兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅲ 王都フルムル

18 兄妹薬草工房で働く6

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粉砕のスキルのお蔭で作業が作業が捗るようになった、たぶん最初の頃に比べれば三倍の量を一日で処理できていると思う。
一日の労働時間も三分の一になってくれれば楽だったのだが、外から荷車に山積みになったヒール草が薬草園に運び込まれて来るようになり、労働時間は減らして貰えなかった。

「ごめんねー、西部街道が通れるようなったから、西部地区からの注文が殺到してるの。ポーションって作る時の技術力の差が大きいでしょ、効き目が三倍違っちゃうらしくて、みんなうちの製品を欲しがるらしいのよねー。西部への帰り荷の筆頭はうちのポーションなんだって」

そういえば、薬草園へ運び込まれるヒール草は西部産の物らしく、帰りの荷車はポーションの瓶の入った木箱を大事そうに持ち帰っている。
西部産の塩漬け肉や穀粉も売店に並ぶようになり、売店のおばちゃんや近所のおばちゃんも景気が良くなったと喜んでいた。
なんでさっさとミノタウロスを倒さなかったのだろう、不思議だ。

ーーーーー
王都冒険者ギルド食堂

「何だよ、呼ばれたから来たのに用が無くなったって言うのは。馬鹿にするんじゃないよ」
「まあ怒るなアニー、俺も同じだ。旅費と宿泊費はせしめたんだろ」
「まあね、日当も寄越せって脅かしたんだけど拒まれたよ」
「無料の王都旅行招待って思えばいいさ、あたいはホークと一緒に三月位遊んでるよ」
「モニカ、あんたらはペアだから良いけどさ、あたいはソロなんだよ。一人で王都観光なんて悲しいこと出来ないよ」
「レンとウィルも来てるから誘ったらどうだ」
「え!ウィルも来てるの。早く言ってよ。何処、何処にいるの」
「公爵の城へミノタウロスの骨を見に行ったよ」
「なんで公爵の城なの」
「公爵の息子の指示で、息子に雇われた奴が倒したらしい」
「なんだ、ミノタウロスの幼体だったのかい」
「いや、おっ、ちょうどレンとウィルが戻って来た」

「なんでアニーが居るんだよ」
「煩いわね、あんたこそ男なんだからウィルに引っ付いてるんじゃないわよ。席替りなさい、レン」
「嫌だ、ベー」

「如何だった、ウィル」
「五人じゃ勿論だが、八人でも危なかっただろうな」
「俺も同感だ」
「えっ!そんなデカい奴だったのかい」
「ああ、成体から魔体に変わる目前だったんじゃないかな。丈は十ノト越えてるし、角も一ノト半は有りそうだからな」
「公爵は何人雇ったんだい」
「噂じゃ二人だ」
「えっ」
「メテオ使いだそうだ」
「へー、実際にメテオが使える術者なんていたんだ。見て見たかったな。あれって、隕石を呼び寄せる空間術なの、アニー」
「違うわ、レン。遥か上空に漂っている塵を集めて岩に変えて降らせる土術よ。上空に力を及ぼす物凄い魔術の影響力が必要で、面攻撃だから動きの速いミノタウロスには不向きな筈なんだけどね。大雑把な魔術だから相当広い範囲が荒野に変わってる筈よ」
「それがねー、アニー。気になったからホークと一緒に討伐現場を見に行ったんだけど、木一本倒れてないの。見た人の話だと、隕石が一直線に並んで、炎の槍みたいに降り注いだんだった」
「隕石は見たの」
「ええ、横に並べて飾ってあるから落ちた時の状態はもう判らないけどね。土産物の露店が一杯並んでて新名所よ。でもね、直径一ノトくらいの土術で固めた岩だった。岩の感じからすると土術のかなり上位者ね」
「どんな奴らなの」
「情報を持ってる闇ギルドの連中が牢にち込まれてるから情報が入らん」
「ホーク、少し探っておいた方が良くないか、協力するぞ。万が一、知らんで敵対したら目も当てらんぞ」
「そーだな、ウィル。ギルドに持ち掛けて宿代と酒代くらい出させるか」

ーーーーー
ミランダ家公子ミハエル

僕が二人の所在を把握したことを知って王もようやく諦めたようで、王権移譲については、ペテローネ家、ミランダ家間で大筋の合意は密かに纏まった。
だが、各論でペテローネ家が粘っている、特に王領の扱いと移譲後のヒューロス大河の運航権の扱いについては、互いの権益を減らそうと正面からガリガリと事務方が衝突している。
その様子を見ていると、僕の生きている間に本当に交渉が纏まるのか心配になって来る。

心配事はもう二つ、アリューシャとエスピがすっかり僕の居室に居座ってしまったのだ。
寝る時も僕を挟んで右にアリューシャ、左にエスピがしっかり定着してしまった。
本を読んでやると二人とも大人しくすやすや寝てしまう、手は出していないのだが、もう放り出すなんてことは出来ないだろう。
アリューシャともエスピとも結婚式を挙げなければならないだろう。
アリューシャの父さん、マーシャル国王は無茶苦茶怒っていると思う、挨拶に行ったら無事帰れるのだろうか。

「ミハエル様、北軍国境部隊から急報です」
「なんだ」
「山脈を越えて地竜が飛来したそうです」

ーーーーー
ミハエルが俺達の家を訪れたのは今年初めての雪が降った日だった。

「すまんが地竜の討伐を頼めないだろうか、魔体クラスだそうだ。三日後ここに飛来するんだ」

ジョージの知識によると、地竜とは山岳地帯に住む全長二百メートルを超える大型竜で、数十年に一回、産卵期を迎えると栄養補給のために人を喰らいに人里へ飛来するのだ。
魔体クラスの竜になると、その旺盛な食欲を満たすために大都市に飛来することが多く、過去多くの国が滅ぼされている。
魔獣と言うよりも、災害と言った方がしっくりとする生き物だ。

「判った、だが条件がある」
「なんだ、二千万人の命が掛かっている。なんでも言う事を聞こう」
「俺達の渡航許可証を作って欲しい」
「・・・判った。約束だ、発行させよう」
「なら湖の回りの地形を確認したい」
「それじゃ城に来てくれ、地図がある。黒竜隊長と赤竜隊長も呼んであるから打ち合わせをしよう」

ーーーーー
黒竜城軍議の間

「黒竜隊長のテトノールと赤竜隊長のアミドスだ。時間が無い、聞きたいことを言ってくれ」
「知りたいことは、竜の飛来コースと予想時間。人家の位置と避難状況だ」
「はっ、竜はここ、王都の真北を真っ直ぐに進んでおります。竜が北岸に到達するのが明後日夕刻、王都に飛来するのは明後日夜と予想しております。北岸住民は既に非難を開始しており、明後日夕刻には王都に入れるます。西岸、南岸、東岸の住民達には竜が羽で巻き起こす波に備えて高台に移動させています」
「王都から避難する住民は」
「ここが一番安全なので動かないでしょう」
「判った、それじゃ北岸で竜を迎え撃つ、撃ち落とす場所はここストローネ平原、ここに撃ち落としてから叩く」
「あの、撃ち落とすと言っても弓矢は槍は届きませんが」
「大丈夫、俺達に考えがある。騎士団には解体を手伝って欲しい」

ーーーーー
ミランダ家公子ミハエル

時間が無いので直ぐに出発した、軍船十艘では、地竜退治の軍団としては少々寂しい。
それでも民衆にとっては頼もしく見えた様で、北崖の上から大勢の人達が見送ってくれた。
風術兵達の頑張りもあって、翌朝には人気の無い北岸の町に辿り着き、雪の積もったストローネ平原で昼前に幕営を張り終えた。

二人が迎撃の練習を始めた、僕等も含めて騎士団全員が圧倒されてその練習を見つめていた。
ジョージが巨大な氷の針、マリアが同じく巨大な土の針を作って空に打ち上げはじめたのだ。

ジョージが水術と熱術、マリアが土術と火術を使っているのは理解できるのだが、規模が大きすぎる。
常人ならば本番前に魔力の枯渇を心配するところなのだが、二人にその気配がまるでない。
どちらが高く打ち上げられるか競って遊んでいる様にも見える。
なんだか地竜に勝てそうな気分になって来た。

ーーーーー
王都北崖 S級冒険者アニー

私達は、ギルドからの依頼で他の冒険者達と一緒に北崖の上に陣取っている。
竜は予定よりも早く昼前に対岸へ姿を現した、周囲の人達にも対岸の様子が見える様に、レンとモニカと協力して、光術で目の前に巨大なスクリーンを作って対岸の光景を拡大して映し出した。

竜は圧倒的に大きく物凄い迫力だ、人は豆粒の様に小さく何て無力なのだろう。
その竜に向かって、小舟が一艘橇の様に雪原を走って行く、なんの積りなのだろうか。
だが小舟と竜がすれ違う瞬間、地上から無数の巨大な氷の針と巨大な土の針が空に向かって飛び上がり、真下から竜に襲い掛かった。

”ギャー”

羽を貫かれた竜が叫び声を上げて地面に激突した。

”ほー”

周囲の冒険者から感嘆の声が漏れる。

”メテオ”

少女が天を指差して叫んだ、すると無数の隕石が竜に降り注いだ、これは凄い。
竜の動きが止まった、少年が竜に駆け上がり止めを刺す、そして騎士団に手を振っている。

”うおー”

騎士団が拳を握って叫び声を上げた、思わず私達も一緒に声を上げてしまった、人が竜をこんなにも簡単に退治できるとは知らなかった。
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