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連載2
幸せの条件1
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「大丈夫か? 痛いところとか、苦しいところはないか? お前を診たマナエ医師は、緊張の糸が切れて眠ってしまっただけだと言っていたけれど、どれだけ呼びかけても目を覚まさないから、俺は心配で心配で!」
「心配かけてごめんね。兄様。……私、どれくらい眠ってたの?」
「俺もうっかり眠ってしまったから、正確なところは分からないけれど……まだ夜が明けてないところを見ると、三時間くらいか?」
「そう……」
目をつぶって、先ほどの夢を反芻する。
本当に、私は魂に刻まれたアシュリナやセーラ達に会って話すことができたのだろうか。
それとも……全部私の脳が作り出した、都合の良い夢に過ぎないんだろうか。
どれほど考えたところで、真実は闇の中だ。
でも、もし本当にアシュリナと会って話すことができたのなら。
【人を作った神】には感謝しなければいけない。
たとえそれが【人を作った神】の気まぐれによるものだったとしても、私は確かに夢の中のアシュリナに救われたのだから。
「ねえ、兄様。……今度こそ本当に、私の聖女としての役目は終わったみたい。色々後処理はあるけど、それでも聖女として求められた使命は果たした」
「え? あ、ああ。そうだな」
「私ね。夢の中でアシュリナに言われたんだ。これからは自分の為だけに、自分の幸せの為だけに生きてって」
アシュリナの名前を口にした途端、自然と目からは涙がこぼれ落ちた。
「兄様。私、幸せになりたい。……聖女としてではなく、どこにでもいる平凡で普通の女の子としての、ありきたりな幸せが欲しい」
「ディアナ……」
「大好きな人と暖かい家庭を築いて、一緒に生きていきたいの」
【聖女】の役割を抱えたままでは、けして口にできなかった願い。
けれどそれこそが、私の心からの望みであり、一番切望していた幸福だ。
「ねえ、兄様。私が【聖女】じゃなくなったら、兄様が【騎士】である必要もなくなるけど……そうなったら、兄様にとって私はどんな存在になるの?」
「前にも言っただろう? それはもちろん……」
そこで逡巡するように言葉を止めた兄様は、しばらく黙ったまま視線を彷徨わせた後、諦めたような笑みを浮かべて私を見た。
「……もちろん、大切な家族であり、妹だよ。お前がそう望んだのならば」
「心配かけてごめんね。兄様。……私、どれくらい眠ってたの?」
「俺もうっかり眠ってしまったから、正確なところは分からないけれど……まだ夜が明けてないところを見ると、三時間くらいか?」
「そう……」
目をつぶって、先ほどの夢を反芻する。
本当に、私は魂に刻まれたアシュリナやセーラ達に会って話すことができたのだろうか。
それとも……全部私の脳が作り出した、都合の良い夢に過ぎないんだろうか。
どれほど考えたところで、真実は闇の中だ。
でも、もし本当にアシュリナと会って話すことができたのなら。
【人を作った神】には感謝しなければいけない。
たとえそれが【人を作った神】の気まぐれによるものだったとしても、私は確かに夢の中のアシュリナに救われたのだから。
「ねえ、兄様。……今度こそ本当に、私の聖女としての役目は終わったみたい。色々後処理はあるけど、それでも聖女として求められた使命は果たした」
「え? あ、ああ。そうだな」
「私ね。夢の中でアシュリナに言われたんだ。これからは自分の為だけに、自分の幸せの為だけに生きてって」
アシュリナの名前を口にした途端、自然と目からは涙がこぼれ落ちた。
「兄様。私、幸せになりたい。……聖女としてではなく、どこにでもいる平凡で普通の女の子としての、ありきたりな幸せが欲しい」
「ディアナ……」
「大好きな人と暖かい家庭を築いて、一緒に生きていきたいの」
【聖女】の役割を抱えたままでは、けして口にできなかった願い。
けれどそれこそが、私の心からの望みであり、一番切望していた幸福だ。
「ねえ、兄様。私が【聖女】じゃなくなったら、兄様が【騎士】である必要もなくなるけど……そうなったら、兄様にとって私はどんな存在になるの?」
「前にも言っただろう? それはもちろん……」
そこで逡巡するように言葉を止めた兄様は、しばらく黙ったまま視線を彷徨わせた後、諦めたような笑みを浮かべて私を見た。
「……もちろん、大切な家族であり、妹だよ。お前がそう望んだのならば」
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