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悟に別れを告げた後、僕は直ぐに服を身につけ、部屋から飛び出した。
ただの少しもこの場にいたくない…。
玄関にあったカバンを掴み、中を探っていると追いかけてきた悟に腕を取られる。
「触らないで!!」
掴まれた腕を強い力で振り払い、玄関の扉まで後ずさる。
「待てって!悪かったよ…こんな日に浮気なんかして。俺にはお前だけだって知ってるだろ」
「そのセリフは何回も聞いたよ、それでその後、もう浮気はしないっていうんでしょ」
「っ…今回は本気だ、別れるなんて冗談だろ?」
「…冗談なんかじゃない!もう悟のことなんて信じられない。」
カバンからようやく探り当てたカードキーを悟に差し出す。
「ここにはもう来ない、僕の物は処分して…」
呆然と固まる悟に無理矢理カードキーを握らせてから扉を開く。扉をくぐり抜ける瞬間、すがるような声で懇願された。
「本当にもう浮気はしない、頼むから許してくれ…。」
その声に後ろ髪を引かれる想いがした。熱心に僕を口説いてきた昔の悟を思い出すような声だったからだ。
でもきっとそうじゃない…あの時の悟は居なくなってしまったのだ。
今目の前にいる悟は僕の好きな悟じゃない…。
「許すも許さないもないよ、ごめんね…もう悟の事好きじゃない。」
扉が閉まった瞬間涙が出てくる。もう悟は追いかけては来なかった。
ボロボロ涙を流しながらエントランスを通り抜ける僕をコンシェルジュの彼がぎょっとした顔で見送った。
もうここで彼の顔を見ることはないだろう。
最初は僕を口説いてくるなんて変な人だなと思った。 でも僕なんかの良いところを沢山みつけてくれる彼にどんどん惹かれていった。
付き合い始めてからは一途に愛してくれて、そんな彼をますます好きになった。
今の彼は僕が好きになった彼とは別人のようだ。
僕が一番大事だと言いながらも傷つけることを厭わない。
自分の欲望のみに忠実で、キレイな人と浮気を繰り返す彼は自分が好きになった彼とはまるで別人のようで、気持ちが悪くなった。
別れを切り出した事は後悔していない。悟は僕の好きだった悟とは別人になってしまったのだから…。
ただ最後の瞬間、悟が垣間見せた以前と同じ一途さだけが少しだけ気にかかる。
それから僕は住む所を変え、バイトを変えて悟との縁を自分から切り離した。
だがどうやって調べたのか悟が新しいバイト先のファミレスに表れるようになった。
「要、頼むからよりを戻してくれ」
「お客様、仕事中ですので…そういった話は…」
注文を聞きに来た僕の手を握りしめては毎日のように復縁を迫ってくる。
そしてもう浮気なんかしないと証明するように僕の仕事中はコーヒーを飲みながら店内で小説の執筆活動に勤しむのだ。
「今日も俺はどこにも行かないで、ここで要のことを見守っているからな。」
どうして付き合っている時に、この一途さを見せてはくれなかったのか…、そうすれば僕らは今でも恋人同士でいられただろうに…。
僕は大きく首を振り、実現しなかった二人の未来に見切りをつけた。
ただの少しもこの場にいたくない…。
玄関にあったカバンを掴み、中を探っていると追いかけてきた悟に腕を取られる。
「触らないで!!」
掴まれた腕を強い力で振り払い、玄関の扉まで後ずさる。
「待てって!悪かったよ…こんな日に浮気なんかして。俺にはお前だけだって知ってるだろ」
「そのセリフは何回も聞いたよ、それでその後、もう浮気はしないっていうんでしょ」
「っ…今回は本気だ、別れるなんて冗談だろ?」
「…冗談なんかじゃない!もう悟のことなんて信じられない。」
カバンからようやく探り当てたカードキーを悟に差し出す。
「ここにはもう来ない、僕の物は処分して…」
呆然と固まる悟に無理矢理カードキーを握らせてから扉を開く。扉をくぐり抜ける瞬間、すがるような声で懇願された。
「本当にもう浮気はしない、頼むから許してくれ…。」
その声に後ろ髪を引かれる想いがした。熱心に僕を口説いてきた昔の悟を思い出すような声だったからだ。
でもきっとそうじゃない…あの時の悟は居なくなってしまったのだ。
今目の前にいる悟は僕の好きな悟じゃない…。
「許すも許さないもないよ、ごめんね…もう悟の事好きじゃない。」
扉が閉まった瞬間涙が出てくる。もう悟は追いかけては来なかった。
ボロボロ涙を流しながらエントランスを通り抜ける僕をコンシェルジュの彼がぎょっとした顔で見送った。
もうここで彼の顔を見ることはないだろう。
最初は僕を口説いてくるなんて変な人だなと思った。 でも僕なんかの良いところを沢山みつけてくれる彼にどんどん惹かれていった。
付き合い始めてからは一途に愛してくれて、そんな彼をますます好きになった。
今の彼は僕が好きになった彼とは別人のようだ。
僕が一番大事だと言いながらも傷つけることを厭わない。
自分の欲望のみに忠実で、キレイな人と浮気を繰り返す彼は自分が好きになった彼とはまるで別人のようで、気持ちが悪くなった。
別れを切り出した事は後悔していない。悟は僕の好きだった悟とは別人になってしまったのだから…。
ただ最後の瞬間、悟が垣間見せた以前と同じ一途さだけが少しだけ気にかかる。
それから僕は住む所を変え、バイトを変えて悟との縁を自分から切り離した。
だがどうやって調べたのか悟が新しいバイト先のファミレスに表れるようになった。
「要、頼むからよりを戻してくれ」
「お客様、仕事中ですので…そういった話は…」
注文を聞きに来た僕の手を握りしめては毎日のように復縁を迫ってくる。
そしてもう浮気なんかしないと証明するように僕の仕事中はコーヒーを飲みながら店内で小説の執筆活動に勤しむのだ。
「今日も俺はどこにも行かないで、ここで要のことを見守っているからな。」
どうして付き合っている時に、この一途さを見せてはくれなかったのか…、そうすれば僕らは今でも恋人同士でいられただろうに…。
僕は大きく首を振り、実現しなかった二人の未来に見切りをつけた。
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