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13歳と白百合の…
ド直球
しおりを挟む「――ルネ、あなた男だったのね」
マリアンヌはまどろっこしいことや面倒なことは基本的に嫌いである。故に、悶々と悩む前に直接本人に聞くことにして思考を放棄した。そうしてルネがアンドレお父様の元から戻ってきた初日、久々に対面したルネにド直球に問うたのであった。
「……はい」
少々間があったものの、ルネから肯定が返る。それはマリアンヌにとって喜ばしい返事であった。灯台下暗しとはよく言うが、まさか悩みを解消し得る存在がこんな近くに居たとは盲点であった。全体的に華奢なせいで気付かなかったが、よくよく見てみればゴツゴツしている、とマリアンヌはルネの周囲をぐるぐる回って観察した。
「そう。では聞いているか分からないのだけど、私の夫になる気はないかしら。夫への待遇はとても素晴らしいのよ。衣食住は保障されるし、私のような美女と閨を共に出来る。特に今までのように闇に生きる必要も無くなるのはあなたにとって素敵なお話だと思うのだけど……」
「――――」
またしてもマリアンヌのド直球な売り込み食い気味な問いに、ルネは沈黙した。……雰囲気的にマリアンヌの夫になる気はない、とひしひし伝わってきているのはマリアンヌにも感じ取れた。
……ついこの前マリアンヌは自身の発言を客観視し、まるで詐欺師のようだと省みたところだったが……今までの言動を撤回する気はさらさらなかった。
こちとら女王である。好きなものを好きと言って何が悪い、と開き直っていた。故に、アンドレお父様の応援が無くとも、マリアンヌ好みの容姿なうえに男と判明したルネをすっかり口説くつもり満々であった。
――だが、実際の反応は芳しくない。ノエルの時と違い、雰囲気に流されそうにないルネにマリアンヌはいい考えが無いかと思考を巡らせる。――悪知恵よ、降臨せよ。
「――そうだわ!」
そして思いついた。
「ルネ、お仕事よ――」
名案を思い付いて浮かれたのか、実に悪い笑みを浮かべていたかもしれない、とマリアンヌは後で我に返った。
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