた。
この薬草園では二百家族位が暮らしており、小さな村の様な感じになっている。
売店は品揃えが豊富で、日用雑貨も揃っており、食器や調理具、布団もあったので買い求めた。
特に周囲を農地に囲まれた地域なので、新鮮な野菜や果物が豊富で、肉や乳製品も揃っていた。
「工房の裏庭は自由に使っても良いわよ。菜園を作ってる人が多いかしら」
板の間に置いてある調理用石窯に薪をくべて夕飯を作る、並びの家族も紹介して貰い挨拶を済ませた。
三家族とも子供がおり、子供の方が年齢が近い感じだった。
板の間に座り、座卓に二人分の食器を並べると俺達のあるべき日常生活が戻って来た様な気がする。
マジックボックスから干し肉を取り出して薄切りにする、ニンジン似た根菜や芋や茸を鍋で煮込み、薄切り肉を加えて味を塩で整える。
穀物粉を水で練って、浅鍋で焼いて、ナンの様なパンを作る。
「頂きます」
「頂きます」
牛乳も売っていたので、料理の幅が広がりそうだ。
ーーーーー
「どうだ、あの二人の様子は」
「良い職人さんが入ったって、ポーション工房の親方が喜んでましたよ。あの子達のヒール粉は質がずんぶん良いらしいんですよ」
「ほー、半年で物になってくれればと思ってたが意外だな。量はどうだ」
「若いから早いですよ、他の職人さんの二割り増しくらいですかね」
「ふーむ、直ぐに手の皮を剥いて泣きを入れて来ると思っていたが、まあ良かった。近所の評判は」
「顔を合わせれば元気に挨拶してるみたいで評判は良いですよ」
「なら明後日は休ませて王女のパレードでも見に行かせるか」
「へー、所長、優しいですね」
「なに一日だけだ、北軍と南軍からヒールポーションの注文が来てるからまた忙しくなる」
「所長、あの噂本当なんですか、北軍と南軍が戦争始めるって」
「さあな、王女の誕生会で王家とミランダ家で何か揉め事はあったらしいがな」
ヒールの有効成分は豊富に含まれているのだが、そのまま薬草として使うには細胞壁が硬過ぎて使えない。
このため、薬草としては見向きもされなかったのだが、紫魚の油でヒール成分の抽出が出来ることが発見されてからは、ヒールポーションの主原料として栽培されている。
細胞壁を壊すために極力細かく擂り潰し、紫魚の油が浸透し易い様に水分を飛ばす。
細胞壁を壊すとヒール成分を分解する酵素も一緒に溶け出すのでなるべく早く焙煎して酵素の動きを止める。
これがヒールポーションの良い原料の作り方のポイントなのだが、機械化が進んでいないこの世界では、薬研と石窯を使った職人の腕次第と言う事になる。
干して竹籤の様に硬くなったヒール草を大きな石の鉢に入れ、大きな擂粉木の様な棒で叩いて粉砕する。
粉砕した粗粉は薬研に移し、石の車輪で丹念に擂り潰す。
擂り潰した細粉は銅の浅鍋に移して石窯の上で焦げない様に掻き混ぜながら焙煎する、だいたいこんな工程だ。
棍棒のスキルと火術のスキルがあるマリアが擂粉木での粉砕と焙煎を担当し、俺が薬研での擂り潰しを担当する。
「こらマリア、バットじゃないんだから部屋の中で擂粉木を振るなよ」
「ほーい」
二工程を受け持っているマリアの方が俺に比べて余裕がある、焙煎なんて火術で一瞬の内に終わらせている。
俺の持って居るスキルで役にたったのは鑑定だけだったが、粉の均一さと細かさが解るだけで、処理速度向上には役に立たなかった。
ヒール草の束の下に埋もれていた木箱を見付けたマリアが、木箱にせっせと粉砕した祖粉を貯め込んで俺にプレッシャーを掛けて来る。
「あら早いわね」
様子を見に来たエチレンさんが勘違いして、またヒール草の束を土間一杯に運び込んでしまった、祖粉だけがどんどん貯まって行く。
賽の河原では、鬼が一所懸命積み上げた石を蹴散らしに来るそうだが、今はそんな気分だ。
「今日の作業はここまでで良いわ、上出来よ。ヒール粉の搬入先の説明とポーション工房の親方に紹介するから追いて来て」
エチレンさんが持って来た台車に仕上がった粉の入った袋を載せて運び出す、我ながら結構な量になっている。
搬入口の係員さんに重さを量って貰い、伝票を工房の片隅にある事務室に持って行く。
「この箱があなた達の伝票入れよ」
事務員の机の脇に小さな木箱が五個並んでおり、その内の一つ示された。
「この子達新人なの、工房長さんいるかしら」
エチレンさんが座っている事務員さんに声を掛ける。
「今第六蒸留塔の様子を見に行ってます」
「ありがとう」
工房の中の通路をエチレンさんの後ろに付いて歩いて行く。
両側には銅の釜とガラス細工を組み合わせた様な装置が一杯並んでおり、工房の職人さん達が忙しそうに働いていた。
「ブロムさん、新人です」
「ジョージです、此奴が家内のマリアです。よろしく」
「おう、俺が工房長のブロムだ。質の悪い粉を納めたら突き返すからその積りで仕事してくれ」
「はい」
初老の怖そうな角刈りのおっさんだった。
ポーション工房の売店にも案内してくれた。
この薬草園では二百家族位が暮らしており、小さな村の様な感じになっている。
売店は品揃えが豊富で、日用雑貨も揃っており、食器や調理具、布団もあったので買い求めた。
特に周囲を農地に囲まれた地域なので、新鮮な野菜や果物が豊富で、肉や乳製品も揃っていた。
「工房の裏庭は自由に使っても良いわよ。菜園を作ってる人が多いかしら」
板の間に置いてある調理用石窯に薪をくべて夕飯を作る、並びの家族も紹介して貰い挨拶を済ませた。
三家族とも子供がおり、子供の方が年齢が近い感じだった。
板の間に座り、座卓に二人分の食器を並べると俺達のあるべき日常生活が戻って来た様な気がする。
マジックボックスから干し肉を取り出して薄切りにする、ニンジン似た根菜や芋や茸を鍋で煮込み、薄切り肉を加えて味を塩で整える。
穀物粉を水で練って、浅鍋で焼いて、ナンの様なパンを作る。
「頂きます」
「頂きます」
牛乳も売っていたので、料理の幅が広がりそうだ。
ーーーーー
「どうだ、あの二人の様子は」
「良い職人さんが入ったって、ポーション工房の親方が喜んでましたよ。あの子達のヒール粉は質がずんぶん良いらしいんですよ」
「ほー、半年で物になってくれればと思ってたが意外だな。量はどうだ」
「若いから早いですよ、他の職人さんの二割り増しくらいですかね」
「ふーむ、直ぐに手の皮を剥いて泣きを入れて来ると思っていたが、まあ良かった。近所の評判は」
「顔を合わせれば元気に挨拶してるみたいで評判は良いですよ」
「なら明後日は休ませて王女のパレードでも見に行かせるか」
「へー、所長、優しいですね」
「なに一日だけだ、北軍と南軍からヒールポーションの注文が来てるからまた忙しくなる」
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