42 / 73
Ⅳ マーシャル国
6 兄妹王城を訪れる
しおりを挟む
馬車は昼前に王都の中央広場の停車場に到着した。
乗車場と降車場が分けられている様で、駅のホームの様な地面より高くなった通路に馬車が横付けされ、客を下ろすと、馬車は馬房へと消えて行った。
取り敢えず俺達は田舎者なので、橋を渡って中央広場回りの商店街へと向かった。
観光案内図を土産物屋で購入し、昼飯を食いながら現在位置と今後の行動を検討することにしたのだ。
テーブルの上に観光地図を広げ、烏貝の酒蒸しをバターであえたパスタの大盛りを頬張りながら眺めた。
王都シャルノールはほぼ円形の形をした都市で、東西南北に大通りで四等分された区画分けになっており、南が王城や貴族の屋敷が立ち並ぶ王区、西が市場や倉庫や商店が並ぶ商区、北が工房の煙突が並ぶ工区、東が魔術学院の研究室や神殿が林の中に散在する学区となっていた。
名所や有名料理店は学区に集中していたが、宿は中央広場周辺と商区に大多数が作られ、数少ない学区の宿は宿のグレードを示す星印は少ない状況だった。
公衆浴場は煙突の有る施設の所為か工区の中に造られていた、昼間の作業の汚れを落とす為に必要とする人が多い地区でもあるので、むしろ理に適っているのかも知れない。
「兄ちゃん、魔道具屋と細工物屋は学区と工区に多いよ」
「薬屋は商区に多いな」
「兄ちゃん、この工区と学区の境目にある宿、名前は変だけどお風呂は近いよ。防具屋と武器屋と道具屋が有るのはジョークかな」
「ああ、そうだろうな。でも三つ星だから評価はまあまあかな。公園の中だから静かそうだし、今日はここに泊まるか」
「うん」
「その前に取り敢えず王城に顔を出すか、王都に戻ったらミハエルに教える約束してたしな。王様に会ってきちんとお礼して貰えって言ってたけど面倒臭いよな」
「会わせて貰えるかな、偉い人なんでしょ」
「ああ、俺も無理だと思うけど、時々ミハエルは変な事言うんだよな。まあ、歩いて十五分くらいだから、飯を食い終わったら、見学がてら行ってみようか」
王城の正門には豪華な馬車が列を成し、守備兵さん達が忙しそうにその馬車を捌いていた。
ミハエルに会いに来たと守備兵に告げると怪訝な顔をされ、裏手の使用人出入り口に回る様に指示された。
植え込みの間をテコテコ歩いて裏口の使用人出入り口に辿り着く、途中脇を抜けて遠目に見た正面玄関では、執事さん達が忙しそうに着飾って馬車を降りる人達の対応に追われていた。
確かに普段着の俺達がのこのことあそこに加わったら、場違いで浮いていたに違いない。
暇そうに立っている出入り口の守備兵さんに、一応声を掛ける。
「あのすいません。ミハエルさんに会いに来たんですが」
「ああ、ミハエル爺さんなら薬草園にいると思うから、この通路を真っ直ぐ行って薔薇園を抜けてくれ」
何か良く判らなかったが脇の通路を示された、通路を進むと王城の中庭の庭園を抜けて薬草園に辿り着いた。
剪定作業をしている職人さんが居たので声を掛ける。
「あの、ミハエルさんに会いにきたんですが」
「おう、待ってたぞ。爺さん、手伝いの子供達が来たぞ」
「遅かったな、それじゃ直ぐに作業に掛かってくれ。お前は薬研の粉挽きで、女の子はそれを煎じてくれ」
爺さんは干し薬草の山の前で俺に薬研を渡し、マリアの頭に銅の浅鍋を被せると、どこかにすたすたと行ってしまった。
「兄ちゃん」
「仕方が無いからやるか」
「えー」
何かの行違いで手伝いが来なかったのだろう、どうせ俺達には慣れた作業だ、さっさと終わらせよう。
作業は夕刻前に終わった。
「ほう、さすがに薬屋の息子と娘だな、手馴れたもんだ。ほれ、これが手間賃だ。帰り道は知ってるな。それじゃご苦労様」
何か物凄く納得行かない様な気分で、銀貨四枚を握り締めて庭園に向かう。
途中、庭園に面した部屋にミハエルの気配が有ったので、寄り道することにした。
二階の部屋だったので、氷の足場を作って駆け昇り、ベランダに面した扉から中に入った。
「御邪魔しまーす」
「うわ!」
王の執務室だった、前回来た時に記憶がある、王の執務室に居るのはミハエルだけで、ミハエルはそこで仕事をしていた、何故か仕事をしている場所は王様の机で、王印をペタペタ書類に押している、乗っ取り?
「王様は何処にいるんですか」
「僕に仕事を押し付けて、治療院で静養している」
なんかミハエルは少しやつれた気がする。
「すまん、今から会議が入ってるんで少しここで待ってて貰えるか。西大陸からの視察団の対応について相談したいんだ」
「・・・」
ミハエルが部屋を出て行った、ミハエルに戻った事は伝えたし、王様は静養中だ、俺達は急いで王城から逃げ出した。
ーーーーー
変わった名前の宿、”ダンジョン入口”は本当にダンジョンの入口だった。
酒場と宿が有るので、宿として記載してあるのは確かに間違いじゃない、傷だらけの怖そうなおじさんや、危なそうなお姉さんが大勢うろうろしている。
急いで回れ右をしようと思ったら、目の前をやけに面積の小さい赤いレザーアーマーを着たお姉さんに塞がれた、うん、マリアと違ってボリュームたっぷりだ。
「ねえ、あんた達勇者と賢者でしょ」
周囲の人達が一斉にこちらを振り返る。
「いえ、僕等牧場の少女Bと村人Aです」
「ホーク、ウィル。勇者と賢者見付けたよ」
乗車場と降車場が分けられている様で、駅のホームの様な地面より高くなった通路に馬車が横付けされ、客を下ろすと、馬車は馬房へと消えて行った。
取り敢えず俺達は田舎者なので、橋を渡って中央広場回りの商店街へと向かった。
観光案内図を土産物屋で購入し、昼飯を食いながら現在位置と今後の行動を検討することにしたのだ。
テーブルの上に観光地図を広げ、烏貝の酒蒸しをバターであえたパスタの大盛りを頬張りながら眺めた。
王都シャルノールはほぼ円形の形をした都市で、東西南北に大通りで四等分された区画分けになっており、南が王城や貴族の屋敷が立ち並ぶ王区、西が市場や倉庫や商店が並ぶ商区、北が工房の煙突が並ぶ工区、東が魔術学院の研究室や神殿が林の中に散在する学区となっていた。
名所や有名料理店は学区に集中していたが、宿は中央広場周辺と商区に大多数が作られ、数少ない学区の宿は宿のグレードを示す星印は少ない状況だった。
公衆浴場は煙突の有る施設の所為か工区の中に造られていた、昼間の作業の汚れを落とす為に必要とする人が多い地区でもあるので、むしろ理に適っているのかも知れない。
「兄ちゃん、魔道具屋と細工物屋は学区と工区に多いよ」
「薬屋は商区に多いな」
「兄ちゃん、この工区と学区の境目にある宿、名前は変だけどお風呂は近いよ。防具屋と武器屋と道具屋が有るのはジョークかな」
「ああ、そうだろうな。でも三つ星だから評価はまあまあかな。公園の中だから静かそうだし、今日はここに泊まるか」
「うん」
「その前に取り敢えず王城に顔を出すか、王都に戻ったらミハエルに教える約束してたしな。王様に会ってきちんとお礼して貰えって言ってたけど面倒臭いよな」
「会わせて貰えるかな、偉い人なんでしょ」
「ああ、俺も無理だと思うけど、時々ミハエルは変な事言うんだよな。まあ、歩いて十五分くらいだから、飯を食い終わったら、見学がてら行ってみようか」
王城の正門には豪華な馬車が列を成し、守備兵さん達が忙しそうにその馬車を捌いていた。
ミハエルに会いに来たと守備兵に告げると怪訝な顔をされ、裏手の使用人出入り口に回る様に指示された。
植え込みの間をテコテコ歩いて裏口の使用人出入り口に辿り着く、途中脇を抜けて遠目に見た正面玄関では、執事さん達が忙しそうに着飾って馬車を降りる人達の対応に追われていた。
確かに普段着の俺達がのこのことあそこに加わったら、場違いで浮いていたに違いない。
暇そうに立っている出入り口の守備兵さんに、一応声を掛ける。
「あのすいません。ミハエルさんに会いに来たんですが」
「ああ、ミハエル爺さんなら薬草園にいると思うから、この通路を真っ直ぐ行って薔薇園を抜けてくれ」
何か良く判らなかったが脇の通路を示された、通路を進むと王城の中庭の庭園を抜けて薬草園に辿り着いた。
剪定作業をしている職人さんが居たので声を掛ける。
「あの、ミハエルさんに会いにきたんですが」
「おう、待ってたぞ。爺さん、手伝いの子供達が来たぞ」
「遅かったな、それじゃ直ぐに作業に掛かってくれ。お前は薬研の粉挽きで、女の子はそれを煎じてくれ」
爺さんは干し薬草の山の前で俺に薬研を渡し、マリアの頭に銅の浅鍋を被せると、どこかにすたすたと行ってしまった。
「兄ちゃん」
「仕方が無いからやるか」
「えー」
何かの行違いで手伝いが来なかったのだろう、どうせ俺達には慣れた作業だ、さっさと終わらせよう。
作業は夕刻前に終わった。
「ほう、さすがに薬屋の息子と娘だな、手馴れたもんだ。ほれ、これが手間賃だ。帰り道は知ってるな。それじゃご苦労様」
何か物凄く納得行かない様な気分で、銀貨四枚を握り締めて庭園に向かう。
途中、庭園に面した部屋にミハエルの気配が有ったので、寄り道することにした。
二階の部屋だったので、氷の足場を作って駆け昇り、ベランダに面した扉から中に入った。
「御邪魔しまーす」
「うわ!」
王の執務室だった、前回来た時に記憶がある、王の執務室に居るのはミハエルだけで、ミハエルはそこで仕事をしていた、何故か仕事をしている場所は王様の机で、王印をペタペタ書類に押している、乗っ取り?
「王様は何処にいるんですか」
「僕に仕事を押し付けて、治療院で静養している」
なんかミハエルは少しやつれた気がする。
「すまん、今から会議が入ってるんで少しここで待ってて貰えるか。西大陸からの視察団の対応について相談したいんだ」
「・・・」
ミハエルが部屋を出て行った、ミハエルに戻った事は伝えたし、王様は静養中だ、俺達は急いで王城から逃げ出した。
ーーーーー
変わった名前の宿、”ダンジョン入口”は本当にダンジョンの入口だった。
酒場と宿が有るので、宿として記載してあるのは確かに間違いじゃない、傷だらけの怖そうなおじさんや、危なそうなお姉さんが大勢うろうろしている。
急いで回れ右をしようと思ったら、目の前をやけに面積の小さい赤いレザーアーマーを着たお姉さんに塞がれた、うん、マリアと違ってボリュームたっぷりだ。
「ねえ、あんた達勇者と賢者でしょ」
周囲の人達が一斉にこちらを振り返る。
「いえ、僕等牧場の少女Bと村人Aです」
「ホーク、ウィル。勇者と賢者見付けたよ」
20
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる