兄妹○○は死罪です・・・妹と一緒にサンドワームに喰われました

切粉立方体

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Ⅲ 王都フルムル

20 兄妹渡航許可証を入手する

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念のため、マリアは土術と火術と投石と筋力、俺は熱術のレベルを一つずつアップして竜との対戦に臨んだ。
マリアの火術と俺の熱術は、前日の練習で土と氷のミサイルの推進力に少々不安が有ったので手を入れたのだ。
竜は飛行機の様な速さで飛んで来る、打ち漏らして飛び去られたら恰好悪い事この上ない、何をしに此処へ来たのか判らなくなってしまう。

マリアの土術と投石と筋力のアップは、”なんちゃってメテオ”の完成度を上げたいと言う本人の希望だ。

竜が近づいて来た、騎士団を餌と認識したのだろう、嬉しい事に高度を少し落としてくれた。
マジックボックスから甲羅の舟を取出し、氷のレールの上を、左右に氷のミサイルと土のミサイルを量産しながら、雪原を走り抜ける。

竜の腹の下を通り過ぎた瞬間、作ったミサイルを一斉に飛び立たせた、振り返ると、幅一キロ、長さ二キロの針の敷物が竜を包み込む様な感じだった。

”ギャー”

竜が悲鳴を上げた、羽が散り散りとなって破れ、推進力を失った竜が墜落する。
舟を飛び降りて、せっせと土から岩を拵えていたマリアが、竜の落下位置を確認してから岩を上空に向かって、ひょいひょいと投げ上げ始めた。
レベルアップしたおかげで、今日の岩は二回り大きく、数も三倍以上多い。

マリアが近くの丘に駆け上がり、タイミングを計る、1,2,3・・・20、マリアが天を指差し叫んだ。

「メテオ」

魔術じゃない単なる投石なので、必要のない全く無駄な行為なのだがマリアはこれが是非ともやりたかったらしい。
念のため、俺が熱術の氷で竜を地面に貼りつけて動けない様にする。

投げ上げた岩が落ちて来て竜を袋叩きにする、さすがに竜は頑丈に出来ているようで、六十一発目の直撃弾を頭に受けてから昇天した。

竜に駆け上がって、念のために止めを刺しておく、高レベルの解体スキルのおかげで、俺は生き物の急所の位置は手に取る様に判る。

後頭部の一際大きい鱗を剥し、刀を刺し入れて頭部と身体を繋ぐ神経を断ち切る、ビクリと竜の身体が痙攣して滑り落ちそうになる。

「兄ちゃん、ポーズ。これは大事だよ」

仕方が無いので刀を振り上げる、すると応呼するように騎士団から歓声が上がった。

ーーーーー
ミランダ家公子ミハエル

僕の両脇に控えている黒竜騎士団長も赤竜騎士団長も、拳を振り上げ涙を流して叫び声を上げているが、僕はひたすら呆れていた、何なんだ、あの竜を撃ち落とした無数の巨大な針は。
何をしているかは昨日の練習を見て判っていた、だがあれだけの数の針を作り出すだけでも尋常な魔力じゃないのに、さらにそれを上空高く一斉に打ち上げて見せたのだ。
魔力も大きいのだろうが、驚くべきはこれだけの数を一斉に操作する能力が尋常じゃない、父さんじゃないけれど、正に百万の魔術兵に匹敵する。

だがメテオが何か変だ、土術の気配はするが術式の大きさに比べて気配が小さ過ぎるのだ、マリアが呪文を唱えた時も、神経を研ぎ澄ませて術式を探ろうとしたのだが何も感じる事ができなかった。
でも物凄い規模のメテオが実際に目の前で使われている、不思議だ。

ーーーーー
竜の解体は、俺が指揮を取って騎士団にも手伝って貰った。
長さが通常の地竜の倍、四百メートル近い大きさがあったので、足場を組む作業に時間が掛かってしまい、結局結局解体作業終わるまでに五日を要した。

肉は傷むと勿体ないと思い、騎士団と避難から戻った北岸の住民達に振舞って早めに処分したのだが、喜んだ住民達が連日酒や野菜を持ち寄ってくれたので、毎日焼き肉パーティーが楽しめた。
竜の遺骸を一目見ようと野次馬が集まり始めた、解体現場は露店が並ぶお祭り騒ぎとなり、三日目には本格的な店を作り始める者も出始めて、五日後には土産物屋が立ち並ぶ街の様相を呈し始めた。
王都からの観光船が北岸の港に入る様になり、街は活況を呈し始める。

骨は勿論そのまま放置だ、ミノタウロスの時とは違い、王都に長さ四百メートル骨を飾る場所なんて勿論無い。

解体作業終了後、町長が送別会を催してくれた、ミハエルの元に感謝の意を述べに来た町の有力者に混じって、この地方を治める伯爵も挨拶に来た。
そしてミハエルのみならず、マリアの手も取って挨拶して行った。

「ありがとうございます。聖女殿」

不味い、ばれてる、ミハエルに断わりを入れて、俺達は先に甲羅の舟で王都に逃げ帰った。

ーーーーー
ミランダ家公子ミハエル

北部領主の実力者ミノタル伯が挨拶に来た、驚きだった、今の時期、僕に接触すると王家勢力から裏切り者呼ばわりされかねない。

「いいえ、ミハエル殿、それは小事です。ミハエル殿が動いて下さらなかったら、私も含めて今この場に集まっている者全員の命は無かったのです。よしんば生き残ったにしても、この地方は五十年飢えに苦しんだでしょう。恩人に対し礼を尽くさねば我一族の末代までの恥になります。それにこの町の将来には心を痛めておりましたのに、たった五日で以前を上回る賑わいを取り戻して頂けました。我家は今後ミハエル殿に忠誠を誓います」
「ミノタル様、これは僕の実力でも無いし、たまたま良い知り合いがいただけです」
「いいえ、ミハエル様。失礼ですが今の王にはこれが出来なかったでしょう、たぶん指を咥えて見ているだけだったと思います。運も含めて結果が全てを雄弁に語ってくれます。如何ですか、伯爵様」
「ああ、少々耳が痛いが町長の言うとおりだ。平時には有能な王だがそれならば官僚で十分だ。王には目に見えない違う要素が求められるのかも知れんな、今回は良い経験になった」

僕にはそのプラスアルファ有るようには到底思えない、それよりも僕にはそのプラスアルファを持つ奴にとても聞きたい事がある。

「ジョージ、あのメテオなんか変じゃないかい」
「あははは、ばれたか。だけどマリアには言うなよ。本気でメテオだって言い張ってるんだから」

なんか物凄く軽い話の様に返されてしまった、僕は物凄い真実が隠されているのかと思って聞いたのに。

「おれは”なんちゃってメテオ”なんて呼んでるんだが、単なる投石だよ」
「へっ?」
「石を投げ上げてるだけさ」

それはそれでメテオより物凄い事だと思う、たぶん魔力を使わない分メテオ以上だと思う、これが目に見えない違う要素なのだろうか。

突然ジョージとマリアが帰ると言い出した、たぶん此奴らのことだから何か事情が有るのだろう。
港まで見送ったら、マジックボックスから甲羅の舟を取り出して乗って行った、氷のレールを作って舟を滑らせている、氷を作る時に生じた熱量を使って舟の推進力に変えている。
無駄の無い、教科書に出も載せたくなるような、緻密で繊細な魔術の使い方の良いお手本だ、プラスアルファは無いが、センスの違いを見せ付けられた気がする。
舟は物凄い速さで闇の中に消えて行った。

ーーーーー
王都北崖 S級冒険者ホーク

凱旋の船団の中にはあの二人の姿は見えなかった、まだ北岸の港に滞在しているのだろうか。

「ホーク、あいつ等居ないわね」
「ああ、クルシュナの古代遺跡の探索に誘おうと思ったのに残念だ」
「へー、あんた達あの難関に挑戦するの。面白そうね、ねえウィル、私達も一緒に挑戦しない」
「行かないよ」
「あんたには聞いてないわよ、レン」
「ウィルは僕と一緒に行くからアニーとはいかないよ。アニーはそこのどぶ攫いの仕事でもしてなよ」
「レン、そんなに丸焼きにして欲しいの」
「おい、周りが迷惑するから止めろよ。まずはあの二人を探し出す方が先だ」

ーーーーー
ミハエルから渡航許可証が出来上がったとの連絡が有ったので、城へ受け取りに向かった。
今シーズンのヒール草の作業も終わり、マリアと身の振り方を相談していたところだったのでちょうど良かった。
家具も含めて、荷物はすべてマジックボックス収納し、許可証を受け取ったらその足で国外に向かう積りでギルドにも挨拶を済ませた。

今日は正門をすんなり通して貰い、ミハエルの居室に案内された。

応接セットのソファーに三人が座って待っていた、この国の姫様とミハエルとアリューシャ姫だ。
アリューシャ姫がミハエルの腕にしがみ付いて顔を埋めており、その様子をこの国の姫様が心配そうな顔をして覗き込んでいる。

「すまん、今すぐ僕と一緒に出発して欲しい。マーシャル国が地竜の襲撃を受けたらしいんだ、たった今大鷲便が届いた。間に合うかどうかわからんが、君達の舟で僕とアリューシャをマーシャルの王都に届けて欲しい」
「判った、地図は有るか」
「有る」
「荷物は」
「無い、身体だけ送り届けて欲しい」
「判った」
「じゃっ、これが君達の渡航許可証だ。国境の通行許可証も兼ねている」

そして俺達は念願の渡航許可証を受け取った。
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