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しおりを挟む晴広に頭を撫でられている勇人を高坂は複雑な気持ちで見ていた。
勇人が風紀委員を解任されるとは思っていなかった。
幸村家の人間が常に命を狙われているのは事実で、夏樹が誘拐されそうになった現場にいたのでよくわかっていたはずだった。
だけど―――
『相良勇人が何者なのか?』
あの謎が解けたとき、まさか離れることになるとは皮肉なものだ。
これで何かとつけて、勇人と過ごす時間がなくなってしまった。
学年も違う二人にとって風紀委員は唯一共有できる時間だった。
はあ~・・・
憂鬱になりため息を吐くとニヤリと笑みを浮かべた五十嵐と目が合った。
クソッ!勝ち誇ったような顔をしやがって!
悔しいがあいつと勇人の過ごす時間が増えることに焦りを感じた。まさか、忘れられるなんてことはないと思うがそれでも不安になった。
ちゃんと、話をしたほうがいいな。あいつが『伝えたいことがある』て、言ってたこともきになるしな。
真剣な顔で勇人を見つめている高坂の様子に気づいたのは中原だ。
あれって、まだ言ってないな。
しかし、あの幸村の様子から両想いなんだと思うんだけどなあ~。
何かきっかけでもあればいいんだけど・・・
それにあいつ、どこかで会ったような気がするんだよな~
う~ん・・・どこでだ?
じーと勇人を睨みつけるようにガン見している中原の視線を感じて勇人は苦しくなった。
何で睨まれてるのかわからねえけど・・もしかしてあれか、オレが邪魔ってやつかな?
そんな目をしなくても、邪魔はしねえよっ!
クソっ!何かムカムカしてきた。
命の危険!風紀委員解任っ!
何なんだよっ!
兄さんたちが心配してくれるのはわかってるっ!
分かっているけど、どんな御託を並べられても納得できねえんだよっ!
何で、高坂さんと離れ離れにならなきゃいけねんだよっ!
ああ・・・涙が出て来た。
幸村家の人間だけってことで狙われ自由を失って、好きな人にも会えなくなりそうで苦しくなった。
「・・・勇人?」
泣きそうになっている勇人に晴広は驚いて思わず抱きしめると、背中に手を回してきた。
「どうした・・ん?」
優しい声で話しかけると、顔をグリグリと押し付ける仕草をする。
こ、これは・・まさか・・?甘えて、いるのか?
「ゆ、勇人・・?」
ドキドキしながら再び声をかけると勇人の手に力が入った。
間違いない!
これは―――甘えているっ!
勇人に甘えられて晴広の周りにぶわっとお花畑が現れた。
さきほどまでの真剣な話はどこにいったのか、鼻の下をのばしてデレデレになっていた。
ブラコン全開である。
「理事長・・・?」
「兄さん・・」
高坂と夏樹がいち早く気づき、晴広を剥がしにかかるが、肝心の勇人が手を離そうとしないことに顔を見合わせてため息を吐いた。
「兄さん、勇人から離れろよっ」
「イヤだね。それに勇人が離してくれないし・・」
どうだ、羨ましいだろ?という顔で満面の笑みを浮かべる晴広に高坂はムッとし、夏樹はむきになって力尽くではがしにかかった。
勇人と晴広が抱き合いそれを夏樹が邪魔をしにかかる。
という兄弟のいちゃつきに生徒会メンバーは呆れたり微笑ましくみたりとそれぞれの思いにふけるのだった。
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